魔導騎士になりたくて 作:クー
ん、俺はいつから寝ていたんだ...?
腕を少し動かすと柔らかい感触がある。なんだ?この柔らかい感触。目がまだあまり開いてない状態で指で柔らかい感触をあじわう。
「んっ...んあっ、んっ。」
なんだ、この妙にやらしい声。あれ?待てよ、この声って...
一気に脳が覚醒した、何やらまずい状況であることは察した。俺の今までくぐり抜けて来たどの修羅場よりヤバい。間違いなくヤバい。魔物に殺されかけるとかそういう次元じゃない、社会的に確実に殺されるやつだろ。
「ほわぁ!?ど、どうなってんだこりゃぁっ!」
「んっ...おはよ...ヴィルヘイムくん...。」
するとシルルは寝ぼけて俺にキスまでしてくる。
「待て待て待て待て、一体全体何がどうなってんだこれは!」
「あー...言ってないっけ。昨日あのまま寝ちゃったから部屋まで...ね?」
「いやいやいや、部屋までと言われてもなんでそこが俺の家の部屋じゃないのさ。」
「だって...重くて持てなかったんだもん。」
まあそりゃあ、仕方ないな。いや、仕方なくねえよ。
「とりあえずその下着と...あの、その...ストッキングだけってのはやめてくれ。こっちが恥ずかしすぎる。」
「あっ...ごめんなさい、昨日は服だけ脱いでそのまま寝ちゃった。だからシャワーも浴びてなくて。」
急に顔を赤くするな、俺のほうが顔赤くしたいよ。
「とりあえず、時間...っと。おわっ!?もう試合1時間前だ。急いでシャワーするぞ、といっても時間が。」
「じゃあ、一緒に浴びよ?」
ふぁっ?いやいや、まてまて
「時間ないよ、試合遅れちゃまずいでしょ?」
「わーった、わーったよ。そのかわりゆっくりなんてやってられないぞ。すぐに洗ってすぐにいくぞ。朝食もしっかり摂ってな。」
こうして何でこうなったのかわからん流れでシャワーを浴びる事に。
「なあ、シルル。どうして俺を気にかけるんだ?」
「んー...優しいから。かな?」
「優しいからって...俺は優しくともなんともないぞ?」
「そうかなぁ、優しいと思うよ?皆のことをよく見て考えてるし。」
「でも俺は、まだ全然...。」
「めっ」
そう言うとシルルは俺の額に指を当てる。
「駄目だよ、そういう思考は私が許さないから。」
シルルは少し微笑む。
「あーもうこうしてる場合じゃねえぞ、さっさと洗って朝食摂って試合会場行くぞ。」
「はーい。」
さっさと洗って朝食を摂る、無心だ、無心...。やらしいことは考えるな。
俺とシルルは部屋を出て試合会場に向かう。そこでシルルは何かを思い出したかのように部屋へ戻る。
「先に行ってて、少し忘れ物。」
「わーった、まあ時間はあるけど急ぐようにな。」
俺は先に試合会場となる第2コロシアムへ向かう。今回の相手は121班、前回の試合では相手チームが一人少なくてそこからの試合で勝利。何しろ抜けた相手の騎士は3年だそうだ。
「おっそろしいことがあったもんだな。」
「噂ではその欠場した相手の3年は監禁されてたって話よ。」
「そ、そんな恐ろしいこと...あっ、ヴィルヘイム先輩おはようございます。」
「あれ?シルル先輩はどうしたのだ?」
「ああ、少し忘れ物で遅れるって。でも遅いな、歩く速さを遅めにしてきたんだが。」
「199班、入場してくださーい!」
「えっもうそんな時間!?うっそ...どうすんのよ!」
「信じて待ってみよう、あの子は遅れるような子じゃない。それに審判に掛け合えば10分は待ってもらえる。」
「わかったわ、信じましょう。」
こうして俺達はコロシアムに入場する。そして始まろうとしたその時俺は審判に掛け合う。
「すみません、10分待ってもらえませんか?」
「わかったわ、でも...それが過ぎても来なければそのときは。」
「わかっています。その時は俺達だけでやります。」
ちっ、どうしたんだ?腹でも痛くしたのか?
「も、もしかして相手に監禁されてるんじゃ...。」
「いや、そんなまさか...。だってすぐ追いつくはずでしょ?」
そんな時、相手チームからは煽るような声が飛ぶ。
「あれ〜?お前らのチームの一人はどうしたんだー?」
「あー、あの影薄い子?逃げちゃったんじゃね?だはは」
「...すみません先生。探してきます。戻って来なければ俺無しでも始めてください。」
「ちょっと!アンタ何言ってんのよ。」
「大丈夫、戻ってくるから。」
俺はそう言い残して会場から出た。頼む、部屋にいてくれ...。そう思いながら翠燕で風を纏い移動する。