かなりの難産でした。
上中下の上です。
どうでもいいけど転スラのアニメの作画がちょっとイメージと違った。
騒音が聞こえる。
あれは大量のオーク供の足音だ。
あれはやられたオーガ達の絶叫だ。
あれはオークを率いるピエロの嗤い声だ。
それは、開演を待ちわびた観客の拍手に似ていて。
『さぁ、君の運命はどんな未来を紡ぐのかな?』
一体、誰の声だったか、決して思い出せやしないけど。
◇ ◇ ◇
その日はたまたま修行が休みの日で、私は姫様と紫髪ちゃんと遊んでいた。
その日が来る、というのはとっくの昔にわかっていて、その日を迎える覚悟も出来てて。
だから、普段は聞こえないはずの音がしても、私は驚かなかった。
里の中心に設置された高台の鐘の音。
それは、紛れも無い「敵襲」の合図だ。
「敵襲〜!!オークの大群が押し寄せてくるぞ!!!」
遂に、来た。
最近は肌身離さず持っていた双剣に手をかけ周囲を見回す。
「て、敵襲??」
「オークって、確かオーガよりランクは下、ですよね?」
「そのはずだけど・・・」
「もしかして、やられに来たんですかね?姐さんの言うMってやつですか?」
「わからないわ。でも、何の勝算もなく大群で押し寄せて来るものかしら?」
二人とも混乱してるね。
出来るだけ早く逃してあげたいけど、さて・・・。
「私は里の様子を見てきます。だから二人は安全な所へ避難を」
「何を言っているのですか!?私はオーガの姫です、今こそ前線でのその責務を果たす時で」
「姫様だから、だよ。万が一のことがあった時、姫様にまで何かあったら困るからね。・・・私達オーガのこれからのために、姫様は逃げるんだ」
「・・・」
納得はできずとも理解はしたらしい姫様に笑いかけ、最後に紫髪ちゃんに「姫様をちゃんと守ってあげてね。 大丈夫だって信じてるから」とだけ言ってその場を駆け出した。
後ろから「姐さんも気をつけてー!」と叫ぶ声がした。
◇ ◇ ◇
走る。
いつの間にか村に火を放たれたらしく、周りはひたすら真っ赤である。
空気が重い。予想以上にオークの数がが多くてなかなか前に進めない・・・。
弟は、師匠は、若サマはどこ?
早く見つけて逃げなきゃ。
絶対守るって決めたんだから・・・!
オーク供に見つからないように身を隠しながら進む。
「父ちゃんを離せ!!!」
知ってる声だった。
声のした方を見る。
黒い髪。白い二本の短い角。少しくたびれた様に見えるおじさん顔。
後の黒兵衛だ。彼が大きなハンマーの様なものを構えている。
「なにをしてるべさ!早く、にげろ・・・!!」
てことは・・・あのオークに捕まってるのは・・・
『ほ~っ。目標高くていいんでねぇべか。これからも頑張れよ!で、今日の依頼はなんだべ?』
黒好きのおじさんだ・・・!!
助けに行こう、と思った。
そして、足を踏み出そうとして。
思い出しちゃったんだ。
黒好きのおじさんは助けられないってこと。
黒好きのおじさんなんてキャラ、原作には出てこない。
てことは、原作で彼はここで死ぬことになってるってわけで。
目の前が真っ暗になった気がした。
どうして、大丈夫だなんて思ってたんだろう。
みんなは私が守る?またみんなで笑おうって?
そのみんなは、一体誰だ。
弟だ。若サマだ。姫様だ。紫髪ちゃんだ。師匠だ。クロベエだ。
それ以外のことは、全く考えてなかった。
『原作知識=最善』だなんて、一体誰が言ったんだ。
黒好きのおじさんを助けに行ったら、原作通りに進むことはなくなるかもしれない。
原作で助かるみんなも死んじゃう可能性が出てくる?
でも、じゃあ、わたしは、おじさんを見殺しにするのか?
私の刀を作ってくれたんだ、私に笑いかけてくれたんだ。
そんな彼を、見捨ててーーー
「・・・ーーー父ちゃん!!!死ぬな!!!!!」
ーーー時雨蒼燕流、攻式三の型。
「・・・遣らずの雨!!!」
立ち止まってた所からの、一歩。
やっぱり、見捨てられない。
見捨てたくない。
せっかく手に入れた第2の人生。
誰もが認めるハッピーエンドを目指したっていいじゃないか。
原作?いいや、私が目指したいのは、原作以上。
より良い未来を、寄越せ。
涙を溜めた目を見開いた後のクロベエを尻目に飛び出した。
先程放った刀は、おじさんを捕まえていたオークの左肩を貫いた。
さらにそこから首を狙ってもう一本の刀を構える。
「ああああああぁあぁぁぁぁぁあああ!!!」
時雨蒼燕流 攻式八の型 篠突く雨!!!
懐に飛び込み、一気に切り裂く。
血を流しながら、オークは倒れた。
その際に捕まえていた黒好きおじさんを手放して。
『君なら、きっとそうすると思ってたよ。流石、僕が選んだ子だ』
『けど・・・ごめんね』
『いくら僕でも、運命を変えることは不可能だ』
取り戻したおじさんには、右の手足が無かった。
『これが運命。これが定めだ。でも、敢えて言うならーーー君は少し、遅すぎた』
中に続く!