とある風来の多重恋愛(デュアルラブ)   作:黒亜

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学園都市の裏で暗躍する組織の一つ。

主に学園都市の闇の部分に触れた業務を行う、公には決して現れない日常から

はかけ離れた血に染まった極秘集団…………のはずなのだが、

 

 

「超帰りましたー」

 

「ったく、帰りのバイクでも思う存分暴れやがって……」

 

「お帰り、きぬはた、きりたに」

 

 

真っ先にアイテムの隠れ家に帰ってきた俺たち二人を素直に迎えてくれたこの

少女はアイテムの構成員の一人、滝壺理后。

ぼーっとした表情にどこを見ているのか判断しかねるような瞳と、肩くらいま

で伸びた黒髪、ピンクのジャージが特徴の彼女はこの組織の中でも一番の温厚

派である。

 

 

「結局、今日もデートしてたってことよねー」

 

 

こちらを不満げに見上げ、的確に言い当ててくるこの少女は同じくアイテムの

メンバーの一人、フレンダ。

どこかエキゾチシズムな雰囲気漂う金髪碧眼で、絹旗に負けず劣らずの小柄な

体躯といわゆる男子受けする可愛らしさでひときわ目立つ少女。

 

 

「ほんと仲いいわよね、あんたら。私の目の前とかでいちゃつきだしたら、ブ

ッ飛ばすから」

 

 

この物騒なことを言い放ち、その言葉を実現できる実力を備えているこの女こ

そアイテムのリーダー、麦野沈利。

何を隠そう、この学園都市の頂点に君臨する7人の超能力者(レベル5)のうちの第4位。

ロングの茶髪を揺らし、リーダーらしく一番大人びた容姿を備えている。

 

 

「何言ってるのよ、結局麦野も霧谷には歯が立たないくせに……」

 

「はーん?フレンダ、霧谷よりあんたのほうが一度教育が必要みたいね」

 

「結局、とんだとばっちりって訳よ!」

 

 

フレンダはがたんと立ち上がり、部屋のソファの周りを逃げ回る。

麦野は邪悪な笑みを浮かべてそれを追いかけまわしていた。

ごく普通のいつもの光景だ。

 

 

「大丈夫、麦野に反対されても、私はそんな二人を応援している」

 

「超残念ながらこの男はそんな滝壺もしっかり狙ってますから」

 

「そうなの、きりたに?」

 

「だって可愛いんだもん、滝壺」

 

「ほら、霧谷は超見境ない変態ですから」

 

「…………別に私は構わない」

 

「は?」

 

 

そんな三人の会話の横でも、まだまだフレンダと麦野の追いかけっこは続いて

いた。

……もっともフレンダからすれば、そんな生易しい表現で済ませられることで

はないのだろうが、自分の身の安全に関わる重要案件だ。

 

 

「ちょろちょろ逃げ回んなぁ!フレンダ!」

 

「結局そんな形相で追いかけられて、素直に止まれないって訳よ!」

 

「ほら、麦野。そこら辺にしといてあげなっての」

 

 

追いかけっこ途中の麦野とフレンダの間に立ち、道をふさぐ。

 

 

「霧谷っ!!」

 

 

瞳をキラキラさせたフレンダが勢いのままに背中に抱きついてくる。

盾代わりの背中から顔をちらっと出し、対する麦野の様子をうかがっている。

 

 

「結局麦野の強襲から私を守ってくれる霧谷、大好き!」

 

「なーに邪魔してくれてんだよ、霧谷。そこをどきな」

 

「へー、麦のん。俺にそんな口利いていいんだー?」

 

「何を……ふぁっ!?」

 

 

予告なしに麦野の胸をつかみ、そのまま優しく揉む。

 

 

「ほらほら、さっきまでの威勢はどうしたー?」

 

「なっ……ちょ、こら……ぁ……ゃめ、……ろ……」

 

「……あればっかりは超仕方ありませんよね」

 

「約束だもんね」

 

 

滝壺の言う約束とは、霧谷が麦野を負かした後に自分の敗北を認められなかっ

た麦野がリベンジを申し込んだ時のものだ。

無駄な戦いをするメリットがないと断る霧谷に麦野は

 

 

『いいわ、私に勝ったら胸でもなんでも触らしてあげるわよ』

 

『よし、じゃあそれで』

 

 

などという約束を取りつけて勝負をしてしまったのだ。

言うまでもなく勝負は霧谷の二度目の勝利で終わった。

 

 

「こればっかりは麦野が悪いので、霧谷を痴漢とも超責められませんし」

 

 

絹旗の当初の見解では“霧谷のような超変態とそんな約束をしたら、四六時中

胸を触られる”と予測されていたが、意外にも霧谷が積極的に麦野の胸を揉み

にいったりすることはなく、今回のような小さい争い事や麦野の暴走に際して

その権利を行使するくらいだったので、文句のつけようもないのだ。

むしろ、頼れるが少々キレやすい麦野の良きストッパーの役目となっていた。

 

 

「私もむぎのが本気で嫌がってたら止めると思う。でも、私にはそう見えない」

 

 

滝壺の言ったことに絹旗も同意見だった。

いくら約束とはいえ、自分の胸をそう易々と男に触らせられるものではない。

それこそ麦野の性格なら先刻の口約束など知ったことかと、相手を殺す勢いで

抵抗しそうなものだ。

 

 

「これでちょっとはクールダウンできたでしょ?」

 

「はぁ……っはぁ……」

 

「結局霧谷は頼りになるのよね」

 

 

いつの間にか肩までのぼってきたフレンダが、膝から崩れ落ちた麦野を見下ろ

して安堵する。

 

 

「ここの雰囲気も超変わっちまいましたね」

 

「うん、きりたにが来てから」

 

 

これが汚い仕事を山ほどこなしてきた組織の今の日常だった。




一気にアイテムメンバーを登場させられました!
初期好感度どうしようかなと迷いましたが、
こんな感じに落ち着きました
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