西方の諸島における先住民の神秘的な生活とその文化について 作:悠里(Jurli)
部屋に戻されてしまった、と思ったら疲れ切って倒れて寝ていたようだ。
どうやら私は、今はあまり外に出ないほうがいいらしい。彼らが一気に集まってきて、私に対して何を思っていたのか良く分からないが、今はここがどこで、彼らがどのようなものたちで、中央教会[*1]に対立する人間かどうかというのは重要なことだ。
もしかしたら、ここに類まれなる炭鉱や金銀財宝を取れるような土地があれば彼らから買い取って、或いは彼らを労働者にしてここを文明化するのもよいだろう。
そんなことを考えているうちに、私は奇妙なものを発見した。壁に掛けられた厚そうな紙に黒い塗料で何かが塗られている。これはこの地方独特の絵なのか、それとも魔よけのような何かなのか、とにかく奇妙だが、何か吸い寄せられる魅力を感じる。
「
じろじろ見ていたからに、部屋に入ってきた若そうな女主人が怪訝な顔で呼びかける。これが何なのか訊ければところだが、彼らの言語が良く分からない。何とかして「これは何ですか?」くらい訊ければばいいものを、言語を通じないとは全くもって不便で心細いものだと思った。
私はしかしこの時質問の訊き方を理解するための一つ方法を思いついていた。
手帳を開き、ぐちゃぐちゃな線を書いて女主人に見せる。
「
なるほど、今意味不明なものを見せられたからきっと「これは何?」と訊いているに違いない。多分「何」を表す単語がkarnanなのだろう。
今度は私は、貼ってあった黒塗料の何かを指して"Karnan"と言ってみせた。しかしながら、彼女には通じていないようであった。必死にその掛けられているものを指で囲いながら言うと得心したようすで次のように答えた。
「
うーん、"karnan"を繰り返しているようだが、良く分からない。発音が悪いんだろうか?女主人を見ているとそれぞれの要素を指してこう言った。
「
どうやらこれは絵や魔よけの記号ではないらしい。読めるということは文字なんだろうが、ぐにゃぐにゃしすぎていて、何が何の音に対応しているのか全然分からない。しかし、これが文字なのであれば何かを表しているのだろう。そんなことを考えているうちに、外から声がかかった。
ふと見ると、そこに居たのは髪が金色の女の子であった。
脚注―
[*1]中央教会……いわゆる「フィシャ・フォン・フィアンシャ」、イェクト・ユピュイーデャの時代は、宗教権威が世俗的政治権力を握る宗教戦争時代であったので教会の中でも最高位に位置するフィシャ・フォン・フィアンシャンは、最高権力を持った。