一生GWのままがいいです。
「……ん……?」
瞬きを三回程し、パチっと目が覚めた。
「ここは…?」
もちろん紅魔館だとわかっている。壁も床も紅魔館そのものであるからだ。しかし明らかにいつもとは違う。
「よお、お目覚めかい?」
声がした方へ振り向く。そこには扉に寄りかかったままキセルで一服しているぬらりひょんの姿があった。
「ぬらりひょん…アレ?私なんでここに…」
「お前あのまま酒の飲み過ぎでぶっ倒れたんじゃ。慣れないことはするもんじゃねえぜ?お前の部屋は地下じゃが…戻りたくはねえだろ?だからここへ連れてきたんじゃ」
ハハハと笑っている。その瞬間扉の方向に月の光が差し、ぬらりひょんから妖怪独特な雰囲気といったものを感じた。
「そっか…ありがとね、ぬらりひょん」
「よせやい、こんな事で礼はいらんよ。それよりまだ深夜じゃ。明日に備えて早く寝な」
そうか…明日は外に出れるんだ…などとフランが思っていたことは顔を見れば簡単に見て取れた。
「外…か。ねえぬらりひょん」
「ん?」
「外って…楽しい?」
「……」
しばらく考えた。こんな質問は何百年も生きているぬらりひょんも初めてされたからだ。
「ん〜…楽しいことは楽しいじゃろうが…ワシらにとってはそれが当たり前なことだからなぁ」
「そうだよね…」
「…まぁ正直楽しいことばっかじゃないさ」
「外にでるってことは当然危険も増すだろう。何があるかわからん…理不尽な言いがかりをつけられて襲われることもあるかもしれん」
「危険…」
「ああ。じゃが、だからといって家に引きこもるわけにはいかんだろう?外に出て初めてわかるものもある」
「外に出て初めてわかるもの…?それは何?」
「…そいつはフラン、お前自身が見つけるんじゃ」
フランに近寄り、頭を撫でる。ぬらりひょんは何か能力でも使っているんじゃないかと疑うほど、安心感をもたらしてくれた。
「私…自身が。 …本当にわかるのかな」
「どうだろうな…断言はできん。 だがお前がこの世界を全てを回ったとしても、わからないものも当然ある。 …が、それはそれでいいじゃねえか。それが〝生きてる〟ってことじゃねえか?」
そう言った。しかしぬらりひょん自身は自分でこう言ってるものの、それが本当に正しいかどうかはわからない。正しいか誤りか、その2つの枠組みでは捉えれないものと考えているのだ。
「フラン、ワシはいずれこの世界から去らなくてはならん。 …その時にお前からこう聞けたらワシは満足じゃ…〝生きててよかった〟ってな」
「ぬらりひょん…」
フランは怖かった。ぬらりひょんが自分の側から居なくなることが。
「ハハ…そんな顔すんなって。その時がいつになるのかはワシにもわからん。もしかしたら1年後、10年後…はたまた100年後か…」
「少なくともお前に外の楽しみを教えるまで幻想郷にいるつもりじゃ。 …だから安心して今は寝ていいぞ」
涙目になっていたフランを安心させた。フランはゆっくりと目を閉じ、やがてスースーと寝息を立てた。
「さて、挨拶でもしておくかの」
フランが寝て少し経った頃、レミリアは紅魔館の屋上らしきヒラけた場所に1人で立っていた。
「…何の用かしら、ぬらりひょん」
「おいおい、今は本気で『明鏡止水』を使ってたんだぜ?なんでわかったんだ?」
レミリアは、前とは違い本気で誰からも認識されないように『明鏡止水』を発動したぬらりひょんにすぐ気付いた。
「さあ…なんでかしらね。私にもよくわからないわ」
「なんじゃそりゃあ」
2人ともフフ…と笑う。
「本当にあの子を頼むわよ。月日は流れてもあの子はまだまだ精神的にも子供のままだから」
「面倒は見てやる。 …でもフランが今より成長出来るかは自分次第じゃ。ワシがどうこうする気はないぜ」
さっきも言ったが、ぬらりひょんはフランを外へ連れ出すことはしても、何か特別なことをしようという気は毛頭ないのだ。
「わかってるわ。 でもいるだけで…貴方といるだけでフランの何かが変わる…そう〝いってるわ〟」
「〝いってる〟?何がだ?」
「フフ…さあ何かしらね」
「ったく…本当にお主は読めん奴じゃ」
不敵に笑いながらレミリアは月を見る。
「貴方は『運命』というものを信じる?」
「運命?なぜじゃ?」
「答えて」
レミリアの赤い目は、月に照らされていつもより更に赤く見えた。
「運命…か。ワシは信じるぜ。 だが…」
「だが?」
「決まっているものではない…ワシはそう思う」
意味深な一言だった。
「…つまり?」
「運命は変えられるってことさ。決して簡単な事じゃないと思うがな」
「へぇ…じゃあもう1つ。貴方はもし『運命を変える能力』をもつ者と出逢ったら…運命を変えてもらう?」
「フッ…」
レミリアはぬらりひょんの顔を見た。そんな事決まってるじゃねえか、と言いたげな表情だった。
「必要ないさ。 …ワシの運命はワシ自身で変えてみせる」
そう答えた。レミリアは一応聞いて見たのだが、返ってくる答えは分かっていた。ぬらりひょんはそういう男なのだ。
「そう…ありがとう。でも知っといた方がいいわ。貴方の運命は〝変わりつつある〟…悪い方向にね」
レミリアだけが感じていた悪寒。お節介かも知れないが一応伝えておいた。
「そうか…まあそれも〝一興〟じゃな」
そう言ってぬらりひょんは後ろを振り向く。
「寝るのかしら?」
「ああ。年寄りに夜更かしは辛いんじゃ。 … っとその前にワシからも1つ聞かせてくれ」
ぬらりひょんからも一言レミリアに聞く。
「さっき…なぜワシが居ることに気付いた?ホントは分かってるんだろ?」
最初の質問を繰り返した。
「やっぱり…嘘は私の性に合わないわね」
「実を言うと本当に漠然としかわからないんだけど…風がね」
「風?」
「ええ。貴方が来た瞬間風が止まったの。まるで私達の会話を邪魔しないように…ね」
「…それだけか?」
コクリとレミリアは頷いた。
「なるほど…お主がそういうならそうなんだろうな。」
「信じられない?」
「まさか! …お主はワシのことを信じてくれとる。ワシもお主を信じるさ」
会って間もないとはいえ、2人の間には大きな信頼関係が生まれていた。
「じゃあワシは行く。 …レミリア、またな」
言った瞬間、レミリアの答えを聞かずにぬらりひょんは姿を消した。
「風…ね。逆に私がそう言われたら絶対信じないわ。あの男の力…〝自然〟にも通じるみたいね」
そこにはもうレミリアしか居なかったが、声に出してそう呟いた。
「ぬらりひょん…また会いましょう」
はい、第23話でした。
今回は短めにしました。実はここから先まったく考えてないので次の更新が遅れるかもしれません。
あと何かアドバイスがあればお願いします。
ではここで終わります。お疲れ様でした。