コウタローがISを起動させてから日本政府はてんやわんやとなった。何しろ、男性操縦者とは全世界の男性の希望の星、ウルトラの星である。下手をすれば、虐げられていた男性が二人を担ぎ上げて暴動を起こすかもしれない。日本では起こらないだろうが、何かにつけてデモ活動や暴動が起きる国では、発生する可能性がある。
とにかく、一夏とコウタローの扱いに困った日本は、IS学園に二人を入学させ様子を見る、と言うことで結論付けた。
……と、こんな上の苦労はいざ知らず。当の本人のコウタローは自らにバニシュとレビテトをかけ、自らを透明かつ浮遊状態に周りから見つからないようにし、ホームレスのおっちゃんを三人ほど取得してから、検査会場からしれっと帰っていた。
ちなみにどこから聞きつけたのか知らないが、家の前に陣取っていたマスコミは、夕立がぽいぽい叫んで威嚇しているのに気を取られている隙に、バシルーラで全員吹き飛ばしお帰り願えった。
(原作でもダメージを与えるような魔法じゃねーし死んでないだろ)
どこに飛んで行ったかは知らないが、とにかく死んでないなら大丈夫。コウタローにも一応罪悪感はあるようだ。
「ただいまー」
「おかえり、さっそくニュースになってるっぽい」
「まぁじでぇ?」
この世界のマスコミは無駄に仕事が早かった。
『本日行われた、日本全国男性操縦者一斉調査で、二人目の男性操縦者が発見されました!』
テレビにデカデカと「緊急速報!」の文字とコウタローの姿が映し出されている。とは言っても、コウタローの姿は真っ黒に塗りつぶされているので、細かい顔立ちはよくわからなかったが。
「提督さん、前から思ってたけどなんで真っ黒っぽい?」
「そこなんだよねえ。親父も真っ黒だし、叔父さんの順二郎さんも真っ黒だし、親父の知り合いの黒井さんも真っ黒なんだよ。血筋かなんかなのかねェ」
「えっ、提督さんにお父さんが?」
「いるよ失礼な!この世界は俺の一人暮らしみたいだけど!!」
いくら転生者とはいえ、その前はただの人間。木の股から産まれたわけではない。
「そう言えば夕立のお父さんって、提督さんになるっぽい?」
「えっ」
夕立はそう言うと、コウタローの顔をマジマジと見つめる。しばらくすると、ふっと軽くため息をついてかぶりを振りながらこう言った。
「やっぱりないっぽい」
「肯定されるのは複雑だけど、否定されるのも悲しいっ!」
「それはそうとして、これからどうするの?」
夕立が言っているのは、コウタローのこれからの行動についてだ。ぶっちゃけ、転生チートかある以上どうにでもなるのだが、せっかくなので転生オリ主としてIS学園に入学したいという気持ちもある。
「夕立だったらどうする?」
「質問に質問で返すとテスト0点っぽい」
「それは失礼」
遠回しに「自分の事は自分で考えろ」と言う夕立。ちなみにコウタローはアホではあるが、コウタローは会話が成り立たないほどではない。
顎に手を当てながらこれからについて考えてると、ピンポンと家のインターホンが鳴り響いた。
「夕立」
「ぽいっ」
コウタローの一声で、玄関までパタパタと様子を見に行く夕立。すでにツーカーの仲となっているようだ。二、三分もしたら戻ってきた。
「お客さんっぽいー」
「どんな人だったよ?」
「黒髪でスーツを着てるカッコいい感じの女の人、長門さんみたいな感じっぽい?」
原作キャラでカッコいい感じの人、コウタローには心当たりがあった。
「織斑千冬かな?」
「私に言われても分からないっぽい」
「まぁいいや、出迎えよう」
とは言っても、織斑千冬ではない可能性もある。どこからか情報を聞きつけた、女性利権団体の過激派のメンバーかもしれない。念のため、コウタローは自らに自動的に蘇生できる「リレイズ」と、物理攻撃を跳ね返す「テトラカーン」を自らに付与させた上で勢いよくドアを開け、来訪者を出迎えた。
「へい、いらっしゃい!」
「は、初めまして。私はIS学園の教師をしている織斑千冬と言うものだが……」
小声で「随分元気だな……」とつぶやきながら、自己紹介する千冬。どうやら危険な人物ではないようだ。いや、千冬もある意味危険ではあるのだが。
「あのブリュンヒルデが俺っちに何の用でぃ!」
てやんでいべらんめいと、江戸っ子口調になるコウタロー。この主人公、実にキャラが定まらない。
「国は、君がISを起動させた事を知り、君をIS学園に入学させる事にしたため、教師である私が赴いたわけだ。細かい事を言えば、私でなくても良かったのだが、君が私のクラスに編入される事になったからな……」
「ほむ、なんで俺がIS学園に?」
「日本で一番安全な場所だからだ。IS学園は名目上はどの国家にも属してはいない場所だが、土地の管理は日本が行なっており、法律も日本のものが適用される。故に、世界で見ても二人しかいない男性操縦者である君をIS学園に入学させ、三年間日本の保護観察下に置く……と、なったわけだ」
「把握しました」
実はコウタロー、話の三割程度しか把握していない。
「詳しい話は、また明日来るのでその時に行おう。今日はこれを渡しに来た」
バッグの中から分厚い本を取り出すと、コウタローに手渡す。
「これは入学前の参考書だ。本来なら全て覚えていて欲しいのだが……まぁ、いきなりの話で困っているだろうし、出来る範囲で構わない。それでは、事後処理があるので失礼する」
千冬はすまないな、と一言告げてから黒塗りの車に乗りIS学園に戻った。
「……分厚っ」
覚えられっかな〜、覚えらんねぇだろうなぁ〜とつぶやきながら、コウタローは家の中に戻った。
この千冬さん、原作よりマトモになるかもです。