キングダム別伝   7人目の新六大将軍   作:魯竹波

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荀遅…………オリジナルキャラクター。
荀早の兄。 凱孟軍軍師。

予備軍を率いて隆国の部隊と交戦していたが、弟の捕縛を受け、凱孟本陣に合流した。


第五十話 荀遅

「あの部隊、どっから現れたっ!?」

 

攻撃部隊に衝撃が走る。

 

「……………おそらく、山あいの向こう側から回り込んできたのでしょう。」

 

僕達の進路には伏兵の気配がなかった。

 

恐らく伏兵ではなく…………。

 

だが、僕等とは違い、魏の予備隊は連携を取り合っている。 

 

もっとも、左側の敵は大分離れているところに陣を構えているはずだから、この部隊は凱孟軍の別働隊だ。

 

 

とにかく、凱孟の戦術の才能の欠片も無い陣形にコロッと騙された僕等は、結果として、

「凱孟軍軍師を捕らえ、凱孟本人は戦下手」という有利な状況を敵に逆利用されたことになる。

 

僕はまんまと油断してしまった。 反省しなくてはならない。

 

ちなみに、凱孟本人が戦下手なのは凱孟軍軍師の荀早から聞いた。

 

昨日の愚痴、これまでの愚痴を結構訊かされたからだ。

 

 

 

 

いや、それよりも…………敵がなかなか頭が切れるようだ。

 

判るのは、この敵は間違いなく凱孟ではないということ。

 

それは初日に、最前線までわざわざ出てきた挙げ句、暴れ回って、荀早の戦術をまるきり台無しにしてしまったその振る舞いを見ても判る。 

 

加えて、荀早の話にも嘘をついている気配はなかったし、凱孟側からも返還要求があったくらいだからまあ間違いない。

 

廉頗将軍も、魏火龍の墓の話の続きで、

 

「猛牛のような単純な奴が魏火龍にはおった。

その阿呆が凱孟じゃ。

霊凰のような間違いなく六将・三大天に比肩するような輩もおれば、凱孟のような奴もおり。

魏火龍がそのまま中原を争ったとしても、やはり六将や三大天には及ばなかったやもしれんが、儂を満足させるには足る奴等だった。

もし、奴等が生きていたとして、奴等に会う時は、せいぜい相手してやれ。」

 

とか言っていた覚えがある。

 

この攻撃部隊を敵内部に孤立させるよう企んでのことであるから、敵は今日の飛信隊の動きを完璧に読み切っている。

 

僕等、左翼の攻撃部隊を孤立させるのに加えて、後方で待機しているこちらの精鋭をも減らしておこうという意図がひしひしと感じられた。

 

となると、敵の次の手は…………。

 

「田有さん。 岳雷さん」

 

「おう、どうした坊主」

 

「どうした」

 

「陣の後方に下がって、あの別働隊の対処の指揮を採って下さい。

恐らく、右翼の弱兵は囮。

凱孟の本隊がこの左翼の攻撃部隊の前線に向かって突撃をしてくるはずです。

故にここは僕が時間を稼ぎます。

 

岳雷さんは飛麃を率いて後ろに下がっ………」

 

「いや、そいつは必要ねえな。」

 

「田有さん?!」

 

「見てみろ坊主。  あの敵に向かっていく部隊があるだろう」

 

見ると、〝飛〟の文字が大書してある部隊が敵の部隊に目がけて真っ直ぐに駆けていくのが見えた。

 

信さんだ。

 

「……………早すぎる」

 

対応があまりにも早い。 河了貂さんの指示ではないとなると……………。

 

「直感だ。」

 

「直感……!!」

 

「あいつは時に妙な直感が働く。

そして、今回の状況は合従軍の時と全く同じ状況と来ている。

そりゃあ早い筈だ。」

 

「…………………。」

 

やがて、信さんの部隊は敵の部隊に到達した。

 

しかし、敵の部隊は味方の精鋭を相当数消耗させており、こちら側にかなりの痛手を与えているのもまた事実だった。

 

「さて、お前の言うとおり、来たぞ。 凱孟。」

 

「分かりました。 迎撃しましょう。」

 

「だな。」

 

 

 

 

 

 

「また出てきよったか 貴様」

 

凱孟はそう呟くや、少し辺りを見渡して

 

「むっ。 荀遅の奴、 儂の獲物と対戦しておるな?」

 

そう吐き捨てた。

 

「荀遅……………?」

 

「冥土の土産に教えてやろう。 荀遅は儂のもう一人の軍師じゃ。

貴様が捕らえた荀早だけが軍師では無いわ。」

 

ちっ   まだ軍師居たのかよ 道理で。

 

「だから何だっ!」

 

「貴様らの負けということじゃっ!」

 

凱孟は得物を振り下ろしてくる。

 

「くうっ! 」

 

力一杯、それを弾き返す。

 

「どうした? 昨日より力が無いぞ」

 

「それは、どうかなっ!」

 

次いで一撃を叩き込む。

 

だが、何故だろう やはり力が出ない。

 

昨日よりも全然筋肉に力が湧いてこないのだ。

 

「ふぬうっ!」

 

凱孟が次の一撃を叩き込んできた。

 

受け流しで辛うじて受け止める。

 

「どうした。 貴様、まさか昨日、命取られかけてビビったのではあるまいな?」

 

「違うっ!」

 

「そうか なら証明してみろ  貴様の〝武〟を!」

 

「くうっ!」

 

斬撃の一撃一撃が重たい。

 

そして、筋肉を抉ってくる一撃一撃を放ってくる。

 

「ふっ。 耐えよるかっ!」

 

凱孟は力尽くで型を崩そうとしてきた。

 

こうなると、なかなか厳しい。

 

既にこちらはボロボロで、型を崩されたら、こんな一撃一撃受け止める余裕はない。

 

「では、そろそろ終わりじゃ!」

 

次の瞬間、凱孟は僕の矛の刃を一撃で砕いた。

 

「死ねぇええええっ!」

 

「坊主! てめぇは下がれ!」

 

咄嗟に田有さんが僕を下げる。

 

「田有さん!」

 

田有さんの矛が凱孟の刃を受け止める。

 

やはり厳しそうだ。

 

10合保てばよい方だろう。

 

もう、退くしかない。

 

「岳雷さん!」

 

「どうした」

 

「退きましょう。 

どの道、今日が主役ではありませんし。」

 

「判った。」

 

岳雷さんは了解してくれた。

 

 

 

 

 

その後、凱孟が、僕等の隊に追撃を敢行し、それなりに被害が出たものの、信さんや、羌瘣さんの部隊が駆けつけてくれたので、どうにか退却に成功した。

 

この戦いで、飛信隊は3400くらいに減少。

 

三日目の突破は難しく思われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




て、テスト迫っておる嫌じゃー!

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