魔導騎士になりたくて 作:クー
確か、最後にわかれたのは寮...。しかし、もしも監禁されたとするならば女子寮に待ち伏せなどおそらく不可能だ。そして、誘拐するならば大声を出される、または抵抗される可能性がある。ということは、人目がつかないところかつ気絶させた可能性がある。
俺は頭の中で推理をする、おそらく寮ではない。教室か...?いや、だとしても、教師が入ってくる可能性だってあるはずだ。
ここで俺は閃く、この校内戦期間に授業がない科目があることに。
「そうか...体育館だ!」
体育の授業はこの期間には行なわれない。怪我を防ぐのもあり、何よりその体力を訓練に使うようにと教師の配慮である。
「待ってろ...シルル。俺が助ける!」
その頃、体育館では
「やめてください!私は行かなければいけないんです!」
「あ〜?どこにだよ。どこにイっちゃうのかなぁ?くはははははっ」
「こんなことが、許されるとでも思ってるんですか!」
「あぁ、許されるね。ここであいつらの班は負け、全員退学処分。そしてこの行為もバレなければ無かったことも同然だ。」
「絶対助けにきてくれます...、あの人なら。」
「あの裏切り者が?はっははははは!えらい冗談だなぁ?えぇ?助けなきゃ勝つ、助ければ負ける。どっちを取るかなんてもうわかるよなぁ?って訳で、いただくわ。」
「おう、はやくしろよ。ま、俺達が楽しんだらアイツにも味わってもらおうや。」
「バッカ、ハナからその約束だろ?だけど本番はアイツが先って決められてんだろ?」
「わりぃ、そうだったな。はっはははは」
「(ヴィルヘイムくん...助けて...!)」
シルルに穢れた手が向けられようとしたその時だった。
窓を突き破り俺は突入する。
「な...何だ!?」
「おい、待てよ...どうしてお前がここを...!」
「てめェ、何しようとしてやがった...。」
「何って、決まってんだろ!こいつと楽しいことを...っ!?」
一瞬で間合いを詰め、指先に風の刃を纏わすと腹部に突き刺す。
「がはっ...!てめぇ...こんなことが許されると...」
「てめェのような虫けら風情にかける情なんて無ェよ、ダボ」
「くっ、お前ら...やっちまえ...!」
面倒だな、時間が後1分なのによ。
騒ぎに気づいたのか足音が近づいて来る。まずったか、派手にやりすぎた。
「ここか...!貴様ら、何をしている!?」
雷鳴の風紀委員長のお出ましか。
「騒動を聞きつけて捜索していてな、ここは私に任せろ。」
「だが...!」
「いいからさっさと行け!貴様には待たせている奴らがいるんだろ?ここであいつらを裏切る気か?さっさと行け!今回のことについては見なかったことにしておいてやる...」
「わかった、すまない...。頼んだぞ。」
「フンッ...この借りは決勝戦で返してもらうぞ。」
「ああ、またアンタと戦いたい。約束するよ。」
俺は翠燕で風を纏い、シルルを抱きかかえ会場に向かう。抜けた体育館からは雷鳴が響き渡る。こりゃ奴ら、終わったな。
「全速力でいく、舌噛むなよ?」
「うん...あのね、ありがとう。」
「ん?」
「来てくれて嬉しかった、ううん...来てくれるって信じてた。私みたいな、私のような何の取り柄もない人間を助けに来てくれるって...。」
「取り柄が無い?馬鹿を言うなよ、こんな何処の馬の骨ともわからない裏切り者の傍にいてくれて、笑ってくれて...そんな優しさがあるだろ?涼しくて、優しい温かさがあるだろ?俺はそんなお前のことが好きなんだよ。」
「っ...!」
「だから、行くぞ!俺達は負ける訳にはいかないんだ。」
体内での感覚が残り時間を頭に浮かばせる、10秒か...全力出せば間に合うな。
「残り時間、10秒っ!(やっぱり...無理かしら)」
「ど、ど、ど、どうしよう!」
「馬鹿!信じなさい!あいつはあれでも私達のリーダーなんだから。」
「そうだ、もし来なくても私たちなら倒せる。こんな下衆共には負けたりしない!」
「2...1...!」
皆がもう駄目だと思ったその瞬間である。
会場に強力な風が起こり、砂埃立つ。
「すまない、待たせたな。」
「バカ...怖かったじゃない!」
「来てくれるって信じてました...!」
「ああ、やはり先輩は凄いな。」
「ど、どうしてお前がここに...!」
「てめェ、よくもやりやがったな?わかってんだろうなぁ!」
俺は怒りに顔を歪ませ、魔装を握りしめる。
その時、先生があることを発表する。
「ここで、不正行為を行なったチームがあると風紀委員長から連絡があり、失格。よって199班の勝利!」
「て、てめえ...謀りやがったな...!」
やってくれたか、こりゃ...負けられないな。
「待ってください、先生。試合をさせてください。」
「で、でも...相手は不正を...」
「いや、僕は勝っておきたいんです。こんな下衆に負けるようでは、優勝なんて出来ません。」
「おっと!ここでまさかの通常通り試合を希望っ!ヴィルヘイム選手、怒りを露にしたか!」
いいや、違う。会場の実況に俺は心の中でそう答える。俺は、強くならなければいけない。だから...
「皆、後ろで見ていてくれ。ここは俺独りにやらせてほしい。」
「ちょっ...何でよ!」
「皆には俺の実力を見ていてほしいし、皆にも見ていてほしいんだ。もう...ナメられないように。」
「では、開始っ!」
俺は開始の合図と同時に翠燕を纏い、敵に突っ込む。
「くっ...かっこつけやがって!かかれ!全員でかかれば倒せる。」
俺は敵の魔術、攻撃を全て回避し武術と剣術を駆使して一人一人完膚なきまでに叩き潰す。
「な、なんだよあいつ...あの動き...バケモンかよ...」
「ありゃ、相手が悪かったな。そう思うだろ?レイス」
「な...!ま、まあそうね。で、次の試合アンタだけどどうすんの?ツバキ」
「確かにここであいつが負けりゃ退学になる、でもさ...真剣にやり合いたいんだ、アイツと。だから、本気で行く、本気で倒す。」
「そう...なら、ぶちのめしてやりなさい。」
「もし私が負けたらアンタよろしく。」
「まあそうね...そしたら...。」
30秒も経たぬうちに敵を全員、戦闘不能にさせる。
「勝者...199班!」
これでもここまで時間を使ったか、まだまだだな、俺も。