魔導騎士になりたくて   作:クー

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第26話 激戦のなかで

黒騎士との戦いの後、黒騎士は魔装が砕かれたことにより魔装にかけられていた催眠魔術が解けて昔のように穏やかな人物に戻ったという。そして経緯を知った黒騎士カーネルは自ら頭首の候補から降りたものの、フィリアを学業に専念させるため代理として卒業まで頭首として活動するらしい。

 

「世話になったな、ヴィルヘイムといったか?」

 

「はい、しかし魔装に魔術がかけられていたとは。」

 

「私こそ迂闊でした、まさか家の者達の手の中で踊らされていたとは。これではエルディシア家失格ですね。」

 

「いや、アンタは強い。あんな物に頼らなくても、それよりフィリアとヴィーリアの仲も直ってよかったよ。」

 

「どうやらヴィーリアはフィリアを貶めなければ虐待を受けていたみたいでね、それで弱みにつけ込まれて...。」

 

「ったく、クズみたいな連中だ。」

 

エルディシア家の前頭首とその悪行を黙認していた者は、騎士団に捉えられ監獄に放り込まれたという。当然の結果だろう。

 

次の日、いつも通り、訓練場に足を運ぶとヴィーリアとターニャが居た。

 

「そうだ、ヴィーリア。煮るなり焼くなり好きにしろといったよな?」

 

「そ、それは...その、何ていいますか。」

 

「貴様!ヴィーリアに手を出す気か!?許さん、この不埒者!見直していた、いや...尊敬していたというのに貴様は!」

 

「そうですよ、お兄様。私という者がありながら...」

 

「いやいや待て待て、話をややこしくするな。それとターニャ、俺とターニャは恋人でもなんでもないからな?実の兄妹ではあるが...」

 

「じ、実の兄妹!?名前はどう見ても違うだろ。」

 

「え?ターニャってターニャ=ラッカイネンだろ?」

 

「ち、違いますよ?もうお兄様ったら寝ぼけてらっしゃるのですか?ふふっ、そういう所も可愛いですわ。」

 

あれ?違うのか...?駄目だ、俺の記憶が混乱している。何が正しくて何が間違っているんだ。もうここまできたか、幼少期の思い出だけに留まらず、中等部の時の記憶に留まらず。もう使うのは控えよう、これ以上はまずい。俺の中で何かがそう訴えかけていた。

 

「あは、あははは...悪い悪い、少し昼寝のし過ぎで頭が回ってないみたいだ。そうだ、話を戻すとヴィーリア...あと、ターニャ。お前達は俺達の訓練に付き合う気は無いか?君たちの実力は一年ではトップクラスで一回戦で負けたとはいえその実力から王国主催の国際新人戦メンバーに選ばれることは間違いない。だからこそ、もっと伸ばしてほしいんだ実力を。もっとレベルアップできる、だから...俺達と訓練してほしい。俺達にとっても君たちにとっても良い話だと俺は思うんだ。」

 

「そうおっしゃられるのであれば...仕方ありませんわ。ターニャ、やりましょう。」

 

「はい!そう言うと思いました!」

 

こうして俺達199班と109班1年の合同演習は始まった。

 

「よし、まずエリカは魔力制御の練習だ。生徒会戦までには魔装を使えるように頼んだぞ、お前がもしかしたら戦いのキーになるかもしれない。オルクスは俺とやってたみたいにヴィーリアとカウンターの練習だ。ヴィーリアはそのカウンターを避けて反撃をする練習だ、この繰り返しがお互いにとっても攻撃を如何に確実に当て、如何に相手の攻撃を読むかという実戦に必要な力の訓練になる。フィリアは魔装の使い分けの練習として俺とシルルの攻撃を防御、あるいは回避しながら俺にダメージを与えてみてくれ。ターニャは俺とシルルの流れ弾を防御する練習だ、魔術の結界に属性に合わせたコーティングを迅速かつ正確に行なう訓練だ。」

 

「了解!」

 

こうして俺達は今自分に必要な訓練を行なっていく。まだまだ試合は残ってる、絶対勝ち抜いてやる。いいや...勝ち抜ける、俺達なら。

 

練習が終わり、皆が解散するとシルルがタオルを持って来てくれる。

 

「おつかれ...ヴィルヘイム君。」

 

「ああ、おつかれシルル。」

 

そういうとタオルを受け取って汗を拭う、明日からは2回戦、3回戦と連日ありCブロックでの準決勝と決勝があり、そこから全体での準々決勝、準決勝、そして生徒会との戦いだ。あと7回勝ち抜かなければならない...。長く険しい道のりだ。

 

「もしかして昼のことで悩んでる...?」

 

「どうしたんだ?そんなこと。」

 

「凄く深刻そうだったから...。」

 

「まあ、な...。」

 

俺の記憶についてのこと、今までのことを全て話す。

 

「そんな、そんなことって...。」

 

「残念だけどそれが力の代償だ。でも、これが無ければ今頃死んでいた。」

 

「記憶が無くなってくなんて考えられない...。」

 

「ああ、自分でもそう思うよ。他人に言われるまで、もしくは思い出せなくなるまで自覚が無いんだ。どこまでが残っててどこから失われてるのか...それさえな。」

 

「わかった、私はヴィルヘイム君のこと覚えてる。どれだけヴィルヘイム君が忘れても私、覚えてるから...だから、もう悩まないで。」

 

そういうとシルルは俺を抱き寄せた。ひんやりと冷たく、でもどこか温かい...そんな感覚だ。

まさか俺なんかのことを思ってくれる人がいるなんてな、笑っちまうよ。こんな俺を...こんな、俺を...

すると涙がでてきた、涙なんてもう流れないと思ってたのに。

 

「どうしたの...?」

 

「わかんない、俺だってわかんないさ。なんで、こんな、涙が出てるのか。嬉しいのかな、それとも不甲斐ない自分が...。」

 

「そっか、それだけ追いつめられてたんだね...。でも大丈夫、私がついてるから。」

 

そういうと再び抱き寄せてくる、温かくて今にも寝てしまいそうだ。

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