魔導騎士になりたくて 作:クー
「なんでお前ら逃げないんだ...。」
「そんな、見捨てられる訳...」
「次が来ます...。魔装展開 銀氷姫。」
「やるしかないようだな...壊砕の矛盾。」
「わ、わかりました。や、やるしかないですよね。電刃剣。」
「逃げろバカが!お前らがやり合ってどうにかなる相手じゃ....!」
「うっさいのよ!アンタに決められたくないわ、アンタはただの班員。そんな奴に私の行動を決められる筋合いは...」
まずい、ハウンド型の魔物が走ってくる。視界の端だがわかる。奴らの速度は早くその牙は鋭利で噛み付かれれば重傷になることだってあり、素早いため手強いと知られている。
「エリカ危ない!」
「キャッ...何っ!?」
俺はエリカを突き飛ばし、腕で自身を守った。
「何やってんのよ!そんなことしたらアンタ...どうして私なんかのために!」
「貴様!そんなことしたらどうなるかわかっているのか!」
「フィリア、盾に魔力を注ぎ込み硬化させておけ。」
「わ、わかった...!第三次魔術 鋼盾硬化」
ハウンド型は獲物を逃さないために、何か力が加わると強く噛む癖がある。ならそれを感じる間もなく殺るだけだ...!
俺は一瞬で盾に向かい腕を動かし、衝突させると魔物の頭部を粉砕する。
そして魔装で核を貫き、一体を倒す。
「だが、奴らの数はあまりにも多い。せいぜい20体といったところか。」
「どうしてそんなに!」
「さあな、わからん。だが厄介なことに変わりはない。お前らには多分相手が悪いしまだ基礎段階でしかない。見ておけ。」
「何を言っているのだ!先輩は先ほどの戦いで...」
「ああ、魔力をほぼ使い果たした。」
「そうよ!なんでヴィルヘイムがそこまで...!」
「アンタは確か...」
「レイスよ、ここは私らに任せてはやく逃げて。」
「できない。」
「はぁ?アンタまだそんなことを...」
「俺はもう、何も失いたくない。だから逃げない、俺は戦う。」
「アンタねぇ...まだ私たちのことひよっ子だって思ってるでしょう?ふざけんじゃないわよ!私だってアンタが居なくなってからずっとずっと訓練してきた、アンタ以上にやってきたつもりよ。だからもう弱くない。」
「...何も知らないお前らには魔物について何か語ることができるか?」
「っ!アンタねぇ、私たちは実戦だって行なってきた、大勢の人が死んだわ。でも私は生き残ってきたわ。それが何よ。」
「俺はこの5年で100体はくだらない数を倒してきた、殺してきた。でもそんなんじゃ足りない。世界中から消さなきゃ意味がない。だから俺はもう逃げない、何も失わない世界にするために。」
そうだ、俺はもう逃げちゃいけない。その一瞬の躊躇が全てを失う。
「そうよ...あれを使いなさい。ヴィルヘイム=E=ラッカイネン。私のたった一人の弟子...ふふふっ」
「あれを使わなきゃいけない、仕方がない。失うくらいなら...自分一人の物でいい...覚悟なら、あの時から全てできている!
使ってしまった、あれを。もう止まらない、誰にも止める事は出来ない。瞬時に大きな力を得られる、その代償として自分の中の大きな物を失う。
「ヴィルヘイム君、ここは私たち教師に任せて。」
「いいえ、大丈夫です。すぐに終わらせますから。」
「何を言って...」
「見ていてください先生、これが僕がこの5年で得たものです。」
そして速やかに魔物へと近づく。
「何...あれ...。」
「あんな力がまだ残っていたというのか...。」
「嘘でしょ、アイツ...。」
「ヴィルヘイム君...。」
「す、すごいです!」
俺は魔装の先端の形状を鎌型に変形させ、振り回す。目で捉えられない速度で魔物と交戦し、一体倒しては次へ、その繰り返しをしていく。
たとえ大型でも魔物であることに変わりはなく、ただ破壊し、蹂躙するだけだった。魔物を切り伏せ、地に屈した魔物はただ核を喰い散らかされるだけの存在となっていった。
核を魔装で切り裂き、背後から迫る魔物へと相手を移し、脚部を即座に切断し体勢を崩す。
大抵は魔物の脚部切断などは大きな隙が無かったり素早い魔導騎士でなければ難しい。だが、この速度なら危険ではなく、容易くバターのように切り裂く。魔物を屠り尽くす頃には制限時間がきていた。90秒、これが制限解除ができる制限時間。あらゆる体の制限を全て外す代わりに体への負担や脳への負担はとてつもないものであり、それ故に自分の中の大切なものを失うことになる。
ああ、終わった...今回も終わった。やったよ、全部守りきれた...。
「まさか貴方は、リーシャ=イワノーヴナ=ザラアロフ。」
「ええ、お久しぶりです。深淵の魔女、ドロシア。」
「まさかあの子に
「さあ、私は知らないわ。でも、彼が力を欲したのは事実よ。じゃあね、今日は楽しかったわ。」
「待ちなさいっ!...まさかこんなことになるなんてね。」
起きた時には保健室にいた。そこには皆と風紀委員長がいた。
「目が醒めたか!よかった...全く、心配かけさせおって。」
「あの、その...あの時は...ありがと。アンタのこと誤解してた。だから、今までごめんなさい!」
「ああ、別にいいよ。俺はそれだけのことをしてしまった。それだけの過ちを犯した。だから、君は何も悪くない。」
「でも...。」
「いいんだ、僕はもう何も失わない。皆を危険な目に遭わせない。それだけの力を僕はもう持っている。」
「そうだ、さっきの貴様の能力は。」
「...?さっきの能力?」
「お前、覚えてないのか...?まあいい、思い出したら話してくれ。それと、風紀委員を代表して謝罪させてもらう。すまなかった!そして...もしよければ私の友達になってくれないか?」
そう言うと携帯の識別コードを送ってきた。
「ああ、いいよ。」
すると、保健室の扉が開かれる音がした。そこに目をやると
「か...会長!」
「アルティア、ご苦労だった。そしてそこのヴィルヘイム...と言ったかな?」
「はい。」
「今回の件での活躍、見事だった。おかげで被害は最小限、怪我人は居ない。感謝する、そして貴方に渡すべき物がある。」
そして彼女はポケットから紙を出し渡す。
「な...校内戦で優勝できなければ...199の班員を退学...!?」
「そうだ、何故こうなっているかは知らんが。連帯責任ということらしい。」
「ま、待ってください!」
俺は生徒会長の服の袖を掴む、すると。
「貴様ァ!会長に穢らわしい手で触れるな!」
いきなり殴られるがそれを俺は受け止める。
「あんた...生徒会副会長のギルフォード=シルバーロードだっけか?」
「ああ、貴様のような屑は心底嫌いでね。」
「全く...どんだけ会長に溺愛してるんだか。」
「少しひきますわ...。」
「辞めなさい、ギルフォード。例え貴方であってもこれ以上は許しません。」
「っ...!わかりました...。あと、この件ですが学園長でも阻止できなかった。とだけは言っておきます。」
すると耳元でこう呟かれる。
「この学園には危機が迫っています。あまり深入りはしない方がよろしいかと。」
この学園の危機...?何があったんだ。そして何故199の班員が全員退学に。何かがある、何かの陰謀がこの学園に潜んでいる。
「わかりました、受けて立ちます、絶対に優勝します。いいや、しなければいけません。」
「そうですか、では当然決勝では私たちと当たる事になるでしょう。生徒会長、副会長、書記長、会計長、風紀長。私達、第100班とです。」