IS インフィニット・ストラトス~妹はファントムタスク~   作:のろいうさぎ

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第4話~発端の離散/模擬戦へ向けて~

 

 

 

 それは、いきなり訪れた。平穏が破られるのはいつだって唐突だ。

 

 

     

 

 

 

 

 

 

 あたしはその時家でマド姉といつもの様の遊んでいた。何をしていたのかはもう覚えてないけどね。

 

 

 

 

 

 確かあの時は一夏も千冬も家にはいなかった。

 

 

 

 

 近所へ用事があると出かけていたんだっけ。

 

 

 

 

 ただ千冬の久しぶりの休みで、一緒に出かけられると妙に朝から一夏が喜んでいたのを覚えてはいる。

 

 

 

 別に一夏が喜んでいようがそんなのはどうでも良かった。実際あたし達姉妹と、一夏や千冬は同じ家に住みながらも出かけるタイミングや千冬が長期家を空けること、それに伴って一夏を一緒に連れていくことが多かった所為もあってほとんど交流らしい交流はなかった。我ながら妙な姉妹関係というか家族関係だったなと今になってみると思う。顔を突き合わせるのはご飯のときぐらい、あたしはその時既に一夏達〝姉弟〟の事を好きでも嫌いでもなかったし、変にもめる様な事態も無かった。そのため親もどこかいびつな姉妹間を不安がりながらも口出しをする事はなかった。

 

 

 

 

 それはともかく、あたし達の平和な時間は唐突に破られた。見知らぬ男達が家に入り込んで来たのだ。聞けばその男達は政府の関係者だそうで、その男達は両親にある書面を見せていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 一体何なのか、状況を全く把握できていない幼かったあたしでも、書面を見た両親の顔から一気に血の気が引いていったのだけは理解できた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後は、もう何が何だか。気が付けばあたしは最後まで身を呈して、かばってくれたマド姉の踏ん張りもむなしく、男の一人に担がれると車に乗せられていた。

 

 

 

 

 一瞬の出来事で今でもあの時何がどうなったのか説明するのは難しい。

 

 

 

 しかし、はっきりと覚えている事がある。それは群がる野次馬の中にチラッと、だがはっきりと見えたもの。それはあたしが、マド姉が、そして両親が今まさに引き裂かれんとしている時にあって、〝一夏だけを心配そうに抱き一夏の目を伏せ声すらも上げようとしなかった〟あの女の姿。

 

 

 

 

 助けられたんだ……。あの時既に織斑 千冬はIS関係の人間でそこいらの人間よりも発言権があった。一声上げさえすればあたし達家族を守れたというのにッ!

 

 

 

 助けなかったッ!!

 

 

 その後、別々になってしまったあたしを〝ファントムタスク〟の力を借りてマド姉が助けてくれた時に、自分がこうなった理由。それを聞いた時もはや怒りさえも通り越して何も感じなかった。いやむしろあの行動がその理由を聞いて当然だろうとさえ思えてしまった。

 

 その理由とは〝織斑 千冬と篠ノ之 束が非常に親しい関係であったことにより親族に想定外の危害が及ぶ事態を防止するために保護プログラムを適用した〟というもの。つまり、あの女は、政府がこういう行動を起こすと言う事をあらかじめ知った上で初めから家にいなかったのだッ!

 

 

 

 どうやって踏みこまれるタイミングが分かったのかはまだよく分かってはいない。そう、ただあの織斑 一夏一人を政府から守るためだけに、あたし達家族を離散させたッ! 何が危害だッ 全部あの女の所為じゃないかッ、それにあたしはその時苗字まで変えさせられたんだッ! こんなことってない!

 

 建前でいくら飾ろうともあたしの眼には一夏だけを守るためにあたし達を犠牲にしたとしか映っていないかった。だからあたしは……あの女に、あたし達から平穏を奪い去ったあの女に同等いや、それ以上に苦しみを味あわせるために織斑 一夏を殺してッ殺してッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そう、殺してやるーーーーーッ!!」

「へッ!?」

「隙ありッ!!」

「うわッ!!」

 

 

 

 ……ん? 今なんかゴギャっていう音が聞こえた様な……?あたしは寝ぼけ眼をこすりながら、状況を見やる。ってか、あたし何してんだっけ? 確か箒に連れられて道場までやってきて、一夏が防具を付けた所までは覚えてる。あぁそうだあたしそれで、あんまりにも試合が長いから詰まんなくて寝ちゃったのかってことはさっきのは夢ね……。な~んか嫌なの見ちゃっ……た……な?

 

 どうして一夏の顔面(防具あり)に箒の竹刀がめり込んでいるのだろうか。……あ、そうかさっきの音はあの〝面〟が入った音だったのかぁ。

 

 

「納得」

「お、お前さっきから……何言って……んだ」

 

 

 

 一夏が、半分涙目になりながらあたしに声をかけてくる。あたしはそんな彼に、静かに鼻を鳴らすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 防具を外し、2人があたしの方へやってくる。箒はそれほどでもないが一夏は汗ダラダラといった感じでかなり疲弊しているようだった。更に言うと箒は何やら一夏を試合が終わってからずっと睨みっぱなしだ。あたしはご覧の通り寝落ちしちゃってて、どうにも訳が分からないのだけれど。えぇ~と……どったの?

 

 

 

 キョトンとするあたしを尻目に箒が一夏に静かにだが威圧的に詰め寄る。顔と顔がくっつきそうなほどに近付きだが目は笑っていない。一夏も照れるどころか顔をひきつらせて対応していた。

 

 

「どういうことだ?」

「な、何がだ!?」

「もう一度だけ聞くぞ? どういう事なんだ、このザマはッ!!」

「はい、すいません…」

「あの~……どういうことなのか説明をお願いしま~す…」

 

 

 ここにはあたしも居るのだ。仲間はずれで話しをされても困るしそれで勝手に納得されてもつまらない。あたしはできるだけ箒を刺激しないように控え目な声で2人(主に箒だけど)の間に割って入る。あたしが入ったことで箒は、コホンっと咳払いをして一歩下がると、バンっと竹刀を床へ打ちおろす。そして多少いら立ちを含んだ表情で一夏を見やった。

 

 

「どうもこうも無い。こいつの腕が鈍りに鈍っているから怒っているんだ」

「腕?」

「剣道だッ!」

 

 

 あ、あぁそう言えば、一夏ってこの子の道場に通ってたんだっけね、いま思い出したよ。ってか、かな~り今更だけどこんなところで篠ノ之 束につながる人物と出会ってるんだね、あたし。マド姉が聞いたら「鈍いな…」って言われそうだ。っていうか言われるだろうね。前の通信でも何も言ってないし。

 ま、それはそれか、今度言えば良いしとりあえず話を戻そう。要するに箒は一夏の剣道の腕がガタ落ちしている事に怒っているらしい。ふ~ん…

 

「ねぇ、一夏君って元々どれぐらい強かったの? 箒さんは知ってんでしょそこらへん」

「少なくとも私と互角かそれ以上だ。大体ISを使うならまだしも、剣道で女に男が圧倒されてどうするかッ」

「いや、けどありゃ、秋穂が物騒な事叫ぶから…」

「い、いやあれは……ちょっと寝言で」

「でけぇ寝言だなぁ、おいッ」

「……貴様、それが言い訳になるとでも?」

「なりません…」

 

 

 まるで蛇に睨まれたカエルみたい。しゅんっと縮こまっちゃってさ。にしても……一夏の戦力ダウンかぁ。

 あたしはふと考える。この先タイミングを見計らって一夏を殺すにしてもなんにしても、箒の言うように一夏がそこまで弱っちいのなら倒す法としてもつまらない。サクッと刺しちゃえばそれで終わりだ。織斑 千冬は悲しむだろうがそもそもよく考えてみればこいつがいたせいで一家が離散する様な事になったのではないか? こいつがいなければ千冬があんな事をする必要なんて無かったはずだ。守る物がないのだから。そう考えると、こいつにも苦しみを味わいながらじわじわ殺してやりたい。呆気なく終わるのではなくあがいてもがいて……。

 

 

 

 ははは~ん♪ ここは1つあたしの目的をより理想に近づけるためにも、一夏には〝強くなってもらおう〟

 

 

「まぁま、箒さんも落ち着いて。怒ったって何も始まんないよ? それで一夏君が強くなるわけでもないしね」

「それはそうだが……」

「どうだろう、あたしに良い考えがあるんだけど」

「良い考えだと?」

「なんだよ?」

「結局さ、あたしも戦わなくちゃいけない訳じゃん、あの子と。あたし多分一夏君よりはISの知識的な物は豊富だと思うし一緒に彼女の分析とか手伝ってあげてもいいよ?」

「な、それのどこが良い考えだ! それでは私はどうすれば良い」

 

 あたしの話を最後まで聞かず箒が早とちりで声を荒げる。そんな箒に向かってあたしは人差し指をピンっと立てる。

  

 

「だから、実戦的なところはそっちが受け持てばいいのさ、どうせあたしじゃ〝剣術は〟無理だろうしね」

「つまり、俺は箒から実戦的な事を秋穂から、っていうか秋穂と一緒にセシリアを分析するってことか」

「そうそう、こう見えて分析は得意なんだよ? 適材適所、然るべきところに然るべき人材を配置する。何事においても基本中の基本だね」

「なるほど確かに私は、それほど分析に富むわけではないしな。確かに良い案かもしれん」

「1週間しかないからね、効率的にやんないと。とりあえず今日は、剣道着に着替えちゃってるしこのまま箒さんがやりなよ、明日あたしとセシリアさんの分析をやろう」

「そうだな。よろしく頼むぜ」

「うん」

 

 

 

 あたしは笑顔で一夏に返すと、道場を後にする。ふふッ、ま、せいぜい強くなってちょうだいな♪

 

 あたしは2人に見えないようにほくそ笑むと、さっそくセシリアの映像を見るべくライブラリが貯蔵されているであろうIS学園の視聴覚室へと向かった。

 

 

 

 

 

「はい、では学生証をお預かりしますね。これが視聴覚用のヘッドフォンとその他機材です。終わったらまたここへ返しに来てくださいね」

「ありがとうございます」

 

 

 あたしは視聴覚室の管理人から機材を受け取ると適当なモニターの前に腰掛ける。手には先ほど機材と一緒に視聴手続きをしてきたDVDが数ケース握られている。

 IS学園には生徒がIS実習の参考になるようにと各国の候補生や代表たちの模擬戦やマニューバ、基礎機動等がまとめられ映像データが貯蔵されている。あたしが持ってきた物は、去年とIS学園入学の半年前に欧州で行われた候補生を交えた合同IS演習のDVD。その模擬戦のプログラムの中にセシリア・オルコットの名前がちゃんとあった。去年はともかくとしても、直近の半月前のデータがあった事は嬉しい誤算ではあった。

 

 

「さて、それでは。見させていただきましょうかね、セシリア・オルコットの実力ってのを」

 

 

 あたしは1人ごちると、チャプターでセシリアの戦闘のみを選択し視聴を開始する。今回の映像はセシリアと、イタリアの候補生の模擬戦の映像だった。相手はイタリアのテンぺスタ型。この機体秀でた特徴は無いにしても全体的にバランスのとれたオールランダーなISだ。さて、どうでるかな、彼女(セシリア)は?

 

 

 あたしは、映像を見ながら気が付いたところをメモしながら何度も同じシーンを繰り返し見直す。そうしているうちに気が付けばすっかり窓の外は暗くなってしまっていた。

 

 

 部屋に帰ってきて、あたしはパーテーションの向こう自分のベッドのセシリアから死角になっている所で今日見つけたセシリアの特徴を再考察する。

 

 はっきり言うと、あたしは、かなり彼女をなめていた。確かにあれだけの大口をたたくだけの事はある。間違いなくエリートだ。セシリアの機体〝ブルー・ティアーズ〟は射撃特化型のIS。接近されれば基本的に打つ手はない。だが、セシリアはまず相手をクロスレンジの間合いに入れず、尚且つ自分が攻撃出来る距離を正確に図ってくる。つまりは空間認識能力、これがずば抜けて高い証拠だ。

 

 

 

 しかし、あの映像を見る限りでは、やはり脅威となるのは〝クロスレンジへの間合いに相手が一度も入れなかった〟ということに尽きる。なぜならばあたしもそのクロスレンジが一番得意な距離だからだ。巧みなビットコントロールそして全ての攻撃に意味を持たせ相手の動きをコントロールする知的さ。隙がない。それがあたしの感想だった。

 

 

 あたしはまとめた紙をベッドに置きパーテーション越しにチラッとセシリアを一瞥する。

 セシリアは風呂上がりで濡れた髪をドライヤーで丁寧に乾かしている最中だった。容姿端麗で実力もある。後は性格だよねぇ…

 

 あたしは視線を戻すとベッドへ横たわる。ぼんやりと見つめる天井。しっかりと見ていなかったためだろう、天井が妙にかすんで見えた。だがその時のあたしにはセシリアの実力を知ってしまったからだろうか、よくは分からなかったがえもいわれぬ不安が目の前をかすめさせているように思えて仕方がなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 一夏達とセシリア戦の特訓を行っていたある日の授業中とんでもない事を耳にした。それは……

 

「織斑、今度行われる模擬戦なんだがISの準備がかなり難航しそうでな」

「え、そうなんですか?」

「なにぶん急な事ではあるし、何より男性操縦者だからな。学園で1機ISを用意することになりそうだ」

「それって…専用機ってことですかッ!?」

 

 

 クラス全体が、千冬の話に大きく揺れる。当然だろう。専用機とはそれほどの物なのだから。しかしだ。

 

 

 ここで少し疑問が残る。それはいくら一夏が男性操縦者だからといってもそんなに簡単に専用機の許可が下りるのかということだ。ISは絶対数が決まっている。装甲の付け替えで別のISにする事は出来るが、コアを作れるのは篠ノ之 束のみ。つまり新規ではISを増産する事が出来ない。467機という数は数字だけ見れば相当なものだろうが世界的見れば圧倒的に数不足。そんなISのコアをいくら世界各国からIS操縦者を集め育成する唯一の機関であるIS学園といえども簡単に確保できるとは到底思えなかった。

 

 

 なんか、裏がありそうだよねぇ。

 

 あたしは、ざわめく教室の中織斑先生を眉をひそめながら見つめていた。

 

 

 更に今日はそれだけでは無かった。専用機関係の話の流れでISその物の話につながり、その結果ISの開発者である篠ノ之 束と篠ノ之 箒が姉妹だという事が発覚したからだ。最もあたしとしては、今更かとも思ったけどよくよく思い出してみると自分もつい最近だったなと苦笑い。

 

 しかし、そのことで箒が声を荒げた物だから、空気としてはどうにも気まずくなってしまったのだが。

 

 

 やっぱ、どこの姉妹も色々と問題は抱えているようだね。ま、それはあたしは言えないか。あたしはそこで考えるのを辞め再開していく授業に集中する。妙なことで目を付けられるのも面倒くさいし、学生の本分を全うする事としよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌週、いよいよセシリアとの模擬戦の日がやってきた。ちなみに既にマド姉には連絡を入れこの日に模擬戦を行うと伝えてある。

 

 その模擬戦を共に行う彼は箒から実戦を、あたしと一緒にセシリアの事を研究し、その顔はいつになく自信に満ち溢れていた。少なくとも戦闘になればこれらの特訓は成果としてそして彼自身の実力として現れるはずだ。分析を始めた時、一夏は素人も同然だった。別にそれは仕方のない事なのであたしも特に何を言うようなこともしなかった。

 

 

 だが、分析を始めて3日目。あたしは一夏の変化に驚きを隠せなった。それは分析に臨む姿勢もさることながら、スポンジの様に何でもかんでもを吸収しそれを自分の糧にしていた事だった。そもそも箒が言っていた様に彼は基本スペックが低いというわけではない。あたしは剣道の事は良く分からないが、勝負事において勝つという事は並大抵のことではないはずだ。つまり彼は何も出来ないほどに弱いというわけではなく、元々それなりの実力があってそこから弱くなってしまっただけなのだ。つまり強くなるための自分なりのノウハウをしっかりと持っていた。

 

 

 そして分析最終日には、自分でどうやって戦えばいいのか頭の中でそれなりにシュミレートする事まで可能となっていたのだから、もはやその成長速度には驚きを通り越してあきれると言う言葉ぐらいしか思い浮かばなかった。

 

 

 ただ、全く問題がないというわけではない。問題がなかったのは事前準備の段階での話。問題はむしろ今にある。

 

 

 

「まだ来ないのかぁ? 俺のISは…」

「連絡は入ってないしね」

「もうそろそろ時間だろう……このままでは不戦敗だぞ」

「そう言われてもなぁ…」

 

 

 そう、一夏のISが来ないのだ。ちなみにあたしが今回使う〝打鉄〟は既に調整も終えてピットで出番を待っている状態だった。あたし達はいつISが来てもいいようにピットで待てと織斑先生に言われずっと待っているのだが、それ以降連絡も何もない。

 

 これは何か? 新手の嫌がらせなのだろうか。実はISは来なくて、なのにそれを待ち続けるあたし達を見て画面越しに笑ってんだろうか?

 そんな予感が頭をよぎった時、ピットの入口から慌ただしく2つの影が入ってきた。

 

 

「織斑君ッ!」

「あ、山田先生…と千冬姉」

「はぁはぁ、織斑先生と呼べ馬鹿もの……はぁッ」

 

 織斑先生は珍しく肩で息をし、軽く出席簿の表紙で一夏を叩いた。しかし、教師陣がここまで慌てているという事は何かしらアクションがあったのだろう。

 

 そしてその予想は正しく、山田先生が素早くコンソールを叩きピットの搬入口を開ける。するとそこから大きなコンテナがベルトコンベアに乗って運び込まれる。

 

「織斑、すぐに準備しろ。今日は東雲の分と合わせて二試合もあるから予定が厳しい。フォーマット・フィッティングは実戦の中で行え、それぐらいはできるな」

 

 いきなりの事で、状況把握に時間のかかった一夏だったがすぐに、力強く頷く。それを見た織斑先生がコンテナハッチを解放した。

 

 

 

「こ、これは…」

 

 そのコンテナから姿を現したISを一言で表すとするならば白。汚れさえもしらぬ正義の色。まぶしい程の白を携えて、ただそこで装甲を解放し搭乗者を待ち座していた。

 

「これが織斑君のISその名を〝白式〟です」

「びゃく……しき……」

「驚くのは後にしろ、織斑。時間がないと言ったはずだッ」

「わ、分かったよ」

「篠ノ之、東雲もフィッティングを手伝ってくれ」

「あ、はいッ」

「分かりました」

 

 

 織斑先生に促され、一夏のフィッティングと各種プログラムの立ち上げを手伝う。いくら専用機といってもISはIS基本的な設定はそれほど大きく変わらない。マド姉やオータムさん、スコールさんにあらかた叩き込まれているから、戦闘はともかくこの位の立ち上げは造作も無かった。

 

 

「スラスター展開に伴う反トルク制御全自動(オートクルーズ)、飛行モーメント制御セミマニュアル、システムプロセス必要最低限をカットとバックグラウンド進行…」

「お前、何処でそんな知識を?」

「姉が、IS関係の仕事な物で」

「……そうか、助かる」

 

 

 

 織斑先生の謝意は、本心からの物なのだろう。やはり彼女にとって一夏は大切なのだ。自分達の親よりも。

 

 しかし今それを思っても何にもならない。あたしは、織斑先生を一瞥してから一夏を送り出すためにひたすら指を動かし続けた。

 

 

 ほどなくしてIS側の受け入れ態勢が整い、ISスーツに着替えた一夏がISに乗り込む。専用機を持っていなくとも乗り込む際の注意点などは箒であっても充分に説明できた。 その説明を聞きながら慎重に一夏はISに身をゆだねていく。

 

 

 そしてパシュパシュッ空気が抜ける様な音がして、装甲が閉じ一夏がゆっくりと立ち上がる。一夏は感覚を確かめるように、手や足先を動かす。

 

「どうだ、正常か? 一夏?」

「……あぁ、大丈夫」

「そうか」

 

 

 一夏を織斑先生が名前で呼ぶ。この瞬間だけは姉弟としてただ純粋に弟を心配している。それがあたしには兄弟関係としては妙にいびつに見えてしまった。

姉妹とはそして姉弟もだが、何処にいてもそれは変わらない。公私混同をしろというわけではないにしても学生教師という関係とその姉弟の関係を少し分けて考えるというのはあたしにしてみればどこか気持ち悪い。

 

 

 しかしあたしの気持など今は全く関係ない。今は模擬戦だ。〝白式〟がピットのカタパルトへ足を固定させる。

 勝負に向かう、一夏の顔は真剣そのもの。あたし達はそれぞれ一夏に声をかける。

 

 

「あの分析と、箒さんの特訓思い出して」

「あぁ」

「一夏、絶対に勝ってこい。クラス代表が嫌だとか言う理由で負けたら……分かってるだろうな?」

「ははッ、実際嫌は嫌だけどさ。やっぱ勝負事はまけたくねぇし」

「……織……いや一夏」

「うん」

「頑張ってこい」

「行ってくる。そして勝ってくるよッ!」

 

 

 

 良い終わるが早いか、カタパルトの気密シャッターが閉まりあたし達と一夏を隔離する。そしてほどなくして一夏をカタパルトが撃ち出していった。

 

 

 

 

 あたしは、皆同様ピットのモニターをジッと凝視する。それは自分がセシリアに勝つための観察でもあるしそして何より一夏がここまででどれほど強くなったのかを確認するためでもあった。

 

 

 

 

 

 モニターの向こうで一夏とセシリアが対峙する。

 

 

 

 

 

 いよいよ両雄が雌雄を決する時である。




こんにちは、のろいうさぎです。
感想で、非常に参考になるご意見を頂きました。
書かれた方へ心よりお礼申し曲げます。
今後の作品造りやその他いろいろな所で参考にさせていただきます。



さて物語りはセシリア戦へ突入です。

一夏vsセシリアは書きますがそこまでしっかりと描写はしません。
結果は原作と同じです(ネタバレでもないですが)

そう言えばISの続編書かれているみたいですね。
今度はどうなんでしょうか、まぁ作品自体は楽しみでありますが…

ではまた5話でお会いしましょう。

最後までお読みくださいましてありがとうございました。

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