魔導騎士になりたくて 作:クー
ベルザーグ・グランジオ
学年1位、魔装は双剣型『エンキドゥ』、闇属性
「こいつ...なかなかやるじゃねえか。面白い、有望な後輩は嫌いじゃあない!」
「おいおい第四次魔術がこの程度かよっ!」
「無理言うな、お前は闇属性だろうが。そりゃあ...ちょっとは多めに見てくれよ!」
そんな、兄貴と対等に渡り合ってるなんて。このままじゃ押し切られるのも時間の問題だ、属性的に相性は最悪。闇属性や聖属性など特殊な属性は扱うのが難しく使える人は数千人に一人と言われてる。それだけ才能が必要なもので僕には何の縁もゆかりもない話だ。
でもそうは言っていられない、先輩達で相手をしているとはいえそれを互角に渡り合うレベルの相手だ。
「僕達もはやく応援に行かないと。」
「そうね、さっさと終わらせるわよ。」
「わかった、じゃあヴィル。もう少し頼む。」
僕達三人の連携も上手くとれてきている、最初の試合よりも僕達は強くなってる気がする。いいや、強くなっているんだ確実に。
相手の一年を全員倒すと、残りは例の一位、そして二年一人となった。
「相手が先輩とはいえ、僕達ならやれる。いける?エド。」
「ああ、やってみる。レイスはさっきと同様に頼む。」
「了解!いけるわよ私たちなら。」
エドと僕は二年の大剣をなんとか防ぎつつレイスは弓で応戦する。
「力負けしそうだ、まずいな...。」
「こうなったら一か八かだ...僕が引きつけるからヴィルはその間に。」
「でも...それじゃあ...。」
「迷ってる暇は無さそうだ、やるしかない。」
「わかった...じゃあ頼んだよ。」
そう言って僕は一度距離をとり、エドは二本の短剣で相手の大剣と対峙する。明らかに力負けするだろう。
「仕方無いか...第二次魔術『スパーカル・レイド』」
短剣から電撃が放たれ相手に大剣を押すが、相手はそれを受け止めエドを斬ろうとする。
「今だ!」
「わかった...っ!」
レイスは弓を引くと心の中で詠唱する。
「行きなさい...第二次魔術『アクアリア』」
放たれた矢は水を纏い、先は槍のように鋭く尖る。当然、背後から放たれた矢は相手を貫いたがそれと同時にエドは大剣で斬られた。
「すまない...後は頼んだ。」
「わかったわ、行きましょう?ヴィル。」
「うん、はやく行かないと。」
僕とレイスが駆けつけた時には残りは例の一年だけになっていた。
「ちっ...しゃらくせえな!」
僕らに向かって漆黒の刃が飛んでくる、おそらく第三次魔術相当のものだ。
「くっ...こうなったら、気休め程度だがやるっきゃないか。第三次魔術『グラシアル=ブロック』」
先輩は氷の壁を作り僕達を守る、しかし砕けるのも時間の問題だ。
「はやく行け!魔力注入で動けないが今ならまだお前らは助かる、さっさと行け。」
「わかりました、行こうレイス。」
「えっ...ちょっと。」
そう言うと僕はレイスの手を引き、氷の壁を飛び越える。
「おいおい、予想外だなァ?」
「それはこっちの台詞だよ、ったく...まさか本気出さなきゃまずいなんてな。とんだヤバいのが入って来たもんだな今年は!全解放『バースト・モード』」
兄貴の鎌は更に炎を激しく上げ、形状を変化させる。
「ならそいつをぶっ壊してやんよ!」
少しではあるが有利にはなっているがおそらくあれだけの魔力を解放すれば持って1分だろう。
「こうなったら僕も...レイス!頼む。」
「わかったわ、必ず勝ちましょう。」
僕は形状を槍型に変え、ベルザーグに向かい走る。
「ちっ...邪魔なんだよ雑魚の分際でよォ!」
敵の斬撃は速く、僕の目では捉えきれなかった。なんだこの威力と速さは。
「ヴィル!...よくもっ!」
レイスは視界を覆うくらいの数の矢を放ち、相手の隙をつくる。
「今です!」
「ああ、よくやったよ!流石は俺の、
紅き月は夜を照らし、空を赤く染め上げる。汝の心は炎のように、汝の手は鋭く切り裂く。第四次魔術、
激しく炎を上げた鎌は、三日月のような鋭い刃を放ち目視が困難な速度で相手に迫る。
「ああ、たしかに威力と速度は半端じゃねえな...だが、俺は甘く見てたなクソッタレ!」
なんと、異常な動きでそれをかわすと、兄貴を後にしレイスに迫る。
「なっ...!」
「俺は特別なんだよ...だから、普通と一緒にすんじゃねえ!」
レイスを刃で切り裂くと、次は僕を狙う。まずい、このままじゃ...兄貴!
「すまない...使い果たしちまった...でも大丈夫、お前ならやれる。壊せないなら超えてみせろ...!へへっ、情けねえな俺。」
そんな...僕だけなんて、無理だ。できるわけが...。
「いいや...できないなんて決めつけるのは速すぎる。」
「おいおい、てめえ如きが何張り切ってんだよ!」
確かに、絶望的だろう。相手との力量の差、技術の差、全てにおいて不利でしかない。
でも...皆がここまで繋いでくれたんだ。皆がここまでやってくれたんだ。
「おいおい、さっさと攻撃してみせろよ!てめえのお得意な奇想天外な発想で勝ってみせろよ!」
僕は相手の攻撃を耐えるのに必死だ、もう体もボロボロだし息も上がっている。風属性...でも僕は超えてみせる。壊せないなら超えればいいだけなんだ。だから...!
チャンスはおそらく一度。残り一分の間に一度だけ、このチャンスしかない。一つだけ癖があるんだ、相手の癖。
「ほらほらほら、残り時間はねえぞ!やらなきゃ負けるぞ!イヒャヒャヒャヒャッ!」
そう、たった一度だけのチャンス。それは
「これで終わりだ!雑魚が!」
相手は切り上げる直前、片方の剣を上に上げ直す癖がある。上に逃げられないように。当然横に逃げれば相手はそれを追って斬ってくる。
この一撃には少しだが隙が見える。決まれば確実だがその分相手は油断しているのだろう、無駄な時間がコンマ単位である。
「いくよ...第一次魔術、ブロウ」
僕は下に向けて風を放つと、空に上がろうとする。
「無駄だ!それは読んでるんだよ!」
僕は少しだけ微笑むと、上からくる刃を魔装で受け止め、それを受け流す。
「なっ...!」
相手は当然驚くだろう、予想を遥かに上回る行動に出られたのだから。
僕はさらに強めに風を放ち空高く上がると、勢いをつけて相手の頭上に魔装を投擲する。
「っ!速すぎる!」
確かに魔術では不利だ、だが魔装本体によるダメージは通るはずだ。
「ちっ...負けちまった...か...。何が俺に足りなかったんだろうかなァ...アーアッ...ダッセェ...」