魔導騎士になりたくて   作:クー

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第5話 馴染みつつある日常

初めての勝利が忘れられなく、家でもずっとにやけてしまった。

 

「どうしたの?ヴィル兄。嬉しい事でもあった?」

 

「あぁ...えーっと、まあね。へへへ...。」

 

「もしかして、恋人ができたとか...?」

 

「え?いやいやいや!こんな僕に出来るわけないってそんな。」

 

「こら、あんまりお兄ちゃんをからかうのは駄目よ?ターニャ。そんな自分を下に見なくても良いのよ?ヴィル君、貴方は今日勝つ事が出来たのよ?クラス一位に、それも名家の人間にね。」

 

「そうなの?凄いヴィル兄!」

 

「えっへへへ...。そうかなぁ?」

 

「そうよ、これは誇っても良いわ。そして、その自信でもっともっと強くなりなさい?でも、あんまり調子づくのは駄目よ?慢心は悪い結果を招くわ。」

 

「はい、わかりましたドロシアさん。」

 

そうだ、僕はこの手で初めて勝てたんだ。明日からも頑張ろう。

そう思いながら寝床につく、しかし、興奮しているせいかなかなか寝れない。

そんな時、携帯通信機に着信が入る。メールだ、誰からだろう。

 

『もし起きてたら少し外で話をしないか?』

 

兄貴からだ、僕は上着を羽織って皆を起こさないように外に出た。

 

場所に向かうと、既に兄貴がいた。缶珈琲を持っていた。

 

「ほらっ、お前の分だ。今日勝った奢りといったら安くてすまないな、生憎金がねえんだわ。」

 

そう言って兄貴は缶を投げる、僕はそれを受け取ると座る。

 

「そんな、それでも嬉しいですよ。」

 

「ははっ、そうか。なら良かった。」

 

そう言うと兄貴も階段に座る。夜の空を見上げるとこんなに綺麗なのか、そういえば両親とも星空を見に行ったことあったっけな。

 

「どうしたんだ?空なんか見上げてさ。」

 

「昔のこと思い出してね。昔さ、よく両親と星空を見に行ったことがあったんだ。何気ないことなのに、今になったら凄く懐かしくてさ、とっても...とっても僕にとっては宝物のような日々だったんだなって。」

 

「そうか...。俺もよ、両親失って今じゃ妹と二人暮らしでよ。かなり生活苦しいんだけど、俺はそれでも楽しいんだわ。生活費やら何やらは学園一位ってことで学園長から支給されてるんだ、ほんと頑張ってきてよかったと思うんだわほんとうに。」

 

「そういえば、兄貴と学園長ってどういう関係?」

 

「ああ、言ってなかったか。お前と同じように上手くいってなくてさ、教師陣も手こずったのか学園長と俺でタイマン指導があったんだわ。そんで、俺の可能性に目をつけられてそっからというもの苦しくて吐きそうな毎日だったんだわ。まあ、そのおかげで今の俺があるから頭上がらねえんだけどな。ははっ」

 

兄貴もそんな時期があったんだな。

 

「そういえばよ、お前はこれからどうしたい?」

 

どうしたいって、どういうことなんだろう。

 

「例えばどういう魔導騎士になりたいか...。それは前にも聞いたか。いや、それとは別に、攻撃士(アタッカー)だとか防御士(ディフェンダー)とか...あとは援護士(サポーター)とか、指揮士(コマンダー)とかな。これから先、チーム戦とかあるだろうし決めといたほうがいいかなって。

 

「う〜ん...僕は攻撃士にはなれそうにないなぁ...あんまり攻撃力ないし...援護士かな。」

 

「おいおい、お前はいっつも控えめだなぁ...もっと積極的になっていいんだぞ?例えばお前には皆には無い武器があるだろ?それを活かすには攻撃士しかねえと思うんだわ。だってよ、不意を突かれたことでやられる奴だって多い、お前に最適だと思うんだわ。別に近距離で殴り合えとは言わない。少し距離をとって攻撃でもいいと思うぞ。」

 

「そう、かなぁ?考えてみるよ。」

 

「おう、そういえば今月末にチーム戦の模擬戦があるんだ。六月中旬からの校内戦に向けての練習(リハーサル)って訳だ。」

 

そう、この学校では六月中旬から校内戦という1対1、5対5の公式戦に基づいた試合形式のものがある。

1対1は優秀な人をクラスから出して出場、5対5は各班で必ず出場することになっている。高等部では1対1も5対5も全員出る事になっており、勝ち上がった優秀な人、もしくは班は公式戦に出場できるらしい。

 

「お前ほんと眠そうだな、珈琲飲んだだろ。」

 

「あんまり珈琲飲んでも効果無いんですよ...あっはは...。」

 

「お前ほんと変わってる奴だな、あっはははっ。俺はこの後試験勉強だから頑張るわ、気分転換につきあってくれてありがとよ。じゃあな。」

 

「はいっ、頑張ってください。」

 

「おうよ、任せとけ。」

 

こうして家に帰り寝床につく。明日からも頑張れそうだ。

それからというもの、僕は皆と同じように訓練できるようになっていった。

 

「ねえ、最近ヴィルヘイムの奴すげえよな。」

 

「自信ついたんじゃねえの?まあ、逆にあいつは学園来れなくなってるけどな。」

 

「まあ、あれだけ威張っておきながらクラス最下位に負けたんだもんな。そりゃあ顔真っ赤だわ。」

 

そういえば最近、あいつは学園に来ていない。まあ、来なくても僕には何の支障もないし、何より最近普通に訓練できていることがとても嬉しい。

 

「なあ、ヴィルヘイム。最近訓練でも息上げずにやってるけどどうやったらそうなるんだ?」

 

「まあ...その。色々と先輩にね...。」

 

「お前も大変だな、まあそれでもここまで頑張れるってのは素直に凄いと思うぞ。これからもお互い頑張ろうぜ。」

 

「うん、そうだね。もっともっと強くならないと。」

 

話かけてきたのはクラス内36人中で丁度10位のアルフレッド=アレイサーだ。属性は雷で魔装は槍型だったかな。

 

「そういえば、お前の魔装どうなってるんだ?」

 

「ああ、あれ...?なんていうか訓練中に偶然出来ちゃってね、それから練習したらあんなふうに...」

 

「しかも、風魔法を自分を押すように使うなんて普通あんな発想できねえよ。それにあの風魔法って、普通相手の勢いを止めるもんだろ?」

 

「ああ、あれね。相手の勢いを止める威力があるなら自分に対しても何か使えないかなぁって急に思いついてさ。それで実戦で使ってみたんだ。」

 

「嘘っ、あれを実戦で初めて使ったのかよ。はは...すっげえや。もしかしたらお前がクラス内1位の座をとっちまうかもな。おもしれえや。」

 

褒められたみたいだ、それにしても最近クラスで少しずつ馴染めつつある。

僕のことを馬鹿にしたクラスメイトに対してはレイスが怒って謝らせたおかげであれ以来何もなくなった。レイス達も僕のことを少しずつだけど認めてくれてるみたいだし。

そんな感じで放課後訓練も同じように皆と同じ訓練に励めるようになっていった。

 

「そういえば、ヴィルヘイム...といったか。」

 

「はい、そうですけれど?」

 

「最近お前の成長が見るようにわかってな、それは褒めてやる。だがな...」

 

なんだろう、少しばかり近寄りがたいそんな雰囲気を放っている。

 

「自信はあまりつけすぎない事だ。挫折したときのダメージはその分でかくなる、気をつけておけ。」

 

「はい、わかりました先輩。」

 

「ふん...お前が使えなくなったら少しばかり大変だからな。まあ補欠といったところだが。」

 

補欠...か、まだ僕はそのくらいの力しかないのだろうか。

 

「まあまあ、そう言うな。明日のチーム戦に向けて話したいこともあるしな。指揮士、攻撃士を同時に俺は行なう。オルディアは攻撃士、防御士だ。お前の剣と楯は頼りになる。」

 

「ああ、わかった。任せとけ...。」

 

「それに、レイスは援護士と攻撃士、どっちでもいい。」

 

「なるべく両方やってみせます。医療魔術もできますし。」

 

「わかった、完璧にこなそうとしなくてもいい。できるようにやってくれ。」

 

「エドは攻撃士で頼むぞ。」

 

「はい、僕にできることならやってみます。」

 

「それで、お前はどうする?ヴィル。」

 

「僕は...やっぱり、攻撃士でいきます。」

 

「よし、わかった。なら作戦は...」

 

作戦会議が始まり明日のために準備を整えた、そして今日の練習は無しだそうだ。明日の為に体力魔力温存しとけということらしい。

帰り際、兄貴は僕にこう言った。

 

「そうだ、オルディアのことな。ああ言ってるけどお前のこと認めてるんだわ、ほんとつれねえ奴だよな。でもよ、あいつもあいつで挫折味わってるから変にポジティブになれねえんだろうよ。そういうことだ、気にすんな。って訳で明日は頼んだぞ。」

 

 

 

そして翌日、対戦表を渡され指定時間にコロシアムに向かうと。

 

「よう、やっぱりお前とだって大体予想してたぜ、ヴィルヘイム。」

 

対戦相手には、アルフレッドがいた。向こうは3年1人、2年2人、1年2人...と、少し経験者が多い分強そうだな。

 

「まあ、経験者の数じゃ負けてるが。実力じゃ俺らは負けねえ。安心しろ、俺がいるからよ。」

 

兄貴は皆にそう言うと、魔装を各自展開した。

 

「これより模擬戦を開始する、互いに位置につけ。」

 

こうして、初めてのチーム戦が始まるのだ。

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