魔導騎士になりたくて 作:クー
校内戦前夜でのこと、俺達199班は家で食事をすることになった。
「貴方達は確かに魔導騎士としてのランクは比較的低いメンバーで構成されているわ、でも貴方達はとてもバランスのいい班構成になっていると私は思うの。」
「それってどういうことですか?お母さん。」
そういえばターニャは109班のメンバーだったか。なるべく最後の方で戦いたいかな、まあそれまで俺達が残っていればの話だが。
「班長のヴィルヘイムはもう私たちが教える範囲を超えた知識量や他よりも多い経験、そして第七次魔術まで容易に扱える実力。シルルティアちゃんはおそらくこの中でヴィルヘイムに最も近い実力者で精密射撃と鋭い観察能力を持ってるから良いサポーターよ。エリカちゃんは1年の中での実力はトップクラス、ただ...魔装の扱いが難しいことが難点かしら。私としてもどうして貴女の魔装がここまで難解な魔術回路を持っているか調べたいところかしら。オルクス君は話では最近、段々と戦闘についての動きがわかってきたんじゃないかしら?相手の攻撃をカウンターしたり素早い動きで相手を翻弄、または撹乱して状況を混乱させることができる。その間に確実に人数を減らしていくということもできそうよね。フィリアちゃんは守りながら力強い攻撃で相手を押していく感じかしら、でもスピードは欲しいわよね。」
「そのことなのですが母さん、フィリアは瞬発力、つまり地面を蹴る力があるのでそれを利用して素早い移動ができると思うのですがこれを上手く利用できないかと思って。」
「そうねぇ...。あの重装備で素早い動きができればそれは心強いわね。でも、男性であれば容易かもしれないけれど。」
「体つきの違い、というやつですか。」
「フィリアはよく研究しているんだな。」
「はい、私だってエルディシアの人間のつもりですから...。」
彼女が俯く、やはりそれだけ家の名前が重荷になっているのだろうか。
「ま、まあそんなことよりさっさと食べましょ!ほら、冷めちゃうじゃない。」
エリカは雰囲気を察したのか飯を食べるように促した、なんだかんだ言って雰囲気を感じ取り他人を気遣える子なんだろうな。だけどそれだけ彼女は相手に弱みを見せない、弱みを見せれば他人に迷惑や心配をかけるからだろう。そして、あの人の死が大きな影響を与えているんだろう、僕も同じだ。
食事が終わり、全員を家まで送り最後にシルルを寮まで送る。
「そういえばシルルってさ、なんだか俺に対してだけ妙に気を許してるよな。」
「うん...。」
「他の人には全く離さないというか、俺以外だとツバキだけか。」
「入学してすぐに話かけてくれたり、色々助けてくれたから。」
「そっか、それじゃあ俺は?」
「貴方からは優しいオーラが見えるから。」
「な、なんだそりゃ。」
「こういうのって言葉じゃ言い表せることができないというか...、雰囲気がそうだから。」
「まあ、それはありがたく思うけど。雰囲気だけで人を判断するのは危ないぞ、腐った人間ならいくらでも見てきてる。気をつけるんだぞ?何しろシルルって放っておけないというか...。」
「ん...?」
「いや、何でも無い。」
そりゃあそうだ、こんな小さくていかにも触れば折れてしまいそうな女の子だ。何故だか、放っておけない。そんな気がした、お人好しだな俺も。
明日はとうとう校内戦、負ければ俺達は終わる。だからこそ勝たなければ、いいや...ここで負けるようでは魔物なんて、だから勝ち続けてみせる。どんな相手だろうと、俺は。
そして校内戦当日、簡単なルール説明が行なわれる。
「今回の校内戦は4つのブロックに分かれ、勝ち進みのトーナメント形式です。Aブロックで最後まで勝ち抜いたチームとBブロックで最後まで勝ち抜いたチーム。同様にCチームとDチームの最後まで勝ち抜いたチームで準々決勝を行い、その勝ち抜いたチームで準決勝を行なった後に生徒会率いるチームと決勝を行います。」
俺達はCブロック、気をつけた方が良いチームは一年生ながら優秀な人物がいる1回戦で対戦する109班...ん?
俺はそこで見覚えのある名前をみつける。エルディシア...?まさか、いや有り得るな。エルディシア家は代々名門として評判のある家だ、魔導騎士としても成果をあげているのは有名である。あと、そういえばターニャも同じ班だったか。
「やっぱり、お兄様!」
「ああ、ターニャか。どうだ?最近調子は。」
「ばっちりです!それに、私にはヴィーリア=レイ=ヴィットルハイン=エルディシアちゃんが居ますから!」
エルディシア、やっぱりそうか。
「おや、貴方が噂のヴィルヘイム...とやらでしたの?」
「ああ、そうだが。義妹のターニャが世話に」
「お黙り!貴方のような穢らわしい人がターニャに。」
「ちょ、ちょっとヴィーリアちゃん、それは私も怒るよー?」
「す、すまない。先ほどの無礼は謝罪しよう、だが貴様らに私たちは負けん。いいな!出来損ないの姉のいるチームなど...私の敵ではない!」
「ヴィーリア...お前は。」
「やはり、腰抜けのお姉様ですか。貴女のような家から見捨てられた人間に相応しい班ですわね。」
「なんですって...!アンタもう一度言ってみなさいよ。フィリア先輩もどうして言い返さないんですか!?」
「そ...それは。私が...。」
「なら、ここで決着をつけようじゃないか。俺達が負ければ俺を煮るなり焼くなり馬鹿にするなりすればいい、だが俺達が勝てばフィリアへの侮辱を謝罪しろ。」
「ええ、受けて立ちますわ。エルディシア家の人間として、誇りにかけて決闘を挑みますわ。」
こうして俺達は最初の試合のコロシアムへ向かう。
「いいか、皆。確かに相手にはBランク+のヴィーリアとBランクのターニャがいる。だが俺達はそんな相手に負けない実力がある。何があっても、俺独りにもなっても戦い抜く。だから安心して実力を発揮しろ。」
「何かっこつけてんのよバカ、私があんな連中に負ける訳無いじゃない。」
「そうですよ!先輩が教えてくれた戦い方さえあれば勝てますよ。」
「大丈夫...私が皆を援護するから。だから独りにはさせないよ。」
「それで、お前はどうなんだ?フィリア。」
「私は...、私は勝つ。例え相手が優れた妹であっても私にも魔導騎士としての誇りがある。だからこそ勝ってみせる。」
「ああ、そうだ。お前ができるやつだっていうのは家の人間が認めなくても、俺達は知ってる。だから安心して戦え。」
「相手はあの忌々しいヴィルヘイムだ。だが奴らは低ランク、勝てる。」
「しかし、油断は出来ません先輩。彼はただ者ではない、そう私の眼は捉えましたわ。」
「そうです、お兄様は強い方です。」
「てめえあの野郎の妹だったか、へっ雑魚の兄貴を持って可哀想だな。」
「よしてください先輩、これ以上の戯れ言は私が許しませんわ。」
「へっ、1年坊主が何言ってやがる。まあいい、さっさと準備しろ。」
「大丈夫か?ターニャ。」
「うん!でも、何でお兄様を...?」
「さあ、貴女の兄であればおそらく優しいはず。であってほしいのですけれどね。」
「ここにいたかヴィーリア」
「お父様...」
「期待しているぞ、出来損ないを完膚なきまでに叩きのめしエルディシア家の繁栄をもたらすことをな。」
「はい...。お父様。」
「ヴィーリアちゃん...。」
そのとき、ターニャの眼には手首を強く握りしめ、爪を食い込ませ、どうすることもできない自分を責めるかのようなヴィーリアが映っていた。