ジュールス・D・マチスン、H・N『血ノ末裔《リチャード》』の日々はオチンチンから始まるのでございます。
「今日も良い月が出ているではないか!」
窓から入り込む月光が優しくジュールスの部屋を満たす。
満足げにベッドより躍り出た彼は、裸一貫、服の一つ身につけていなかった。
吸血鬼たる彼の本分は夜。
暇つぶしの一環か朝方から活動をしている存在もいるにはいるが、大抵の存在は彼のように夜から活動を始めるのである。
十二分に月光を吸収したジュールスの心身は力にみなぎっていた。
その喉から、どこまでも響きそうな声が上がる。
「執事! 執事!」
彼の声に呼ばれて、元より扉のすぐ傍に控えていたのだろう、圧力鍋に眼球が生えたような顔つきの、ガタイのよい男が入ってきた。ナイトピープルが好んで使う代物だ。
生者を従者に扱うのはよくよく憚れるのだ。
何せ、無意識下においてもエナジーを主人に吸われてしまう。屋敷の管理、その他諸々を任すにおいては、それはあまりにも不都合である。
侍従が丁寧に礼を。
「本日もよい夜でございます、我が主」
「執事よ。私がそんな挨拶を欲しているかと思うかね?」
「これは失念しておりました。お許しを、我が主」
カリスマ溢れる物言いであるが、ジュールスは未だに裸のままである。すっぽんぽんである。
器用に体を折り曲げて礼をする執事に対して急かす様な口ぶりが続く。
「して、本日のものは?」
「はっ。ロシアはウラジオストクにて採取なされた代物にございます」
「うむ、うむ。セルゲイだな?」
「我が主の記憶力には脱帽するばかりでございます」
大男が懐から取り出した、それは。
「おお~。セルゲイ、久しぶりに見たが、君は良いオチンチンをしていたのだなぁ、いやホント」
オチンチンを模った、石膏である。
変態の朝は、オチンチンから始まるのである。
「ペロッ」
ジュールスの舌が石膏を舐める。
『大召喚』以前はそのまま切り取って剥製にしていたのだが、中央に怪異認定されそうになったのを機に、彼はなくなく石膏としてオチンチンを採取する事を余儀なくされていた。
「ふ~む、セルゲイ~、君のオチンチンは若干右の玉が大きいのだなぁ~? ペロッ、ペロロ、ヂュルル」
灰色のそれに思いを馳せたジュールスは、かつてのセルゲイの可愛らしさに涙をこぼしていた。
ああ、セルゲイ、可憐な少年よ。
オチンチンの型を取っている時のあの真赤な顔。今にでも思い出せる。
「ああ、セルゲイ、君は何故成長してしまったのかね。ペロッ。何故オティンティーンは成長してしまうんだ……! この、ペロッ、皮に、ベロ、隠されたままの、ジュルルルルル、はぁはぁ、子供らしさを残す事を、何故世界は許してくれない! チュパチュパ、んふふ」
変態の守備範囲は意外と狭い。少年少女に対してのみその変態熱視線は向けられる。
それは世にとって幸運、はたまた不幸であったのか。
口をすぼめて熱心に石膏に吸いつくその様は正しく変態であるが、侍従は尊敬にも似たまなざしでそれを見ていた。
「欲望に忠実なその御身、お流石にあります」
「ジュルルルルルルルルルル、ベロ、ペロ、ベロロロ……ふう、執事よ、下がって良いぞ。これから私は、あの部屋に入るのでな」
「承知いたしました」
この後、執事は石膏についた唾液やら変な液を丹念にふき取り、再び主の元に届けるまで大切に保管するのだ。
さて、一通り堪能したジュールスは侍従を下がらせると、自分だけの秘密の部屋へと足を進めていた。裸で。
秘密の部屋とは、『大召喚』以前、剥製として採取してきたオチンチン達が眠る彼のお気に入りの場所である。
こればかりは、信頼できる侍従とはいえ、立ち入らせるわけにはいかなかった。
「ふ~! やはりこの瞬間が一番気持ちが高ぶるな~! やはりリアルな色合いをしたオチンチンと少女の下半身の剥製には石膏では勝てないものがあるよね! これで感触まで再現できたら完璧なのだがなぁ……」
自身の変態趣味のためには、金を惜しむつもりもないジュールス。
さてさて、邸に設けられた一室。特殊な魔法鍵による解錠が必要なジュールスのプライベートルーム。
遂に彼がそこに辿り着いた時、ジュールスは絶句を余儀なくされる。
「なっ……!」
開いている。ジュールスのチンコルームが。
僅かに開いている扉。信じられないと言う面持ちで彼が恐る恐る近づくと、中に気配を感じ取れた。
居るのだ。彼の神聖なるオティンティンルームに入り込んだ何者かが。
「何者だ!」
一気に扉を押し広げたジュールス。
果たしてそこには、彼にとっての世紀末が広がっていた。
「……おいしくない、これ」
「!?」
部屋の真ん中で居座る一人の少女。
金髪にリボン――否。否否。今の彼にとって少女の詳細などどうでもいいのだ!
部屋。かつて剥製のオチンチンが至る所に設置されていた魅惑の土地。
今はもう。
何も無い。
チンチンは一片残らず消えていた。
「ば、馬鹿な! わ、私のチンチンが! 私のティンティンが……!」
「はだいろだったのに……」
絶望に包まれはじめていたジュールスの瞳に、それが映る。
今まさに、少女が、最後のオチンチンの剥製に齧り付こうとしているではないか。
「な、何をする貴様!」
「かわは、おいしいかも」
「あ、ああ……」
ガブリガブリ。
防腐処理やり詰め物やらのせいで、美味いと感じる筈がない。そもそも、食べるものではない。
まさか、まさか! 否、そのまさかでございます!
目の前の少女が、ジュールスのちんちんを食べてしまったのであります!
膝をつき、地に伏せるジュールス。
その瞳は、悲しみに濡れていた。
「わた、私の、ちんち、私のちんちんが……!」
しばらく彼は悲しみに胸を掻き毟られる思いであった。仕方あるまい。彼のこれまでの努力が、全て水の泡となってしまったのだから。
ああ、今でも思い出せる。そらにその出会いを語れる。
あのオチンチンたちを。
さらばチンコ。もはやお前達は、ジュールスの記憶の中にのみ残り続ける。
その現実が、一層彼を苦しめた。
しかし、しかししかし。
ジュールスよ、お前はそんな男であったか?
ゆっくりと、その体が起き上がる。
その瞳には、うってかわって決意の色が現れていた。
今こそ、オチンコの仇を取るべきだ! 立ち上がれジュールス!
今こそ、君の力を見せつけるのだ!
「許さん!」
「んー?」
「その身をもって、私の悲しみを……んん!?」
とまあ、所詮彼は変態でございますので。
件の犯人の頭からそのつま先を、食い入るようなジュールスの視線が見つめる。
しばらくしてから、彼の脳味噌は判定を下した。
可憐。
可憐、なり。
「…………あー……ごほん、ごほん。君、そこの君」
「なにー?」
咳払いを一つ。
今更ながら紳士然とした態度を見せようとした所で、彼は未だに裸である。
「君がどこから入り込んだのかという事はこの際後回しにしよう」
そこで、彼は満面の笑みを浮かべた。
「少し、君の下半身の型を取らせてもらえないかな?」
ここにおきましては、ジュールス・D・マチスンと、少女ルーミアの契約が完了したのでございます。
さて、さすがは変態。ただでは起きなかった。
少女との交換材料は人肉十日分。
執事に早速石膏用のシリコンを持ってこさせた彼は、シリコンの詰まったバケツに彼女の下半身を浸からせた。
「キモチワルイー」
「ん、その表情。執事、執事!」
「はっ、既に撮り終えております。現像し、しかるべき時に主の元へ」
いつの間にかカメラを携え控えていた執事。
ジュールスの願いをまたたくまに叶えるその存在は、正にブリリアント!
主とその従者による奇妙な絆の形をよそに、ルーミアは嫌そうに身をよじらせる。
「まだ動いちゃ駄目なのー?」
「後でご飯をあげよう。だから、もう少しの我慢をしていただけるかな? それと動かないように」
「むー?」
普段着を持ってこさせたジュールスは、本に読みふけりながら、シリコンが固まるのを待っていた。
安楽椅子でゆらりくらり。夢野・久の愛読者は、その文面にご満悦である。
いい加減飽きが浮かび始めたルーミアのために、他愛のない世間話を始めるジュールス。
「ふーむ。所で聞いてくれるかね?」
「なにー?」
「私にとってオチンチンと少女の下半身は同等の価値を持つ物なのだが……どうにも世間ではそれは禁忌らしいのだよ」
「どういういみだか、わからないんだけど?」
「オチンチン、チンポ、オチンポ、チンコ、オチンコ、ティンティン。男性の生殖器の名を口にだしても、特に非難される事もない。精々が下ネタ扱いだ」
そこでひとまず切って、ジュールスの口調は徐々に熱を帯びていく。
「しかし、少女の下半身は少女の下半身としか形容してはならず、更には人前で口に出す事も憚れるというのだ。これは全くもって不思議な事だとは思わないかね? 私は別に少女の下半身は、少女の下半身という言い方以外にも言ってもいいと思うのだがなぁ……例えば、少女の……!?」
己に起きた異変に気付き、彼は椅子から跳ね起きる。
彼自身、何が起きているのかは分からなかった。
「な、何!? 今私は少女の下半身を、少女の下半身という言い方以外で形容しようと思ったのに、口が勝手に少女の下半身と……!? くそっ、まさかこの邸を特殊な結界が覆っているとでもいうのか!? 少女の下半身! 少女の下半身!」
「板違いなのかー」
「む、君の言っている事はさっぱり分からないが、一理あると見た。ここは少女の下半身論争は後回しにしておこうかな。キキキ!」
「そうなのかー」
「オチンコについても、これからは伏字をしたほうがいいかもしれないな! キキキ!」
「さて、リンノスケ? 残念な事に、手持ちのオチンチンコを不慮の事故で喪失してしまってね。どうにか出来ないものか」
ジュールスは少女を執事に任せ、馴染みの店を訪れていた。
香霖堂とよばれる、古臭い骨董屋だか何だか分からない辺鄙な店。
時折ここを訪れる霧雨・魔理沙という少女を追う傍ら、ジュールス自身も店主とその仲を深めていた。
「さて、僕にはなんとも」
また面倒なのが来た。
そういった感情をありありと浮かべる香霖堂店主――森近霖之助。
そこで何を思ったか、ジュールスはすいと手を伸ばして、霖之助の眼鏡を奪い取った。
「……? 一体、何を」
「……少しばかり熟しているが、十分守備範囲」
その言葉は霖之助の全細胞を震え上がらせるには十分なものだった。
お手上げだと彼が嘆息すると、ジュールスは満面の笑みを浮かべた。
「分かった。分かったよ。君のお眼鏡にかなう事だけは御免こうむる」
「キキキ! 話が早いようで助かるよ! まあ、私としてはどっちでもよかったのだがね」
「…………」
返された眼鏡をかけ直すと、霖之助はなんとも言えない微妙な表情を浮かべていた。
ジュールスが霖之助をロックオンしているかどうかはさておき、この吸血鬼は一応の収穫を得なければ帰る事はあるまい。
面倒な事に巻き込まれてしまった。いや本当に。
さっさと御帰宅願うために、以前新聞で見かけたワードを霖之助は告げた。
「そうだな……喪われた物はもう戻らないが……3Dプリンターというのはどうだろう」
「すりーでぃーぷりんたー? 人間種の作った物か……」
「画像データを取りこんで立体モデルを作りだす……という物らしいが」
「良くは分からんが、チンコ写真があればその分だけチンコを作れるとゆー意味かね? それなら一々シリコンを用意する時間が省けるな」
そのあまりにストレートな言葉に霖之助が眉をひそめる。
あんまりな発言に思わず瞼を閉じて己を沈めていたが、やっとの事でその口から言葉がしぼり出た。
「……頼むから、もう少しオブラードに包んで言ってくれないかな」
「…………少年に隠された、愛すべき、可愛らしい、小ぶりの、絶妙な」
「分かった。分かったよ。頼むからもうしゃべらないでくれ」
この変態には何の言葉も通じない。
それを理解した霖之助は、どっと疲れて椅子に背を預けた。
「幾多の苦難を乗り越えて、やっと本が発売され、僕にまとわりつく変なイメージを払拭しつつあったのに、何故こんな変態と関わりを持たないといけないんだ……」
「んー、そういえば、魔理沙嬢と最近会ってないね……。ふー、ふー。私の股間の紳士も思わずはちきれてしまいそうだよ」
さて、チンコ写真を撮るとなれば、記念すべきその第一号は既に決まっていた。
苦々しく顔を歪めた霖之助を放っておいて、ジュールスが次に足を進めたのは。
恋焦がれる、『悪夢館』である。
さて、この悪夢館とよばれる邸、そんじょそこらの建物とは違いまする。
何と、邸の上に、もう一つ邸が。
語弊のないよう注意して申しますと、地面に接着する邸の屋根にもう一つばかり邸が突き刺さっているのだ。
何ともまあ、地震の一つや二つ起きればもろとも崩壊してしまいそうな代物である。
ジュールスは悪夢館の門の前に立ち尽くしていた。今回の侵入ルートを思案しているのだろう。
たび重なる不法侵入により、ジュールスは立ち入り禁止を宣告されているのだ。
「で、今度は何の用なの?」
不気味なほど真剣味を帯びていたジュールスに声がかかる。
ふと横を目やると、メイド姿の人間種がいた。
銀髪が、いやに月光と似あっている。
十六夜咲夜は油断なく不審者《ジュールス》を見つめていた。
「これはこれはミス十六夜。何、ルチオのチンコ写真を撮りたいと思ってね」
そうジュールスが言った途端に、頭部に違和感。
思わず手を伸ばしてみると、帽子を貫いてナイフが突き刺さっていた。顔に血が垂れてくる。
重なる違和感に身体をチェックしてみると、何とまあケツに背中に足に腕などなど。
至る所に突き刺さるナイフに思わず息を吐くジュールス。
「ミス十六夜……。突然人をナイフで刺すだなんて……。さすがの私もマゾヒズムは持ち合わせていないのだがなぁ……」
今度は咲夜が呆れかえる番であった。
人間でありましたならば尽くが致命傷に至る傷であるというのに、ジュールスは平然としてナイフを抜き取っていく。
「あー、これだから困る。ナイフで死んでくれないんだもの」
「ミス十六夜も、後五年、いや三年早く会えていたなら、良い塩梅だったんだがなぁ」
「変態ね。全く、こんな輩に襲われるなんて、いやはや困った困った」
もはや談笑に近いものがそこには生まれている。
ジュールスが訪れるたびにナイフに刺さるのは、もはや恒例行事と化していた。
人の邸のトラッシュボックスをあさったり、トイレの水を飲んでいたりする変態には当然の対応といえるのは、悲しい事かな。
「所で、ミス十六夜。宗旨変えと言った所かな? 君には、我が麗しのクラリモンドを守る義務などないと思っていたが」
「敷居を間借りさせてもらっている代わりに、身辺警護をしているだけよ」
「確かに、屋根に突き刺さったアレ《邸》には住めそうもないな。キキキ!」
ジュールスの言から見るに、彼女は元々、悪魔館の住人ではないようだ。
十六夜咲夜にはもう一人ばかり同僚がいた筈だとジュールスは記憶しているが、家賃のために出稼ぎにでも出ているのか、その姿は見当たらなかった。
「ふーむ、まあ好都合といった所か。私の趣味ではないし。胸はだね、君ぐらいの慎ましさが丁度良い。なあミス十六夜」
「…………」
「やれやれ、ついつい私も目覚めてしまいそうだ……」
頭にもう一つばかり生えてきたナイフを抜きまして、咲夜の鋭い視線にも何のそのと、まったく懲りた様子のないジュールス。
淫猥な動きをする彼の指は、何もない空間を揉み揉み。
「君の主にもいつかお会いした所だね。ふふふ、これまたラウラ嬢とは違う感動があるに違いない」
「お仕えして二十年以上は経つけど、こんな変態に対して警戒しないといけないなんて……」
見た目十代の咲夜が驚きに値する発言をするが、ジュールスは気にも留めなかった。守備範囲外の存在が何歳であろーと、知ったこっちゃないのであろう。
と。
もはや帳も落ちきって、人が出歩くには似合わないと思われる最中。
悪夢館の扉がゆっくりと開いていくではないか。
「咲夜さん、お茶にでもしま……げっ、ジュ、ジュールスさん!?」
「ルーチーオー! 少しでいいから君のチンコを写真で撮らせてー!」
「どういう意味で、少しでいいからなんですか!?」
哀れ、このような時に出てこなくてもよいだろうに。
扉を開けた少年、悪夢館に住まうルチオ・L・ピーコックの姿を見かけたジュールスは、脱兎のごとく鉄の門を飛び越えると、庭をあっという間に駆けゆき、悪魔館の入り口に立った。
「やぁルチオ。今日も可愛らしい」
「ほ、本日はどういった用件で?」
「だから言っただろう。君のオチンチンを写真で撮らせてくれ」
「……!?」
あんまりと言えばあんまりのジュールスの台詞は、少年ルチオを混乱に陥れた。
訳が分からない。しかし、事態は少年を待ってくれず、時は何時になっても立ち止まらない。
ルチオが気付いた頃には、ベルトははずされていてパンツ一丁というところまできていた。堪らず声をあげる少年。
「ちょ、ちょっとやめてください!」
「んー、やはりチンコは少年のものに限るよねー! 毛の一本も生えていないこの純白の初々しさが処女性を保ちながらも」
「何言ってるか全然分からないので! 早く手を離してください!」
「もう少しもう少し」
「いやあああああああ!?」
ルチオの秘部が遂にカメラに捉えられる、まさにその時。
ジュールスの構えたカメラにナイフが突き刺さる。
「はい、そこまで」
何時の間にやら距離を詰めていた十六夜咲夜による仕業であった。
下半身装備がパンツのみのルチオであったが、救世主の出現にたまらず駆けよる。
腰に抱きついてきた少年の頭をなでる咲夜。
「? どうかしましたか咲夜さん」
「いえ……なんでも、ないわ」
空気を呼んだのでございましょう。
その程度も出来ない者が、メイドなど出来ますまい。
ああ、ルチオ。君はまだ若いというのに、その頭頂部はいかにしたものか。
「まだ、大丈夫だから。生活バランスがちゃんとしていれば、ね。ほら、もう夜よ。寝ましょう」
「え? え、え?」
何が何だか分からないルチオを無理矢理邸に戻す。
咲夜は冷や汗をかいていた。
思い出したように、不審者の方に目を向ける。
「えーっと、ジュールスさん?」
「何かな」
「今日はそういう事で、帰ってもらえるかしら」
「チンコ写真が撮りたいのだがなぁ……」
「邸のゴミを上げるから」
「さっさと出したまえ!」
それまでの目的も忘れて、まだ見ぬ魅惑のトラッシュボックスに興奮やまぬジュールス。
「しかし、いいのかね? この変態に、ゴミを渡すなどと。何をするか自分でも分からないよ!」
「ええ、別にいいわ」
咲夜にとっては、邸の主のごみを選別しそれ以外を渡せばよいと、そうであれば別に構わないと思った。ジュールスの一番のお目当てはクラリモンド《邸主人》であると。
しかし、咲夜はジュールスの変態度を見誤っていた。
ジュールスは、悪夢館全員を淫猥な視線で見つめていたので、誰のでもよかったのである。