魔導騎士になりたくて   作:クー

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第29話 紅は儚くも美しき

残るは決勝を除けば2戦、まずはツバキの班との戦い。それが終わればレイスとの班だ。

おそらくこの2人は強敵だ、試合を見る限り、戦い方や班の役割などは偵察済みだ。逆に、俺達の戦い方も把握されている。

 

「今日からの演習では次からの試合を意識したものにする。時間は無いけど一つ一つ確実にモノにしていこう。」

 

「はいっ!」

 

「わかったわ!」

 

「了解した!」

 

「ヴィーリアは引き続きオルクスと組んでくれ。そして、シルルは援護射撃の演習だ。けれど、ここでは敢えて避けさせるようにしよう。」

 

「どうして...?」

 

「シルルは弾速の速い攻撃が得意だろう?だが、一撃一撃の威力が均等になってしまうんだ。そしてそれ故に魔力の消耗を抑えるべく重い一撃はあまり使えない。だからここではダミーとなる攻撃の練習だ。」

 

「わかった...。」

 

「そして言っておくけど、チャンスの時には今まで以上に迅速かつ強力な一撃をお見舞いするんだ。決定打となる一撃だ、この一撃が戦況を覆すことだってある。それを期待してるぞ。」

 

「うん...!」

 

「なんか、シルル先輩すごく嬉しそうじゃない?」

 

「確かに...そうだな。あの一件以来だろうか。」

 

「あの一件って、先輩が軟禁されたっていう件でしたっけ?お姉様。」

 

「ああ、これは...おそらく恋だな。」

 

「ぶふっ!?」

 

「どうした?エリカ」

 

「な、なんでもないわ!さっ、時間ないんだから始めましょ!」

 

こうして仕上げに向けての演習が始まる。

 

「フィリア、君には相手の足止めの練習をしてもらいたい。」

 

「それはどういうことで?」

 

「敵の突撃を瞬時に抑え、その隙に俺が敵を確実に倒す。これは新しい戦術が組めると同時に、君が相手の力に押されないようにという考えだ。君は場合によっては僕達の最後の砦になる。」

 

「わかりました、では...お相手を!」

 

こうして演習が始まる。次の試合はかなりの強敵であることがわかっている。ツバキの素早いい動きと火力の高さ、そしてそれらに翻弄されている間に重い一撃を与える取り巻き...今回の鍵はオルクスとフィリアだな。

 

「フィリア、確かに反応はいいが時々押されているぞ。重心のズレは時に致命傷になりかねない。重心は必ずズラさないことだ。」

 

「わかりました!もう一度、お相手を...!」

 

「ああ、いくぞっ!」

 

もう一度、俺は勢いをつけてフィリアに突撃を行なう。魔装の先端に風を纏わせ槍とし、片手から後ろに強風を放ち更に勢いを増す。

 

「ぐっ...、ここで倒れる訳にはっ...!」

 

「ここでひとつアドバイスだ、敵の重心が後ろになった時にはそのまま盾で押し込め。そして、重心が前になった時にはどう足掻いても押し込むのは容易ではないしそのまま止まっていれば的になりかねない。」

 

「では、どうするのですか?」

 

「簡単だ、逸らせば良い。」

 

「逸らす...ですか?」

 

「ああ、それじゃあどういうことか試してやる。そこにつったっててくれ。」

 

「あ、ああ...」

 

フィリアを立たせると、俺は彼女の背中に背中から倒れかかる。

 

「うわっ!?何しているのですか!?」

 

「これが、重心を前に...つまり、君側に体重をかけているときだ。それじゃあ、今から君は横に体を逸らしてくれ。」

 

「し、しかしそれでは...!」

 

「いいから、やってみなさい。」

 

フィリアは横に移動し、当然俺は背中から倒れかかるが風によって衝撃をなくし風によって起き上がる。

 

「つまり、こういうことだ。突然反対側から押してきた力が消失し、なおかつ相手も移動した場合勢いあまって倒れ込むということだ。」

 

「なるほど...そういうことですか。」

 

「だが、気をつけなければならないのは。自分の行動は決して相手に読まれないということだ。」

 

「わかりました!では、もう一度...!」

 

「ああ、行くぞ。」

 

俺はもう一度突撃を行い、盾に魔装を衝突させる。

 

「今かっ!」

 

フィリアは瞬時に体をずらす。俺は当然勢い余ってそのまま槍を地面に突き刺す。

 

「出来ているぞ、その調子だ。あともう一つアドバイスだ。もし俺がサポートできそうにない時、フィリアは自らの剣だけを持って盾をダミーにして敵を斬れ。おそらくこれから先は俺が余裕をもって敵とやり合えるとは限らない。いいな?」

 

「はいっ!ご指導ありがとうございました。」

 

こうして演習を終え、着替えて帰ろうとする。

 

「おっ、いたいた〜。おーい!」

 

遠くから俺達を呼ぶ声がする。どうやらツバキのようだ。

 

「もしかしてお邪魔だった〜?いや〜、シルルと君は御熱いねー。」

 

シルルは少し顔を赤くし、ツバキから目を逸らす。

 

「冷やかしにきたのか?ったく、余裕だな。」

 

「そうじゃないさ、互いの健闘を祈りにね。」

 

「俺は絶対勝たなければならない。ただそれだけだ。」

 

「わかってるさ、それは私も同じさ。たとえあんたらが退学させられるとしても...自分の誇りに懸けて負けられないんだよ。」

 

その時、ツバキは下に俯きつつ呟く。

 

「そうしないと...誰よりも強くならないと私たちの故郷は...」

 

「ツバキ...」

 

「ん?どうしたツバキ。」

 

「あ、いや。なんでもないなんでもない、だから...明日はお互い頑張ろうね!」

 

「あいよ、俺はぜってぇ勝つから。」

 

そう言って俺は家に帰る。

 

翌日、試合会場にて顔を合わせた199班達。

 

「作戦は昨日言った通り、俺がツバキを抑え、シルルが敵を牽制しつつオルクスとフィリアが組んで連携をとり敵を確実に討ち取る。おそらくこれで倒せるはずだ。あとは自分に自信と誇りをもって挑め。いいな!」

 

「わかりました!」

 

全員がそう返事をすると、俺達は会場へと進む。

 

「それでは、全員。魔装を展開し持ち場についてください。」

 

先生の指示で俺達は魔装を展開する、そして班内の全員と目を合わせる。

 

「では...開始っ!」

 

俺は一度間をとって敵が突っ込んで来るのを待つ、やはり数人が突っ込んで来る。俺が突っ込むことをシルルに合図し、おこぼれを牽制するよう指示する。

俺は突撃してきた三人を瞬時に魔装と体術で地面に叩き付け、ツバキに向かう。

 

「今っ!」

 

シルルは強力な魔力を込めた一撃を敵に放つ。

 

「我、冷徹なる射手であり、汝は冷酷なる魔弾なり。すなわち我ら、敵を凍殺す氷魔である。氷牙は全てを裂き、凍てつく刃と化す。我が魔氷は万物を永き眠りへ誘う...第六次魔術、氷獄の魔弾(ヘル=フロスト)

 

相手の一人は直撃を受け戦闘不能となり、残る2人も凍り付いた地面によって足止めをくらう。

 

「よくやるじゃん...シルルも。」

 

「そりゃ、あいつはよくできる子だからな!」

 

俺とツバキは互いに魔装をぶつけ合い、一歩も譲らぬ体勢となる。

 

「ツバキさんっ!」

 

突如、盾によって俺の攻撃は防がれる。その間にツバキは俺の背後に回り込む。

 

「よくやった!エリザベス、流石私の一番弟子!」

 

「っ...!挟まれたか。」

 

前方には盾と槍を持った相手、後ろにはツバキ。この場合はまず...。

俺は、横の壁に強風を当てて一度退く。そして、混乱したその間に一気に叩くつもりだ。

 

「甘いな、そうくることはわかってたさ!」

 

なんとツバキは盾を土台とし、槍の上も土台として上空へと舞う。

 

「空中戦を挑む気か?おもしろい。」

 

「バーカ、ミスった後輩の面倒を見るのも先輩の役割って訳さ!」

 

ツバキは炎の魔術を地面へと放ち氷を溶かす。

こいつは少し長期戦になりそうだ、覚悟しないとな。

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