一対の魔王   作:ウィナ

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強化フラグはともかくとしてこうなりました。
長くなりそうだったので分割。

3/16追記:またこいつ長野と長崎間違えてますよ
修正は待ってください(白目)


4話 白糸

場所は変わって白糸台高校。

 

宮永照、当時高校2年生。

インターハイも終わり白糸台は団体戦二連覇を達成。その確固たる地位を築いた。

とはいえ麻雀もやらなければ腕は鈍るもの。インハイ終了後も麻雀部は特訓を続けている。

 

寒さ増してくる秋の暮、照は部長の弘世菫に相談を持ちかけられていた。

 

「照、淡のことなのだが…何とかならないだろうか?」

「…何とかとは?」

「あいつの振る舞いは正直なところ目に余る。かと言って私が注意をしたところで聞く耳を持たないだろう?」

「私も少しは言ってあるよ?」

「照のは注意になってないだろう…」

 

白糸台高校に将来有望な打ち手として監督が連れてきた女子中学生、大星淡。

彼女もまた、照と同じく圧倒的強さを持つ能力者であった。

3軍や2軍メンバーでは相手にならず、1軍メンバーもある程度戦うと照のいる攻撃特化チーム以外歯が立たなくなっていた。

 

しかし、その強さが原因なのか淡は他者への思いやり的なものが欠如している。

自分より弱い者の話を聞く気は無いし、監督の誘いも興味本位だったと言っている。

唯一、自分より強い照には素直に懐いているのだが、照はそういった指導的なことが苦手だ。

個人の戦力としては申し分ないのだが、団体戦となるとその傲慢な態度は問題である。

菫はそんな淡を何とか出来ないだろうかと考えていたのだ。

 

 

「やはり、照以外の相手に一度負けるぐらいしないと駄目なのかね…」

とはいえ圧倒的強さを持つ照じゃないと勝てないような相手である。プロの一部なら勝てるかもしれないがそんなコネは持っていない。菫の発言は半ば諦めを含んでいた。

 

 

しかし照は、淡を負けさせる事のできる程の強者に覚えがあった。

「…一人、そういう相手がいる」

「本当か!是非教えて欲しい!」

「別にいいけど連れてくるのは難しいと思う。中3だから受験とかあるだろうし」

「淡と同学年なのか!それは尚更いいぞ…さすがのあいつも同年代に負けたとなったら少しは凹むだろう。じゃあ淡と一緒にその人のところまで遠征でもいい!監督には私が話をつける!」

必死な形相の菫に少し驚きつつも照は淡を連れて『その人』の元へ行くこととなった。

 

淡には照から伝えておいてくれ、と言われた照は部室の一角にあるソファに寝そべりポテチを咥えながら雑誌を読んでいる淡に声をかけた。

 

「淡」

「んー?どうしたのテルー?」

 

 

「私と一緒に長野に行って欲しい」

 

 

---------

 

 

その週の末、照と淡は昼前に長野を訪れていた。

この移動に関しても色々とあった。

 

宮永照は方向音痴である。そして東京駅とは現代に存在するダンジョンである。

淡がトイレや売店に行っている間に照が迷子になっていると言ったことが今日だけで2回あった。お陰で本来の到着予定時刻を大幅に過ぎてしまった。

そのことに関して照は「その為にわざわざ朝早く出るようにした」と発言している。

迷子になり時間を潰すことを前提とした発言に淡は少し呆れていた。

 

駅に着くと父親が車で迎えに来ていた。思えば父親に会うのも1年ぶりぐらいである。

 

「お父さん、お久しぶり」

「ああ、久しぶりだな照。そちらのお嬢さんは?」

「大星淡。私の後輩?になるのかな」

「そうか、初めまして大星さん。照の父親です」

「初めまして。大星淡です」

 

「ところで今日はどうして長野に来たんだ?」

「咲に会いに来たの」

「そうか、この時間ならまだ家にいるはずだから、取り敢えず乗って乗って」

「うん、淡行こう」

 

◆ ◆ ◆

 

大星淡は困惑していた。

突然照から長野に行くと言われ、付いてきてみれば照の実家帰りである。

いつものような無表情ではなく、少し柔らかい表情を浮かべる照と父親は何処にでもいる家族をしていた。

何故照の実家帰りに自分が付き合わされているのか。最初は照の方向音痴が原因かと思ったがどうも違うようなので、照の実家へ移動する車の中、取り敢えず聞いてみることにした。

 

「ねえテルー?なんで私に付いてきてって言ったの?」

「あれ、言ってなかったっけ」

「うん、聞いてない」

「…淡に打ってもらいたい人がいるの」

 

淡は尚更意味不明であった。

打つとは勿論麻雀のことだろう。だが今更誰と打てというのだろうか。

照以外には本気を出せば負けないと思っているし、照以外と打つことに意義を感じない。

もしかすると照の知り合いのプロとかなのかもしれない。なので重ねて聞いた。

 

「誰と打つの?」

「私の妹」

「え、テルー妹いたの?」

「うん。言ってなかったっけ」

「聞いてないよ」

 

誰と打つかははっきりしたが、何故わざわざ来たのかまでは分からなかった。

照の妹というからにはそれなり以上には打てるのだろうが、それでも負ける気はしなかった。

そうこうしているうちに照の実家へと到着した。

 

「父さんはこのまま買い物に行くから、照達はゆっくりしていってな」

「分かった。淡、入ろうか」

 

 

 

家に入るとすぐに一人の少女が迎えてくれた。

 

「お姉ちゃん!久しぶりだね!」

「そうだね、咲。元気だった?」

「勿論!お姉ちゃんが急にこっちに来るって聞いてびっくりしたよ。…ところでそちらの人は?」

「大星淡。私の後輩。咲と同い年だよ」

「そうなんだね。初めまして淡ちゃん。お姉ちゃんの妹の咲です」

「初めまして、今日はよろしくね、サキー」

 

「それで、お姉ちゃんたちは今日は何しに来たの?」

「テルー、もしかして話してないの?」

「…忘れてた」

 

「えっとね、淡と麻雀を打って欲しいの」

そう言われた咲は観察するような目で淡を眺めると、

「…そういうことだね」と答えた。

 

「丁度これからある場所に打ちに行くつもりだったから、一緒に行ってそこで打とう」

「何処へ行くの?雀荘とか?」

「友達の家だよ。そろそろ迎えが来ると思うんだけど…」

咲がそう言うと外から父親の車とは別な車の音が聞こえてきた。

「あ、来た。さすがハギヨシさんだなぁ」

 

家の前には一台のリムジンが止まっていた。

そのよく分からない状況に思考が追いついていない照と淡を後目に、咲は運転手と何か話しているようだった。

しばらくすると咲が「一緒でもいいって!じゃあ行こうか!」と言ってリムジンに乗り込んだので、二人も咲と一緒にリムジンへと乗った。

 

◆ ◆ ◆

 

リムジンに乗り込み、運転手に自由に飲み物などを飲んでいいと言われると淡は早速冷蔵庫を漁り始めた。

それを後目に咲は小声で、

「で、淡ちゃんを連れてきたのはどんな意図があるの?」

と聞いてきた。

 

「淡を一度こてんぱんに負かせてほしいらしい」

と簡潔に目的を話した。

 

「誰に頼まれたの?」

「うちの麻雀部の部長」

そう答えると咲は、冷蔵庫からトマトジュースを取り出し飲みだした淡を一瞥し、

「…そっか」と一言呟いた。

 

その後は特に話すこともなく、リムジンは何やら門をくぐり、その先の屋敷に進んでいった。

 

屋敷に到着し、客間と思われる場所へ通されると一人の女性と彼女に給仕をするメイドがいた。

 

「咲さん四日ぶりですわね…そちらの方々は?」

「透華さんこんにちは。こちらは私の姉と…姉の後輩?」

「初めまして、姉の照と言います」

「初めまして。お姉さんの話はよく咲さんからお聞きしていますわ」

「そうでしたか、咲が普段お世話になっています。こちらは私の後輩の淡です」

「…はじめまして」

 

ここに来てからどうも淡の様子がおかしい。

もしかするとこの豪邸と言える屋敷に気圧されているのかもしれない。

 

「ぜひ淡ちゃんと衣ちゃんを打たせてみたいと思って連れてきたよ」

「そういうことでしたか。それでは…」

 

透華が言葉を続けようとした時、部屋の扉が開き一人の少女が入ってきた。

うさみみのような赤いヘアバンド、幼い容姿。その姿には見覚えがあった。

 

(…天江衣)

団体戦長野予選で三校同時飛ばしをし、親善試合で優勝をもぎ取った。

団体戦は大将戦前に決着が付いたせいで直接戦ったことはないが、間違いなく自分の全力に匹敵しかねない相手。

咲はこんな怪物と交友があるというのか。

 

「咲!来てたんだな!早速打とう!」

「今日も来たよ衣ちゃん!今日はゲストを連れてきたよ」

「そこの二人のことだな?片方は分かるぞ、インハイ王者だ!」

「私もお姉ちゃんと打つの久々だから楽しみなんだ、早速準備しにいこうか!」

「うん!」

 

そう言って咲と衣は部屋を出ていった。

 

「全く、相変わらず二人揃うと騒がしくなりますわね」

透華は少し諦めを含むような呟きを漏らしていた。

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