魔導騎士になりたくて 作:クー
「あまりにも横暴すぎます!確かに彼はケイズを助ける事はできなかったでしょう、しかし今の彼はもう強くなっています。もしかしたら彼を超えることだって...。」
「だとしても、貴重な人材を葬った存在だということに変わりはない。違いますか?」
「ですが...。だからといって退学処分、それも全員だなんて。」
「それが責任、というものですよ。私は確かに停学で様子を見ました、それで心が折れるかと思いまして。しかし、予想外でしたね。」
「...っ、失礼します。」
ドロシアは理事長と話を試みたが状況は変わらなかった。
「父さん、本当に今すぐやらなくていいんですか?」
「何、どうせ負けるさ。学園一位の生徒会長クリスティナ=ローゼンバーグ。別名、氷薔薇の騎士。学園三位の副会長ギルフォード=シルバーロード。別名、激流の魔槍士。学園五位の会計長リヒテンダー=ロッテンブルグ。別名、炎魔の破壊要塞。学園六位の風紀委員長アルティア=レオンハート。別名、雷鳴の獅子。そして七位の書記長アリサ=ロックライン。別名、双弾の狩人。この五人が集まった生徒会と決勝では戦うのだ。どうせ負けるに決まっている。落ちこぼれ共には届かない領域にいる。」
「しかし、父さん。奴は六位に勝利しました。」
「だが、ギリギリ...だろ?チーム戦となれば当然彼以外が足をひっぱる。つまり勝機なんてどこにもないのさ。悲しいことにやる前から全てきまっている。お前にも見えるだろ?未来が。」
「ええ、見えます。まあ、楽しめる試合ならいいですね。」
「よし、残り二週間だがこれから仕上げにむけてのテストをしてやる。」
「い、いきなりですか?そ、そんな無理ですって!」
「何、不安がることはない。私たちが今までしてきたことを発揮すればよいだけのこと。そうだな?ヴィルヘイム先輩。」
「ああ、そうだ。お前も怖がることはないオルクス。今までやってきたことをすればいいだけだ。」
「そ、そうでしょうか?や、やってみます!」
「エリカ、お前は魔装展開ができれば合格だ。」
「はぁ!?アンタ私のことなめてるわけ?」
「いいや、それだけの実力があると思ってのことだ。魔装展開できればお前はおそらく学年内ではトップ3入りは間違いない。それだけの実力があるんだ。自信を持て。」
「で、でも...私にそんなこと。」
「...大丈夫、今まで練習した通りにすればいいだけのこと。」
「シルル先輩!ありがとうございます。やってみます。」
エリカは魔装展開ができればかなり強力な戦力になる、遠距離サポート型ではなく、近距離で攻撃的な戦い方で相手を圧倒するレベルになるだろう。だが、何故彼女が魔装展開できないのだろう。
そう思っていたがある時、フィリアから聞いた。中等部時代に授業で魔装展開を行なった時、暴走したのがトラウマで展開できなくなったと。
しかし、今の彼女は訓練や経験を積み魔力制御もできる。だから今ならいける。
「じゃあ、始めるぞ。三人まとめてかかってこい。
「私だって二ヶ月間ただ訓練していた訳ではない...!やるぞ。」
「ぼ、僕だって...できるんだ。一撃くらい当ててやる。」
「いいや、一撃じゃ駄目よ。倒す気でいかないと。」
「そうだ、その意気だ。魔装展開。」
俺は神殺しを展開し、棒立ちする。さてと、どう出るかな。
エリカだけは魔装を展開しようとするが手が震えてできなかった。
「なんでよ...動いてよ私の腕、動きなさいよ!」
「今のお前ならできる。信じろ、進まなきゃ得られないものだってある。」
「アンタに、アンタに何がわかるのよ!」
「わかるよ...自分の過ちで人を傷つけて居場所を失った辛さ。お前が感じてる痛いはわからない、それはお前自身じゃないからな。だが...さっき言った痛みだけは解る。」
「...知らないわよ、どうなっても!魔装展開、
エリカは魔装を展開すると、周囲に荒々しく黒炎が上がる。嫌な予感がする、とても危険な匂いだ。今までに磨きあげられた感覚が俺の脳に危険信号を送る。
「フィリア!オルクス!シルル!お前らは下がってろ!こいつはヤバすぎる。」
「しかし...!そんなことすれば。」
「そ、そうだよ先輩は...。」
「俺はエリカを止める。班長としての責任だ。」
「...さあ二人は。」
「しかし...!」
明らかに彼女は何かに操られている。あの魔装か?おそらくそうだろう。
「止まって、お願い、言う事聞きなさいよ!」
魔装はエリカを操っているかのように、周囲に炎を上げながら勢いを強める。
「このままじゃ被害が出るのも時間の問題だ、やるしかない。魔術、翠燕!」
おそらく彼女の持つ魔装は特別な能力を持つ魔装の一種。俺の神殺しもその一部だろう。制御が特別難しく、暴走する場合だってある。
俺は地面と水平に振り起こした風、翠燕に入り、急接近する。
「もういい!やめて、私のことはもういいから...!死んじゃう、ヴィル先輩死んじゃう!」
「初めて名前で呼ばれたな...。だが、できないな。」
「どうして!私がお兄ちゃんの妹だから?」
「いいや、確かに俺にも罪を感じてる部分はある...だけど、俺がお前を救いたいのは俺がこの第199班の班長だから!そして、もう誰も失いたくないからだ。」
「...ごめん、なさい...!」
魔剣は俺に向かって振りかざされ、周囲も炎で覆い尽くされる。
だけど、今の俺なら突破口が見えるはずだ。
「やるか...
俺の目には今、進むべき道が見える。突破口だ、代わりに嗅覚と聴覚の機能を全て停止している。これは脳への負担が大きすぎるからな。
翠燕は俺と一体化した風のようなもので、俺の動きについて来てくれる。
俺は突破口から炎を抜け、エリカの背後に回り込み衝撃を加えて気絶させる。
当然闘技場は黒く焦げた部分もあり、損害を受けた。修復まで時間がかかりそうだな。
音を聞きつけたのか、例の風紀委員がくる。
「何事だ!...と思えば貴様らか。今度は何だ?」
「すまない、でも今は一刻を争う。エリカを保健室に運んでくれ。」
「な、何だ...?」
「話は後だ。」
俺が思った以上に事態は深刻だったみたいだな。どうするべきだ、これから。