キングダム別伝   7人目の新六大将軍   作:魯竹波

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第一章 蕞防衛編
第二話 迫る戦の足音


函谷関防衛戦は15日目を迎えた。

 

函谷関では合従軍の総攻撃が始まったそうだ。

 

桓騎将軍・王翦将軍が函谷関の危機を乗り切り、蒙武将軍が楚の大将・汗明を討ち取ったことにより、蒙武軍が函谷関正面に流れ込んだことで函谷関は陥落困難となったらしい。

 

だけど、僕が一番感謝したいのはその3人の将軍よりも、飛信隊・信という千人将だ。

 

何故なら、初日にあの万極を討ってくれたからだ。

 

万極は殺した民間人は10000を数えるという卑劣な将軍で、たまたま行商で馬央を通りかかっていた僕の伯父は万極軍に殺されていた。

 

国が滅ぶとどうなるのかは僕は考えたこともない。

 

だが、国が滅ぶにしろ、滅ばないにしろ、その前に万極が咸陽や蕞に来なくて済むというのは僕には大きい。

 

 

とにかく、15日目の戦況が蕞にもたらされた時、誰もが安心していた。

 

誰もが秦国軍の勝利を疑わなかった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

函谷関防衛戦17日目・夜

 

「………………んん?」

 

僕は南門にほど近い、母方の従弟の甘秋の家に泊まりがけで遊びに行っていた。

僕の家は西門に近いので、なかなか距離があるのと、母さんが守備兵の食糧の調理係で家に戻れないからである。

 

「どうした? 甘秋?」

 

「門が開いた気がして。

お父が帰ってきたかなって…………。」

 

甘秋の父さんは王翦軍に配属されて函谷関防衛戦に参加していた。

 

幼い妹もいるし、帰ってきてもらいたいところだ。

 

「門………って南門か?」

 

「うん。」

 

「いくら秦の勝利が確定したからといっても、帰るまではもう少しかかるはずだろう。」

 

と、その時

 

パカラッ パカラッ パカラッ

 

馬が大通りを駆け抜ける音がした。

 

「……………?」

 

「馬の駆ける音だな」

 

「なんでだろう? 夜も遅いのに」

 

すると、

 

「秋、覇?  まだ起きていたの? 早く寝なさい。」

 

秋の妹・練を背負った甘秋の母さんが起きていた僕たちに気づいた。

 

「「はーい」」

 

「それにしても、物騒ね。  早馬が来るなんて。

悪いことがないといいけど。」

 

甘秋の母さんが、そんなことを呟いていた。

 

 

 

 

 

 

 

早馬の正体は翌日に分かった。

 

「龐煖・李牧を大将とする趙・魏・楚・燕の大軍40000が武関から侵入し、咸陽に迫っている。」

 

とのことらしい。

 

しかも、麃公将軍を討ち取ったというオマケつきだ。

 

龐煖…………李牧の軍略のもと、王騎・劇辛らの名将を相次いで殺した趙・新三大天の一人だ。

 

三大天は六大将軍並の名将。 そんな名将が2人も来る。

 

しかも救援に駆けつけたのであろう麃公将軍まで殺されてしまった以上、蕞には打つ手がない。

 

脱出するか?

 

いや、脱出など出来る者はこの蕞には存在しない。

 

何故なら、今、蕞にいるのは半分以上、いや、十中七、八くらいは老人か女子供だからだ。

 

残りも、足が不自由な僕の父さんみたいにどこかしらに障害がある者たちだ。

 

その上、脱出して流民になったとしても行き着く先は餓死が良いところだろう。

 

だから、蕞の長老たちは門を開け放ち、無血開城して降伏することにしたそうだ。

 

正直、僕もそれしか道はないと思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

昼になった。

 

僕はまだ甘秋の家にいた。

 

母さんが今日戻るはずだったのが急遽、戻ってこれなくなったからだ。

 

甘秋の家の前に面した大通りを、北門の方から、南門の方に向かって、煌びやかな軍隊が通っていく。

 

「何だ? あれは」

 

「綺麗な鎧だなぁ」

 

煌びやかな軍隊の中心にいたのは17、8くらいの顔立ちが綺麗な青年だった。

 

雰囲気にどことなく威厳を感じる。

 

「見に行くか?」

 

「うん!」

 

「よし、行こう」

 

甘秋の頷きに僕も頷き返し、甘秋と一緒に僕も南門に向かった。

 

 

 

希「あっ 章覇またサボったの?

あいつら騒いでたよ~」

 

南門に向かうと幼馴染みの、希が話しかけてきた。

 

「だって、師匠弱いし」

 

希「章覇は才能あるんだから勿体ないなぁ」

 

こう言ったのは希の弟の弘だ。

 

サボったのは、父さんの言いつけで習っている矛の稽古だ。

 

矛が今の主流な武器だから仕方なく習っていた。

 

「それより、希、これは一体………?」

 

と、次の瞬間、南門が開いた。

 

弘「軍隊が来たから戦うつもりかと思いきや、やはり降伏するのかな?」

 

希「まあ、仕方ないよあの軍勢では、多分李牧には勝てないと思うし」

 

あらかた、蕞の城の引き渡しのための案内役だろうと皆は思っていた。

 

 

 

 

 

しかし、程なくして蕞に到着した部隊を見た時、その考えは間違いだったことに気づいた。

 

 

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