魔導騎士になりたくて 作:クー
ヴィーリアはそのままフィリアとシルルを追いつめる。ここからどう戦うか見守るとしよう。
「なんで助けに行かないのよ!」
「そ、そうですよ!このままじゃ...」
「いいか、お前らに足りないものを教えておく。なんだと思う?」
「何...って、決まってるじゃない。実力よ!」
「実力、ねぇ...20点だ。それで、その足りない実力はどうやってつけるべきだと思う?」
「そ、それは...毎日やってる訓練じゃないんですか?」
「確かにそれは合っている...30点だ。お前ら座学のときはどういうふうに点数を出してた。」
「それは勉強して...」
「他に重要な事があるだろうよ。」
「テスト、ですか?」
「ああ、正解だ。お前らに足りないものはいわば実戦ってやつだな、訓練でつけるべき基礎はつけている。しかしその基礎の上に積み上げるものはできていない、だからこそ実戦を繰り返して自らの戦い方や相手の動き、今までの応用...これらを身につけるには実戦が一番効率がよく学ぶきっかけとして良いものだと俺は思う。」
「おっと!?何故ヴィルヘイム選手は助けに行かないのでしょうか!?」
「たぶん、これも彼...いえ、ヴィルヘイム選手の考えなんじゃないでしょうかね?実際に戦う経験を積ませる事で後輩を成長させる、そんなところだと僕は思いますね。」
「何やってんのよアイツ!チームメイト見捨てるなんてとことん腐ってるわね!」
「まあまあ落ち着きなよレイス、彼も彼なりに考えがあってのことだよきっと。」
フィリアは立ち上がり、瞬時にシルルを庇いにいく。そうだ、お前の武器はここで使うんだ。
傷ついた仲間や危険に近い仲間を即座に庇い、反撃の隙を作る。この戦い方がお前には一番いい、何故ならお前は常にチームメイトへの気遣いを怠らなかっただろ?
「私と一騎討ちだ、ヴィーリア!チームメイトは誰一人とて傷つけさせやしない!」
「ええ、よろしいでしょう。貴女のような屑をこの場で切り伏せてみせましょう。行きますよ、我が剣...
「(私に足りないのは相手を切り伏せる力、守るだけでは己の身を削るだけ...ならば...。)」
「私はもう迷わない、守ることはただ防御するだけではないということ...。だから、私に力を貸してくれ
彼女が魔力を剣に魔力を集中させると、魔装は輝きを放ち変形し始める。盾は彼女の左手から離れ、宙に浮くとその巨大な盾を4つに分割する。そして重厚な剣は縦に二つに割れ、中からレイピア型の魔装が出現する。割れた剣は縦同様に宙に浮き始める。
「これは...祖父の更にその祖父から伝わる...エルディシアに伝わる宝剣...
「何と、アレは我が家に伝わる宝剣。守護騎の剣ではないか!」
「どういうことだ!誰があれを!」
「(これはおじいさまが与えてくださった私の刃...守りたい者への思いが応えてくれるとそうおっしゃってくださった。)」
「よいか?フィリア、お前は誰かのために我が身を削ってでも守ろうとする良い子じゃ。しかしのぉ、ただ守るだけではどうにもならんことは世の中にはたくさんある。だからこそ、そんな時は剣を握って闘うのじゃ。お前ならできる、お前の思いは必ずこいつが応えてくれると私は信じておる。この剣を使いこなせるのはお前だけじゃ、だが相続争いは激しくなりその内にこの家は没落するかもしれん...だからこそ偽装としてこやつの中に封印する。いいか?守りたい者ができた時にだけ思いを強くするのじゃぞ?お前は立派な騎士じゃ、魔導騎士でなくとも誰かを守る為に闘うことのできるエルディシア家の誇りじゃ。」
「わかった!わたしぜったいに皆を守ってみせるから!」
「(そんなことも言っていたな、だがその時が今なのかもしれないな。」
「き...貴様ごときが何だって言うんだ。そんな紛い物、この私が粉砕してくれる!エルディシア家の名に泥を塗ったこと、その死で償え。我が風よ、我が鎧となりて纏い万物万象を拒み我が身を守り給え。我が剣、我が鎧、我が身は風となりて敵を消し去らんことを...第6次魔術
激しい風が会場に吹く、そして彼女の周囲には風の鎧が出現する。
「くっ...だとしても私は屈しない!」
フィリアは2枚の盾でシルルを守りつつ、残り2枚を自らの前に置きヴィーリアに立ち向かう。しかし、全ての攻撃はヴィーリアの風の鎧に弾かれてしまう。
「ほらほらほらどうしたんですかさっきまでの威勢は。それではこちらから行きますよ!」
「よし、お前らもう動いていいぞ。フィリアの今日の収穫は魔装変形、これだな。」
「な、なんですかそれって!」
「ああ、魔装変形っていうのは例えばこういうものだ。」
俺は自分の魔装を棍型から槍型に変える。といっても俺のは魔力を注ぎ込んで魔術回路を組み替える事でその性質を変えるといったものだがな。
「今まで俺がしてた奴よ、まあできる魔装とできない魔装があるから知ってて損は無いぞ?」
オルクスとエリカはすぐさまヴィーリアに向かって接近し、魔術を唱えつつ応戦する。だが予想通りに全ての魔術は弾かれ、エリカの第五次魔術でさえも効いている様子は無い。
「無駄、無駄...全て無駄なのですよ凡骨共!この私の鎧は全てを弾き返す、貴女方の貧弱な魔術では敵いません。ここで朽ち果てるが良い!」
すると、ヴィーリアはフィリアを一蹴りし距離を稼ぐとその間に接近したオルクスとエリカをまとめて切り伏せた。
こりゃ、俺が少しだけ手伝わないと負けますかねぇ...試合時間も残り少ない。
「おっと、ここでヴィーリア選手が199班の2人の切り伏せたぁ!ついにここから109班の反撃が始まるか!?彼女の絶対防御の鎧と華麗な剣術を前に199班成す術無しかぁ!」
「さてと、ここで特別課外授業だ。この鎧を解く方法を教えてやる。」
「何だと...?」
「え...?」
この鎧はおそらくとても精密な魔術回路と魔力制御によってできている。その流れに沿って慎重に魔力を送り込み乗っ取れば解除できるはずだ。
「さてと、今年の1年は凄いなぁおい...俺も久々に楽しくなって来た。」
「ふんっ、貴方のような裏切り者が何を!」
「さてと、どうかね...第四次魔術
「ただの風喰らいか...!効かぬわ!」
そいつはどうかな。
俺の作った風が弾かれた、そう思ったその刹那の出来事。彼女を纏っていた風の鎧は綺麗に消え去ったのである。
「な、何故だ!?私の鎧は完璧だったはずじゃ...!」
「さて、ここで今日の重要ポイントその1だ。あんたの風の鎧はとても精密かつ高度な魔力制御で保たれていた。そしてその魔力の流れは魔力の消耗を少なくするため自然に風が上昇する方向に風を流すためにある一定の法則を持っている。その流れに反する攻撃は全て弾き返すっていう仕組みだ。だからこそ俺は一発目をフェイクにして二発目はごく少量だが下の部分から上に上げるように風を放った。するとあら不思議、風は鎧に入り込み、そこから魔力制御を乗っ取ることが出来たってわけだ。」
「まさか、そんな弱点が...!馬鹿な!イカサマに違いないっ!」
「おっと、まだ授業で習ってないかな?いや、この分野は難しいから習うのは俺の学年の最後の方か。同属性の魔術であれば魔力制御を乗っ取ることさえ可能なんだ。魔物にも応用できるから知ってて損は無いな、さてとフィリア...決着をつけてこい!」
「わかりました...フィリア=リ=ジークリンド=エルディシア、いざ参る!」
「この...出来損ない風情が、図に乗るなぁ!」
フィリアとヴィーリアは一騎打ちを行い、一振りの剣が勝敗を分けた。
「そこまで!勝者、第199班!」
「やるじゃん、アイツ」
「へー、あんたも素直なんだねレイス。」
「ち、ちがっ!このバカ!」
治療班が倒れた生徒を回復させ、お互いに向き合って挨拶をし試合は終了した。
よく頑張ったな、皆。だが戦いは激しくなるぞ、頂点に行くまでは負けられないんだ俺達は。
会場を出ると、そこにはヴィーリアとエルディシア家の人間の姿があった。
「この馬鹿者がっ!エルディシアの家に泥を塗りおって!」
「すみません!すみません!私の実力不足で...」
「もういい、貴様は次期頭首候補からは外す。そしてこの家に貴様の居場所は無い!」
「そ、そんな...待ってください。父上、私は、私は...っ。」
「うるさい黙れ、このクズが!」
酷い有様だ、一生懸命に闘っても結果が出なければ罵倒する。これが親のやる事かよ...。
「酷いです...でも、何もしてあげられない私はもっと。」
「気にするなよ、ターニャ。お前のせいでもなんでもない...。」
すると、フィリアはヴィーリアを庇うように出ていく。
「待て、父上...!」
「なんだ、出来損ないか。何のようだ?」
「私のことを侮辱するなら構わん...だが、ヴィーリアを侮辱することだけは絶対に許さん!こいつは、こいつは試合で一生懸命に闘った。最後の一人になろうとも退くことなく私達に立ち向かった...そんな立派な騎士を、何より大事な私の妹を侮辱するのであれば例え誰であろうと私が許さん!」
「あ、姉上...。」
「貴様ら私に楯突く気か...!」
「まあ待てよおっさん、どうすればこいつらを侮辱することをやめる?」
「んだとてめえ...ああ、裏切り者か。そうだなぁ...この2人が我が家の次期頭首候補最強の黒騎士に勝てば」
「わかりました、でも闘うのは彼女らではなくこの俺一人でどうですか?」
「はっ、それは無理な相談だ」
「いいんじゃないですか?貴方の家の人間が俺のような裏切り者をねじ伏せて斬首でもなんでもすれば。それだけで貴方の家の没落を防げるのではないでしょうか。」
「はっ、面白い。お前もそう思うだろ?黒騎士、カーネル=フォン=ザイン=エルディシア。」
「はい、私はこのエルディシア家のために...。このような出来損ないの弱者は傷を舐め合うのがお似合いかと。そして、ヴィルヘイムと言ったか?」
「ああ、そうだが。あんた、噂では街の闘技場で無敗、そして竜型魔物を仕留めた...と。」
「そうだが?それも一人で、だ...。」
「奇遇だな、俺もだよ...クソッタレが。」
「しかし、斬首など...。いくらなんでも黒騎士相手に勝てる保証は。」
「黙ってろ、俺は今凄く気分が悪い。反吐が出そうだ、あの時何も出来なかった自分みたいにな。」
「アイツ...やっぱり...。」
「エリカ?」
「ううん、なんでもない。黙ってなさいオルクス。」
「それにな、フィリア、ヴィーリア。お前らが束になっても勝てる相手じゃないぞこいつは。あと、負ける訳にはいかないんだよ...ここで負けるくらいなら生徒会を倒す事なんてできやしない。どちらにしても負ければ終わりだ、だから安心しろ。」
「よほどの自信だな、身に合わぬ自信は身を滅ぼすだけだ。」
「へっ、あいにく自信なんてとっくの昔からねえよ。ただ、俺は目の前の敵を倒すだけだ。」
こうして俺は黒騎士との決闘に挑むことになった。