訓練場でスキルについて教わった。
スキルにも色々分類があり、今回は戦闘系スキルを教わった。
戦闘系スキルは武術系と魔法系スキルとその他系スキルに分類される。
武術系スキルは武器などを使いMPを消費することで技を発動するスキル。
魔法系スキルは言わずもがなだ。
そしてスキルは魔物を倒さないと上がらないらしい。
「俺のスキルは武術系だけだな。職業の影響かな」
「私は魔法系だね。『祈り』ってなんだろう」
「『祈り』ですか!とてもレアな回復系スキルですね。回復系スキルを持つ人はあまりいません。いいですね」
「なるほど」
周りの兵士がスキルについて親切に教えてくれる。
「鑑定とは?」
「そのままですね。物や魔物について鑑定することができます。最初は成功率が悪く、分かっても名前くらいですがスキルレベルが上がるとより詳細に知ることができるようになります」
周りを見ると木剣などを使ってスキルを使ってみたりしている。
杉元くんは武術系スキルが多いぶん大変そうだ。
私は魔法系スキルを試してみる。
手を前に出して火魔法を唱えてみる。
「ダーム」
魔法陣が出てきて火の玉が出てくる。
大きさは野球ボールくらい。
人がいないところに飛ばしてみると結構速く真っ直ぐ飛んだ。
次は風魔法。
「フロー」
目の前に魔法陣が出てきて周りに風が起きる。
ある程度コントロール出来そうだ。
強化魔法は次でいいだろう。
杉元くんが悲しそうな顔で近づいてきた。
「なぁ、斎藤……」
「ど、どうしたの?」
「俺さ、武器がなかったら何もできないことに気付いたんだ」
「そ、そうなの」
スキル構成を見る限りまぁそうだろう。
盾も装備できないし。
なんとも言えない空気が流れた。
日が暮れて夜になり晩飯を食べて浴場に入った後部屋に戻る。
訓練場で気付いたのは今の体は地球にいたときよりも強くなっていたことだ。
体力も明らかに上がっている。
私はフカフカなベットで心地よい眠りにつくことにした。
次の日。今日はそれぞれ自由に過ごした。
スキルを練習する者。図書館で勉強する者。
魔法を練習する者。だらだらする者。
不良グループとオタクグループは意外と仲良くスキルを練習していた。
杉元くんはスキルの多さも相まって頑張って練習している。
杉元くんは全部使いこなそうと言うのだ。
せっかくあるんなら使いたいらしい。
大変だろうが頑張って欲しい。
私は図書館に行って魔物について調べてみることにした。
もしかして知っておくことで『鑑定』の成功率が上がるんではないかと考えたからだ。
「うわぁ」
様々な魔物の名前や特徴が書かれている。
魔物も種類によっては魔法は使うようだ。
これは明日みんなにも言っておこうか。
辞典には魔物について色々面白いことも書いてある。
例えばゴブリンの肉は不味いがゴブリンの焼いた肉をミンチにして肥料として畑に撒くとより美味しくなるらしい。
他にも様々な魔物の活用法が書いてある。
「何か飲む?」
「え?」
隣を見るといつの間にか谷口さんが座っていた。
「ここの図書室って飲み物飲んでいいってさ」
「そうなんだ。じゃぁなんか目が覚めそうなやつ。コーヒーみたいな」
「あーあの緑色のやつでいい?」
「うん。お願い」
「お願いって言われても侍女に頼むだけだけどね。すみませーん!」
近くにいた猫耳の侍女に飲み物をお願いする。
侍女は笑顔で頷き、飲み物を取りに行った。
「猫耳可愛いよね〜」
「谷口さん、顔がおじさんっぽいよ?」
「うへへへへ」
「もう」
侍女が飲み物を持って戻ってきた。
感謝を述べて飲み物を受け取る。
一口飲む。うん、コーヒーっぽい。
「ねぇ、ステータス見せてくれない?私も見せるからさ」
「いいよ」
『名前:谷口杏里
職業:召喚士 Lv:1/50
召喚:1
スキル
召喚 Lv1/10 聖魔法 Lv1/10 』
「私と結構似てるね」
「そうだね。聖魔法ってどんな魔法?」
「光魔法が成長したやつで補助寄りなスキルだってさ。私自身の攻撃力は低いから召喚頼りだね」
「私は攻撃魔法があるから、マシかな」
「そのぶん召喚が強いんだろうね」
「試してないの?」
「うん。何が出るかわからないしさ。この世界の生物についてもっと知ってからにしようと思って」
「じゃぁ、この辞典読む?」
「いいの?」
「うん。辞典もこれだけじゃないし。他の辞典も読みたいしさ。読み終わったら貸してね」
「ありがとー」
『魔物辞典その2』を取りに行く。
「あ、魔物辞典は一冊だけじゃないんだ」
「その2は魔物の進化系について色々書かれてるっぽい」
「へぇ、そうなんだ」
こうして谷口さんと和気藹々と話ながら1日が終わった。
そしていろんなものに対して『鑑定』を試していたらスキルレベルが上がった。
次の日。杉元くんは筋肉痛で辛そうだ。
『ステータス』の概念があっても筋肉痛にはなるらしい。
お爺さんに案内されて訓練場に向かう。
今日は実際に魔物を見せてくれるそうだ。
騎士団がゴブリンを捕まえて連れてくるらしい。
まだ外でレベル上げするには早いと言われた。
魔法とか武器に慣れてないからだそうだ。
「どんな魔物が来るんだろうな」
杉元くんは結構楽しみみたいだ。
私は種類によっては使役しようかどうか迷っている。
私は後衛だから盾役が欲しいのだ。
訓練場についた。
あと少しでデリスさんがゴブリンを連れて来るという。
前にスクリーンで見たが実際に見るのとは違うのだろう。
「ゴブリンかよ」
「サキュバスとか見たくね?」
「エロいんだろうなぁ〜」
男子がバカな話をしている。
女子は冷ややかな目で男子を見る。
私も冷ややかな目で杉元くんを見た。
バカなことをしているうちにデリスさんが入ってきた。
後ろには縛られたゴブリン。
だがスクリーンで見たゴブリンよりも大きい。
なぜか私達を見て驚いているように見える。
「ゴブリンじゃなかったのか?」
ステルさんがデリスさんに尋ねる。
ゴブリンじゃないのだろうか。
「なかなかゴブリンが見つからなくてな。
しばらく進んだらトレントに捕まっているのがいたからこれにすることにした」
「そうか。まぁいいじゃろう」
私達に説明する。
「この魔物はボブゴブリンといってゴブリンが進化した魔物です。強さは最弱とは言えませんが弱い部類でしょう」
みんなじろじろボブゴブリンを見てる。
私は『鑑定』を使ってみた。
『失敗しました』
ダメか。もう1回。
『失敗しました』
3度目の正直。
『ボブゴブリン
普通よりも強化されたゴブリン。』
読みあげる。
お爺さんがいう。
「あなたは確か魔物使いですよね。使役してみますか?」
「じゃぁ、試しにやってみてもいいですか」
「どうぞ」
ボブゴブリンに近付く。
みんなの見てる前で使役してみる。
『失敗しました』
もう1回。
『使役:ボブゴブリン』
「成功しました」
「使役したらより詳細にボブゴブリンについて知れるはずです」
「ステータスを見てみてください」
『名前:斎藤知恵
職業:魔物使い Lv:1/30
使役:1/1
HP :30
MP :35
使役魔物:ボブゴブリン
スキル
強化魔法 Lv1/5 火魔法 1/5 風魔法 1/5
鑑定 Lv2/5 使役 祈り 』
「ちゃんと使役してます」
「使役した魔物はより詳細に知れるはずです」
「なるほど」
『ボブゴブリン 特殊個体
より成長したゴブリン。
スキル:置換を持つ。 』
「特殊個体?」
「特殊個体ですか!」
「特殊個体って何ですか?」
「理由はまだ分かりませんが普通の魔物とは違ってなぜかスキルを所有している個体です」
「スキルは人族だけじゃないんですか?」
「滅多にいませんがスキルを持つ個体もいます」
「聖神に聞いたりしなかったんですか?」
「聖神から神託を頂くことがあっても、こっちから聖神に話しかける事は出来ないのです。なので日々研究者が頑張って研究しています」
「スキル:置換ってどういうスキルですか?」
「置換?すみませんが私は聞き覚えがありません。あとで図書室で調べてみて下さい」
「分かりました」
ボブゴブリンを見る。
驚きの表情で私達を見ている。
「なぁ、斎藤さん」
不良グループの関くんが私に話しかけてきた。
ニヤニヤしている。
「スキル使って攻撃して見ていい?」