魔導騎士になりたくて 作:クー
僕は今まで通り、いや、それ以上に強くなるために厳しい訓練を毎日行なうようになった。
そして一人だけの訓練ではなく、班での連携の訓練などより力を入れるようになった。
僕達は一人じゃない、皆でもっと上を目指すんだって気づかされた。兄貴は直接教えるのではなく気づかせる機会を与え続けてくれた。ほんと凄い人だよ、兄貴は。
もうすぐ夏期休業となるそんな時、夏期休業の前の注意ごとの説明がされていた。夏期休業だけに、皆落ち着かない様子だった。
計画的に使わないとな、息抜きもたまには必要だし。そう思っていると遠くで大きな爆発音がした。コロシアムで実技でもしているのか?そう思っていると警報が鳴る。
「皆、早急に避難だ。地下避難所に!走らず迅速に!高等部は防衛にあたれ、これは訓練ではない!繰り返す、これは訓練ではない!」
皆がそわそわし始める、それはそうだ。実戦なんて初めてなのだ、こんなことが過去にもあったのだろうか。
僕達は体育館に移動しようと外にでると、竜型の魔物の攻撃を受ける。
「やるわよ、ヴィルヘイム君!」
「でも、無理だ。あんなの大きすぎる。僕達には!」
「そうは言ってられないわ、皆が避難し終わるか応援がくるまで応戦しないと。」
「...わかった!魔装展開ッ!」
「待て、お前らだけじゃ無理だ。」
振り返ると奴がいた、ベルザーグだ。
「ヘッ...まさかこんな化け物がくるなんてな。おもしれぇ...ぶっ殺してやる。」
そう言うと、竜型は森のほうへと飛んでいく。
「よかった、私たちも避難を。」
「待て、あのまま放っておけば学園どころか街が危ないぞ。」
「兄貴...!」
「先輩、でも私たちじゃ...」
「手はある...まず目を破壊し再生する前に核をぶっ壊す。いけるはずだ、俺達なら。」
「ちっ...獣型まで。どうする、俺達で勝てるか。」
「ここは俺に任せろ、オイ先生、ちっと手貸してくれるか?」
「え、ええ...元からそのつもりですが危ないと思ったら君は避難するんですよ?」
「ヘッ、俺を何だと思ってんだ...学年一位だぞクソッタレ!オラ、さっさと行きやがれてめえならやれる、俺のライバルなんだからよ。」
「う、うん。わかった、でも無理しないでね。」
「ちっ...うっぜぇな本当に。さぁて、どいつから殺されてえか?」
僕達は森の方へ走り、竜の向かった方向に向かう。森の中では視界が悪い分僕達は不利だろう。
「いいや、ここで隠密に行動して一気に叩く。レイス、君の役割は目の破壊。それから俺とヴィルで核の破壊をする。」
「わかった、やってみる。」
「ええ、任せて。」
その時、竜の咆哮が聞こえその方角へと向かう。
「よし、いくぞ!」
レイスは目に向かって矢を放つが外れてしまう。いいや、あれはレイスが外したんじゃない、読んでいたんだ奴は。
竜の咆哮が鳴り響いたと思えば竜は炎を吐く。
「いい度胸だな、俺と炎で勝負とは。いくぜ...!」
兄貴は鎌で竜の翼を傷つける、地上でやり合うつもりなのだろう。飛ばれるとそれだけ僕達が不利だ。
「よし、僕もやらないと。」
僕は距離をとると、魔術で目を狙う。しかし、あと少しで竜はそれをかわす。なんでだ、読まれているのか?
「ちっ...こうなったら直接やるしかないな。このままだと時間の問題だ。」
「君たち、さっさと避難しなさい!ここは俺達が。」
高等部の生徒なのだろう、数人が背後から魔術を唱える。どうやら第五魔術を使う人もいるらしい。
「俺達がきたからにはもう平気だ。中等部のひよっ子達にはきつすぎるからな。」
複数の魔術が竜に命中する、竜は悲鳴をあげるかのように吠えるが効果としてはあまり無さそうだ。
「ちっ...どんだけ化け物なんだよクソッタレ。」
「もう一度行くぞ...!なっ、うわぁぁぁ!?」
竜は空から雷光を放ち、先輩方はやられてしまう。あいつ、炎だけじゃないのか。どんだけ化け物なんだ。
「ちっ、こうなったら避難するしかない。」
「そんな、ここまできて。」
「見ただろ!奴は普通じゃない、俺達の知ってる魔物の域を超えている。第五次魔術、これが扱えるという事は王国の魔導騎士の中でもまあまあいい階級にいられるはずだ。それだけ難しく強力な魔術だ、それを受けてもあの状態...やばすぎる、使える人間が全くいないような第七次魔術レベルじゃないと通用しないんじゃないか?逃げるぞ!とにかくやばすぎる。王国の魔導騎士に後は任せろ。」
僕達は必死に逃げる、しかし後ろから竜の声が聞こえる。間違いない、僕らを殺すつもりだ。
竜は風を作り、木々を倒す。まずい、木々が倒れて来る。
「レイス!」
「きゃっ!」
僕は咄嗟にレイスを庇うように飛び出し、レイスの頭を手で抑えつつ地面に倒す。僕は上になり木から彼女を守るような態勢をとった、目をつぶっていると木の重さはない。
「大丈夫か、だが今の判断は正しかった。流石だな、とも言ってられないか。」
そう兄貴が微笑みかけると少し安心出来た、しかしその安心は一瞬で崩れる。
「っ!危ない!ヴィルヘイム!」
「えっ...?」
竜は先回りし、僕に向けて牙を向けた。駄目だ、僕はここまでか...?ここで終わるのか?また魔物に全てを奪われて...でも、彼女が無事ならそれでいいか。誰かを守れるならそれで...。僕は目を閉じた。
「っ...ったく...何してん...だよ。」
目を開けると信じられない光景が目に入る。
なんで、何してんだよ兄貴!こんなことする意味...!
「馬鹿が...今の内に貫け...!この距離なら竜の頭ごと吹き飛ばせるだろ...」
「そんな、できないよ!」
「いいからやれ!もう今しかない...!ここで躊躇したらもっと、もっと多くの人が死ぬんだぞ!多くの人が苦しみ悲しむんだぞ...!だからさ、お前はこいつを倒して...立派な騎士になれ...いいからやれ!」
「うああああああああっ!第三魔術...風刺穿突『エアロ・ストライク』」
僕は第三魔術を放ち、兄貴ごと吹き飛ばした。あの感覚が手に伝わる。
「ははっ...第三魔術...か...。成長したな...ヴィル、お前といれて...しかった...。」
嫌だ...嫌だ、なんでこんなことになるんだよ。
「嫌...嫌ぁ...先輩!ヴィル!はやく救護を...」
「無理だよ...もう、どうしようも...」
「何で諦めるのよ!諦めるなんて。」
「どうしようもないことなんだよもう!助からない...出血多量...助かっても生活に苦しむ、楽...させてあげよう。もう...」
「ィル...ヴィル...。」
「何...?もう喋ったら駄目だよ、もっと辛くなるだけだから...!」
「いいか...?お前は強いよ、誰かの為に強くなれる才能がある。誰かの為に壁を超えれる才能がある。さっきだってそうだった...」
「そんな、僕は何も出来ないよ!」
「だから...最期にこれを...」
兄貴は手を握ると僕の中に力が流れて来る...魔術...か...?
そうしていると僕は意識を失ってしまう。
「臨時理事長より、ヴィルヘイム=E=アインシュベルンに5年の停学処置を言い渡す。」
「えっ...そんな...」
保健室から家に戻りドロシアさんに訳を聞いた。
「ごめんなさい、今の私の権力じゃ、減らすことしかできなかったわ。1年の短縮しか...。」
「いいえ、いいんです。あと、この5年僕は旅に出ます。ターニャ、元気でね?」
「え...お兄ちゃんどうしたの?」
「少し、強くなってくるから。皆を守るために...。だから...。」
こうして僕は荷物をまとめた、あの感触が蘇る。
「っ...!」
トイレで僕は吐いた、僕がいけなかったんだ。もっと強ければ誰も犠牲にならなかった。だから...僕はもっと強くなる。
こうして朝早くに、皆を起こさないように家を後にした。
第一部終わりました。とても見辛くわかり辛かったと思いますが読んでくださりありがとうございました。
これからも頑張りますのでよろしくおねがいします。