魔導騎士になりたくて   作:クー

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第30話 譲れない思い

凍結していた床は溶かされ、拘束されていた相手の騎士はその身が自由となった。

しかし、そこから更なる攻撃を仕掛けるシルル。

 

「彼の地へ誘うは魔氷の霧、彼の地へ向かうは我が宿命。彼の地はきっと、我が運命(さだめ)をも呪縛に縛るだろう。汝の全てを我と共に死へ誘わん。第五次魔術、死氷の煉獄(プリズム=フロスト)

 

溶けていた床の水は再び凍りとなり、氷柱が空に向かってそびえ立つ。更には蒸発によって発生した水蒸気までもが氷の棘となり、再び拘束された相手2人に襲いかかる。

 

「っ!?まさかここまで素早く体勢を立て直すとは...シルルもやるじゃん。だけど、私だって負けてられないんだ!」

 

ツバキは魔装から紅炎を出し、氷を薙ぎ払った。

 

「今ので2人脱落させた。後はいつもどおりのフォーメーションでいくぞ。」

 

「了解っ!」

 

俺は再びツバキへと突撃し、残ったオルクスとエリカは他の一人に、そしてシルルは各々を援護し、フィリアはシルルを護衛しつつ残る一人を相手にする。

 

「やっぱりアンタらのとこ、やるじゃん。」

 

「だろ?でもアンタもなかなかだよ。まさかあそこまでの火力だとはな。」

 

「そいつは、どうも!」

 

ツバキの魔装を受けてチャンスを伺うも、そこからの攻撃に隙が無く難しい。こうなれば強引にでも攻めるしかないか。

 

「魔装、形態変形。双刃形態!」

 

俺は一度距離をとり、魔装の形態を変える。刃は風の刃であるため切れ味は魔力と比例する。並みの魔装と大差はないが長期戦には向いていない、だからこそ一気に片をつける。

 

「一気にやらせてもらう...!」

 

俺はツバキの魔装を弾きつつ、僅かな隙に何度も斬撃をいれる。どんな隙でも俺は見逃さない。

 

「先輩っ!くそっ、お前らごときにぃっ!」

 

「残念だけどアンタの相手は。」

 

「僕達だ。」

 

オルクスとエリカはなんとか足止めをしていてくれている。

 

 

「このままでは時間の問題か...!」

 

「残念だが、足止めだけで満足はできないのでな。決着をつけさせてもらうぞ!」

 

「なんだと貴様ぁ!」

 

フィリアに向かっていった相手の一人は斧で盾ごと粉砕しようとする。

 

「くらうがいい!我が巨斧は万物を砕き、脅威を無に帰すであろう。我が手には巨斧、我が手には勝利。あぁ我が栄誉は永遠なれ。第五次魔術-地砕の巨重斧(ギガロ=グランディア)-」

 

「今かっ!」

 

相手が斧を振りかざす刹那、フィリアは魔装の変形を行い、地面を勢いよく蹴ると相手に対し何度も突きを行なう。フィリアの魔装は突剣となり、周囲には魔力により浮遊した盾が6枚存在する。

 

「あいにく、強いのは俺だけじゃない。皆強くなっているんだ、日々な。」

 

「見くびってたよ...、アンタはヤバいってマークはしてたけどまさか他もここまでやるとはね。だけど譲れないっ!」

 

ツバキは俺の猛攻に耐えぬき、一度後ろへ退く。

 

「お前らの相手をしてる暇は無いんだよ!」

 

「生憎、それももう終わるさ!」

 

オルクスは相手の槍の一撃を寸前でかわし、身をひねって回転しつつ魔装により攻撃を行なおうとする。

 

「っ!?この程度でいい気になるなよ!」

 

相手は攻撃を避けられた瞬間に槍を振り回し、オルクスに命中する。

 

「がはっ!?」

 

「槍は突くだけじゃない、そう教えてくれたのはツバキ先輩だ!だからこそ私はこの槍でお前らを倒すっ!」

 

その直後に槍による攻撃でオルクスは戦闘が不能となった。

 

「すみません...ヴィルヘイム先輩。」

 

「後は私に任せなさい!」

 

「あんた魔装も使ってないのにどう戦うっていうの?」

 

「あいにく私は強すぎるからハンデっていう奴よ!第四次魔術-紅蛇炎尾(スカーレットウィップ)

 

あいつ、もう四次魔術の無詠唱を...。そこまで成長してたのか、今まで俺との特訓のときは魔力コントロールのみだった。だけどあいつは、裏で何度も魔術のみの戦闘で使える技術を磨いていたんだ。

 

「無詠唱だと!?ぐっ...。」

 

「こりゃそろそろまずいって感じかな。」

 

シルルの援護射撃を炎で打ち消すツバキはシルルに目をやる。

 

「そうはさせん!」

 

属性が属性だけに不利だ。このままいかせれば状況は不利になる、俺かフィリアが止めるしかない。

 

「フィリア!俺達で止めるぞ。」

 

「わかった!任せろ。」

 

ツバキは俺の攻撃を回避し、壁に足をつける。

 

「さてと、行くか!」

 

ツバキは魔力を足に集中させ壁を走り抜ける。その速度は目でようやく追いつく程度だ。

 

「来いっ!」

 

「ああ、望みどおり来てやったさ!」

 

フィリアの突きですら追いつけぬ速度で突破し、シルルに突撃する。

 

「まずいかっ!翠燕ッ!」

 

俺は風を纏い、最初から最大限の加速を行いツバキへと迫る。ツバキの刃がシルルに迫る瞬間であった。

 

「私だって...守られるだけじゃないんだ!」

 

シルルは魔術を詠唱していたのか、氷の壁を築きツバキの刃とツバキの勢いを妨げる。

 

「直にこの氷は溶ける、残念だったね。」

 

「ねえ、ツバキ。私はもう独りじゃないんだよ?」

 

「なっ!?」

 

ツバキが気づいたときには既に俺が斬りつけていた。

 

「切り裂け、速斬の風刃(エアリアル=ディバイド)!」

 

二つの刃がツバキを切り伏せる。

 

「そっか...あんた、もう独りじゃないんだ...。変わったなぁ、『あの頃』から...。」

 

同時にシルルもその場に倒れるが、エリカが残る一人を倒したおかげで俺達は勝利した。次は準決勝だ、気を抜く事はできない。

 

「やるしかないのね...私が...。もう私は、あの時よりも強くなったんだから、見せてやるわよ。」

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