山の民が間に合わなかったら?を書かせていただきます。
蕞防衛戦は7日目に達した。
李牧軍の弱点は南道の武関を落とさずに脇道を通ってきていて補給がままならないのと、電撃戦で咸陽を落とす算段で機動力を重視していたため、兵糧をあまり持っていないところにあるはずだ。
あと1日。 1日守りきれば余力がなくなって撤退すると思う。
補給のままならない李牧軍の行動限界はおそらく10日で、南道を通って蕞に到着するのに2日経っていて、そしてそこから7日経っているので、今日は9日目と思われる。
僕はそう見立てていた。
そんな中、東壁の壁三千人将が慌てて大王様のいらっしゃる南壁に走っていった。
「……………なにかあったのだろうか?」
西壁の司令部のある高楼も空、北壁の司令部のある高楼も空だった。
「もう……………ダメかもしれない」
戻ってきた壁三千人将に事情を尋ねると、壁三千人将は顔面蒼白な表情でそう呟いた。
「……………どういうことでしょうか?」
壁三千人将は言葉をついだ。
「大王様は勝算もなく、蕞に来たわけではない。
援軍をあてにしていらしたらしい。
山の民………山民族の三万の兵の援軍を。」
「え?」
「山の民は秦の穆公を晋から救った山民族、馬酒兵の一族の子孫なのだ。
大王様は非公式に山の民の王・楊端和と盟を結んでいらっしゃる。」
「で、その援軍が来ない…………と?」
「ああ。 あの方は………あの方は北の民族、バンコ族との戦争をしているそうだ。
そして、つい今し方、援軍は間に合わない…………殿:昌文君様のいらっしゃる西に矢文が射こまれた。」
「…………………。」
つまり、勝算がなくなったと言いたいのだ。
「………………ですが」
「ん?」
「まだ、勝ち目はありますよ。」
「は?」
「敵は補給がなく、為す術がない咸陽を迅速に落とすために軽装備できているわけです。
兵糧はあまり多くは持ってきていないはず。
つま、長引けば長引く程、向こうも追い込まれていくんです。」
「……………そうだな。 大王様もまだ諦めてはいらっしゃらなかった。
なのに私が諦めてはいけない。」
「そうですよ! 戦が嫌いだったはずの僕でさえ、いまこうして戦っているんです。
壁三千人将が諦めてどうするんですか」
「ああ。 そうだな」
と、いっても、こちらも余力はほとんどない。
援軍が来ないのでは李牧軍の兵糧が尽きるのを待つのは不可能……………。
と、その時。
ある作戦が閃いた。
「あ、そうだ壁三千人将!」
「どうかしたのか?」
「大王様に会わせて貰えませんか?」
「………………それまたどうして?」
「作戦が浮かんだのです。 負けない作戦が!」
「負けない作戦?」
「はい! 李牧軍を今日中に撤退させてみせます!」
「……………ほ、本当か?!
た、直ちに大王様のもとに連れて行こう!」
僕達は大王様のもとに向かった。