夕立のゲーム日記
「UーシャークがUシャーク砲を落とさないっぽい!」
「粘りなさい」
「織斑先生、どうしましょうか……」
「ううむ」
摩耶と千冬、教師二人が悩んでいるのは、自らが受け持つクラス代表についてだ。何しろ、代表選考戦結果だけ見ると三竦みに近いような状況である。
コウタローはセシリアに完勝、そのセシリアは一夏を完封、その一夏はコウタローと互角以上の格闘戦を繰り広げ引き分けた。
外面を考えて先行するなら、セシリアが一番いいだろう。何しろ、イギリス代表候補生故、実力は折り紙つき。また、多少高飛車な性格とはいえ、実家が貴族の家系故にマナーは叩き込まれているし、ルックスも申し分ない。
だが、そのセシリアはコウタローに負けた。装備差や間合いの相性があったとは言え、代表候補生をあそこまで叩きのめした実力は無視出来ない。とはいえ、そのコウタローも一夏のカウンターを受けダブルノックアウト。しかも一夏の得物が雪片弐型という強力なブレードということもあり、試合終了時のシールドエネルギーの残量は一夏の方が多い。あのまま試合を継続したら、一夏の優勢勝ちになった可能性は十二分にある。それに、試合中に発覚したが射撃が苦手で、そして何より馬鹿だ。うっかり変な事を喋りそう、というのは否定できない。
じゃあ専用機持ちだし、コウタローと互角以上に戦ったのだから将来性を見込んで一夏にするか?と考えたが、その一夏はセシリアに完封負けしたのだから、セシリアにすれば良いのではないか、となってしまう。
どうにも難しい問題だった。
「こうなったら生徒たちに投票で決めさせるか」
「それが一番波風が立たなさそうですし、良さそうですね」
最終的には「自らの代表なのだから、自らの手で決めるが良い」という結論に落ち着いた。
「改めて三人の中から投票で決めることにする。無記名制だ、真剣に選べよ」
翌日、朝のSHRで千冬はそう告げ、手に収まるほどの小さな白紙を全員に手渡していった。どうやら当事者も投票者に入るらしい。
真耶の言葉と共に、何人かの生徒が投票する。5分もすると全員の投票が終わった。
「では、開票する」
千冬が名前を読み上げ、真耶が正の字を記入していく。その結果は……
「織斑とオルコットの同率一位か……」
一夏とセシリアが13票、コウタローが一歩劣り6票。
「織斑、高木、オルコット。それぞれ誰に投票した?」
「俺はセシリアに投票したぞ」
「俺も。セシリアが一番適任じゃねえの?」
「私は、私に勝った孝太郎さんに投票しましたわ」
男子勢はセシリアに、セシリアはコウタローに投票したらしい。一夏はともかく、コウタローに関しては自らがやりたくないので押し付けたとも言えるが。
「ならば、オルコットが正クラス代表で織斑が副クラス代表というのがいいだろう。高木、落選ということになるが気を落とすなよ」
「別にいっスよ。それにガラじゃねえや」
一応、千冬が慰めの言葉をかけたが当の本人はヘラヘラとしており、まったく気にしてなさそうだ。
「それでは、代表をオルコットさん。副代表を織斑君とします」
「フフ、光栄ですわ」
横髪をかきあげながら、優雅に微笑むセシリア。
「ただのクラス委員のようなものだから、それほど気負わなくても構わんぞ」
「いえ、織斑先生のクラスの名に恥じぬよう、全力で精錬致します」
「お、俺も副代表として頑張るぜ! 千冬姉の名は汚さねえよ!」
ガタンと音を立て席を立ち、一夏は握りこぶしを作って意気込みを見せた。
「ふむ、やる気があるのは結構なことだ。頑張れよ、二人とも」
こパチパチと千冬が手を叩くと、それを源としてクラス中から拍手が巻き起こった。
「よし、代表選考も終わった事だし授業に入るぞ」
SHRが終わると、そのまま授業が始まった。
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授業も終わり、各々が帰りの準備をしている時。
セシリアが一夏とコウタローに軽い質問を投げかけた。
「織斑さん、コウタローさん」
「ん? あ、セシリアか」
「どったのよ」
「いえ、軽い疑問……本当にどうでもいい疑問なのですけど、その待機形態は邪魔ではありませんか?」
一夏のISは原作と変わらない白いガントレットだ。
「やっぱそう思うよな。 正直、意識してないと結構ぶつけるし……不便なんだよなあ。このガントレット」
そういう一夏は少し窮屈そうにしている。
「俺は別にキツくないな、顎引いた時に変な感じはするけど」
(……何故、首輪なのでしょうか)
コウタローのISの待機形態は、茶色い首輪だった。それも、犬とか猫がする様なタイプの革首輪である。
なお、コウタローは代表でもなんでもないのに何故専用機を持っているのかというと、代表選考戦で使用した打鉄が何故かコウタロー以外は動かさなくなってしまったため、その打鉄がコウタローの専用機と化しているのである。
シャア専用みたいなものである。
(……)
犬耳とモフモフの尻尾が生えたコウタローの姿を幻視するセシリア。その姿はテレビで見る様な、とにかく飼い主に構ってもらいたいタイプのバカ犬を連想させた。
「フフッ」
「? 何だよ、人の顔みて笑うもんじゃねーぞ」
少し不機嫌そうになるコウタロー。
「申し訳ありません。それはそうとして、コウタローさん」
「なんよ」
「差し出がましいようですが、私がIS操縦を教えてあげてもよくてよ。 それはもう、パーフェクトでエレガントに教えてあげますわ」
「おお、マジか。俺、射撃が苦手だしちょうどいいや。よろしく頼まぁ」
この時コウタロー意外に素直。
「あ、俺にも教えて……」
「一夏、お前は私が教えてやる!」
いつの間にやら一夏の横に忍び寄っていた箒が、ここぞとばかりに攻め込んだ。
「うわっ、いつの間に!? っていうか、顔が近い!」
「お前は近距離タイプ、雪片弐型一本で戦うだろう!? だったら、同じ近距離タイプの私と鍛錬した方がいい!そうに違いない!! そうだろう!?」
「……そうなのか?」
「そうだ!そうに決まっている!」
箒は頬を赤くしながらすごい剣幕で食いついている。どこかヤケに感じられたが、それに気づいたのはセシリアだけだった。
「わ、分かったよ。 俺は箒と練習すっから!」
「そ、そうか……うん、それがいい」
勢いに飲まれ、よく分からないまま箒の提案を飲んだ一夏。箒は満足げにうんうんと頷いていた。
「私は近距離攻撃は苦手ですし、ブルー・ティアーズの近距離装備はインター・セプターというナイフ一本。それを踏まえたら篠ノ之さんのほうが上手く教えられるかと思います。我がクラスの副代表をよろしく頼みますわよ」
「任せておけっ」
フンスと鼻息を把握しながら、ガッツポーズとともに箒は答えた。
「……青春だねー!」
コウタローは一人でオヤジ臭いことを呟いていた。
「篠ノ之さんって随分積極的ですのねぇ……」
珍しいものを見た、というように呟くセシリア。
「あれってもう付き合ってるようなもんだよね?」
「私からは無理矢理やらされてるって気がするけどなー」
「でも、織斑君嫌な顔してないよね」
「アレは鈍感なだけだと思う」
好き勝手盛り上がる周りのクラスメイト達。
とりあえず、IS学園は今日も平和だった。
ハイ、そういうわけでセシリアが代表です。
原作とちょいちょい変わってきました。
それにしてもキャラがマトモだ……これ本当にISか……?