上中下の中です。
上からお読み下さい。
真っ赤に燃える里。
暴れ回るオークの群れ。
高笑いを残すピエロの男。
いつもそばにいてくれた姉さんは、今はいない。
◇ ◇ ◇
俺は、以前姉さんから教えてもらった人気のない広場で一人修行をしていた。
今日は何時もの稽古は休みで、姉さんは姫様の元に遊びに行った。
そこに響いたのは、敵襲を知らせる鐘の音。
どうやらやってきたのはオークの群れらしい。
オークといえば、俺たちオーガよりランクは下だ。
確か、D。
昔姉さんがBランクの人間を倒したと言っていたし、オークくらいなら群れでも対処できるだろう。
折角の機会だ、おれの今の実力を試させて貰おう。
そう意気込んで、聞こえてきた騒ぎ声の方に向かって走り出した。
ーーーそこが既に地獄と化しているとも知らずに。
◇ ◇ ◇
『逃げろ!!!』
親父はそう言って前を向いた。
目線の先には、他のオーガ供より明らかに強い力を持ったオークと怒った仮面をつけた男がいた。
オーク供が攻めてきて、最初は俺たちオーガが圧倒してたけど、オーガ側から初めて犠牲が出た時から戦況が変わった。
さっきまでへなちょこだった奴らが急に強くなって。
もう、目の前で何人も殺された。
何人も喰われた。
中には俺の知ってる奴もいて。
怖かった。
何時も修行の時にはできてることが、この肝心な時に出来なくて。
爺と親父が居なかったら、きっと俺も既に死んでいたに違いない。
その親父も、たった今やられて喰われてしまったけれど。
爺を連れて逃げる。
振り返っていては追いつかれてしまう。
だからとにかく走る。走る。
辺り一面血と炎で真っ赤に染まり、既に元の里は跡形もない。
悔しい。俺の実力が足りないことが。
悔しい。俺のせいで親父が死んだことが。
悔しい。弱いはずのオークなんかにやられたことが。
悔しい、悔しい、悔しい・・・!!!
「・・・若、心中お察しします。しかし、今は逃げなければ。敵討ちも、里の再建も、生きてなければ出来ませぬ」
「・・・っわかってる」
爺に心配されてしまうことすら、悔しい。
俺は、心の中でオーク供への復讐を誓った。
◇ ◇ ◇
「そんな・・・」
どちらともなく声が出た。
姐さんに言われた通り、姫様を連れて丘の上に逃げた。
安全だという確証もあったが、丘の上なら戦いの全貌が見えると思ったからだ。
そして実際、戦いの様子はよく見えた。いや、見えてしまった。
だって相手はオークだ。格下だ。
そんな奴らに、私達オーガがやられるなんて、想像できるはずもなくて。
見えたのは、オーク供の一方的な虐殺劇。
「そんな・・・なんで・・・」
姫様の声が震えている。
かくいう私も、きっと酷い顔をしているに違いなくて。
あの中で姐さんが戦っていることを思い出して、無性に怖くなった。
どうか。
どうか生きて帰ってきて。姐さん。
◇ ◇ ◇
オーク供の追撃をなんとか振り切って、俺はその場に倒れる様に座り込んだ。
何が対処できるだろうだ。
オークがこんなに強いだなんて、聞いてない。
途中で父達とも合流して騒ぎの中心に着いた時にはすでに手遅れだった。
オーガの死体に群がっていたオーク供が一斉にこっちを向く。
そのギラついた目が気持ち悪くて、 後退んだ瞬間オーガ供は一斉に襲いかかってきた。
オークを、必死で何体か倒して。
その間に、倒した何倍ものオーガがやられた。
父もやられて、もう無理だと悟って、それからはひたすら逃げてきた。
そして、今に至る。
思い出しただけで身体が震える。
脚はガタついて、もう動かせそうにない。
強くなったと思っていた。
最近は師匠ともいい勝負が出来るようになって、姉さんにも褒められた。
だから、大丈夫だって思ってたのに・・・!!
カサリ、と音がして。
振り返ると、オークがいた。
ああ、ここまでか。
すまない、姉さん。
その時が来たら、俺が姉さんを守るって言ったのに。
守れそうに、ない。
「諦めないで」
声がした。
ちょうど俺が頭に浮かべていた声。
そして。
今にも俺を殺そうとしていたオークが倒れて、
代わりに血まみれの姉さんが立っていた。
「言ったでしょ。私が絶対助けに行くって」
下に続く!