ゴブリン成長記   作:補う庶民

3 / 19
3話

森の中をどんどん進む。

今のところ食べられそうなのはそこらへんに生えているキノコとか木の枝に刺さってる目っぽいものだけだ。

たまに遠くに俺と同じゴブリンが見えるが流石にゴブリンを食べる気はない。

あれからスライム系には出会えず、出会えるのは俺と同じゴブリンやツノがあるイノシシとか勝てる気がしないものばかりである。

ゴブリンは集団で動いているため攻撃しようと思えない。

つまりレベルも上げられない。

 

「ギィギィギィ」

 

目っぽいもの——もう目でいいか、目を食べるしかないのか?

触ると一年の頃に生物の実験で触った豚の目と同じ感触で食べる気が失せる。

男は度胸。なんでも試してみるものさ。

口の中にスライムの目を放り込む。

噛むと中からドロっとしたのが流れてくる。

無味でとてつもなく臭い。

そして中には小さな石みたいな塊があった。

 

「グェェェェェェェ!!」

 

思いっきり吐き出す。凄い気持ち悪い。

食えたものでない。涙が出てくるほど臭い。

吐き出したものの中にあった1センチくらいの透明な石を拾いあげる。

不味くて食欲が無くなった。

上を見ると4枚の翼を持つ鳥がかぎ爪を俺に目掛けて突っ込んできた。

俺は慌てて前に避ける。

俺を捕まえ損ねた鳥は怒ったのだろう。

俺から一定距離を保ったままこちらを睨みつけてくる。

いつもの俺だったら一目散に逃げただろう。

だがスライムのこともあり俺は少しイラついていた。

レベルを上げるためには敵を倒さなくてはいけない。

ゲームの鉄則だ。ゲームをしたことがない俺でも知っていることだ。

持っていた木の枝を鳥に向かってやり投げのように投げる。

真っ直ぐに鳥に飛んでいったが鳥は飛んでいるのだ。普通に避けられる。

枝はそのまま何処かへ行ってしまった。

 

「グギャァァァァァァァ!!」

 

鳥に向かって威嚇するように叫ぶ。

今の俺は人間ではない。ゴブリンなのだ!

鳥はかぎ爪を構えてこっちに突っ込んでくる。

運動しない文系の俺でもどうにか見えるくらいの速度。

横に避けて相手が飛び上がるタイミングで手に持っていた透明な石を投げる。

今度は当たったが効いた様子はない。

挑発されたと思ったのだろうか相手はますます怒ったのだろう。

ピューイとひと鳴きした後、俺に体当たりしてきた。

また避ける。相手は俺に向き直るとまた突っ込んでくる。

今度は避け損ねてしまい羽が太ももに当たり少し切れた。

緑色の血が流れ出す。

死ぬかもしれないという恐怖に駆られたのか、鳥が飛び上がろうとした瞬間に足を掴んで引っ張る。

鳥は飛ぼうと一生懸命に翼を動かす。

いくら力一杯引っ張ってるとはいえ俺は貧弱なゴブリンだ。

耐え切れずに左手を離してしまう。

すると鳥は勢いよく右に曲がり、勢いが良すぎたのか、パキッと俺が掴んでる足の方の骨が折れる音がした。

鳥は地面に落ち、俺もそのまま倒れる。

相当痛いのだろう。鳥は体を震わせ、再び飛び上がる気配はない。

俺は両手で持てるくらいの石を持ち、鳥に近づく。

鳥は慌てて飛ぼうとするがうまく飛べないようだ。

俺は鳥の頭の上まで石を持っていき、思いっきり叩きつける。

あたりに真っ赤な血が飛び散った。

体に力が入らなくなってその場に座り込む。

鳥を殺して急に冷静になり、とんでもないことをしてしまったという感覚が襲ってくる。

 

「ギィ」

 

石をどける。

潰れてグチャグチャになっている。

吐き気がこみ上げてくるが胃の中には何もないため胃がヒクヒクして辛いだけだった。

ステータスを表示する。

 

 

『名前:高橋浩太郎 種族:ゴブリン Lv3/10

HP :9/18 LP:16

MP :3

スキル

HP上昇(小) Lv2/5 毒耐性(小)Lv1/5

言語習得不可 』

 

レベルとLPが増えて、HPが減っていた。

HPが減っているのは太ももにくらった傷のせいだろう。

俺は鳥を背中に背負って、川のある場所を探しに歩き出した。

 

 

しばらく歩いて湖がある開けた場所を見つけた。

湖の中に鳥を浸けて洗い、拾った石の破片で腹を切ってやり方がわからないまま解体を始める。

取り敢えず翼を付け根から切り落とし、皮を剥ぐ。

次は腹を真ん中から掻っ捌き、内臓を全て取り外す。

頭と内臓は湖の中に捨てて、残りの肉を湖につけ、血を洗い流す。

出来るだけ血を出しきって平べったい岩の上に置く。

火の起こし方はわからない。生で食べるしかないだろう。

ゴブリンの胃を信じよう。

ステータスを見るにレベルを上げて進化するにはこれからも殺していかなきゃいけないのだ。

肉を石で切って口に入れて噛む。

血生臭い香りが鼻を突き抜ける。

水を飲んでまた肉を切り分けてまた食べる。

何も考えず一心不乱に食べる。

はっきりいって不味い。ちゃんと洗い切れてないところから鳥の血が流れ込んでくる。それも飲みこむ。

しばらくして俺は全部食べ終えた。

 

 

 

水を飲みにきたのだろう。

ゴブリンが一匹、森から出てきた。

ゴブリンは俺を無視してそのまま湖の方へ行き、水を飲み始める。

水を飲んでるゴブリンの後ろに立ち、石で思いっきり殴りつける。

殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。

反撃される前に殴り殺す。

 

ステータスを表示させる。

 

『名前:高橋浩太郎 種族:ゴブリン Lv3/10

HP :18/18 LP:16

MP :3

 

スキル

HP上昇(小) Lv2/5 毒耐性(小)Lv1/5

言語習得不可 』

 

レベルが上がらない。

このゴブリンが弱かったのか。鳥の方が強かったのか。

どっちもだろう。

HPが全て回復していた。時間で回復するのだろうか。

LPは何に使うのだろう。

スキルにふることもできない。

進化するのに使うのかもしれない。

 

さらにレベルアップするため俺は石を持ち、獲物を探しにいった。

太ももの傷はいつの間にか塞がっていた。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。