ガンガンとリズムよく鳴り響く金属同士がぶつかる音を他所に、俺はひたすら布でハンマーを磨く。くるりと回して出来栄えを確認してから既に磨き終わった道具と同じ箱へ丁寧に置くと、次ははさみを磨き出す。
後ろでは、アクアが何個も並べられた瓶にそれぞれ水を入れている。何でも、要求される水の成分がそれぞれ違うらしく、結構神経を使って調整しているそうだ。流石に腐っても一応そういえば何となしには水の女神といったところか。
「……ちょっとカズマ? 何か変なこと考えてない?」
変な所で勘がいいなこの駄女神は。
「いいから大人しく静かに作業してろよ。ただでさえ初っ端で煩くして怒られてんだから」
「なんですって!? そもそも、あんた如きヒキニートが女神たるこの私を下界なんかに連れてくるのが悪いんじゃない!! 大人しくしてほしいんなら今すぐ私を天界に帰して! 帰してよおおおおおおお!!」
注意したら昨日のやり取りを思い出させる勢いで、アクアが泣き喚いて掴みかかってくる。
「わっ、バカ! だからそういう事してたら――」
ストッ。
俺とアクアの足元に、二本の短刀が突き刺さった。目を丸くして固まる俺達に、投げた張本人は何でもない顔であっけらかんと言い放つ。
「仕事しろ」
「「ハイ」」
再び鉄を打つ音を背景に、俺達は仕事に没頭する。
あれはこの世界に来たばかり。ジャージじゃアレなんで初期装備でもくれとアクアに要求した途端、見た目だけなら花丸女神が顔面崩壊級に泣き喚きながら掴みかかり、ガクガク揺すってきた時のことだった。
「あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
「うわ、なんだよ、やめろって! 分かったよ、もう腹の虫も収まったし、装備とかは自分でなんとかするからお前もう帰っていいよ。短い付き合いだったな、ほら、シッシッ」
こんなにも心優しく接しているというのに、女神は更に号泣するばかり。鼻水、よだれも垂らしまくってもう酷い。
「ぶぁ゛ん゛だ! じぶん゛でづれ゛でぎだぐぜに゛い゛い゛! ああああああああああああああああ!!」
「ちょ、おい、やめろコラ! だから帰っていいっつってんだろ!! そんな泣き喚くくらい元気ならさっさと行けっての!」
いい加減ジャージが伸びるので乱暴に振り払うと、アクアはようやく多少の正気を取り戻したらしい。それでもまだ涙目だけど。
「あんた、何いってんの!? 帰れないから困ってるんですけど!」
……帰れない? 何寝ぼけた事言ってんのこの子は。
「いや、お前女神なんだろ? なら神様らしく凄い魔力なり神通力なり使って、元の世界へワープするかゲート的な帰り道でも作ればいいじゃん」
「んなもんできりゃこんな焦ってないわよ!! ねえどうしよう! 私これからどうしたらいいの!!」
えー……マジか。神様なんだしこんなんちょっと家の外に連れ出される程度だろとか思ってたらこの有様か。そういや天使のお姉さんも魔王倒したら迎えがどうとか言ってたっけ……や、ヤバイ。今頃になって取り返しのつかん事をしてしまった罪悪感が……いや、ないな。
少なくとも俺の怒りを買ったのは、元を正せば幾ら情けなかろうが人の死因を嘲笑したこいつの自業自得だ。ついでに、俺がこいつを連れてこれた事から、女神を連れて転移するのは精々グレーゾーンでルール違反ではない。だとすれば俺が五体満足で、しかもこいつがここにいるわけないし。うん、俺はルールに則って清く正しく仕返ししただけ。何も悪くない。
「落ち着け女神。取り敢えずは情報と食い扶持だ。そういうの詳しく聞ける所行こうぜ」
「なっ……引きこもりのゲームオタクで勘違いにビビって勝手に死んだ癖して、どうしてこんな頼もしいの? あ、カズマ。改めて、私はアクアよ。女神様でもいいけれど、私この世界で崇められている正真正銘の女神だし、人だかりが出来て冒険どころじゃなくなるのはちょっと困るしね」
ふーん。自信満々だな。多分女神名乗ってる痛い子で終わりそうなくせに。
まあ、何度も繰り返すが腐っても女神だ。多少の役には立ってくれるだろう。
「とにかく、魔王とかいる世界なんだし、冒険者ギルドとかこの街のどっかにあるだろ。そういうの、どこへ行けばいいんだ?」
「……? そんなの私に聞かれても知らないわよ。私はこの世界の一般常識は知っていても、地理とか町の名前とか詳しくないし。というか、無数にある異世界の中の一つの星の更に小さな町のとか、エリート女神の私が一々知ってるわけないじゃない」
……。
「本当に使えねーなこのエリート(笑)女神(爆笑)」
しょうがねえ。その辺の人に聞くぞ。
「あ、本音と建前が逆にだったわ。んじゃ改めて」
「うあああああああああああああああああああああああああ!!」
再び身も世もなく泣き叫んで襲い掛かってくるアクアともみ合う事数秒。
ひゅっ、という風切り音と共に振り下ろされた銀色の物体が、俺達の顔の間を何かが遮る。
まばゆい光沢を放つそれが正真正銘の日本刀と気づいた瞬間、アクアと揃って動きを止め青い顔で剣を振り下ろした張本人へ目を向ける。
堂々たる姿勢で日本刀を持つ、真っ赤な髪をポニーテール風に纏めた長身の女性。日本刀といい日本を思い起こさせる作務衣と四肢に装備された具足といい、女の後ろに武者とか侍、という言葉がこれ以上なくぴったり当てはまりそうな美丈夫が、俺達を怒りに細めた眼で殺気を込めて睨んでいた。ぶっちゃけ、少し漏れた。
「店先でぎゃーぎゃー喧しい。痴話喧嘩なら他所でやれ」
「「ハイ」」
痴話喧嘩じゃないです、とか否定しようと思ったけれど、それで血を見る可能性が頭をよぎりまくってやめた。他所でやれとか言われたし、ギルドの場所だけきいてこの場を去ろう!
「あ、あの……ご迷惑をおか「社交辞令はいい。要件を言え」はい。僕達冒険者ギルドに行きたいんですけど、場所はどこでしょうか」
訪ねてまず、女性は刀を収めてくれた。
ふう……鋭い刃が顔のすぐ横を通り過ぎる間は生きてる心地がしなかったぜ。アクアも胸に手を当ててほっとしている。
「場所はここの通りを真っすぐ行って、出た通りを左へまた真っ直ぐ。突き当りを右へ曲がれば看板があるが……お前ら、登録手数料は持ってるのか? あんなに煩くいがみ合ってた様子からして文無しのようだが……」
……そういえば。ポケットとリュックを探ってみるが、それらしい支度金とかはなし。
「アクア、金持ってる?」
「あんないきなり連れてこられて、持ってるわけないじゃない」
「……最初にギルドから借りるって、なしですかね?」
割りと自分でも分かるくらいには情けない表情で女性に聞いてみる。
「そんな話は聞いたことが無いから多分無理だ。ちなみに金額は一人頭千エリスで、二人なら二千エリスだぞ」
「日本円で、ざっと二千円ね」
丁寧に答えてくれた女性の断言とアクアの補足を聞いて、俺は情けない顔のまま更に聞いてみる。
「……ちなみに、お姉さん店先って言ってましたけど、このお店って鍛冶屋ですか?」
「ああ、店を始めてまだ日は浅いが、早々に軌道に乗り始めたんでな。奮発して仕入れた素材でいいのを一本仕上げ終わり、くつろごうかという所へ馬鹿騒ぎが聞こえたんで、とっとと散らそうと脅かした」
なるほど、それは大変失礼しました。
「ちなみに、そこの端っこに張ってある求人って、まだ雇ってます?」
「今朝張り出したばかりだからな」
「ちなみに、どれくらい?」
「……日払いで二万エリス。今なら部屋は余っていて寝床は要相談。昼寝はないが三食はつく」
ニヒルに口角を上げる美女に、俺は迷わず土下座した。
「煩くしてごめんなさい。そして図々しいのを承知の上で雇ってください」
「……うわ、いきなり土下座したわ。何この人」
「そうか。お前はいいの……」
お姉さんがみなまで言う前に、すかさずアクアへ飛びついての額を地面に叩きつけた。ふぎゃとかいう悲鳴が聞こえて抵抗しようとするが、ここで余計なことはするなと耳元へドスのきいた声でつぶやくとようやく静かになる。
「いいだろう。今から俺の事は……そうだな、親方とでも呼べ。早速だが、お前らには色々と雑用をやってもらう。それが終わったら飯にするから気張って働け」
「「はい! 親方!」」
そんなこんなで雇ってもらえた俺達は、ひたすら親方の指示の元、鍛冶道具の整備、店回りの掃除、素材の搬入、諸々のお使いと多岐にわたって働いた。親方は厳しくはあったが指示も指導も的確で、初日の俺達でさえミスは両手の指で足りるほどだった事を考えるに驚嘆する他無い。どっちがミスの回数が多いかは女神の威厳の為に秘す。
でもって食後、何故か俺だけ親方に店の裏側に呼び出された。アクアは親方に寄越された酒瓶抱えて大喜びしてたので、今頃一人大騒ぎしているだろう。
そこは街を覆っている外壁が目視できる、拓けた場所だった。練習用なのか一角には巻藁や丸太が突き立てられていて、そこで俺は親方と向かい合っている。しかし、こちらは丸腰なのに対し、親方は何故か大小二本の刀を構えている。右手に長刀、左手に少し短めの……小太刀だっけあれ?
「あの……親方? なんで、こんな状況になっているんでしょうか? 俺、そんな気に障ることしでかしましたっけ?」
やっぱ胸ばっか見てたのは不味かったのか? でもしょうがない。だってあんな巨乳、それも鍛冶作業で谷間に汗が溜まってるシーンとか見過ごせない!
「気には触っていないが気になることはある。一応言っておくがお前の舐め回すような視線じゃないぞ。まだるっこしいのもアレだ。とっとと変身しろ」
不敵に笑う親方の口ぶりに、俺は身体を固くする。別に舐め回すような視線とかいわれたからじゃない。本当だぞ。それはちょっとドキッとしただけだ。
「……それを知ってるってことは、親方があの黒フードが言ってた『先に送った奴ら』の一人なんですか」
「そうだ。さあ、変身して戦え。そうすれば俺が知っている事はすべて話す」
そうとくればやるしかない。
『アーイ! カイガン! オレ! レッツゴー! 覚悟! ゴ・ゴ・ゴ・ゴースト!』
ベルトの瞳の部分から飛び出た『ガンガンセイバー』を握りしめ、俺は正面から突撃する。
正直言って、俺の素人目で見ても隙がないと断言できる親方にはどうやったって勝てそうにはないが、まずは俺が動かなきゃ話にならない。喧嘩くらいしか経験がない俺がいかにもな凄腕相手にこんな事するのは自殺行為だって分かってるが、かといって親方が動くのを待ってたってそれは同じ。
なら向こうのペースで攻め立てられてろくに反撃もできずなます斬りにされるよりは、こっちから突っ込んだほうがまだ希望は持てるし反応も出来る。あと、覚えもいいだろう。
「ほう、臆病なりに頑張ったか。結構」
そんなつぶやきとともに、袈裟懸けに振った剣の腹が軽々と小太刀に受け止められる。刃を向けたわけじゃないから驚きもせず、振った勢いのまま足元へスライディングの格好で飛び込むが、凄まじい速さで向かってきた長刀に切り払われ、思い切りふっ飛ばされる。
~~~~~ッ痛ッッッッてえぇぇぇぇぇぇ!!
血も何も出てはいないが、斬られた痛みが強烈に奔る。物理的には守られるが、感覚的には素のままか。何度か食らうと失神まっしぐらだ!
ぶっちゃけ逃げ出したいが、この状況で無策に逃げるとか背中からバッサリいっちゃってくださいと言っているに等しいのでそれも出来ない。つーか、やっぱ武器じゃない方が戦い易い。幾ら何でも人間に剣で斬りかかるとか一般人の俺にはきついっての!
取り敢えず、悠々と歩いてくる親方を前に剣を両手で構える。
「うん?」
明らかに何かを察した風に見せる親方は、気にも留めない様子でそのまま刀を向ける。俺はその親方に対し、ガンガンセイバーを投げてから背を向けて走り出す。
ギン!
後ろで金属音がなった直後、ベルトのレバーを一回引く。
『ダイカイガン! オレ! オメガドライブ!』
右腕に力を込めるイメージに従い、拳がエネルギーに包まれたのを確認すると、走った勢いを利用して体を反転させ、親方を迎え撃とうと拳を構えるが……
「えっ!?」
親方の姿はそこになく、俺に覆いかぶさるように影が……上に跳んだ!?
ばっと上を見るが、時既に遅く――
「王手だ」
そんな言葉とともに、『背後』からの一太刀が痛烈に襲いかかった。
「うあぁ!!」
呻き声を上げて変身が解けた俺に、ふわり、とかかる作務衣。親方がさっきまで着ていたものだ。
あの時、俺が逃げるふりをして一撃食らわせるつもりだと見抜いた親方は、俺が背中を向けた時点で瞬時に作務衣を脱いで上に放り投げたんだ。そんでもって、再び俺が振り向いた時に視界に入らないよう注意した上で背後に回り、上からかかる作務衣の影に俺が気を取られた瞬間にズバリ、だ。
……完敗だ。勝負にもならない。一矢報いるどころか、無駄な抵抗すら出来なかった。
「正面からでは勝てないと認め、その上で往生際悪く足掻いたのはいい。自分では刃を向けきれないと剣の腹で向かってきたのもむしろ英断だ。惜しむらくはやはり絶対的な力不足と、経験の無さだな。だが……痛みはそのまま受ける筈にも関わらず、一撃耐えたのは面白い。気に入ったぞ、佐藤和真」
頭に掛かっていた作務衣が取られ、代わりに何かが目の前に投げ寄越される。赤い……眼魂?
「名乗りが遅れたな。俺は宮本武蔵。天下無双の剣豪だ」
……ハァ!?
驚きつつ眼魂を拾って、後ろを振り向いて見た親方の顔は、実に満足な顔を見たといいたげなドヤ顔だった。
「え、マジで? 宮本武蔵!? え、でもなんで女!?」
そんな今時のギャルゲーみたいな展開持ってこられても!!
「あの黒尽くめによれば、俺はお前がいた世界の者ではなく別の世界から引っ張ってこられた存在らしい。身体を与えて蘇らせるには、大往生を迎え人生を悔いなく終えた者ではなく、未練を残し死を迎えた魂が都合がいいとな。それが偶々女である宮本武蔵だった、というだけの話だ」
作務衣を着ながら実に簡潔な説明をしてくれる親方を前に、呆然とするしか無い。こんな時に色めき立つほどの積極性があれば引きこもりなんてやってない。
「じゃあ、早速修行を始めるか。大丈夫、俺にかかればどんなヘボでも一端に戦えるようになるさ」
「え、いや、無理っすよ。俺にそんな根性とか無いですから、マジで」
ゲームならば「本当ですか! 俺が宮本武蔵の弟子になれる!?」とか言ってノリに乗っちゃうんだろうけど、俺にそんな積極性を求めるほうが間違っている。
だが、親方もとい武蔵さんは悪戯な笑みを浮かべ、
「ちなみにもし俺に勝てたなら……この身体を好きにさせてやるぞ」
ぐいっと、胸に巻いたサラシに指を引っ掛けた。
「剣豪宮本武蔵の教えを請えるは日本男児にとってこの上ない栄誉と幸福。よろしくお願いします」
その谷間に視線を巡らせた後、一も二もなく土下座して教えを請う。それが男だ。
「チョロいなお前……だが面白い」
武蔵さんがため息とともに吐いた感想を受け、俺の剣の道が始まった……。
「おおおおおおお!!」
「おら、後二周!」
朝はアクセルの街をランニング。その後筋トレ。
「ぬおおおおおおおお! 終わりましたぁ!」
「遅い! 二十分遅れだ!」
昼は全身にくそ重い甲冑を着けて配達、それも時間制限付き。オーバーするとその分翌朝の筋トレが追加される。
「おぎゃあああああああああ!!」
「痛みに叫ぶ間にも体勢を立て直せ! 耐えろとは言わん、だが悶えるならば派手に見せて油断を誘え! 油断する相手かどうかの判断をつけた上でな!」
「あぎゃああああああああ!」
「重心をぶらすな! 速度を落とすな! 思考の停止は死を招くと心得ろ!」
こんな生活を一週間も送る内に、俺も多少は慣れてきたのだろう。武蔵さんの唐突な無茶振りにもあまり動じなくなってきた。
「カズマ。そろそろ実戦に出てみろ。丁度ギルドでジャイアント・トードの討伐依頼が来ていたから受けてみるといい」
朝食後の店内で、そんな事を提案された。俺としても武蔵さんの指導の元、多少は力がついてきた事を実感してきたので渡りに船だとも思った。
ちなみに、修行初日の昼休みにギルドへ行って冒険者としての登録を済ませた所、俺が成れたのは最弱職である冒険者一択だという悲しい現実を目の当たりにした。しかも才能があるやつは最初からある程度保有しているというスキルポイントは0。
その点、アクアは流石に女神だけあって最底辺の幸運と低い知力以外はカンスト級というから腹が立つ。スキルポイントも豊富にあって、アークプリーストになったアクアはすぐさまアークプリーストのスキル全般と格闘スキル、そしてなぜだか宴会芸スキルを習得した。
そんな残念すぎるスタートを切った俺の冒険者生活だが、一応剣豪の指導の元で少しは腕を磨いたんだ。やるっきゃ無い。
「餞別だ。これを着てみろ」
そう言って渡されたのは、鎖帷子に赤い篭手、脚甲。そして大小二本の日本刀だった。短い方でも五十センチ近くはあり、あまり詳しくないが小太刀と呼ばれるものだと思い起こす。
「いい素材が手に入ったんでな。特に鎖帷子はかなりの自信作だ。重量軽減の魔法を練り込んであって、丈夫ながらにかなり軽い。刀の方もお前に合わせた会心の出来だ。これで少しは頑張ってこい」
「……はい。ありがとうございます」
感無量、というにはまだ俺は未熟にすぎる。でもこんな俺を上手く宥めて鍛えてくれた人に目をかけてもらって、しかもこんなありがたいものまで貰えた以上、踏ん張らなきゃ男が廃る。
なんて、俺のキャラじゃないか。でも武蔵さんに少しは鍛えた成果を示したいのは本当だ。そしていずれはあの肢体をっ!!
期待と欲望に胸を膨らませ、俺は食事を終えてお茶を飲んでいたアクアに声を掛けた。
「アクア! クエスト行くぞ、カエル退治だ!」
「いってらっしゃい」
……っておい。出鼻くじくなよ駄女神。
「いや、お前も行くんだよ、アークプリースト」
「え? 嫌よ、今日こそ親方に槌を持たせてもらうんだもん。大体、私ってば強さも美しさも極めつくした女神なのよ? 修行ならあんた一人でいきなさいよヒキニート」
何たる無情さ。こいつが極めた美しさとやらに心の美しさは含まれていないらしい。
「オレ一人で数メートルのカエルなんてどうにか出来るか! 頼むから手伝ってくれよ。この通り!」
両手を合わせて拝む俺を見て、アクアは不敵に笑い出す。
「フッフッフ。カズマ、女神に対し願いを立てるのなら、それ相応の態度というものがあるんじゃないかしら? 今すぐアクシズ教に入信し、一日三回の祈りをささ」
みなまで言う前に抜刀し、アクアの首元に小太刀を突きつけ、つぶやく。
「五月蝿え。行くぞ」
「はい」
後ろでブツブツ「何あのイッちゃった眼マジ怖いしヤバすぎるんですけれどミスった時の親方の目そっくりなんですけど」とか呟く駄女神を引き連れて、俺はカエル退治へ乗り出した。
この作品世界のカズマは割りとキレていく予定です。具体的にはどっかの妖怪首おいてけに近いノリを発揮するかも……しれない!