四日目には田永さんが復活してきた。
「ったく、世話かけちまったな。」
「いえ。 怪我は大丈夫そうですね」
「ったりめえだ。 ボケ。
それより、よくやってくれたな。
ここの戦術はそのままでいくぞ。」
「河了貂さんの指示ですか?」
「ああ。 ここが渕副長に頼らないで済むなら渕副長は南壁中央に送られてくる精鋭に集中出来るから、戦局が安定するんだそうだ」
「分かりました。」
そして日没を迎えた。
「見ろよ 4回目の夕日だ。」
「はい。」
「こうして夕日を見る回数を重ねていけば、見えてくるんじゃねえか。
勝算ってやつがよ。」
「ですね」
ところで、大王様達は何日乗り切るつもりで来たんだろうか。
勝算も見通しもなしに来る訳がないだろうし、気になる。
後で飛信隊・信にでも聞いてみよう。
とにかく、こうして四日目を乗り切ったのだ。
引き揚げようとする僕達歩兵部隊。
次の瞬間
「止まれっ!」
河了貂さんが大きな声で全軍に静止を命じた。
「なんだよ娘軍師!」
「疲れたから休ませてくれよっ」
そんな声を無視して河了貂さんは言葉を次ぐ。
「今夜辺りから、おそらく夜襲がくる!
だから、夜襲対策の準備をしてくれ!」
「「「や、夜襲っ?!」」」
「ああ。 李牧には、蕞の士気の高さの秘密はバレていない!
だから李牧は、戦力を温存しながらも焦っているはずだ。
何故蕞は降伏しないのかと!
だからそろそろあからさまにこちらの戦力を削り、疲労を誘ってくるはず。
だから夜襲迎撃の用意をしてほしい!」
「「「応っ!」」」
部隊は総員、夜襲迎撃準備にはいる。
「どうする? ガキ?」
田永さんは僕にそう言ってきた
夜だからこそ出来る戦略もある…………。
ならば。
「よし。 火を使おう」
「お前、火が好きだな………。」
「拠点を潰したら、長梯子から油を垂らし、長梯子を焼き払うんだ。
翌日には予備の梯子が出来上がるだろうけど、夜の間はそうもいかないだろうし。」
「わかった。
油を持ってこい!」
しかし
「申し訳ありません 既に油は東に取られましたっ!
東の鬼 と呼ばれるえらく強い民兵とその一味が既にっ」
「なっ!?」
東の鬼? なんだソレは…………。
「ちっ 先を越されたか。 火が好きなのはてめえだけじゃねえんだな。
蕞の連中はみんな火が好きか?」
民兵達はぶるぶる首を横に振る
「いや、僕だって火が好きな訳では…………。」
「仕方ねぇ。 別の手を……………。」
その時、新たな手が思い浮かんだ。
「田永さん! こちらが殺した趙兵の鎧とかはどこにありますか!」
「一部はそこにあらぁ。」
上に上げた弓兵の間に築かれている壁に趙兵の死体が使われていた。
(※オリジナル描写です。 織田信長の長篠の戦いの鉄砲隊の馬防柵みたいなイメージでお考え下さい)
「昼間、偃月の陣形の左翼・右翼の兵士はこれをつけて下さい。
仲間に化けさせて趙兵を混乱させます。」
「味方が誤ってそいつら殺すかもしれんぞ」
「趙兵の槍と民兵の槍は違います。
よく見て下さいっ」
趙兵の槍は刃渡りが長く薄く、民兵達の槍は刃渡りが短く厚かった。
一目で分かるくらいの差異だ
「この方針を渕さんの部隊にも伝えてください
渕さんの部隊に、右から押し寄せてくる趙兵は背から討たないようにしてほしいと。
渕さん達の部隊から背を向けて見える趙兵は僕達が偽装させた味方だと。」
「ああ。 分かった。」
こうして僕達は迎撃準備を終えた。
案の定、夜襲が来た。
疲れて寝だす民兵もいたが、この偽装作戦は功を奏したと言える。
夜襲を仕掛けた趙兵は混乱をきたした。
「おいっ どうした!?」
「分からねえ!」
「てめえ、何ちんたら…………ぐっ! てめえ」
「引っかかったな。 俺らの作戦にな」
この日は満月だった。
僕達の迎撃部隊はこの満月が真南にくるまで戦った。