キングダム別伝   7人目の新六大将軍   作:魯竹波

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第四十話 練兵参加

軍略囲碁を終えると、既に夜になっていた。

 

「殿! 本日の練兵が終わりましたぞ!」

 

介子坊さんの後ろにいる兵士の疲れっぷりが異常だ。

 

「のぅ。 介子坊ぉ」

 

「何ですかな

殿ォ!」

 

「明日から、この小童を練兵に参加させよ。

教えを乞うたことを後悔させてやれぃ」

 

「ハッ!  覚悟しておけよ

ガキがっ!」

 

介子坊さんは吐き捨てて、出て行った。

 

 

 

「ああ、そうじゃ小童。

介子坊の練兵は、儂より厳しいからな。

覚悟しておけ

じゃから、今日はもう休め。」

 

「…………し、失礼致します。」

 

「ヌハハハ、もうびびりおったか」

 

「……………。」

 

 

 

翌日。

 

日が昇る前に叩き起こされた。

 

「早く起きんかぃ!  ガキがあっ!」

 

介子坊さんは木の棒で布団を叩いてくる。

 

慌てて服を着て、身支度を調えて、練兵場に集まる。

 

 

 

 

廉頗将軍の私兵は、ざっと1000程度だ。

 

趙からの古参兵のみで構成されており、魏人や楚人からの補充はない。

 

「お前らァ! 揃ったかァっ!」

 

「「はいっ!」」

 

「じゃあ、始めるぞ!」

 

「「はっ!」」

 

まずは武器の手入れから始まる。

 

「武器は武人の魂だぞっ!  アマッコ共を扱うかのように丁寧に、そして大事に扱えっ!」

 

相変わらず、甲高い声で介子坊さんは叫ぶ。

 

「「はっ!」」

 

そしていよいよ練兵は体を動かす段階に入る。

 

午前中は走り込みや、匍匐前進、その他戦争に関係なさそうな動きまでやらされた。

 

介子坊さん曰く、基礎体力を鍛えるためだそうだ。

 

郢陳の王城を、何周もさせられたりして、既に午前中の段階で相当、体力を持って行かれた。

 

 

 

そして、昼になった。

 

「……………っはあ!  疲れたっ!」

 

僕は椅子の上に倒れ込む。

 

「まあ、無理はねえわな。

俺たちみたいに何年もやらされている訳じゃねえしな。」

 

「だよな。

おめぇ、いくつだ?」

 

「13です。 そろそろ14になります」

 

「13か…………って13か!

13才にしちゃあ、よくやってるぜお前は。」

 

「頑張れよ!」

 

「…………っ、あ、はい! 頑張ります!」 

 

飯を頬張りながら、返事した。

 

 

 

 

廉頗兵の人たちは皆、優しかった。

 

僕は姜燕さんの部隊の人たちと一緒に励んでいたが、姜燕さんの冷た……涼やかな印象とは打って異なって、姜燕さんの部隊の人は陽気な人が多かった。

 

敵の兵士にも家族がいる……………一丁前に考えていたあの時とはまた、別に

 

敵の兵士にも、仲間達がいた。

 

そんなことを、趙人しかいない廉頗兵は僕に教えてくれた。

 

昼が終わると、実戦形式の練兵に入る。

 

既に手が疲れ切っていたので、最低限の受け流し術で乗り切るしかないのだが。

 

「サボるなー!」

 

「げはっ!」

 

介子坊さんは厳しかった。

 

乗馬訓練、棒を使った戦闘術の型の練習や、試合、軍隊としての集団戦法、陣形などの動きをやった。

 

 

そして、ようやく夕方になり、練兵が終わる。

 

 

「も、もう無理……………。」

 

グデッと倒れ込もうとするのを、廉頗兵の人たちが支えてくれた。

 

「蕞や武関の戦いの時は、大丈夫だったんですけどね……………本当に申し訳ないです…………。」

 

「まあ無理すんな。 初日は皆こうなる。 二週間すりゃあ慣れるから安心しろ」

 

「分かりました…………。」

 

すると

 

「や~。 大分やられているね。」

 

聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

項燕将軍の娘・玲だ。

 

「玲さんじゃないですか………。 今日はまたどうしたの?」

 

「んーとね。 こ、これ………あげるっ!」

 

疲れ切っていたか、玲は心なしか照れてる気がする。

 

渡されたのは、箱だった。

 

「中………開けて良い?」

 

「う、うん」

 

中には、手製と思われる、お菓子類が入っていた。

 

見たこともないような高そうなものばかりだ………。

 

「え、いいのこんな高そうな………」

 

「え? 手作りだけど…………」

 

……………つくづく見栄えがすぎ。

 

河了貂さんと良い勝負じゃないだろうか

 

「では遠慮なく……………。」

 

一口中にいれると、何故か凄く懐かしい味がした。

 

はじめて食べるお菓子類なはずなのに…………。

 

 

 

小さい頃に母さんに作ってもらった…………なんだっけな…………。

 

名前は思い出せないけど、以前食べたことのあるあの味に似ている。

 

思えば母さんと父さんは元気かな……………。

 

蕞から離れてはや2カ月経ったけれど、一度も思い出していなかった。

 

 

 

 

 

そう考えた瞬間、急に涙が目に貯まって、流れ出していた。

 

「ち、ちょっとどうしたの?!  そんなに美味しかったの?!」

 

僕はただ、ウンウンと頷くことしか出来なかった。

 

 

 

「きっと、親に会いたくなっちまったんじゃねえか?

ほら、嬢ちゃん、さっき手作りだって言ってたろ

 

だからさ、嬢ちゃんさえ良けりゃ、偶にでいいからこういうの作ってやってくれよ。」

 

廉頗兵の人が言う。

 

 

 

否定する気にはなれず、そして否定する余裕もなかった。

 

「…………わ、わかったから、じ、じ、じゃあねっ!

箱はまた来たときに返してくれればいいから!」

 

顔は見てないから分からないが、凄く慌てて出て行ったのが聞こえてきた感じで分かる。

 

でも、また来てくれるのか…………。

 

同い年の子は周りにいないし、ちょっと嬉しいかな。

 

 

 

 

 

 

そして、練兵にも慣れてくると、余裕が出てきた。

 

余裕が出てくると練兵の後には楽諒と軍略囲碁の試合をするようになった。

 

盤面も盆地、平野、大河の川岸を挟む戦い、城の攻防戦、湖など様々な物を試した。

 

 

勝率もはじめは低かったが、やがて癖なんかも摑めてきたので、負けないようになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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