夕立のゲーム日記
「リクイドフレイムが倒せないっぽい」
「氷のロッド買って戦闘中に使えばラクショーだぞ」
さて、一週間後。
なんとか反省文を完成させ、なおかつトレーニングも行ってきた一夏。
そらとぶベッドの所為で当初はロクに寝れなくて、血走った目の下にクマを作っており、そりゃもう見るからに私不機嫌ですオーラを放っていた。二日目なんか視線だけで人を殺せそうなほどだったが、それでもなんとか完成させたのだ。一夏の土壇場の根性はたいしたものだった。
ただ、夜中に「おのれ篠ノ之束ェェェェェ!ぶっ殺してやるゥゥゥゥゥ!!」とキャラが崩壊するほどに叫びながらヒュンヒュンと夜空を舞う姿は、流石に近所迷惑だし不憫なので三日目あたりでベッドを分解し、元のベッドに戻して置いた。部屋のガラス代もバカにならないし。そしたら一夏の機嫌も元に戻った。
ちなみに、「こんな変なものを作るのは束しかいないに違いない」と一夏は思っていたがとんだとばっちりであった。
「一夏、お前のISまだ来てねえの?」
「まだなんだよ、箒と一緒に量産機で練習はしてたけど、専用機とは違うだろうし……どこまで通じるかなあ」
「専用機とは羨ましい話だな!こちとらその量産機だぞ! 専用機持ちの上、黒髪ポニーテールの美少女と二人っきりで練習ってか!? ぁーん!?」
何故一夏だけが専用機を開発してもらえているのか。それは単純に納期と人員的な問題である。国から倉持技研に要望はあったのだが、「人手が足りないから無理です」の一点張りで取りつく島もなかった。
「あ、煽ったわけじゃないって!だからそんなに詰め寄るな!! 悪かったよ!!」
「び、美少女……」
一夏の応援に来ていた箒が、コウタローの発言に顔を赤くしていた。照れているのだろうか。
「まったく。とにかく、俺とセシリアが最初だからもう行くぞ」
実はコウタロー、この時点で既にISの展開を終えている。無駄に準備が早かった。
「さて、と……高木!打鉄、いっきまーす!」
最高のニュータイプの声真似をしながら、アリーナへと飛び出すコウタロー。
すちゃっと地面に降り立つと、すでに先行していたセシリアが待ち構えていた。
「よく逃げませんでしたわね」
「セシリア、はじめに言っておくぞ」
右手でウィンドウを弄りながら答える。
「俺はかーなーり、強いっ!」
「そうですの……でしたら」
右手に構えたエネルギーライフルの銃口をコウタローに向け、セシリアは叫ぶ。
「その強さ、私に示しなさいな!!」
瞬間、閃光が走る。
「むっ!」
バリアーとは違う、薄緑色の防護膜がコウタローの周囲に展開され、セシリアの打ち出したエネルギーライフルの威力を半減する。
(シェル張っといて良かった)
シェル、ファイナルファンタジーシリーズに登場する防御魔法である。作品ごとによって若干効果は違うものの、攻撃魔法の威力を軽減するというのは変わらない。そして、セシリアのエネルギーライフルは魔法攻撃だと判断されたようだ。
(ってーことは、マカラカーンで反射出来る……完封出来るんだが)
流石に、それでは面白く無い。せっかくだからいろいろと試したい。
「入試戦では見せなかった俺の秘密を見せてやろうっ!」
「あら、それは光栄ですわね。お礼にその秘密が見れるまでここで待ってて差し上げますわ」
顎元に手を持って行き、不敵に微笑むセシリア。
「驚くなよ〜」
左手でウィンドウを操作しながら、右拳を突き出す。
「……右手を突き出すだけかしら? しかし、その液晶画面のようなものは一体? ISのモノとは異なるようですが……」
「あせんなって」
握られた拳から、人差し指だけを立てる。その瞬間、指先が強烈な火球に包まれた。
「メ、ラ、ゾー、マっと」
(小型の火炎放射器でも搭載しているのかしら……?)
開かれた五指全てが、火球に包まれたのを見てセシリアは思案する。ちなみに、この世界でもドラゴンクエスト及びダイの大冒険は存在してはいるが、外国人でありゲームをやった事もないセシリアは、メラゾーマの事を知る機会がなかった。
「食らいやがれっ!フィンガー・フレア・ボムズッ!!」
「っ!!」
ぐっと右手を引いてから、勢いよく開かれた右手から放たれる五つの火球。指先に灯っていた時よりも一回りもふた回りも大きくなったそれは、全てを燃やし尽くすかの如くセシリアに迫っていく。
「くっ!」
上、右上、左上、左右。囲むように迫る業火。迂闊に前進すると、被弾してしまうと踏み後退するが、次の攻撃はすでに迫っていた。
「誰がそれだけっつったよ!? 炎よ!!」
驚異的な射程距離を持つ獄炎、ファイガRFがセシリアに迫る。これはディシディアファイナルファンタジーアーケードに登場する技で、本来はファイアRFから溜めて進化させる技だ。欠点として、溜める最中に足が止まるという欠点を持つのだが、コウタローはファイガRFを単体として発射する事で欠点を克服していた。原作基準で考えたら、まさにチートである。
「あぁっ!?」
フィンガーフレアボムズに気を取られていたセシリアは、一瞬ではあるがファイガRFに対する反応が遅れる。だが、その一瞬が命取りであった。
(い、一撃で三分の一も……!?)
ファイガRFの威力に戦慄するセシリア。ファイガRFに吹き飛ばされたおかげで、距離は取れたがそんな事を考える余裕はすでになかった。
「俺の魔法はどーよ!? 大したもんだろう!!」
「くっ、魔法だなんてオカルト……非ィ科学的ですわよ!」
「うるせー! 奇跡も魔法もあるんじゃい!!」
コウタローはムキになって子供のように言い返した。
(あの火球と火柱は驚異的ですが、前方にしか飛ばせないと見ましたわ。ブルー・ティアーズでの一斉包囲射撃なら、勝てるはずです!)
そう考えたセシリアは、コウタローの周囲に四機のブルー・ティアーズを展開、一気に仕留めるつもりで攻勢に出た。
この時のセシリアの戦法は正しかった……所持する魔法が二つだけだったら、だが。
「甘いっ!」
そう叫んでコウタローが右手を地面に叩きつけると、ドーム状の爆炎がコウタローを中心に展開された。
ゼルダの伝説・時のオカリナで登場するディンの炎だ。
威力としては、先ほどのファイガRFよりは幾らか劣る。シールドエネルギーのダメージも、若干程度のものである。だが、熱量はある。周囲に展開されたブルー・ティアーズをショートさせ、動きを止めるには十分だった。
「ブルー・ティアーズが!?」
「隙ありぃ!!」
何らかの攻撃はあるとは思っていたが、まさか文字通りの全方位攻撃なんて予測していなかったセシリアは、再び足を止めてしまう。そして、コウタローはその隙を逃さなかった。
「食らいやがれぇぇぇッ!」
(あ……熱い……人ですわ)
一気に距離を詰め、右手を薙ぐように払いセシリアに炎をぶつける。
ヘイストで倍速に加速してから、右手にファイガを留め一気に相手を燃やし尽くす「俺式大蛇薙」という技だ。これはウィンドウにない技で言わば「閃き」から編み出した技といえよう。
「試合終了。勝者、高木孝太郎」
炎がセシリアのシールドエネルギーを空にするとともに、勝者を告げるブザーが鳴り響いた。
なお、一度も使われていない打鉄の武装が泣いていた。
あっさり倒しちゃいました、これがオリ主の宿命というものか。
ちなみにチート抜きだと普通に完全試合でボッコボコにされるでしょう。