上中下の下です。
上からお読みください。
前を向け。
これが現実だ。
◇ ◇ ◇
「お、じ・・・さん・・・?」
信じられなかった。否、信じたくなかった。
より良い未来が欲しくて、だから原作を無視して飛び出した。
なのに、助けた時には既に手遅れだなんて。
黒好きのおじさんからは、右の手足が無くなっていた。
「父ちゃん!!」
後のクロベエがおじさんに駆け寄る。
その声に反応して、おじさんはノロノロと瞼を開けた。
「父ちゃん、死ぬんじゃねぇべ、今すぐ安全な所にっ」
「だめだ」
弱々しく、でもはっきりと。
おじさんは拒絶の声を出す。
「おいらはもう手遅れだべ。だから、お前らだけで行け」
その目には強い意志が宿っている様に見えた。
だから、ああ、もう無理なんだなぁって、
理解してしまった。
未だ泣きわめくクロベエを無理やり担ぐ。
年齢差もあるしちょっと重いけど、これなら行けなくもない。
おじさんを見る。
おじさんも私を見て、優しく笑った。
「すまねぇ、息子を、よろしく頼むべ・・・」
「・・・はい」
今まで、有り難うございました。おじさん。
泣きたかった。でも、おじさんに涙を見せたくなくて。
叫びたかった。でも、オークに見つかるわけにはいかなくて。
クロベエを担いだまま、その場を離れた。
さようなら。どうか、安らかに。
◇ ◇ ◇
どれだけ進んだだろう。
喧騒が大分遠くなったあたりで、私は後のクロベエを地面に降ろした。
「あなたはこのまま逃げて」
「あ、あんたは、これからどうするんだべ・・・?」
戸惑ったように問いかけて来た。
「戦場に戻ります。まだ助けられる命があるかもしれない」
「な、なに言ってるんだべや!?今から戻ったって危ないだけだべ!!死ぬ、絶対死ぬべよ!?」
「うん、そうかも。・・・でも、じっとしてられない」
ごめんなさい、あなたは逃げて。
そう言って、彼の静止を振り切ってもう一度走り出した。
おじさんは助けられなかったけど。
他に助けられる者がいるなら助けたい。
原作以上を目指すって、決めたんだ。
立ち止まるわけにはいかない。
◇ ◇ ◇
戻ってきて本当に良かった。
あのままクロベエと逃げてたら弟を助けられなかったかもしれないなんて、考えただけでもゾッとする。
あのまま戦場に向けて走って、相対したオークから逃げて、切り捨てて、たまたま逃げる弟を見つけた。
そのまま弟を追いかけて、別の方向から弟に向かうオークを見つけて、急いで倒した。
目を見開いて驚く弟はきっと、もう駄目だ、なんて考えていたに違いなくて。
「ごめんね、遅くなった」
「姉さん・・・」
座り込んでいる弟に手を伸ばす。
弟は辛そうながらもちゃんと握り返してくれた。
生きてる。
弟は、ちゃんと生きてる。
その事実に、涙が出てきた。
「!ね、姉さん怪我がいたむのか?」
「っちがう、これ返り血だから、酷い怪我はしてない、たぶん」
それよりあんたの方が重症だよ。
そう言って私は弟を抱きしめた。
弟はびっくりした様な声を出して、でもゆっくり抱きしめ返してくれた。
私達は、少しだけ、声を出さずに泣いていた。
◇ ◇ ◇
丘の上に着くと、そこには姫様と紫髪ちゃん、若サマに師匠、そして後のクロベエがいた。
よかった・・・ちゃんと、生きてる。
そう思っているのもつかの間、姫様と紫髪ちゃんの盛大なタックルを受けて倒れ込んだ。
「おおっとぉ!?」
「姉さん!?」
「よかった・・・生きてる・・・!!」
「心配したんですからね、姐さん!!!」
女の子二人の涙を受けて、私もまた泣きそうになった。
でもグッと堪えて二人を抱きしめ返す。
そのまま顔を上げた。
里の炎はいつのまにか消えていた。
オークの死体と、それ以上のオーガの死体と、それに群がるオーク供。
あれは、つい数時間前までは生きていた命だ。
助けられなかったみんなを、私は見つめ続けた。
「この仇は必ず取る」そう若サマは言った。
「どこまでもお供します」と師匠が言った。
「私も、もう見てるだけなのは嫌です!一緒に戦います!」と姫様が言った。
その日、私達の心は、きっと今まで以上に一つになった。
『これから先、君の未来はどうなっていくんだろうね?』
空は、憎たらしいほど綺麗な夕焼けで。
あと1話、番外編を挟んで次の章に行きます。
ようやくあの方が出てくる・・・!?