魔導騎士になりたくて 作:クー
「よう、よく逃げずにきたな。まあ、ここで負けた方が諦めるか。なら俺がその手伝いしてやるよ、だははははははっ!」
「僕が勝ったら、もうこんなことは辞めてほしい。」
「なら、てめえが負けたら...?俺に土下座してこの学園から出て行けよ?まあ、確定してるようなもんだけどなぁ?じゃ、先生。合図をお願いします。」
「はぁ...こんな賭け事許されるはずないけれど、学園長の黙認だし。あの方は何を考えていらっしゃるんだ全く。それじゃあ、笛を鳴らしたら戦闘開始です。では、持ち場について。魔装展開!」
「魔装、展開っ!」
「よし、練習通りすれば多分いける。もう、一ヶ月前の僕とは違うんだ、いける...やってみせる。」
そして笛が鳴った、戦闘開始だ。
「さあ、どうするヴィル。ここがお前の最初の壁、そして新たな一歩だ。」
「まあ、先輩が手をかけてもあいつは一ヶ月やそこらじゃ成長しませんよ。」
「さあ、どうかな。お前は見てないがあいつの努力量や熱意は半端な物じゃあないぞ。」
「努力やそこらでどうにかなるほど、現実は厳しくないってあんたも知ってるだろ。」
「まあな...。だが、あいつは俺を超えるかもしれないぞ。俺よりも熱いものを感じるからな。オルディア、お前の見る目も変わると思うぞ。」
「ふんっ、どうかな。」
僕は距離をとり、回避と反撃のしやすいように位置を安定させる。
「おいおい、どうした前みたいに攻めてこいよチキン野郎。そんなんじゃあ、いつまでたっても勝てねえぜ!おらおらっ。」
予想通り、連射をしてきた。おそらく逃げながら反撃することを想定したのか偏差射撃までしてきている。
「逃げるとは一言も言ってないよっ。」
僕は地面を強く蹴り、高くまで飛ぶ。そして魔術を詠唱する。
「(いけるっ、僕は前とは違う。意識を集中して相手の攻撃に翻弄されるな。)」
「バカが!がら空きなんだよっ。」
やはり銃口を向けて来た。来ると思ったよ、確かに彼は判断力や射撃の精度が高い、でも欠点がある。
「どうしよう、あれじゃあ的ですよ先輩。」
「あれは判断ミスね...。」
「まあまあ落ち着いてみろ一年坊主達、あいつは考えて行動してるよ。」
欠点、それは...。
「いけっ...ストーム!」
「そんなもん喰らわね...ぐはぁっ!?」
そう、それは威力は高くても弾速はそこまで速くない。だから僕のストームでも充分に勝てる。
「こいつっ...俺に攻撃を当てるだと。生意気なんだよお前はっ!」
やっぱり冷静さを崩した、いけるっ。このままやれば勝てる。
「ヘッ...バァカ。」
...!?
何かがおかしい、一瞬笑ったような。
「喰らいやがれ、第二次魔術
まさか、あいつが冷静さを欠けさせて乱射したように見せてたのは。
「うっ...!あぁぁっ!」
「アッヒャヒャヒャヒャ、だせえよなぁ?一回攻撃当てれたくらいで図に乗りやがってさぁ?だからてめえは負けるんだよバァァァッカ!アヒャヒャヒャヒャッ!」
「まずい、やっぱりまずいですって。」
「アイツ...そうとう下衆ね。人を騙す事が得意な感じがするわ。」
「確かにあのひよっ子は一ヶ月前に比べりゃ成長した。だがそれは赤ん坊が立ち上がれるようになったくらいであって、走りの競争ができる訳じゃあない、つまりそういう事だ。」
「なら、見守ろうじゃねえか。あいつが走り抜けれる、そんな力がつく所をよ。」
まずい、このダメージは流石に。畜生、乱射したように見せかけて僕をあの位置に誘導したんだ。あらかじめ詠唱しておいて...気づくのが遅すぎた。駄目だ、僕はやっぱり勝てない。
ここで僕は膝をついてしまった、もう力が出ない。足が、足が動いてくれないんだ。
「おい、先生。さっさと判定を。」
「待ちたまえ、膝をついたくらいで負け判定は...。」
「続行しなさい。いいから。」
「こ、この声は学園長!どうして。」
「私は見届けます、彼の成長を。」
「チッ...邪魔が入ったか。まあいいさ、てめえが無様に負ける様がもっと楽しみになったからよ。アッヒャヒャヒャ!」
もう無理だって、僕にはどうしようもないんだ。目を瞑ろうとしたその瞬間だ、僕の脳にある言葉が過った。
ーあのなぁ、決めつけるのが早すぎるんだよ。やってもねえのに決めるなんて勿体ねえ、チャンスなんていくらでもある。バカにされても、嘲笑われても、貶されても、進み続けりゃいいじゃねえか。最後の最後で勝った奴が勝ちなんだよ。ー
まだ...頑張ってみるよ。ここまで頑張ったんだよ、こいつを倒せなきゃ魔物なんて倒せない。だから、一歩ずつでも僕は...進みたい。
僕はもう一度立ち上がり魔装を握りしめる。
「あ?はぁ...。興醒めだ、サンドバッグにできっと思ったのによぉ?いいぜ、もう歩けねえようにしてやんよっ。」
再び乱射してきた。やっぱりまたあれを使う気か?僕は少し賭けではあったが避けながら少しずつ前に進むようにした。
「いいぜいいぜ、楽しもうぜ。当たりに来やがってよ、無様に死にやがれってんだよゴミ虫が。てめえは一生ゴミ虫止まりなんだよ。」
前方に向け避けようの無い弾幕か、さっきよりも高く飛ばなきゃいけないか。でも、それをした所で今度こそ読まれるはずだ次の手が。どうすればいいんだ。
その時あるアドバイスからある考えが浮かぶ。そうか、そうすればいいのか。僕にはもう一つ武器がある、皆にはおそらくできないことが僕にはできてしまうんだ。
例え、皆ができることが苦手でも...そんな僕にも誇れるものはあるはずなんだ。だから...だから、僕はこの壁を超えてみせる。
ありがとう兄貴、僕は、僕はきっともっと高い壁を超えてみせるよ。
そして色んな思いを込めて地面を蹴り宙高くに跳ぶ。
「ハッ!またその手かよ...死ねぇっ!」
僕はそのまま奴の真上に来るように跳び、そして魔装を奴に向ける。
「もうその手は効かねえよ、バカが。」
僕は集中し魔装に魔力を流し込む、そして片手を後ろにまわし手のひらを空に向ける。
「あいつ...やるつもりか。」
「え?どういうことですか先輩。」
「何をする気なの。」
行けっ、僕はもう進むんだ。どんなことがあっても、何度でも立ち上がって進んでみせる。そして、高い壁でも超えてみせるよ。
「っ!追風《ブロウ》ッ!」
そして手のひらから風を発生させ、魔装の先端に風を込める。
「なっ...バカな!そんな僕が負けるなんて、嫌だぁぁぁっ!」
風に押され、魔装は彼を貫いた。コロシアムの防護システムのおかげで痛覚しかないから命に別状はない。
「はぁ...はぁ...やったよ。兄...貴...。」
僕は意識を失った、嬉しさと、そして自分の限界を超えたことで力が抜けてしまった。
「えっと、今回の試合。勝者 ヴィルヘイム!」
「やりやがったな、あいつ。自分で考えて学んだ事を使えたじゃねえかよ、あっははは!」
「す、凄いよ。見ない間に成長してる、凄いよ。」
「まあ...やるようにはなったじゃない。」
「ふんっ、あんなのはまぐれでしかない。相手の油断が招いた結果だ。」
「だが、勝ったことには変わらない。あいつには折れそうになっても立ち上がる力がある、強さがある、そして何より学んだ事を自分流に使える才能がある。皆にはできないことだってできてしまう、そんな魔導騎士になれるさあいつは。」
目が覚めた時には外は夕暮れだった。
「目が覚めたか、ヴィル。お前やったじゃねえかよ!あっはははは。」
「兄貴...僕、やったの?」
「ああ、お前はよくやったよ。クラス内一位をぶっ倒したんだ。」
「凄いよヴィルヘイム君、僕は勝てるって信じてたよ。」
「ま、まあよくやったじゃない。あと...その、あの時はごめん。許してもらえるとは思ってないけど...その...。」
「いいよ、別に。僕が弱かったのは事実だし、でも悔しかったからこうやって強くなれたのかもしれない。だから、いいよ。」
「本当...?よかったぁ...。」
「ま、そういうことだ。改めて第41班として頑張っていくぞヴィル!明日からも訓練きつくするからな?」
「えぇ...それはちょっと待ってくださいよ。」
辺りが笑顔と笑いで包まれる、僕ようやく認められたんだ皆に。
ここから僕の、魔導騎士を目指す日々は新たに区切りがついたのだ。