西方の諸島における先住民の神秘的な生活とその文化について 作:悠里(Jurli)
五九四七、七月
某日
今朝、潮の様子を見に行くともう既に人がやって来ていた。しかし、どうやらそれは 陸の方からではなく、海の方からやって来たようだ。まだ死んではいなかった。髪は老爺の白、目は瑠璃の青だった。しかしそんなに老いている風でもなかった。神が彼を遣わせでもしたのだろうか。一体、何のために?
神の使いならば、いつまでも考えを巡らせている訳にもいかないと、ひとまず応急の手当をするために、彼を家に連れていくことにした。
見るに、余り怪我も多くなく、回復は早そうに見えた。服はボロボロであったが、絹の上物だったので、生地を繕って彼に返すことにしよう。それまでは多少馴染まないであろうが、
しばらくすると、彼が気がついた。
聞きたいことは山ほどあった。
と聞いてみたが、全く応じず、我々の言語を知らないように思えた。
すると彼は何かを話し始めたが、あれは言語だったのだろうか?言語とは言えぬような音だった。理解することはおろか、単語の境目さえ分からなかった。非常に興味深かったので、ここに書き留めておく。
しばらくするとまた異なる言語を話し始めた。彼の音声我らの言語の片鱗を見、祖先の語の類かと思って返してみたが、通じてない風だった。
しばらく見ないでいると、彼はいなかった。家の外を見ると、彼がいた。民々に囲まれているようで、何か問題でも起きやしないかと連れ帰ってきた。
言っても通じていないようだが……。
そういえば、彼はしきりに手元に何やら書いていたな。小さなボロボロの帳簿のようなものに、筆にあたるであろう棒を彼らの言語と同じく、風のよう、波のように素早く書き留めている風だった。我らの文字は箱を置いていく風なのに対照的で極めて興味深い。今後言語が通じるようになったら、彼らの文字と、彼らの言語について聞いてみよう。
脚注―西方の文化固有のものについて特に記す。
[*1]四之衣…西方の衣類の一種。布を4枚縫い合わせ、頭を通す部分に穴を開けたもの。
[*2]ここでは理字で発音を示したが、実際には