夕立のゲーム日記
「今日もドラム缶を押すっぽい」
ジリリリ、ジリリリと目覚まし時計の音が部屋に響く。
「一夏! 起きろよ、一夏!」
「ンゴゴゴゴ……」
「どこぞの実況みたいなイビキかいてる場合じゃねえぞ!! 朝飯食えねえぞ!!」
コウタローが激しく揺するが、連日の疲れのせいか全く起きる様子がない。
「しゃあねえ……こうなったら」
ウインドウを弄りながら、魔法を選択する。
イア ザメハ
「……おおっ? おはよう、コウタロー。
うーん、よく寝たせいかすごい頭がスッキリしてるなぁ!」
「ホントによく寝てましたよ、ええ。ホントに」
嫌味ったらしく時計をチョンチョンと叩き、現在の時間を示す。
「……ゲッ!? もうこんな時間かよ! 急がないと朝飯食いそびれちまうっ! なんで起こしてくれなかったんだよ!」
「起こしたわいっ!」
「ああ、もうとりあえず寝癖だけ直して下着も変えて歯も磨いて……!」
「俺ァ先に行ってるぞ!!」
ドタバタと慌ただしく準備を始める一夏を尻目に、コウタローは部屋を飛び出した。
「ヘイスト重ねがけェ!!」
走りながらFF魔法のヘイストを選択し、加速する。廊下を走るのは良くない。
「到着!」
わずか三秒後、食堂に到着する。早いったらありゃしない。
「あ、おはよーコウタローくん」
「おはよう!!」
朝食を取っていた女子生徒から挨拶され、元気よく答えるコウタロー。
ノー天気で後先考えない性格でそれなりに付き合いもいいためか、一夏やセシリア以外の生徒とも意外と仲が良かったりするのだ。
「む。高木、一夏はどうした?」
コウタローの姿を見た箒が、一夏を連れていないのを疑問に思ったらしく、彼の所在について聞いてきた。
「起こすだけ起こして置いてきた、今頃慌ててパンツ取り替えてるんじゃないか」
「……パッ、パンツ? 一夏のパンツ……ど、どんなタイプなんだ?トランクスか、ボクサーブリーフか……」
顔を赤く、ふんふんと鼻息を荒くしながら詰め寄ってくる箒。
「……篠ノ之さん?」
そんな箒を冷めた目で見つめる周りの生徒。
「ハッ……と、とにかく一夏はまだ来ないんだな?」
「もう少し待ってたら来るんじゃねーかなー」
「そ、そうか。一緒に食べようと思ってたんだが……仕方ない、先に食べてしまおう」
女子生徒の冷たい視線で我を取り戻し、何事もなかったかのように朝食を食べ始めるが、顔は赤いままだった。
「それがいいだろ、多分。あ、ご飯と納豆ね!」
コウタローも朝食を頼み、納豆をかき混ぜて白米と一緒に胃の中にかっこんだ。
ちなみに一夏は何とか間に合い、いつもの和食セットを食べる事が出来た。
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「ギギギ……」
机の上に突っ伏しながら、歯軋りを立てるコウタロー。
「コウタローさん、時間ですわよ〜」
飼い犬に対する「散歩の時間だぞ」ぐらいの気軽さで、セシリアは声をかける。
「おう、先に行っててくんな。少し頭冷やしてく」
「わ、わかりましたわ」
頭から黒煙を上げるコウタローの姿を見て思わず後退り、少し引きながらもセシリアはアリーナへと向かった。
「ISによる射撃は、生身とは違い姿勢が重要ですわ。ハイパーセンサーが補助してくれるとは言え、銃口が明後日の方向を向いていたら当たるものも当たらないでしょう?」
「なるほど」
バトルアリーナ。ブルー・ティアーズを纏ったセシリアが同じように打鉄を纏ったコウタローに、親切丁寧にレクチャーを進める。
「一夏さんとの試合データを見ましたが、あの時は両腕が内側を向きすぎていました。 角度で言えば凡そ60から80。 つまり、斜軸がXの時を描いていたのです」
「ふんふん」
「偏差射撃をするならそれでもいいのかもしれませんが……基本の射撃は標的を頂点として、三角を描くようにするとよろしいかと……」
「……セシリア!」
「あら、どうしましたの?」
「ゴメン!さっきからよくわかんねぇ!! 偏差射撃って何!? 三角を描いてどーすんだ!?」
物凄く勢いよく、コウタローはキッパリと言い放つ。
「……」
思わず言葉を失い、軽く溜息をつくセシリア。
「どうやら習うより慣れろタイプのようですわね……なら、実際にやりながら覚えましょう」
セシリアは仕方なしと、ばかりに呟くとアリーナに設置されているダミーターゲットに向き直る。
「どうやらコウタローさんは実弾兵器がお好きなようですが……」
「おう、硝煙の臭いは慣れたら病み付きになるってもんよ」
ウンウンと一人で納得し、満足げに頷くコウタロー。
「その意見には否定はしませんが、実弾兵器でのトレーニングは弾薬代がかかってしまうためオススメ出来ません」
ちなみに、現実の自衛隊は特定の部隊を除き、実弾による練習など殆ど出来はしない。やるとしても、総合火力演習ぐらいだ。実弾を使うとしたら、射撃検定ぐらいのものだろう。
射撃の練習を行うとしたら、弾の入っていない空撃ちだ。
極端になると指と口だけで行われる時もあると言われているほどだ。
「そのため、練習を行う際は充填さえ出来れば撃ち放題なエネルギー兵器がよろしいかと」
そういいながら、狙撃銃「スターライトMKⅢ」による連続射撃を行うセシリア。正確無比の狙い、ダミーターゲットには弾痕による五芒星が描かれていた。
「エネルギー系の射撃武器は風速に影響されにくく、弾速も早い。慣れれば、こういった事も可能ですのよ。動かない的限定ですけれど……」
「はぇー、すっごい……」
ISの補助により、マサイ族もビックリな視力を持っているため描かれた五芒星がクッキリと見えていた。双眼鏡要らず、憧れのアイドルの顔もよく見えます!
「さぁ、それではやってみましょう」
「おうっ」
セシリアの指示に従い、事前に拡張領域に搭載しておいた練習用のエネルギーライフルを構えて引鉄を弾く。その結果は……
「何故じゃあ!!」
「……先は長そうですわね」
命中率ゼロ。セシリアの言う通り、道は長かった。
なんかコウタローの知能指数がドンドン下がってる気がします。そのうち頭カラッポで夢詰め込めそうな感じになりそう……箒もムッツリになってしまった。
それはそうとして、食堂と学食って別物ですよね?