復活信者の転生ログ。   作:夢いろは

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お久しぶりです。
大分前話から間が開いてしまいましただ、エタるつもりはないので気長に待っててくださると嬉しいです・・・

アニメ化2期決定おめでとうございます!!!




小説版の内容がだいぶweb版と違う展開になっててハラハラする・・・次の巻が待ちきれないぜっ


第2章 森の騒乱編
No.13 少女は「はじめまして」を口にする。


 

 

風によって水色の髪が静かに靡く。

 

 

 

 そこには、ゴブリンや嵐牙狼族といった魔物達を従え、仮面を着けた少女───否、人間に擬態したスライムが此方を警戒するように立っていた。

 

 

 

 

 

 あぁ、やっと会えた。

 

 

 

 

 

 はじめまして、リムル様。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 あの日から10日が経過した。

 

 あの惨状によってできた身体の怪我や心の傷がまだ治りきってない中、若サマがこのまま止まっている訳にはいかないと立ち上がったのが8日前。

 あれから私達は若サマの指示のもと、北西の方角に向かって進んでいた。

 北西と言えば、オークの王国オービックの反対側。具体的に何があるというわけではないがオーク共にリベンジするにはまだ早い、という判断の様だった。

 昔の若サマなら、形振り構わずオーク共の元に突撃しに行ってたんだろうなぁと思うと、こんなときでも何だか嬉しい。

 そんなこんなで私達は皆で支えあいながら、復讐のための力を蓄えるべくジュラの森を進んでいた。

 

 10日経った今でも怪我は完全には治ってないし、皆の服や鎧はボロボロだ。

 あの日から3日の間よりはマシにはなったが、精神的なダメージもまだ治りきってない。

 私も未だにあの日のこと、助けられなかった黒好きのおじさんのことを夢にみる。

 

 悲しかった。辛かった。

 

 悔しかった。

 

 けど、どんなに悩んだってあの日は戻ってこない。

 なら前を向くしかないんだ。

 前を向いて生きなきゃいけないんだ。

 きっとそれが生き残った私達の使命であると信じて。

 

 

 

 

 

 そんなこんなで森を進む私達。

 そろそろお腹空いてきたなーとか言いたいけどあの日以来ちょいと空気悪くてな?

 自分以上に落ち込んでる皆を見てると逆に冷静になるって言うか、さすがに10日も経ったんだしそろそろ元の皆に戻ったらどーかなー?なんて思うんだけどなー。

 黒好きおじさんの息子さんとかあの日以来殆ど黙りだしね。

 大事な人が死んで辛いのはよくわかるけど、私もとっても辛いけど、ずーっとこのままの空気ってのもちょとねぇ・・・。

 なにか重い空気がバーって出ていってしまうような出来事があったらいいんだけど。

 私じゃ何も出来ないしなぁ・・・精々弟のほっぺつついたり若サマの髪引っ張ったりくらいよ?これ以上空気明るくは出来ないよ?

 てか前世がほぼずーっと暗い空気の中生きてきたもので空気を明るくする方法なんて知らんでな!!

 あー辛いわーちょっと前までは皆で笑い合えてたのになーオーク共絶対許さん。

 というか本当に腹減ったんだけど?え、言っていいかなお腹空いたって言っていいかな全く言える空気じゃないけど言っても許されますかータスケテー!?

 

 

 

「止まれ!」

 

 

 

 色々考えてるうちに師匠が急に叫んだ。え、何事?

 

 

 

「何か近づいてきております」

 

 

 

 何かが近づいて・・・あ、ほんとだなんか集団でいる。なんだろ、集団ってことはここらに住んでる魔物達なんだろうけど、あ、来たし。

 近くの茂みがワサワサと動き中から現れたのは───ゴブリンと牙狼族の集団。

 ・・・は?ゴブリンと牙狼族?自分で言ってて意味わからんぞ?牙狼族って確か少し前入手した情報じゃゴブリン狙ってなかったか?なんかただの牙狼族より強そうだし。ゴブリンもただのゴブリンより知性が見える。え、どーゆーこと?

 てか待って、ゴブリンと牙狼族の組み合わせなんか覚えがあるぞ、いや違うあれは牙狼じゃなくて嵐牙狼族、嵐って言葉めっちゃビビっと来るものあるな、こいつらもしかして、もしかしなくても、

 

 

 

「なんでオーガがこんなところに・・・」

「何者だ。何故ゴブリンと牙狼族が共に行動している?」

「・・・俺の"名"はリグル。リムル様の僕だ。牙狼族達は俺達の仲間だ」

 

 

 

 ほらやっぱりー!!!リムルって、リムルって言った!!!

 そういやすっかり忘れてたけどオークにやられてから数日でオーガってリムル様と合流するんだね!!

 

 

 

 私、この世界に転生して約二十数年。

 ようやく主人公に会えるようです。

 

 

 

 とか感動してたらいつの間にか戦闘になってた。ちょっと待ってー。

 ・・・どうでもいいけどお腹空いた!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 弱い。

 いやまぁ仕方ないけどな?ちょっとは進化したとは言えゴブリンと牙狼族にオーガが負けるはずもないし。

 でも予想よりは強かったかな?特に最初に名乗ってたリグル君と弟が相手してるランガ君。あと師匠になんとか食らい付いてるゴブタ君。もうすぐ終わりそうたけど。

 とりあえず最後に気絶させたゴブリンを木にもたれさせておく。敵じゃないの知ってるし、これくらいいいよね。

 そう、敵じゃないの知ってるから戦う理由もないんだけどねー、今のピリピリした皆に水を差すようなこと言えなくて・・・。

 今も若サマと姫様が話しこんでるし・・・あのオーク共となにか関係が?って聞こえる。ないよありませんよ。

 早めに否定しておかないと面倒くさそう。空気がどうのとか言ってる場合じゃなさそうだな、仕方ない。

 

 

 

「あー、若サマ、姫様?ちょっといい?」

「なんだ」

「このゴブリンと牙狼族達なんですけど」

「何か視えたか?」

「まぁ。取り敢えず結論から言うと──」

 

 

 

 ガサッと音がした。

 音の方を振り向く。

 

 水色の髪に、不思議な模様のお面。

 大体人間で10歳くらいの身長。

 そこにいたのは、紛れもなく。

 

 

 

 

 

 ・・・来ちゃったよ、リムル様。

 

 

 

 

 

 間違いなく、原作主人公リムル様ご本人だった。

 しかしこのタイミングかー。ここで会うって覚えてればよかったな・・・。そしたらもっといい出会い方が出来たかも知れないのに。今さら言っても仕方ないけど。

 リムル様は近くで騒いでたゴブタ君に回復薬をぶっかけた後、ランガ君とリグル君に戦うのを止めるよう伝えた。

 それはいい。リムル様優しいし強いし、何より敵じゃない。

 敵じゃない、だからね、

 

 

 

 

「なんという邪悪な魔物でしょう!?皆の者、気を付けるのです!」

 

 

 

 だからね・・・

 

 

 

「おいおい、ちょっと待て。俺が、邪悪な魔物だと?」

「しばらっくれるつもりか?そこの邪悪な者達を使役するなど、普通の人間に出来る芸当ではあるまい。見た目を誤魔化し、妖気も抑えているようだが、甘いわ!!我らを騙せると思ったか!?」

「姫様の目は欺けぬぞ、正体を現すがいい!」

「黒幕から出向いてくれるとは、好都合というもの。この少人数ならば、我等にも勝機はある」

 

 

 

 ・・・・・・。

 

 

 

 リムル様は敵じゃなーいよー。

 戦う必要はなーいよー。

 

 

 

 ・・・・・・。

 

 

 

 もういっか、放置で。

 終わるまで木の上で待ってよ。

 

 あぁ、お腹すいたなぁ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 リムル様は絶対大空だよね。だって大魔王だし。リムル様だし。なんたってリムル様だし。

 若サマは赤いし嵐かなぁ。リムル様の右腕ポジになるから。性格もぽいよね。

 弟は・・・なんだろ。色的に考えると霧なんだけど、別に幻覚使えないし。でも分身ってある意味有幻覚ぽい?いや、分身は霧より雲のが合ってる気がする。雲の特性は増殖だし。

 紫髪ちゃんは雷かなぁ。なんとなく。原作だと最後のほう一撃の威力ヤバイことになってたはず、だよね、たしか。

 姫様は妖術とか使うから霧だと思う。というか霧以外の姫様が想像つかん。

 師匠は・・・え、なんだろ?あ、雨・・・?刀使うし・・・いやいや刀使うヤツ全員雨はおかしい。じゃあなんだろな・・・晴れって感じでもないし・・・うーん。困ったわからん。雨でいっか。

 そしたら息子さんは晴れかな。残り物ってのもあるけど、刀打つから、鋼を活性化させる、みたいな・・・あれ?

 

 

 

 なんて暇潰しにリムル様とみんなの戦闘眺めながら妄想してたら、急に視界が暗くなった。

 ・・・おお!あれが黒炎か!でけぇ!こっからでも熱い!すげぇ!あれ見て諦めない若サマある意味凄いと思う。

 姫様の「お待ち下さい!」が入ったし、そろそろ戦闘も終わりかな。

 枝に寄りかかっていた上半身を起こす。

 

 

 

「この方が異質なのは違いありませんが、おそらく、里を襲った者共とは無関係なのではないかと・・・・・・」

「なんだと?だが、言われてみれば・・・・・・」

 

 

 

 さて、そろそろ声かけますかね。なんだか私の存在忘れ去られてるっぽいし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 全然人の話を聞かないせいでオーガ達との戦闘がはじまっちゃったが、なんとかなりそうだ。

 現に桃髪に説得された赤髪が、戸惑ったように俺を見てくる。

 だから言っただろ、と言おうとした瞬間、斜め上の方向から突然声がした。

 

 

 

「姫様の言う通り、彼らは私達の敵じゃないですよ、若サマ」

 

 

 

 急に聞こえた声に、そこにいた全員が声のほうを向く。

 俺たちが戦っていた場所から少しだけ離れた大きな木の上に、1人のオーガが座っていた。

 あおみどり色の肩ぐらいの長さの髪を後ろで雑に結び、藍色の瞳の下には左目のほうにのみ深緑の刺青のような模様が見える。

 間違いない。最初に見た瞬間に一番ヤバいと思ったオーガだった。

 それから意識はしてたんだが、なぜか彼女だけ戦闘に参加せず木の上でぼんやりしてたからいつの間にか忘れてたな・・・。

 

 

 

「お、おま、なんでお前だけそんなとこで寛いでんだよ!?」

「だってねぇ、最初から敵じゃないってわかってる相手と戦う必要ないじゃん?かなり強そうに見えたし、実際物凄く強かったし」

「は?」

 

 

 

 わかってた・・・だと?どういうとこだ?

 『大賢者』、わかるか?

 

《・・・・・・》

 

 ん?なにかあったのか『大賢者』?

 

《・・・告。なにもありません》

 

 ならいいけど。そういや、さっき初めてあのオーガを見たときも一瞬反応してなかったか?あのオーガにはなにかあるんだろうか。

 

 

 

「わかっていたとはどういうこと?」

「そのまんまの意味だよ姫様。はじめにゴブリンと牙狼族が集団でやって来たときから、彼らは敵じゃないってわかってた。だって視えてたし」

「わかってたんなら早く言えよ!」

「だって、その方の仮面みた瞬間みんな見事に殺気立っちゃって言える雰囲気じゃなくなっちゃって。でも一応伝えようとはしてたんだよ?」

 

 

 

 あおみどり髪のオーガは木の上から降りて赤髪の隣に立った。そして、俺に向かって軽くお辞儀をした。

 

 

 

「はじめまして。“魔物を統べる者”たる貴方に会えて光栄です。先ほどは私の仲間が失礼致しました」

 

 

 

 ん?“魔物を統べる者”・・・?

 

 

 

「“魔物を統べる者”なんて大層なもんじゃないけど、とりあえず話聞く気になってくれたみたいでよかったよ。俺はリムル・テンペスト。あんたらは?」

「我々など、名もなき一介のオーガでしかございませんよ、リムル様」

 

 そう言ってあおみどり髪は微笑んだ。

 ・・・と、そのとき。

 

 

 

 

 

 グゥゥゥゥゥ~

 

 

 

 

 

「・・・」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

 

 

 

 

 

「お前、戦闘に参加しなかった理由ってまさか・・・」

「ちがっ、違うけど、しょうがないじゃんお腹すくのは生理現象なんだからぁぁぁ!!!」

 

 

 

 真っ赤な顔で叫ぶあおみどり髪と、彼女を優しげな表情で見つめる赤髪、桃髪、白髪の三人。

 

 仲良いんだな、こいつら。

 少しほっこりとした。

 

 




ようやっとリムル様正式に登場。
主人公に名前が付くまであと少し!

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