フラみょん…もっと流行ってください
ー白玉楼ー
ぬらりひょんとフランは、白玉楼に着いた後、中で幽々子と雑談をしていた。
「なるほどのう…ってこたぁ幽々子はその亡霊ってやつなのか」
「そうそう。あ、でも貴方達に何かしようってわけじゃないから安心して頂戴ね」
お茶を啜りながら言った。確かに幽々子からはぬらりひょん達への敵意、悪意といったものは感じられない。
「亡霊って幽霊ってこと?じゃあ幽々子は死んじゃったんだ」
「…そうよ」
「なんで死んじゃったの?」
フランがデリカシーのかけらもない質問を幽々子にぶつける。幽々子は先ほどまではニコニコしていたのだが、どんどん真顔になってきた。
「こらっ お前って奴は…」
幽々子のことを気遣い、ぬらりひょんは手でフランの頭をポンと叩いた。しかしそれに対し幽々子は「いいのよ、ぬらりひょん」と気遣いを無用とした。
「なんで…か。私も人間だった頃の記憶はないの。だからわからないわ。ごめんなさいね」
最後にまたニコッと笑ったが、ぬらりひょんには幽々子が少し無理をして笑っているように思え、心に突き刺さった。
「…ワシの知り合いにもおったよ。お主と同じような奴がな」
「あら?その方も亡霊なの?一度お会いしたいわ」
ぬらりひょんの言っている知り合いというのは400年前に、ぬらりひょんが羽衣狐も倒す際に加勢をしてくれた『花開院 13代目秀元』である。
「亡霊…てのが正しいのかは知らねえが、式神として現代の陰陽師に召喚されてたな。確か…破軍だっけか?」
「? 式神ってなに?」
「あー!また今度教えてやる!」
質問攻めのフランに対し、ぬらりひょんの答えは適当になっていた。
「幽々子様、お食事の用意が出来ました」
襖を開け、入ってきた妖夢がそう言った。奥からとてもいい匂いがする。
「やっとできたのね〜!もうお腹ペコペコよ!」
ザッ!と幽々子は立ち上がり満面の笑みを見せる。先ほどまでの真顔はなんだったのだろうか。
「貴方達も一緒に食べましょ!多い方が楽しいわ」
そして2人を夕飯に誘ってくれた。
「…そう仰られると思って多めに作っておいてよかったです」
「ご飯だご飯だー!」
「んじゃあもう1つ甘えさせてもらうか」
妖夢に案内され、2人も夕食の用意がされている部屋へ向かった。
「わぁ…!」
「…おいおい、これはなんの冗談だ?」
2人の前には、4人で食べきることなどできないくらい凄まじい量の料理があった。今からここで宴会をすると言われても納得できるほどの。
「あらあらあら〜♪今日はまた随分と頑張ったのね妖夢♪」
「はい。いつもより少しだけ頑張ってみました」
「偉いわぁ。さ、早く食べましょ!」
4人は座ると手を合わせ、夕食を始めた。
「ぬらりひょん様、お酒をお注ぎ致します」
妖夢は酒の瓶を持ち、ぬらりひょんが持った杯へ酒を注ごうとする。
「ありがてえが〝様〟はやめてくれ。お主がワシに忠誠を尽くす義理はないじゃろ?」
「…わかりました。ではぬらりひょんさん、お注ぎします」
「ん、悪いな」
注いでもらった酒をぬらりひょんは一気に飲み干した。
「んん〜!美味じゃ!前に萃香からもらった酒といい、幻想郷にはいい酒が多いようじゃな」
「あふぁあ?あふぁたふゅいふぁにあっあのふぁひぃらぁ?」
「…幽々子様、口の中のものを全部飲み込んでからお話しください」
見るに見かねた妖夢が幽々子に言った。
ゴックン
「ふぅ…ごめんさいね、それはそうと貴方萃香に会ったのかしら?」
噛まずに全て飲み込んだ幽々子がそう言う。
「あ、ああ…(すげえ大食らいだな…やっぱり幻想郷には変な奴が多いのう)」
幽々子は食べるスピードももちろん早いのだが、それ以前に食事の手が全く止まることがないのですぐに料理が消えていく。
「そう…」
と言いつつ幽々子は再び食べはじめた。
「幽々子は萃香と知り合いなのか?」
「ほぉうね〜ふぅいふぁふぉわ、むふぁひふぁらのなかふぉ〜」
「いや…やっぱり食い終わってからでいいぞい」
「アハハハハッ!幽々子おもしろーい!」
フランはほっぺたをリスのように膨らませている幽々子を指差して笑う。
「行儀が悪いわよ!人を指差すのはやめなさい!」
「はーい」
妖夢がフランを注意する。どこかのお姉様よりよっぽとお姉ちゃんらしい。
そのまま、ワイワイと4人は食事を楽しんでいた。
「ふぅ…さすがにお腹いっぱいだわぁ…」
「………お主化け物じゃな」
テーブルいっぱいに並べられていた料理が綺麗さっぱりと無くなった。幽々子以外の3人は一人前しか食べなかったのだが、その分幽々子が残りを食べきった。
「やーねぇ。化け物なんて。 …妖夢」
「はい?デザートですか?」
「今日はデザートはやめておくわ。それよりフランちゃんをお風呂に入れてあげて…ついでに貴女も入っちゃいなさい。夜も遅いし今日は泊まりなるからね」
いつもはデザートも食べんのかよ…とぬらりひょんが心の声を漏らしている間に幽々子は妖夢にそう指示した。
「なッ…なんで私がそんな事を…」
「命令よ❤︎ 早くしないとお湯冷めちゃうわぁ」
「ぐ…! フラン!行くわよ!」
「えっ!わわわ!」
フランの手を引き、脱衣所まで早足で向かっていった。
「ウフフ…妖夢も妹ができたみたいで嬉しそうねぇ」
「そ、そうなのか? まぁいいけどよ」
ぬらりひょんはよいしょと縁側に腰を下ろし、月を眺めた。幽々子はどこかへ向かって、酒と杯を持ち、戻ってきた。
「さっきのよりも上等ものよ。まだまだ飲み足りないでしょ?」
「おう、気が利くのう」
ぬらりひょんの隣に座り、杯を渡し酒を注いでくれた。ぬらりひょんはそれを一口飲んだ。
「これもなかなかじゃな。 …幽々子、お主なぜワシのことを知ってたんだ?」
ぬらりひょんは聞きたかったことを改めて聞いた。
「…んー?なぜって…噂を小耳にしただけよ」
幽々子も酒を一口飲みながら答えた。
「フッ…異世界の住人のワシのことを〝噂〟か?ちょおっと無理がありすぎるんじゃねえか?」
お互い目を合わせずに月を見ながら語る。
「…ウフフ」
「なーにがおかしいんじゃ?」
「わかるわぁ…紫が貴方を敬うわけが」
ぬらりひょんに聞こえないようにボソッと呟いた。
「なんだって?」
「なんでもないわ。本当にお友達から聞いただけよ」
「お友達…か。お主の友人となりゃあそいつも相当曲者なんだろ?」
「どうかしらね。それは自分の目で確かめてちょうだいな」
幽々子はそう答えた。
「それもそうか。じゃあ…ずっとそこにいるお主、さっさと出てこい」
「「!!」」
「……」
「…ワシをいつまで待たせる気じゃ?」
「…やっぱり面白いわね。紫」
シュウン…
「……」ザッ
「やっと会えたな」
謎のスキマの中から美しい女性が現れた。このスキマはぬらりひょんとフランが飲み込まれたものと全く同じである。
「お初にお目にかかります、ぬらりひょん様。私は八雲紫と申します」
女性は丁寧に挨拶をする。
「幽々子の友人ってのはお主のことか。なぜお主はワシのことを知っとるんじゃ。そしてワシをこの世界に呼んだのはお主か?」
紫は少し沈黙した後口を開く。
「いえ、ぬらりひょん様をこの幻想郷へと招いたのは私ではございません。 …しかし、貴方様の事は前々から存じておりました」
「へぇ…それはなぜじゃ?」
「私は普段からそちらの世界を覗いておりました。400年前、羽衣狐の〝出産〟を間近に迎えた頃…あの世界は
紫は本当に全てを見ているかのような詳しさである。
「それで?」
「
「妖が生きやすくする世界創り?」
幽々子はそう聞き返す。紫からぬらりひょんのことを全て聞いているわけではないみたいである。
「光の多すぎる世界では妖は住みにくい。その逆もまた然りなのよ。だから羽衣狐がそうするのは至極当然…しかしぬらりひょん様、貴方様は違いました。貴方様はこう選んだ…『共生』をする、と」
「共生…妖と人が共に生きやすくする世界を創ることかしら?」
その通りである。ぬらりひょんは妖の力を人々に見せ、征服しようなどとは考えていなかった。
「私は〝畏〟を貴方様に抱きました。同じ妖怪として…私は一生貴方様には勝てない…そう思いました」
紫からぬらりひょんへの敬意といったものがビシビシと伝わってくる。
「八雲紫といったな。ここの奴らは〝畏〟について何も知らねえのかい?」
「はい。幻想郷の者は自分に秘められた能力に甘え、本来の戦い方を忘れているようです」
幻想郷では〝畏〟について知っている者は紫くらいである。
「正直…貴方様がどうやってこの幻想郷にこられたのかは詳しくはわかりませんが…こられた以上はこの私が敬意を持って…」
「ちょっと待て」
紫の言葉をぬらりひょんが止める。
「どうされましたか?」
「さっきからお主はワシのことを神様みたいに敬ってるけどなぁ…ワシはそんなに大したもんじゃねえぜ。羽衣狐に寿命をだいぶ削られ…ジジイになった挙句、戦いで無理をして…ハハハッ 生きてるのか死んでるかすらわかんねえんじゃ」
「ぬらりひょん…」
幽々子はなぜかぬらりひょんが自分のように見えた。
「生きておられますわ」
「…その根拠は?」
ぬらりひょんがそう聞くと、紫がスキマを開いた。そのスキマから映像を見ることができた。その映像とは…
「!! これは…ワシ?」
見知った布団で眠っている自分の姿があった。400年前の若々しい姿ではなく、本来の老いた見た目である。
「ぬらりひょん様。これから…あの戦いの結末をお教えします」
はい、第27話でした。
この話の後半はちょっと原作寄りの話でしたね。表舞台からも裏舞台からも支配しようとする羽衣狐…恐ろしい。
では終わります、お疲れ様でした。