厄神様は幻想郷が大好き【完結】   作:ファンネル

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第十二話

 萃香と勇儀がにとりたちの援護に向かっている一方で神奈子、早苗、諏訪子の守矢勢は誰よりも鮮烈を極めていた。

 すでに博麗の巫女を含め、霧雨魔理沙、永遠亭のウサギ達、妖怪の山の天狗たち、冥界の庭師――そして命蓮寺のメンバー。その全てがリタイアしてしまっている。

 永遠亭の薬師と姫は、今回は完全なバックアップと言う事で永遠亭に待機している。冥界の姫である西行寺幽々子はリタイアして言った者たちに流れ弾が当たらぬように護衛をしている。そして八雲紫は、霊夢がリタイアしたためかその場から消えていた。

すなわち、今この場で雛の弾幕の散布を防いでいるのは、神奈子たちだけと言う事になる。

 如何に弾幕が前の四人に集中しているとはいえ、大人数で止めてきた弾幕の嵐だ。三人で止めきれるはずも無かった。

 

 

「神奈子様ッ! もう限界ですッ!」

「踏ん張れッ早苗! 今ここで厄を含んだ弾幕が幻想郷にばら撒かれたら、また元の木阿弥だ!結界を維持するんだ!」

「でも神奈子……これ以上は……」

 

 

 頑張れと精神論を叩きつけたものの、すでに神奈子も限界だった。そして諏訪子もだ。

 神奈子は、厄神は自分よりも力の無い存在であると、今まで見下してはいたがそれがどうして――。

 

「これが想いの力か……ふふ」

 

 やはり人の想いと言うのは本当に凄まじいものだと思わず苦笑してしまった。

 しかしその笑みは決して余裕から来るものではなく――

 半ばあきらめの念のはいったものであった。

 

 

(駄目だッ――もう、限界だッ)

 

 

 今度こそ、本当に終わりだ。

 

 そう思っていた時だ。

 

「ん? な、なんだ? 力が……」

 

 何やら、力が湧いてくる感覚を神奈子は覚えた。その感覚を覚えたのは神奈子だけではない。早苗も、諏訪子もだ。

 

「何ですかこれは、力が戻る……いや溢れる!?」

 

 それは決して気のせいなんかでは無かった。どうした事か――。

 三人は不思議に思っていると、遠くから声が聞こえてくる。一人や二人なんて数じゃない。とんでもない人数だ。

 そして、それを見た神奈子たちは驚愕した。

 

 

『みんな~ッッ!!遅れてごめんッ!』

『まだ終わってないよねッッ!?』

 

 

 豊穣神と紅葉神が二柱――秋穣子と秋静葉の二人がそこにいた。

 なぜ彼女たちがここにいるのかと言う疑問よりも先に、彼女たちの後ろにいる存在に目が行く。

 彼女たちの後ろには、ものすごい数の人間たちが集まっていた。

 十人やそこらではない。もっと多くの――幻想郷の人里のほとんどの人間が彼女たちの後ろにいたのだ。

 それは異常な光景だった。

 危険度が最高レベルと言われる妖怪の山に、あれだけの人間が集まる事はきっと幻想郷の歴史でも無かった事ではないのか?

 その上、今は人間たちは寝ている時間だ。あれだけの人数で、なぜこんな時間にここにいる?

 

 

『村のみんなに応援を頼んだのッ!』

『みんなッ!八坂様たちを応援をしてッ!』

 

 

 秋姉妹の言葉に神奈子たちは状況を把握した。

 

「八坂様、これは……静葉様たちは……!」

「ああ。あいつら……。こんな危険なところに。いや、他の神のためにあんな事を……」

 

 この二人は――この二柱は里を巡り、人間を集めてくれていた。

 神にとって信仰を得ることは死活問題。そしてその信仰は神の威光によって保たれるものだ。

 彼女たちは、自分のメンツなんてお構いなしに、人間にお願いしたのだろう。

 神ともあろう者が、人間に頭を下げたのだ。

 自分とは関係のない他の神のために……。

 

「あ、あいつら……感謝する!」

 

 神奈子は目頭が熱くなるのを感じていた。

 元々センチメンタルな性格ではない。

 しかし、すぐ後ろにいる秋姉妹と人間たちの姿が、深く心に沁みるのだ。

 秋姉妹たちだけじゃない。里の人間たちもだ。

 里の人間たちは、こんな時間に――しかも危険が多い妖怪の山にまで来てくれていた。

 ただ神奈子たちを応援するために。その信仰を神奈子たちに向けるために。

 そのためだけに、危険を冒してまで来てくれたのだ。

 

 

 

『頑張ってくださいッ! 八坂様ああぁぁッ!』

『俺たちのせいで厄神様が……。本当に申し訳ありませんでしたッ!』

『八坂様ッ! どうか厄神様をお助け下さいッ!』

『どうか厄神様をッッ!!』

『頑張れッ! 早苗様ああぁッ!』

『諏訪子様も頑張れええぇッッ!!』

『八坂様ッッ!!』

『八坂様ッ』

『八坂様ぁッ』

『早苗様ッ!』

『諏訪子様ぁッ』

 

 

 妖怪の山で一気に守矢コールが反響した。

 神の力の源は『信仰』。そして『信仰』とは人間に想われる力だ。人間たちの心はすでに一つになって神奈子たちに向けられていた。

 神力を使い果たし、疲労困憊であったさっきがまるで嘘のようだ。力がどんどん湧いてくる。神奈子たちはそう感じていた。

 

 

「来た来た来た来た来たきたあああああぁぁぁぁぁッッッ!!!!!!」

 

 

 神奈子のテンションがいきなり豹変した。

 それと同時に、神奈子の回りに数十本という大量のオンバシラが出現した。

 それだけじゃない。早苗の回りには風が―――諏訪子の回りには鉄の輪がそれぞれ出現したのだ。それらは弾幕と姿を変え、幻想郷の空を覆うほどに至った。

 

 

「早苗ぇッッ! 諏訪子ぉッッ!! 幻想郷を私たち守矢の弾幕で染め上げるぞおぉッッ!!」

「はいッ!」

「ダッシャーッッ!!」

 

 

 太陽はまだ出ていない。

 しかし幻想郷の空は、守矢の弾幕によって染め上げられ、美し光を発していた。

 最高にハイッになった神奈子たちの弾幕は、雛の黒い弾幕を完全に力押しするに至った。

 外に漏らすどころか、むしろ内側に封じ込めるかのような勢いだ。

 そしてそれを見た里の人間たちがさらに大きな声ではやしたて、神奈子たちをさらにパワーアップさせたのは言うまでも無い。

 

 

 




ルナティック守谷――誰も勝てない
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