東方悪魔狩人~Miko Devil May Cry~ 作:放仮ごdz
ここは結界で外の世界と隔絶された全てを受け入れる地、幻想郷。
妖怪の賢者「八雲紫」が作ったここでは常識と非常識の境目である博麗大結界によって外の世界と分けられているため、外の世界で人間に忘れ去られ幻想となった物事は、自動的に幻想郷に流れ着く。
例えば神や妖怪、魔物など外の世界で幻想となった…即ち、忘れられた物の多くが幻想入りするここでは、それが原因で異変が起こる事がある。例を上げれば妖怪の山に神社ごと引っ越してきて陣取ってしまったとある二柱神が起こした異変などだろうか。
今回もまさしく、そんな外の世界が原因の異変が起こった。それも、幻想郷が滅びるかもしれない異変が。
「はあ?氷精が人里に放火して大騒ぎ?」
ある日、謎のスーツケース片手に博麗神社に訪れた友人、自称普通の魔法使いである霧雨魔理沙が持ってきた事件の知らせに、湯飲みをお盆に置いて訳が分からないと表情で応える楽園の素敵な巫女、博麗霊夢。氷精が騒ぎを起こすのはいつもの事ではあるが、問題はその事件の内容だ。
「おう。何か知らんけど、チルノが人間の子供と些細な事で喧嘩になってそれを仲裁した慧音が大火傷を負ったんだと。どう思う?」
「…妹紅ならともかく氷精が火を、ねえ?…慧音はなんだって?」
「アレはいつものチルノじゃないとか何とか言ってたぜ。まあ人死には出なかったらしいが、チルノはそのまま行方不明だ。今、大妖精たちが捜しているらしい」
「…なるほど、貴方の言いたいことが分かったわ。異変だって言いたいのね」
「そういうこと♪」
睨みながら問われた霊夢の言葉に、楽しそうに笑う魔理沙。そんなお気楽な友人に溜め息を吐き、霊夢はめんどくさげにお盆を持って片付けながら魔理沙に問いかけた。
「…はあ。今度は何処の馬鹿が起こしたのかしら。で、魔理沙はどうするの?」
「私は手掛かりが無いか色々探す事にするぜ。氷精が炎使うんだ、変な薬品とか関係ありそうだから永遠亭とかだな」
「まあ妥当ね。私は地道にチルノ捜してボコる事にするわ。…ところでその鞄、なに?」
戸締りを済ませ、縁側から庭に下り立った霊夢の視線に入ったのは、魔理沙が右手で担いでいる謎のスーツケース。幻想郷では見ないそれに、魔理沙は笑顔で見せびらかす様に霊夢に突き出した。
「おう!これはこーりんの店で見付けて珍しく買って来たもんだぜ!」
「へぇ、泥棒三昧の魔理沙が珍しいわね」
「こーりんが言うにはこれは「用途が666と多すぎて意味不明な代物」らしくてな、安売りされてたんだ。名前はパンドラって言うらしいぜ。面白そうだろ?」
「…パンドラって聞いたことあるわね。なんだったかしら?」
「さあな。思い出せないって事は大したことないんじゃないか?それじゃ、私は行くぜ。相変わらずお茶が薄いから今度来た時は濃い目のをよろしくな!」
「金になる話を持って来たならいいわよ。じゃあね」
少し引っ掛かりながらも、箒に乗って飛び去って行った魔理沙を見送った霊夢は伸びをし、雲一つない青空を見て寒気に震えると中に引っ込み、マフラーを付けた姿で出てきた。
「月旅行パーティーの時のがまだ残っててよかったわ。冬だから元気になった氷精が何かパワーアップして火の力を手に入れたとかだと簡単なんだけど、間違いなく違うわね。これまた変な異変になりそうだわ…」
そうぼやくとふわりと宙に浮かび、神社の直上まで上昇する霊夢。【空を飛ぶ程度の能力】を有しているが故の芸当である。とは言っても、ほとんどの住民が普通に飛べたりするのだがそこは気にしていない。
目当ての氷精を見付けるべく、博麗神社を囲む森のはるか先に霧の湖に視線をやると、空から見るとその近くにある人里方面に妙なものが見えた。人里に向けて、直進する大きな影があった。
「…なにかしら?」
その影がもうすぐ人里に突っ込もうとしているのを見て、直感で危険な物だと判断した霊夢は急行する。
「これは…戦車?」
直進する影の直上に差し掛かった辺りで霊夢が見たのは、巨大な重武装戦車を牽いた漆黒の巨馬だった。しかし蒼い炎に包まれており、気配は妖怪や人間のそれとは大きく異なり、暴れたりないとでも言わんばかりに木々を薙ぎ倒しながら爆走している。こんなのが人里に突っ込めば、大惨事まったなしだ。
「止まりなさい!」
掌に光球を出し、それを顔に向けて飛ばす霊夢。すると巨馬は停まり、こちらを見上げて来た。蒼く光る輝きの無い瞳に、霊夢は直感で感じ取る。明確な敵意、戦いこそが目的とでも言わんばかりの戦意を。
「…やる気たっぷりみたいね。弾幕ごっこって分かる?」
そう問いかけた霊夢目掛けて、重戦車の屋根が開いて放たれる蒼い炎を纏った矢。霊夢は宙を舞ってそれを避けると矢は地面に当たって爆発し、それを目にした霊夢は扇状に御札をばら撒き弾幕として放つ。
「ブルルルルッ!」
巨馬…外の世界でゲリュオンと呼ばれた、死後悪魔に成り果てた名馬はそれを視認すると重戦車をその場で振り回して弾幕を打消し、そのまま再び爆進。
逃げたか、と霊夢は思ったが、すぐさま方向転換してこちらに向かって来るのを見て体勢を立て直し、大きめの札を回転させながら放った。
「博麗アミュレット!」
「!」
途中から急加速したそれにゲリュオンは対応できず直撃、一旦停止し嘶きを上げる。
「ブルルルルルッ!」
そして地団駄すると、地面から赤黒い光球がいくつも出現して空中に浮かび上がって配置され、再び爆弾矢を重戦車から投射。それを避けようとした霊夢は目の前に浮かんで来た赤黒い光球に直撃し、その瞬間それは起きた。
「っ…!?」
時間が、霊夢の感じている時間が、唐突に緩やかになった。空を飛ぶ力も失い、ゆっくりと降下して行く霊夢に向けて突進してくるゲリュオン。先程の光球に当たった事でこの状態になった事を悟った霊夢は、以前戦った時間を操るメイドとの対決を思い出して何時でも弾幕を撃てる心構えでその時を待つ。
そして、突進を受ける直前で時間は戻り、霊夢はトンッとゲリュオンの頭部に手を付けて宙返り、同時に放たれた爆弾矢を全て空中制動で回避し背後に着地。
「貴方とのチキンレースもここまでよ。スペルカード発動―――」
袖に入れていた特別な札を取り出して構え、こちらに向けて再度突進を繰り出してくるゲリュオンを前に不敵に笑った。
「霊符【夢想封印】!」
地面を転がり突進を避けながら七色に光る光球をいくつも放つと同時、ちょうど浮かんで来た例の赤黒い光球に当たって再度時間がゆっくりになる。しかしゲリュオンの突進はギリギリ紙一重で回避。灰色の世界で、横に一回転した霊夢は勝利を確信して受け身を取り、ゆっくりとした動きで立ち上がった。
「…そして時は動き出す、だったかしら」
「ブルルルルゥッ!?」
その瞬間、時間は戻りゲリュオンに向けて滞空していた光弾が連続で炸裂。重戦車が完膚無きままに破壊され、森の中に投げ出されたゲリュオンは木々を薙ぎ倒しながら倒れ伏し、満足と敬服の宿った目で霊夢を見詰めた。
「ごめんなさいね。戦ったことがある能力だから、拍子抜けだったわ。でも、無力化しただけだしまだ生きてるでしょ?」
――――何故、殺さぬ?
突如、そんな声が聞こえた。驚いた顔してゲリュオンを見詰める霊夢。それは、目の前の馬からの言葉だった。
――――そなたは勝った。我は負けた。なれば、我が死を以て終わりを告げるべきであろう。何故、殺さぬ?
その問いに。幻想郷を知る博麗の巫女は笑う。そんなこと愚問だと。
「貴方はここに来たばかりで知らないでしょうけどね、この幻想郷内での揉め事を解決するための手段として弾幕ごっこってのがあるの。殺し合いを遊びに変えるルールでね、友人曰く「この世でもっとも無駄なゲーム」らしいわ。私はいいルールだと思ってるけど。
あ、手加減をしてるわけじゃなくて本気で戦闘はしているわよ? ただあくまでルールの範囲内でのことだから絶対に勝たなければならない、負けられないなどの意気込みがないだけで死人が出る事もあるわ。それでもあくまで遊び、私は遊びで命まで取るつもりは無いわ」
――――殺し合いを遊びに、か。我等からしたらまさしく遊戯に過ぎぬな。そなたらにとっても戦いとは手段なのであろう?だが我等にとっては、それこそ全て。
「…どういう事?」
その言葉に、今回の異変の根幹を感じ取った霊夢は問いかける。すると、ボゥッ…と淡い光を纏い始めたゲリュオンは誇らしげに言葉を紡ぎ始めた。
――――争いとは祭り。技をぶつけ合う事こそ誇り。ここにとってそれは遊びでも我らにとっては神聖なる儀式、魔界と言う無常の世界に置いて唯一変わることのない、絶対の価値だ。我らが欲するは戦いの日々、更なる力の衝突、そして絶えることのない闘争の連続だ。
「戦いこそが全てだって言うの?貴方の命は?」
――――無論。相手の死も己の死も気にするものか、ただ単に残念だったと言うだけよ。
「…そんなの、間違ってるわ。命は一つしかないんだから、そんな軽んじて使う物なんかじゃない!」
思わず激昂する霊夢。それに対し愉快そうに笑むゲリュオン。
――――理解できないのは当り前だ、我ら悪魔とそなたら人間達では価値観が決定的に違うからな。それでも、死闘の末に我は敗れたのだ。故に我は、満足している。感謝するぞ人間、我が力を受け取れ。我は眠るとしよう…どうせ、死に掛けだったのだ。絞り粕ではあるが、これから相対する者達に対してそなたの力となろう。
「どういうこと?まだ、貴方の他にも…その悪魔がいるって言うの?」
――――我は赤コートの半人半魔に敗れた本体の残り滓だ。ここの在り方故か、敗北し消滅する前に乱心したままここに来た。それを貴様に敗れたのだ。だが、この地には我の他にも同族の気配を感じる。恐らくは我と異なり全盛期と同等の力を持っている輩がな。
「そんな…まさか、氷精の事件も…?」
思わぬところで今回の異変の手掛かり、というより根幹を知り得た霊夢はゲリュオン以上の力を持つ悪魔達の存在に身を震えた。怖くは無い、しかしその悪魔達によって幻想郷がどうなるか考えただけで恐ろしいのだ。間違いなく、この最後の楽園は地獄と化すだろう。最悪の異変である。
――――この地を戦乱の渦に巻き込ませ、血に染めたくなければ抗うといい。受け取れ、正当なる報酬。我が力、QuickSilverだ。
その言葉を最期にゲリュオンは蒼い炎の中で燃え尽き、まるで人魂の様な蒼い炎の球が飛び出し、霊夢の右手に宿り銀の馬と戦車を模った指輪となって中指に付けられた。そしてそれは文字通り、新たな力となり霊夢の中に広がった。
「…確かに受け取ったわ。血に染めたくなければ抗う?いや、違うわね。抗うのは悪魔達よ」
握りしめた拳が、わなわなと震えて霊夢は修羅とも言うべき表情でどこにいるかも分からない悪魔達にぶつけるかのように、霊力の圧を飛ばして未だに燃えていた蒼い炎を消し飛ばす。
そして怒りの形相を浮かべ、いい度胸だと今回の異変の要員たちに向けて宣言した。
「この平和な幻想郷に災厄を持ち込んだ事…その腐った考えを悔い改めるぐらいに後悔させて駆逐してやるわ…!」
巫女とは言えない言動だがこれが博麗霊夢だ。どっちが悪魔か分からないのは御愛嬌である。
「…まずは氷精探しに霧の湖に行きましょうか。今のところ、妖しいのはアイツだけだし。悪魔だったら紅魔館にもいるしね」
再び飛び立った霊夢が目指す先は、名前の通り深い霧の立ち込める巨大な湖。そしてその畔に立つ紅い館だった。
「もっと!もっと!もっとよ!」
紅い館を貫くは、紫の雷。奥の間で永遠に幼き主の奏でる爆音と共に、轟雷が迸る。それを扉の前で見守る全く同じ姿をした二人の従者。
「・・・」
紅い館を覆うは、侵入を阻む氷の壁。立ち塞がるはそれぞれ凍てついた体を持つ、三つ首の狼と華人。
「……せっかく持って来たのを取られちゃいました。どうしましょうこれ」
それを、溜め息を吐きながら赤髪の少女が右腕に付けたガントレットの様な銃を撫でながら見詰めていた。
博麗の巫女は知らない。相手するのは悪魔では無く、悪魔の力を有する武具とその持ち主である知人達だと言う事を。波乱が待ち受けているのは間違いない。
NextMission.氷の門番を打倒し紅魔館に進入せよ
今回登場したゲリュオンはDMC3に置いてテメンニグルでダンテと戦ったゲリュオンの、倒されて消滅したゲリュオンの残滓が幻想入りした存在です。なのでDMC3時より弱体化してます。咲夜を相手していて既に慣れていた上に飛べる霊夢には敵じゃなかった。
入手、オリジナル魔具「ゲリュオン」。QuickSilverスタイルの力が使用できます。ダンテと違ってスタイルとして使う事が叶わないので、指輪型の魔具になっていただきました。その他、DMC4のボス悪魔達の魔具も考えています。ドッペルゲンガーはどうするか微妙に決まってません。
紫の雷が絶えず落ち、氷壁に覆われた事態になっている紅魔館。これだけで誰がどの魔具を所持しているか分かりますね。
次回はVS紅魔館の門番。感想をいただけると励みになります。次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。