一週間プロデュース~目指せパーフェクトコミュニケーション~   作:シンP@ナターリア担当

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ゲームスタート!!~好きな物を好きなだけ~

 

「さーて無事にシンギングタイムも終わったところで」

「言葉どおり本当に歌ってたしな」

「細かいことは言いっこナッシングだぜ~恭二にーちゃん」

「そうだよ恭二。せっかく765プロのトップアイドル二人が生で、それもアカペラで歌ってくれたんだ。喜ばないとだよ」

「みのり!楽しそう!」

「んじゃ、気を取り直して、お互いの一人目のプレイヤー発表ターイム」

「まずは男性チームから、一発目のにーちゃんはだれだーい?」

「やふー!一人目はボクだよー!」

「ほほー!男性チームはピエるん!対する女性チームは~?」

「こっちはあたしだよ」

「む、奈緒ねーちゃんか~。それじゃ、お互いに選出した理由を聞いてみよ~」

「ボク、難しいゲームって出来ない。でも、音楽ならダイジョーブ!」

「あたしも似たような感じかな~。この先どんなジャンルが来るかわかんないけど、あたしが一番出来るのは音楽ゲームだろうし」

「うむす。二人ともアイドルやってるだけあって、リズムゲーには自信ありって感じだねぇ」

「ならば、その力を思いっきり発揮してもらおうじゃああ~りませんか」

「それじゃあ後ろで頑張ってくれたスタッフのにーちゃんのお陰で準備も出来たことですし」

「早速第一回戦」

「「いってみよ~!!」」

 

 二人の声が合わさると同時に、中央のモニターにはゲームの画面が映し出される。そこをカメラがしっかりと映し、その間に奈緒とピエールは中央付近の待機席に移動。残りのメンバーは少し外側の席に移動した。プレイヤーは一番真ん中、司会席にゲームの実機を置くので、そこでゲームをプレイする。真剣にやるもよし、実況しながらやるもよし。その人のポテンシャルが試されるのもこの番組の持ち味の一つだ。ちなみにゲーマー二人は、遊びがある時は基本かなり喋りながらやるが、本気モードに入ると一言も話さなくなるタイプである。

 

「最初のジャンルは音ゲー!」

「専用コントローラーを使ってレッツリズム!」

「楽曲はジャンルごとに分かれて、なんと150曲を収録!」

「今回は1回の勝負事に同じジャンルから曲を選んでもらうよ~」

「曲自体は変えてもいいし、あえて同じ曲で勝負を仕掛けるもよし!」

「さぁさぁ、先か後か、決めてちょうだいな!」

「う~ん、ここは様子見で後がいいけど・・・」

「やふー!それならボクが先にやるよ!」

「え、いいのか?もしかして知ってるゲームとか?」

「ううん。でも、奈緒は女の子。だから、優先するの、大事」

「おお~!ピエるんかっこいいー!!まさに王子様!これにはテレビの前のねーちゃん達も鼻血ものですなぁ」

「カッコイイよピエール!!」

「テレビの中のにーちゃんからも熱い声援がきてますなぁ~とまぁそれはさておき、奈緒ねーちゃんは本当に後でいいのかい?」

「そうだな。せっかく選ばせてくれるんだし、遠慮なく後にさせてもらうぜ!」

「それじゃあピエるん!楽曲のジャンルを選んでくれたまえ!」

 

 ピエールが真ん中の席へと移動し、ゲームを操作し始める。ほぼタイムラグもなく後ろのモニターにはその映像が映り、ピエールはジャンルをいろいろと見ている。J-POP、洋楽、アニメソング、懐メロなどのジャンルがある中、ピエールのカーソルはJ-POPで停止した。

 

「ほほう、J-POPとは無難ながら、いい所を突きますなぁ」

「ここなら知ってる曲、多そう!」

「うむす!絶対に洋楽とかよりは知ってる曲のオンパレードですな!」

「ほんじゃ、早速一曲目を選んじゃってちょうだいな!」

 

 ピエールが曲を選び始めてる間、スタッフに混ざり様子を見ていた彼は他のメンバーの様子を見てみる。恭二と沙南は真剣そのものだし、みのりも言わずもがな夢中で見ている。比奈は少しあくびをかみ殺してる状態だが、彼がジッと見つめて、目が合った瞬間にヤバイと思ったか、すぐにしっかりと表情を引き締めていた。奈緒はというと、どことなくそわそわしているのが伺える。彼が何かあったかとサインで聞いてみたが、特に何もないとの答えが返る。そんなやり取りの間にピエールは曲を決めたのか、画面には2クールほど前のドラマの主題歌になった曲が選択されている。

 

「うーむ。しょっぱなの曲としては申し分ない知名度と難易度ですなぁ。んではでは、お手並み拝見といきやしょう!」

「さぁピエるん!レッツスタート!」

「やふー!ボク、頑張る!」

 

 ゲームがスタートすると、曲が始まる。どうやらこのゲームは、上から下にノーツが降ってきて、それをタイミングよく叩くタイプのようだ。基本は落ちてくる場所にあわせてボタンを押し。長押しや矢印なんかは、専用のタッチパットでも出来るようだ。手元のボタンと、タッチパットの操作で忙しいが、ピエールは早い段階で慣れたのか、曲のAメロ終わり頃から順調にコンボ数を増やしている。

 

「やふー!このゲーム!楽しい!」

「うむうむ。やっぱりゲームは楽しんでなんぼですなぁ」

「調子よさげなピエるん!このままラストまで行っちゃうかい!?」

「がんば・・・あっ!!っとと」

「おおっと!間一髪セーフ!長押しの終わりに矢印とは、中々に巧妙なトラップですなぁ」

「ピエるんの反応速度も中々よのぉ。離す直前に指先だけで横入力を成功させるとは」

「もうちょっと・・・あぁっ」

「ありゃりゃ。今度は失敗。やっぱりラスサビには引っ掛けがあるのが音ゲーの常識じゃの」

「てなことを言ってる間に一曲メ終了ー!!」

「うー・・・もう少し頑張りたかった・・・」

「さてさて、今回はMAXコンボで勝負するので、ピエるんのコンボ数は~~じゃん!357コンボ!!」

「初プレイのゲームでこれなら見込みあるね~」

「いいよ!よく頑張ったよピエール!!」

「やふー!次はもっと頑張る!!」

「さてさて、次は奈緒ねーちゃんの番ですぜぇ?」

「J-POPから一曲、さぁさぁ何を選ぶんDai?」

「う~ん・・・」

 

 今度は奈緒の番だ。中々決めかねていたが、ようやく決めた一曲は、他事務所のアイドルの曲のようだ。

 

「アイドルの奈緒ねーちゃんが、別のアイドルの曲をゲームでプレイ。これは新たなハリボテーションのフラグかな?」

「コラボレーションな。というかそんなのないから!怒られちゃうから勝手なこと言っちゃダメだって!」

「そこらへんはほら、えらーいとこにいる大にーちゃん大ねーちゃんがちょこちょこっとしてくれるから」

「いや、あっちで小にーさんがバッテン出してるから」

「ちぇっ、つまんないの~」

「もっともっとハンガリーにならなきゃだよにーちゃんたち!」

「ハングリーな。まーた下の方にテロップで出るんだろうけどさ」

「そんなオトナのジジョウは置いといて、さぁさぁレッツプレイだよー!」

「ふぅ・・・よし!」

 

 雑談を終えて気合を入れてから、奈緒のゲームがスタートした。サビから始まるタイプの曲のようで、いきなりの速いテンポに少し調子を崩されていたが、先にピエールのを見ていたお陰か少し調子よく出来ているように見える。

 

「ほほう。伊達にピエるんに先にやらせたわけじゃありませんなぁ」

「ところで奈緒ねーちゃん。さっきスタッフのにーちゃんにあっつ~いラブコールをしてたけど、あれはなんDai?」

「ちょっ!ら、ラブコールって!あぁっ!」

「んっふっふ~。こんなことで取り乱しちゃうなんて、まだまだですなぁ~」

「先に見てからプレイなんだから、このくらいは当然じゃ~あ~りませんか~」

「んぐ!そ、それはそうだけどぉ!!」

 

 その後も亜美真美からの言葉は続き、あれよあれよと言う間に曲は進んで、気付けば終了。

 

「いや~ボロボロでしたな~」

「奈緒ねーちゃんにはガッカリだぜ・・・」

「うぅぅ・・・こんなのがあるって分かってたら絶対先にやったのにぃ・・・!」

「分かったことをただやるだけだなんてつまんないじゃ~ん?」

「さーてさて、奈緒ねーちゃんのMAXコンボは残念ながら261と悲し~い結果となってしまったので」

「音ゲー勝負1本目は、ピエるんの勝利!!」

「「ぱちぱちぱち~!!」」

「やふー!勝ったよ!恭二、みのり!」

「いいぞ、ピエール!その調子でいこう!」

「どんまいだよ奈緒さん!」

「まずは落ち着くっスよ~」

 

 双方から応援や賞賛、アドバイスが飛び交う中、ここで一度休憩が入る。亜美真美たちはスタッフと打ち合わせをしているが、打ち合わせというよりは、あまりやり過ぎないで欲しいという嘆願のように思える。そんなスタッフを苦笑いで見ている彼の元に、奈緒がやってきた。

 

「あ、あのさ・・・プロデューサーさん」

「ん?どうした?奈緒」

「つ、次なんだけどさ・・・あたしがジャンルを選ぶと思うんだけど・・・」

「順番的にはそうなるだろうね。何かあった?」

「いや、そうじゃないんだけど・・・えっと・・・」

「そうだな・・・私からアドバイスするとしたら、好きにやればいい」

「っ!い、いいのか?」

「大丈夫ですよ。それとも、奈緒のファンは、一つの番組の一つの企画だけで、奈緒のことを嫌いになるかな?」

「そんなことない!ファンの皆は、あたしが好きなものや、あたしの気持ちを良いって言ってくれてる!だから・・・あ・・・」

「分かったでしょ?それでいいんですよ」

「うん。分かった!あたし、全力でやるよ!」

 

 最初に声をかけてきた時の彼女は、どこか浮かない表情をしていたように思えるが、今は見るからに晴れやかな表情だ。見ていた沙南や比奈も安心した表情だが、同じく見ていたみのりは、目に涙を浮かべながらうんうんと頷いている。彼も彼女のファンの一人なので思うところがあるのだろうが、事情を知らない人が見たら完全に不審者一歩前だろう。みのりがイケメンでなければ通報間違い無しだ。そんな格差社会はともかくとして、15分の休憩が終わり撮影再開となった。

 

「それじゃあ気を取り直して、今度は奈緒ねーちゃんが先にやる番かな~?」

「さぁさぁ奈緒ねーちゃん。ジャンル選択を・・・」

「もう決めてるよ!あたしが選ぶのはアニソンだ!」

「わぁお!思い切った選択だ!しかしそれもそのはず、前のゲストの時にあっつ~い話をしてくれたのを覚えてますとも」

「奈緒ねーちゃんと言えばアニメ!音ゲーと言えばアニソン!もはや常識と言ってもいいですなぁ」

「好きなものだったら負けない自信はあるよ!」

「自信満々だねぇ!そんじゃ、曲のチョイスもいってみようか!」

 

 よし、と一息入れてから奈緒は曲を選び始める。きっと、アイドルなのにアニメが好きという一面を、思いっきり出していいのか心配だったのだろう。しかし、彼の言葉で自信が出たのか、今は「こんな曲が入ってるのか!」「この曲まで!?」と、嬉々として曲を選んでいる。その楽しそうな表情のお陰で、現場の空気はかなりやわらかくなっているのに気付いていないのは、本人だけなのだろう。勿論気付かないからこそいいのだが。

 

「よし!これに決めた!」

「おお!これは毎週日曜朝8時から、アニメタイムで絶賛放送中の魔法少女フルボッコちゃんリターンズのオープニング曲じゃああ~りませんか!」

「丁寧な説明をサンキューだぜマイシスター!この曲ってことは、奈緒ねーちゃんも本気だねぇ」

「あぁ!まずは一本追いつかないとな!!」

「その意気だぜ奈緒ねーちゃん!それじゃあ~」

「レッツプレーイ!」

 

 曲が始まり、画面には先ほどまでと同じようにノーツが降ってくるが、先ほどと違う、アニメのオープニング映像が後ろで流れている。最初こそそれを見て少しテンションが上がっていた奈緒だったが、すぐに集中しなおして、コンボ数をしっかりと稼いでいく。そしてなんと・・・。

 

『フルコンボ!!』

「わーお!!奈緒ねーちゃん!!まさかの初見でフルコンボー!!」

「これには見ているスタッフのにーちゃんねーちゃんからも拍手の雨あらしだぁ!」

「へへっ!どんなもんだ!」

「やっぱり聞きなれてる曲だと違うんですなぁ」

「やる気が全然違いましたなぁ」

「なお、凄い!でも、ボク、負けない!」

「うむす。ピエるんもやる気バッチシすなぁ」

「それでこそ男の子ってなもんよ!ではでは、早速選んじゃってちょうだいな!」

 

 奈緒のフルコンボに負けじとピエールもコンボを狙うが、惜しくも数箇所ミスしてしまい、コンボ数は届かずとなってしまった。これにより1対1の振り出しに戻り、またピエールが選ぶ番となった。今度は「みのりが色々教えてくれた!」として懐メロを選択。こちらもかなりの接戦となったが、ピエールが勝利。続く4試合目、奈緒がもう一度アニソンを選択し、またもやフルコンボをしてみせ、ピエールの奮闘むなしく、勝負は最終戦へともつれ込んだ。

 

「長く続いたこの戦いも」

「気付けば次が最後の1戦」

「最後はちょっと趣向を変えて、ジャンルを選んだ側が後にプレイする形でやろうじゃありませんか!」

「さてさて、どっちが選択するんDai?」

「やふー!それならなおが・・・」

「いや、ピエール、ここはそっちが決めてくれ?」

「え?でも・・・」

「あたしだと、またアニソンを選んじゃうからな。最後は、お互いにフェアにやりたいんだ」

「んー・・・分かった!ボク、選ぶね!」

「おー!ここにきてこのスペースシップ!美しきかな」

「スポーツマンシップだな」

「そうとも言う」

「さてさてピエるん、どのジャンルにするんだい?」

 

 うーんとうなりながらジャンルをクルクルと動かしていたピエールだったが、それはどれにするか悩んでいるというより、何か不思議なことが起きたのを確認しているような顔に見える。そして、悩み悩んだのか、ピエールは口を開く。

 

「ねぇねぇ。ジャンルって、これ以外にない?」

「およ?どったのピエるん?お気に召さなかった?」

「ううん。そうじゃなくてね、曲の数、足りない」

「足りない?」

「最初の説明、150曲って言ってた。でも、数えたら、120曲しかない。まだ、何かある?」

「ほほう・・・」

「なるほどなるほど・・・」

「「良くぞ聞いてくれました!!」」

「うわっ、びっくりした」

「何を隠そうこのゲーム、さっきピエるんが言ったとおり、最初に遊べる曲は120曲!」

「そして、曲をたーっくさんクリアすることで、隠しジャンルが解放されるのです!」

「そして、その隠し楽曲だけど・・・」

「なんと!この収録前に我らゲーム部のエース!杏奈ちんが!」

「数日間頑張ってもらって!全楽曲出してくれております!!」

「そのメモリーカードがこちら!!いやぁ、さすがは我らがエースですなぁ」

「ちなみに気付かなかったら、テロップとかでちょろっとだけ紹介して、さらーっと流されちゃってたよ」

 

 全員の思考が『気付いてくれてよかった』と統一されたところで、一度ゲームがリセットされ、メモリーカードからデータを読み込む。そしてジャンル選択画面には、先ほどまで存在しなかった『隠し楽曲』というジャンルが追加されている。そしてもう一つ先ほどまでと違い、各ジャンルの右上に『COMPLETE!』の文字が金色で表示されている。

 

「そしてなんと、本来隠し楽曲を出すだけでよかったところを」

「杏奈ちんのゲーマーとしての血が騒いだのか、まさかの隠し楽曲までフルコン済み!」

「このゲーム、フルコンするとMAXコンボ数が曲を選ぶ時に見えちゃうから、最大でどのくらいコンボが取れるのか分かるのだ」

「なので!先行はどのくらいのコンボ数の曲を選ぶか!」

「後攻は相手のMAXコンボを見てから、どのくらいの曲を選ぶのかという駆け引きが出来るのだ!」

「さぁさぁ面白くなってまいりました最終戦!」

「このピエるんからのキラーパスとも言える隠し楽曲!」

「「いってみよーー!!!」」

 


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