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No.0 朝比奈 雫は転生する。
私、朝比奈 雫の人生は散々たるものだった。
私は母親の顔を知らない。父親の顔も覚えていない。
病弱だった母親は私を生むと同時に亡くなってしまったらしく、子育てを放棄した父親に捨てられ孤児院に入れられた。
その孤児院では私の髪色が普通ではないあおみどりだったせいで他の孤児からいじめられることになった。大人達に私を庇ってくれる人はいず、頼れる人が誰もいない環境は、私から表情を奪った。
まるで子供達の玩具のように暴力をふるわれた。
子供達から嫌われているのをいいことに、大人達はどんどん私に雑用を押し付けた。
『お前の髪の色、気持ちわりぃんだよ!』
『なんでお前みたいなやつが生きてるんだよ!』
『とっとと消えてしまえ!』
『『『『化け物!!!』』』』
いつだったか、子供達から投げ掛けられた言葉だ。
言われ慣れすぎて、特になんとも思わなくなっていたけれど。
9歳の時、転機が訪れた。
私を引き取りたいと言う人が現れたのだ。
40歳くらいの夫婦で、優しそうな笑顔を浮かべて「雫ちゃん、家にこない?」と言ってきた。
孤児院での生活に限界を感じていた私は、すぐさま彼らの手をとった。
手をとってしまった。
あの夫婦を信じてしまったんだ。
待っていたのは孤児院の生活がマシに思えてくるほどの地獄。
家事は全て私の仕事にされた。
細かく決められたルールを一ミリでも破ると、罰として暴力をふるわれた。
夫婦のストレス発散としても殴られた。
彼らにとって私は、面倒くさい仕事を押し付けられるサンドバックだった。
食事はなし。皿洗いのさいに夫婦の皿に少しだけ残ったものを舐めるのが唯一の飯だった。
寝床など存在しない。というより、家事をする時以外で家のなかに入ることは禁止だった。
普段は何時も家の裏にゴミ捨て場から拾ってきたボロボロの毛布が私の住み処だった。
何度逃げようとしたかわからない。そのたびに何故か見つかり、対応はさらに酷くなっていく。
こんなことなら死んだほうがマシだと考えるようになるまで、時間はかからなかった。
そんな私を支え続けた存在、それはズバリ、漫画である。
孤児院にいた間、誰もいない部屋にこっそり隠れていた時に見つけた本の山。
使い古されボロボロになっていたそれらを、時間を見つけては必死に読み進めていたその記憶が私の唯一の癒しとなっていた。
現実では絶対にありえないとこが起こる世界。そこには、私がずっと求めていた夢や希望で溢れていた。
その中でも、私が特に好きだった作品がある。
それは、『家庭教師ヒットマンREBORN! 』という、週刊少年ジャンプで連載されていた全42巻の物語だ。
ダメツナと呼ばれ、勉強ダメ、運動ダメ、優柔不断で逃げ癖のついた主人公のもとに家庭教師でヒットマンを名乗る赤ん坊がやって来て、急にマフィアのボスに祭り上げられてしまう、という、友情努力勝利を綺麗に体現したストーリー。
彼らの友情に憧れた。
彼らの覚悟がとても輝いて見えた。
自分では絶対に持てないだろうそれらは、私がずっとずっと欲しがったモノだったから。
何度も何度も読み返して記憶に刷り込ませたそれは、私の人生の何よりも大事なモノになっていた。
そして私は今、死にそうになっている。というかもうすぐ死ぬ。
いきなり何があったって?簡単なとこだ、信号無視をした車に轢かれたのだ。
ああ、熱い。凄く熱い。けどどんどん寒くなっていく。これが、もうすぐ死ぬってことなのかな。
《確認しました。対熱耐性獲得・・・成功しました。続けて対寒耐性獲得・・・成功しました。
対熱対寒耐性を獲得したことにより、『熱変動耐性』にスキルが進化しました。》
身体中が痛い。こんなに痛いと思ったの初めてだ。
《確認しました。痛覚無効獲得・・・成功しました。》
ふむ。これは確実に死ぬな。だってほら、意識が朦朧としてきた。にしてもやっと死ねるのか・・・。来世はもっと幸せになれたらいいんだけどね。
そうだ、今の私は小柄だから、次はもっと大きくなりたい。夢は170、いや180!・・・さすがに大きすぎか。
あと力も強いほうがいいな。夜何時も繋がれてた首輪を壊せるくらいの握力が欲しい。
《確認しました。大柄で強靭な身体を作成します・・・成功しました。》
今回はあの夫婦を信じちゃったのが敗因だと思うんだよね。
来世はそうだな、人の気持ちが読めるようになる力とか欲しいな。
あと色々感情殺してきたから、もっと自分の欲に正直に生きたい!リボーン読みまくりたい!!・・・いや、今世でも読みまくってたわ。
《確認しました。ユニークスキル『
あれ待って、私今来世があること前提で考えてるけど・・・あるよね?来世。無かったらかなり悲しいんだけど。
でもま、この命は神様から借り受けたもので、死ぬってことは神様に命を返すことであるってどこかに書いてあった気がする。
てことは、死んだらこの命は神様のところに戻って、いつかまた別の人間に貸し出されるってことだよね。じゃあ大丈夫かな。
《確認しました。ユニークスキル『
ん?なんか変な声が聞こえる・・。よく聞き取れないな。なんて言ってるんだろう・・・て、なんかこーいう話読んだことあるような気がする。なんだっけか。えーと・・・・・・。
――あ、思い出した。転スラだ。
こうして、朝比奈 雫の人生は享年15歳で幕を閉じた。
何時思い出しても嫌な記憶である。黒歴史とはこのことか。
この私が、望み通り転生して新たな人生を手に入れるまであと少し。
また私が転生したのが人間ではなく魔物だったこと、そしてこの世界が私が今まで生きていた世界とは違う世界であるということに気付くのは、更にもうちょっと先の話である。
さて、主人公は何に転生するでしょう?
結構分かりやすいんじゃないかなー。