魔導騎士になりたくて 作:クー
迎えた準決勝。なんと前の試合は昨日であり、ここから翌日に決勝といったスケジュールだ。
「緊張しなくてもいつも通りにやればいいだけだ。いいな?」
「了解!」
試合会場に入ると今までに聞いたことないほどの歓声があがる。
そして互いのチームが向かい合うと、一人俺に睨みつけるのがいる。レイスといった人か。
「所詮アンタが勝ち上がってきたのは偶然よ、偶然相手が油断しただけ。能力でいえばアンタらは」
「っさいわよ...。」
「え?」
「っさいって言ってんのよ!アンタそんなに嫌な訳?そんなにこいつに勝ちあがってきてほしくなかった訳?」
「そ、それは...。」
「ただの嫉妬でこいつの努力踏みにじって、そして私たちの努力を踏みにじってんじゃないわよ!」
「こら!そこまでにしなさい。これ以上の相手への挑発は先生許しませんよ?」
「申し訳ありません、ちゃんと後で言い聞かせます。」
俺はジル先生に頭を下げ謝罪する。
「ちょっ...なんでアンタが頭下げんのよ!」
「そりゃあ、それが礼儀というものだからね。それに、この後に試合でぎゃふんと言わせればいいだけの話だろ?エリカ。」
「ま、まあ...そうだけど。」
そして、スタートの合図が始まると俺達はいつも通りのフォーメーションで敵を迎え撃つ。
「まずは狙撃手を狙いなさい!」
レイスの指示で四人はシルルティアに向かう。
「まずいっ、皆頼むぞ。」
「わかりました!」
俺はレイスに対し魔装を槍型とし、突きを行いつつ射撃を弾き落とす。
一方、シルルを防衛する三人は苦戦を強いられていた。
「流石、準決勝だけ上がってきただけはあるわね。」
「ああ、だが...私たちだって同じだ!」
「そうですね、このままチャンスまで耐えましょう。」
「大丈夫です、私が援護します。」
皆が更に一丸になっているように思える、この調子ならば勝てるな。
「果たして、そうかしら?」
レイスはにやりと笑いつつ俺に射撃を続ける。何だ、何がおかしいんだ...?
「まさかっ!このままではまずい!」
矢を回避したとしてもどこかに突き刺さるはずである、だがその時の音が聞こえていない。たしかに他の騒音でかき消されるようなものと捉えられるが俺の場合、わずかな音、わずかな衝撃でも感知できるよう訓練を積んでいる。
「遅い、貰った!」
オルクスは敵の一人の攻撃を受け流し、電撃を纏った刃で攻撃する。
「ならば私もっ!」
フィリアも敵に対して攻撃を受け流し、オルクス同様に反撃を行いオルクスが攻撃を行なった敵にも魔装による攻撃を行なう。これにより敵の一人が戦闘不能となる。
「よくやったわ!ん?皆っ!気をつけて!」
エリカが異変に気づいた直後であった、エリカ以外の皆が矢に撃たれる。
「どうして!?射線からして不可能なはず...!まさかっ。」
そうだ、レイスの放った矢自体が魔力を帯びた水によるコントロールを受けていたんだ。陽動と本命で分けてたってわけか。
「さて、終わりよ。水は命の源なり、水は全ての始まりなり。則ち祖にして万物の母となるもの。万物よ、全を無に帰し、再び始まりを作らん。万物の罪を洗浄し再び始まりを迎えよ!第七次魔術
レイスの唱えた魔術が発動し、見上げれば空を覆い尽くす大波が俺達を襲う。
「っ!間に合うか...!我が風よ、我が鎧となりて纏い万物万象を拒み我が身を守り給え。我が剣、我が鎧、我が身は風となりて敵を消し去らんことを...第6次魔術-絶風の鎧-」
俺は瞬時に詠唱を終わらせ、風の鎧を纏う。
「速い!?でも...!」
大波は両チームの騎士を飲み込み、そのまま水は俺達を飲み込んだまま存在していた。
周りを見渡すと、オルクス、エリカ、シルルが倒れていた。
あと残るのは俺とフィリアだけか...?まずいなこの状況。
「残念だけどこれでチェックメイトね、私たちのチームは全員が第二次魔術-水精の加護-を受けているの。水の中でも自由に動けるわ。でもあんたは風によって水を弾いてはいるけど酸素が無くなるのは時間の問題よ。」
「確かにそうだな...ならば!」
俺は上空に脱出し、そのまま体勢を立て直す。
「それは読んでいたわ!」
水中を脱した俺に向かって無数の矢が飛んで来る。流石に俺の腕とこの風だけで捌ききれるとは思えないな。そんな時、数枚の盾が俺を矢から護る。
「まさかこれは...!」
「後は頼みました、ヴィルヘイム先輩。」
フィリアは盾で最後に俺を守ったのだ。この状況でも魔装を形態変化させてまで。全ては俺に託された。ならば...
「風は全てを運び、花を育みそして散らす、則ち終わりと始まりをもたらすものなり。時に護り時に壊し、我の剣とならんだろう。我、全てを護り全てを壊し、残されしものより再び世を創り出さん。永遠に続くものならば風となりて蒼翠き天空へと還るべし!第七次魔術-永廻の風龍-!」
これで水ごと飲み込んでやる...喰らい尽くす。絶対に、俺は託されたんだ、皆の思いを。積み上げて来たものを...だから!
「この大波はその程度の魔術じゃ飲み込みきれないわ!その前に決着をつけてあげる。所詮あなたはここで負けるの、全てはチームメイトを纏めきれなかったあなたのミス、そしてあなたに頼りきっていたチームメイトのミス。所詮あなたは、あなた達の限界はここまでなのよ!総員で片をつけるわ!」
これまでか...!この盾ももう持たない、それに魔術の制御に集中してるおかげで魔装の運用も難しい。ここで総攻撃されたら保たないぞ。
「何が...負けるのよ...。」
「え?」
「誰が負けるって言ったの!」
まさか、エリカか?嘘だ。水属性魔術は弱点のはずだ、それに第七次魔術だぞ?いくら魔術に長けてるとはいえ無理だ。
「私達を...それに、ヴィルヘイムを...バカにするなぁぁぁぁっ!」
巨大な炎が発生し、水を蒸発させていく。
「何!?そんな、この水は...嘘でしょ?あれは炎なのよ、そんなはずが...この水が蒸発するなんてありえない!」
「あんたも力を貸しなさいよ...魔剣イフリート!」
エリカはそう叫ぶと、魔装が展開される。やめろ!今のお前の状態じゃ暴走して、更にお前自身が危ないぞ!
魔装が展開されると、辺りは炎によって激しく燃え盛る。その圧倒的な威力に周囲の敵は吹き飛び、戦闘が困難となる。
「待たせたわね、バカ。」
「くたばったかと思ったよ、いや...この程度で膝をつくような奴じゃないか、お前は。」
「当然じゃない、私を誰だと思ってるの?」
「負けず嫌いで向上心の塊、そして...いや、なんでもない。」
言おうと思った、でも...何故だろう、重要なことのはずなのに思い出せない。
「何よ?...ま、いいわ。決着つけましょ?」
「ああ。」
「炎神よ、全てを焼き尽くし灰と化せ。万物は黒塵と化し、炎は我が魂の如く燃え盛らん。汝、我が希望を導くならば、炎の如く勝利を照らせ、炎の如く希望を照らせ!我、炎に全てを捧げよう。さすれば愛しきを守らんとする!第七次魔術-
その炎はレイスに向かって放たれる。レイスは魔術を詠唱するも、省略を行なったため威力は落ち、そして敗れた。
「よって、勝者...199班!」
この時、入場時よりも大きな歓声と盛大な拍手があがった。
「私達...勝ったのよね...?」
「ああ、ありがとう。お前のおかげだ。」
「べ、別に...その...。」
その時、エリカはホッとしたのか疲れたのか俺に向かって倒れ込む。おそらく両方だろう。俺はそれを受けてそっと寝かせる。
そしてレイスは涙を流していた。
「ごめんなさい...ごめんなさい!私怖かったの、ずっと落ちこぼれで、あの人の背中を追いかけてた貴方が。気がつくと私の手に届かない存在になるんじゃないかって。私も貴方と肩を並べて一緒に戦いたかった、だからこそ血を吐く程の努力をしてきた、第七次魔術だって安定させれるようにずっと訓練した。でも...でもそれだけじゃ皆を守れない。だから、どうしていいかわからなかった。ずっと貴方に相談したかった、でもそしたら私は貴方と肩を並べることができない。それが嫌でずっと私に嘘をついてきた、私は...弱いの...。だから...。」
「もう、いい...。」
「え...?」
「アンタは二つ間違ってる。一つは、自分に嘘をついて、俺達を目の敵にしたこと。やりたくなかったのにそんなことをしていた、どうしていいかわからないなら、逃げずに考えれば良いだろ?どんなに長い時間がかかったとしても、思い詰めすぎず、気楽にやればいつかは見つかるものだぞ?そして二つ目、あんたは全然弱くない。むしろ、エリカがいなかったら負けてたぞ、俺は。」
「そんな、私はずっと酷いことをしてきた。私に許される資格なんて...。」
「俺はそんなことは気にしない、でも...どうしても自分自身を許せないなら...今よりもっと強くなって、魔導騎士になった時に俺と一緒に魔物を倒そう。そしたら俺は、今までのことを全て許そう。」
「ごめんなさい、ごめんなさい...。」
「ごめんなさいじゃなくてありがとうって言ってくれ、こういうの苦手なんだ。」
そう言うと、レイスはとても嬉しそうに笑ってありがとうと言った。