魔導騎士になりたくて 作:クー
僕は結局足手まといのままなのか?やっと強くなったと思った、でもあれはただのまぐれだったのか?
僕はもっと強くならなければならないんだ、こんなのじゃあ魔物を倒すなんて不可能だ。僕の望んだ魔導騎士はこんなのじゃない。
「そう思い詰めるな、あれは練習だ。本番までまだある。大丈夫だ、俺がいるんだ。はっはっは。」
そうじゃない、僕が強くなければいけないんだ。僕以外が強くても何にも意味がない、だから。
「そうよ、あんまり思い詰めないこと。あんただって少しずつだけど強くなってる訳だし、あの時の判断はなかなかだったわ、でも相手が一枚上手だっただけで...。」
でも、どんなに相手が上手でも勝てなきゃ意味がない。魔物は人よりももっともっと強い、凶暴で凶悪で...。だから意味がないんだよ。
僕はその日から前よりも厳しい訓練のメニューにした、誰かの提案でもない自分自身の判断で。
「あいつ...自分自身の判断であそこまで...。それだけの思いがあるのはわかった。だが、無茶な鍛錬は自分の身を壊すだけだぞ。」
そうだ、もっと鍛えていれば。俊敏な動きができていればあのまま倒しきれた、もっと上手く魔装を使いこなせればあの魔術を弾くことだってできたはずだ。
身体だけじゃない、もっと魔術を勉強するんだ。せめて第二次魔術くらいは使いこなせなければ...。
朝起きれば外で錘を付けて走り込み、そして筋力をつけるためのトレーニング、朝食をとって学園で授業を受ける。座学と座学の間は復習と予習を行なう。
誰よりも劣っているなら誰よりも正確に努力をしなければいけない。僕が強くなる為にはこれしかない。
そんな生活を毎日しているせいか、数日後に僕は訓練中に倒れてしまったようだ。
「よう、目覚めたか?ヴィル」
「ん...、ここは...保健室?」
「ああ、お前は少し無理のしすぎだ。」
でも、ここまでしないと強くなれない。強くなれないんだよ。
「言っただろ、そんなすぐに人が強くなれる訳がない。無理な鍛錬はすぐに自分の身を壊すだけだってな。お前はこうやって自分から強くなろうと思える強い意志がある。それだけだって普通の人には無い物なんだよ、お前ほどの強い意志がある人間なんてそう居ない。だからこそお前は強いんだ、きっと俺くらいになったときには俺を超えてるさ。実際、今のお前くらいの時と比べれば俺なんてもっともっと弱かったさ。諦めてたくらいだしな」
そんなに褒めても、僕は...全然、嬉しくなんて無いよ。今くらいじゃなくてもいい、厳しい訓練を続けなきゃ、いけないんだ。そう思って立ち上がるが体が言う事をきかない。
「ほら、もう少し寝てろ。そして今日の訓練はやめて明日の訓練は軽くしておけ。」
「はい...。」
そこからというもの、何もかも手がつかなくなっていた。普段と同じように訓練はするが、内心では全く満足できていない。
そのように過ごしていくうちに、ついに本戦が開始してしまう。
「いいか?俺が今まで教えたことを活かせ。そうすればお前の本来以上の能力が引き出せる。大丈夫だ、俺が前に立つ。」
「...はい。」
こうして試合が始まると前と同じ陣形で僕達のチームは立ち回る。
「ちょっと!あんたの立ち位置はそこじゃないはず...。」
「僕は僕らしい立ち位置でやってるだけだよ。僕はやっぱり支える側が一番...。」
「バカ!あんたはもっと自分から、自分から動くタイプの人間じゃない。」
なんだよ、僕はそれでも皆の役にはたてない、強くないから。足をひっぱるだけだ、能力がないから何もできないんだ。
「あんたは誰よりも上を目指して、誰よりも厳しい訓練をして、誰よりも馬鹿真面目に座学を学んで...あんた何をどうやったらクラス内一位の座学、学年トップ十人に入れるのよ!それだけ積み重ねれる人間が...自分から学びにいって自分から壁にぶつかれる人間は、もっと前に立つべきよ!そんな貴方を尊敬してたのに。」
そうか...僕は間違ってたのかもしれない。ちゃんと見てくれてる人間はいる、認めてくれる人がいる。入った時とは違う、僕は変わった。
少しずつ変わった。だから...僕は、少しずつでも昨日よりも強くなりたい。
「ごめん、目が醒めた。レイス、援護してくれる?」
「よし、あいつも元気になったっぽいね。」
「そうね、わかったわ。援護するからエドとヴィルヘイムは二人で一人を倒しなさい!」
「わかった、行こう。」
「ああ、わかった!」
エドが相手の一人をひきつける間に、僕は他の相手に第一次魔術を放ちいかにもその相手を標的としてるように見せる。
「今だよ!」
「うん、ありがとう!」
その合図と共に僕はエドがひきつけていた相手を背後から攻撃した。魔装は槍型となり、相手を貫く。
「よし、他の相手も僕達3人でなんとかしよう。」
「わかったよ。」
「援護なら任せて。」
「あいつら...成長したな。個人の能力が未熟でも、数人が力を合わせればそれだけ無限の可能性が広がる。」
「先輩、あいつらやれますかねぇ...」
「ま、いけるんじゃないか?俺らはさっさと目の前のこいつら倒すぞ。ノルマは後1分だ。」
「へいへい、やりますよ。やりゃあ...いいんだろ!」
こうして僕達は初戦を勝利で納め、そこからの試合を決勝まで順調に勝ち続けた。僕達はチームワークでなんとか勝ち上がった、少しずつだけど、一人ではできない戦い方がわかってきた。僕達なら絶対優勝できる、そう信じて寝床についた。