IS×FA 遥かな空を俺はブキヤで目指す   作:DOM

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はいGW中に失礼します。
ようやく、新しい話をアップできました…が、GWにもう一本は無理かなぁ(汗

では、どうぞ御ゆるりと。


IS×FA18ss:長くてツマラナイ話しですよ…

 北欧の主神は叡智を得るために片目を捧げた、ある戦いの神は戦場で腕を失った。

 何かを得るためには何かを失わなければならないのだろうか?

 彼の場合は、何を得て何を失ったのだろう・・・

 

 

「う…ん……?」

 

「気がついたか、体に致命的な損傷は無いが全身が軽い打撲だらけだ。

 数日は地獄だが、まぁ慣れろ」

 

 ココは保健室、一夏は事件が終わった直後に気を失ったためここへ運び込まれた。痛みで目を覚ました彼はぼんやりとする頭でここが保健室だということ、そして千冬がちょうど来たことを知る。

 

「原因は分かっているだろう、お前が受けた衝撃砲だ。最大出力でしかも、お前ISの絶対防御を

 カットしたな?よく死ななかったものだ。同じ意味ではあいつもだがな」

 

「はぁ…んぅ…?」

 

「まぁ、何にせよ無事で良かった。唯一の家族に死なれては目覚めが悪い」

 

「千冬姉、その…心配かけて、ごめん」

 

「ふっ、大丈夫さ。お前がそう簡単に死ぬわけがない。なにせ、私の弟だからな」

 

 彼には千冬から告げられた痛みの原因に心当たりが無い。というか、疑問に感じた。ISの絶対防御はシステムの根茎にありOFF(カット)できないと教わったからだ。

 だが、今千冬が見せる柔らかな表情や妙な信頼からくる照れ隠しは家族にしか見せない姿であり、それを見ていると別段と気にしなくなってきた。

 そうしていると、次々と人が入ってくる。箒、セシリア、鈴、ついでに山田先生と簪たち、つまりカンパニー組を除いたいつものメンバー+αだ。しかし、箒を見ているとどこか怒っているように見える。

 

「あ、えっと…もしかして、心配かけたか?」

 

「おっお前は勝てたから良いものの、何を考えているんだ!そ、それに心配などゴニョゴニョ・・・

 

「あ、勝ったんだ俺」

 

「あんなもの勝ったとは言わん!残心というものを知らんのか!?第一、あのような事故は

 先生方や十千屋さんに任せておけばいいだろう!過剰な自信は身を滅ぼすという言葉を

 知らんのか!?」

 

「わ・・・悪ぃ、ん?十千屋さん・・・」

 

 箒は近づいて来ると一気に捲し上げてくる。内容は本来なら教員が注意しておかなければならないものだらけだ。その剣幕に圧され一夏は冷や汗を掻きながら謝る。

 でも、とあるワードが頭に引っ掛かった。

 

「先生方?十千屋さん?十千屋・・・さん!?そうだっ!十千屋さんはどうなった!?

 俺がここに来る前、あの人が俺らを庇ったはずなんだ!」

 

「落ち着いてくださいまし。まだ確認してないませんが大丈夫です。」

 

「と言うのも、あの直後カンパニーの面子があっという間に運んで処置したらしいのよね」

 

「はい『足りないものがある』と言って船の方に行きましたが、もし重症であるなら保健室と

 いえども放って行きませんと思いますよ?」

 

 一夏が気絶した直前の光景を思い出し狼狽する。その光景とは敵の強大なビームを背で受けて自分と鈴を庇う姿であった。

 そんな彼に対して、残りの面子が現状を説明する。もう既に十千屋も保健室に収納され処置は終わっているらしい。

 それらを伝えきると山田先生は彼が寝ていると思われるベットに近づいていった。

 

「そうだ、私はその十千屋さんの様子を見に来たんでした。十千屋さ~ん、起きてますか~?

 開けますよ~?」

 

 何時ものおっとりとした山田先生の様子を見ると全員が日常に戻ったんだと感じた。が、次の瞬間・・・

 

 「き、きゃあぁぁああああ!!?」

 

「どうした山田君!?」

 

「「「「山田先生!?」」」」

 

「う…ぬぅ…うるさい」

 

 保健室のベット同士を仕切るカーテンを山田先生が開けると彼女の悲鳴が響く。その様子に皆は一斉に彼女の元、十千屋が寝ているであろうベットに集まった。

 確かにそこには十千屋が居た、治療のためだろうか見えてる範囲では最低限でも上半身は裸で何時ものロボメットは付けていない。

 だが、それこそが悲鳴の原因であった。何れかの時に彼が言っていた怪我の痕、その物々しさに彼女は驚き悲鳴を上げたのである。

 いつも言っていた顔は右半分が正常な皮膚をしていない。何とか頭皮と頭髪まで傷痕が及んではいないがそれ以外は裂傷とケロイドの様な痕に、極めつけは右目がカメラアイになっておりレンズの筒部分が少し顔から覗いている。

 右上半身も顔と同じような痕が有り、特に右腕は裂傷と火傷の痕が酷かった。それに唖然としていながらもまじまじと見ていると体中傷跡がない部分を探すほうが難しい。

 そんなこんなで呆然としていると、周りが騒がしくなったのか寝ていた十千屋が起きようとした。

 

「くぅ…(ズリィ…)あっ」

 

 左半身を下にして横に寝ていた姿勢だったので、下にしていた左腕で上体を起こそうとしたらシーツがずれ右半身側からベットの下に落ちてしまう。

 落ちてしまった彼は上に上がってしまった両足をバタつかせ、左手で何かをつかもうとしてもがいている。

 しかし、誰も助けようとはしなかった。何故なら、今度は背中に異様な物がついていたからだ。

 背骨の上をなぞるかの様に金属光沢のする突起が体の内側から生えていて、それらは5つあった。それと(うなじ)には目立ちにくいが白の刺青が彫ってある。

 あからさまに普通ではない十千屋の素顔に全員が戦々恐々とし、考えと行動が追いつかない。その様な事をしていると、十千屋側のメンバーが戻ってきた。

 

「パパ~、戻って来たよ~って、ありゃ…」

 

「あ、父さんっ」

 

「あらあら!ユウさん!?」

 

 そのメンバーはチェーロと轟、リアハの三人だ。素子は授業を抜け出していて一年生側の席にいた事、勝手に乱入した事で三年生担当に強制回収された為居ない。

 チェーロと轟は棒立ちになっている皆を押しのけ、十千屋を抱えてベットに座らせる。リアハはその隣に座り、手に持っていたアタッシュケースを広げた。

 だが、抱き上げる時の違和感に千冬が気づいた。

 

「十千屋、お前には色々と聞きたい事がある…が、お前はもしかすると右腕が動かないのか?」

 

「・・・ええ、()()()()動きませんね」

 

 彼の発言に皆がざわつく、今まで接してきた中では素顔は見せないが五体満足でいたはずなのだ。それが今になって右腕が動かないとはどういうことなのだろうか。

 そんな中でリアハは針金のような細い工具を使って彼のカメラアイを外し、新しいものへと変える。そして、楕円の半円形の機械を彼の背中に付けた。

 

「ユウさん、やっぱり最後の攻撃でピアスが駄目に成ってました。その影響で義眼の方もショート

 したようです。でも、今全て新品に変えましたから…どうですか?」

 

「…あぁ、大丈夫だ。()()、目の方も稼働した」

 

「……十千屋、お前今すぐに話せ。背中のも傷跡もその腕も、()()()()()()()

 

「長い上にツマラナイ話しですよ。まぁ、全部一括して話せますけどIS関係者には特に…ですね」

 

「構わん。それにどうせ場所を改めても、お前が面倒を見ている奴ら全員が聞きたがるだろうから

 今話せ」

 

 背に機械を取り付けたら新品になったカメラアイが起動を知らせる青い光が灯る。それと同時に右手が動くかどうか握ったり開いたりで確認していた。

 そのようにしている彼に向かって千冬は疑問に感じた事を全てを話せと言う。十千屋は渋るが引かない彼女を見ると観念したのか語りだす。

 

「まずは背中のシステムの事を話しましょうか。タトゥーはC・IFS。コレはコトブキカンパニー製

 のイメージインターフェースです。そして、突起は阿頼耶識システムと言います」

 

「別に話すという事はイメージインターフェースと違うのか」

 

「ええ、簪さんには前に話したことがありましたけど、ちゃんと説明するとコレは

 マン(M)マシーン(M)インターフェース(I)の略称ですね」

 

 パイロットの脊髄にナノマシンを用いた外科手術によって金属端子と埋め込み、機体と接続させることでパイロットの神経と機体を直結させ、ナノマシンによって高められた空間認識能力と合わせる事で脳内に空間認識を司る器官が疑似的に形成する。そのため脳内のみで外部情報の処理を可能にさせ、高い操縦性能を引き出すシステムだ。

 これによって、通常はディスプレイなどから得る情報がパイロットの脳に直接伝達され、機械的プログラムに縛られない操作が可能となる。

 

「…簪、知ってたのか?」

 

「前に一度、簡単に言えば神経ブッ込み型のシステムだって事くらいは」

 

 彼からの説明を聞くと以前聞いたことがある簪は聞いてきた一夏にそう返した。だが、その内容に千冬は顔を顰める。

 

「もしや、その不随はシステムの副作用か」

 

「まぁ副作用とは違いますかね。どちらかと言うと不随は過剰使用の弊害ですね」

 

「はい、副作用は成長阻害などがありますね。そのせいで私は幼い感じですし…ココも小さいし

 

「リア、気にするなとは言わないさ。でもどんなお前でも愛してるからな。あと、今夜よろしく

「はい…///」

 

「「「(イチャつくな、このバカ夫婦)」」」

 

「ゴホンっ、ではその有様はどうしたというのだ」

 

「ここからが、長くてツマラナイ話しですよ…」

 

 

 

―――今から約一〇年前 太平洋側某海辺近く―――

 

 

 十千屋をリーダーとしたFA開発チームは遠征用の機材の運用試験をするために、山と海に挟まれた日本の某所に来ていた。

 

「うん、天気もいいしクファンジャルにも問題なし。トルースさん、今朝霧さん、

 そちらはどうですか」

 

「こちらトルース・ロックヘッド。スティレットに搭載された新しいセイレーン(ブースター)に異常なしだ」

 

「こちらは今朝霧スミカ、こちらも良好だ」

 

 空を飛ぶ十千屋の通信に同じく空を飛んでいる男女二人のテストパイロット達が答える。

 どちらもカンパニーに雇われる前は傭兵であった人物だ。男の方はトルース・ロックヘッド、フリーの傭兵でありパイロットでもあった。特徴はどんな機体に乗っても平均以上の成果を出すという地味だかとんでもないものである。女性の方は今朝霧スミカ、彼女もフリーの傭兵であり高い操縦技量を持つこと、低く澄んだ声が特徴だ。

 二人共、新しくセッティングされたスティレットを操り運用データを中継車兼整備車両に送っている。十千屋の方はスティレットの発展型-クファンジャルのテストだ。

 クファンジャルはスティレットの航続飛行距離延長を目的とした改修機で主に脚部装甲の軽量化と出力の向上が改修されている。

 順調に進んでいた運用試験であったが、間が悪いことに彼らは歴史が動く瞬間に遭遇してしまったのだ。

 試験中の三人に緊急の通信が届く、その内容は「2341発以上のミサイルが日本へ向けて発射され、それをFAに似た謎の機体が破壊している」というものだ。

 それこそがこの世にISを知らしめる事となった大事件『白騎士事件』であった。

 この時、十千屋はある決断をする。「謎の機体が撃ち漏らしたミサイルをこちらで処理する」というものであった。

 当然、周りは反対をするが流れ弾が何時コチラに来るか分からない事や、ルートによっては自分らの背後の山を越えたところにある町に落ちる可能性がある事を指摘すると渋々周りは了承した。

 ただし、たった三人で流れ弾-いや、撃ち漏らしの流れミサイル全てを処理できると思ってはいない。だから自分らの手の届く範囲内で動くことしかできなかった。

 その中で悲劇が起こる。流れ弾のミサイルがとある山の斜面に当たるルートを描いていた。そのルート上にハイキングであろうか、登山客の一家が居るのを十千屋はセンサー越しに見えてしまったのである。

 

「破壊する…いや、ダメだ!爆風があの家族を巻き込む!?…こうなったら、南無三!!」

 

 十千屋は全速力でミサイルとその家族を対角線上に結ぶ位置に割り込み、右腕を突き出してその手に持っていたマルチミサイルランチャーでミサイルを撃ち落とす。

 

「うぁぁあああ!?」「きゃぁぁああ!?」

 

 無論、撃ち落とせばミサイルは爆発しその熱と暴風が一家を襲う。だが、巻き込まれた一家は予想よりも軽傷で誰も死んだりはしなかった。

 その理由は、その家族の近くに落ちてきた十千屋である。彼が前に出てきた理由、それはその一家の盾となることであった。爆破位置と距離の関係上、彼が至近距離で爆風を受ければその後ろは放射状に防がれる。そのおかげで一家は無事だったのだ。

 

「ロっロボット…?いや、人が中に入っている!?」

 

「あ、あなた。もしかしてさっきの爆発が思ったよりも弱かったのって…」

 

「な、成る程。おい!きっ君(?)大丈夫か!?」

 

 落ちたロボット-十千屋に近づいた一家は息を飲んだ。それは彼の状態が余りにも酷かったからである。装甲はどこもかしこも爆風の影響で罅が入り煤で汚れている。

 特に右半身が酷い。右腕の装甲はボロボロであり、装甲で守られているはずの腕が露出し装甲の破片と爆風の熱で大怪我となっている。クファンジャルの特徴でもある肩のスラクターも大破しており、極めつけは右顔の装甲も外れかかっており中は腕と同じようになってるだろう。

 

「ぐぅっ…逃げて、ください。どこかはわかりませんが・・・・山の陰なら」

 

「分かった!分かったから、もう喋らなくていいっ。早く病院へ!」

 

「やるべき…事が、残ってます。では」

 

「おい!?待ってくれ!!」

 

 十千屋は一家の主である男性にそう言うと、自社の整備車両へ飛んで行く。奇跡的に無事であった通信装置でミサイルの飛来は一旦収まったと聞いたが、それだけで終わりではないと彼は思った。

 通信の途絶えた彼を心配して車両内は慌ただしかったが、戻ってきたら今度は阿鼻叫喚となる。直ぐ様FAを取り外し、彼への応急処置にはいった。

 

「おやっさん…FAの準備をお願いしたします。基本はスティレットで肩はクファンジャルで…」

 

「バカ野郎!何言ってんだ!?お前にはすぐに本格的な治療が…!」

 

「小林整備長!若旦那!謎の機体相手に各国がおっぱじめたって!!」

 

 その報告に誰もが驚く、今度は謎の機体VS各国の軍の泥仕合が始まったのだ。それを聞いて、重傷の十千屋は思う自分の勘が間違っていなかったと。

 そして、彼はパイロットの二人は今度も流れ弾の処理と謎の機体に問いただす為にFAの準備の指示を出した。

 周りはFA準備の指示に渋るが今までの戦闘行動で消耗している二人では謎の機体に追いつけないのと、補給しての再出撃では間に合わない事を告げる。

 それに観念したのか整備長である小林照二が周りに檄を飛ばす。

 

「治療班は若旦那がもう一回無茶できるように念入りに処置をしろ!整備班はFAを最高の状態に

 仕上げろ!あと、右腕はFAのパワーアシストだけで動くように調整だ!!」

 

「「「ウッス!」」」

 

「皆さん、ありがとうございます。」

 

「ったく、帰ってきたら説教だ。絶対に無事に帰って来い」

 

 どれくらい経ったであろうか、謎の機体-未来では白騎士と呼ばれるISは軍の大半の戦力を無効化しどこかへと飛び去った。が、その帰路を邪魔するかのように一体のFAが立ちふさがる。

 基本はスティレットで作られ肩はクファンジャルのスラクターアーマーでカスタマイズされているFA-奇しくも未来ではコレを正式に調整されS(スーパー)・スティレットと呼ばれた。

 

『若旦那!そいつは内外(OSも装甲も)どちらとも間に合せの機体だ。無茶をしすぎるな!お前の体もだ!』

 

「了解…謎の機体、聞こえるか?もし聞こえていたら返答してくれ。話がしたいだけだ」

 

 十千屋は通信で機体の注意事項を聞き、白騎士に向かって外部スピーカーを使い話しかけてみるが返答はない。それどころか、敵意の様なものが膨れ上がっているように感じた。

 どちらとも武器を下げているが、すぐにでも事を構えることが出来るようにしている。

 

「言い方は悪いが犯行動機を聞きたい。抵抗するのであればこちらも相応の手段を取らざる負えな

 くなるが…そうか」

 

 白騎士は構え、十千屋は懸架されいる武装全ての安全装置を外し白騎士に向ける。そして、戦闘が始まったのだ。

 十千屋のS・スティレットにはスティレットとクファンジャルの武装が全て付けられている。手にはマシンガンとマルチミサイルランチャー、腕のハードポイントには60mmガトリングガンと空対地ミサイルがある。

 その一方で白騎士には現時点で判明している武器はプラズマブレードのみ、武器の射程と種類ならば十千屋側が優っているがそれだけで勝敗が決まるわけではない。マシンガンとガトリングガンの弾幕で進路を塞ぎ、ミサイルで追撃するもことごとく失敗する。しかも、IS特有の随を許さない機動力で武器を叩き切られていった。

 

「(くっ、軍が負けるわけだ。慣性制御されているのかおかしい程の機動力、こちらの攻撃が当

 たっても本体にダメージが通らない防御力(バリア)。このFAの機動力でなんとか食らいついてるが

 ジリ貧…ならば、それ以外で活路を見出す!)」

 

 十千屋は圧倒する白騎士に勝つための算段を計算する。攻撃力と防御力は既に負けている、機動力はなんとか互角、これから見出した答えは反応速度を上げるというものであった。

 ISもFAもパワードスーツであるため生身での反応速度より遅くなる事は確かである。この戦闘中でも動作の速度は同じくらい。ならばその速度を上げることができれば優位に立てるかも知れない。そして、その手段を彼は持ち合わせていた。

 

「(阿頼耶識システム…リミッターOFF、侵度上昇。スティレット、お前の体…貰うぞ)」

 

 彼は阿頼耶識システムのリミッターを切りシステムを自分の脳に侵食させる。これにより阿頼耶識システムが使うリソースが増え機体をよりもっと自分の体へと近づけることが可能になった。

 互いの反射速度を1とすると十千屋の方が0.3~0.5になった程度の差であろうが…達人同士の戦いでは致命的な差となる。

 互角であった差は十千屋が早くなったぶん優位に立った。今まで以上に弾が追いつき当たってくる感触と感覚的な敵機のスピードアップに白騎士は動揺を隠せない。その隙を彼は付いた。

 武装は全て弾切れとなり、無理やり持ってきたスティレットの肩部スタビライザーを右腕のハードポイントに取り付け白騎士に攻撃を仕掛ける。隙を晒してしまったが、それで落ちる白騎士ではない。

 白騎士は即座に突きの様な攻撃をした。それを十千屋は右腕と右顔の装甲に半場喰い込ませながら白騎士へと肉迫し、掴みかかる。

 

「ぐぅううっ、いい加減!ツラを見させてもらうぞ!!」

 

 だが、突如十千屋…いや、S・スティレットに勢いが無くなる。それはガスンッといった感じに彼に衝撃として伝えその正体を知らせた。

 

「…こんなところでガス欠(燃料切れ)なんて、っくそ」

 

 白騎士の顔の後ほんの数センチ、いや数ミリのところまで手が届いていたがそれは重力に引かれてFA-十千屋ごと離れていった。FAはISと違って重力・慣性制御で飛んでるわけではない。飛ぶ技術に関してはとあるFAが完成するまで現行技術の延長線上でしかないのだ。それ故にバーニア・スラクターの燃料が切れれば飛べなくなる。

 白騎士は落ちていって途中で緊急パラシュートが開いた十千屋を見るとそのままどこかへと飛び去ってゆき、世界中から姿をくらました。

 

 

 

―――回想終了―――

 

 

「と、まぁ…情けない理由で引き分け、いや実質的に負けて終わりましたと、さ」

 

 この戦いで十千屋は大きな傷害を負った。右半身の大部分がミサイルの爆風により火傷を負い、装甲の破片で裂傷が残った。右目はミサイルの時に大部分がやられていたが、白騎士の攻撃で止めを刺された。しかし、奥の神経は生きていたので義眼で代用している。

 だが、最も大きな傷害は阿頼耶識システムの過剰使用により脳の一部の運動野と視覚野がリソースとして侵食され、右腕と右目に障害が起きた。コレは阿頼耶識システムに使用領域が取られているので身に付ける背中のスピアに擬似稼働システムを入れ、システムを稼働させることで腕と目を再起動する事に成功している。

 

 それよりも、学園側のメンバーが話された内容に唖然となっている。それもそうであろう、白騎士事件とはISの今の世のスタート地点それに関わっていたとは誰も予想してはいなかった。

 そして、外面には表さないが特に動揺しているのが千冬である。ここにいる誰もが知らないことだが彼女も事件の当事者、いや主犯の一人であるからだ。

 そもそも、あの事件はISを発表したが認められなかった篠ノ之束が起こしたマッチポンプ的事件であった。自らが各国のミサイル管制システムにハッキング、それで発射されたミサイルをIS-白騎士で圧倒するというデモンストレーションである。各国の軍との戦闘はおまけではあったが。

 そのおかげでISは世界に注目された。ただし、『宇宙開発のためのマルチフォーム・スーツ』ではなく、『既存の兵器全てを上回る超兵器』として。当たり前だ、デモンストレーションが暴力的すぎた結果である。

 

 誰もが言葉を告げられない中で一夏がなんとか話しだした。

 

「な、なぁ…俺は白騎士事件の死傷者はゼロだって聞いたんだけど」

 

「んなもん、大本営発表に決まってるだろ?」

 

「だ、大本営?」

 

「ふぅ、世界大戦時のネタよ。簡単に言うと政府が誤魔化したのよ」

 

 十千屋が返した答えに彼はついていけなかったが、轟が直ぐに解説をする。一般に発表されている情報など嘘と虚実が混じっているものだと。

 それはそうだろう。各国は完全制御下に置かなければいけない兵器をアッサリと奪われ使用され、国防と安全保障はなすすべがなかった。しかも、それを担った白騎士を確保または撃破する為に軍を出したが過半数を無効化され逃げられた。

 こんな各国の面子が潰された上でその原因を作ったISを戦力の要とするなんて当時の官僚は気が触れそうになっていたであろう。もしそこで死傷者がいたら世論が暴走しどうにかなっていたかもしれない。

 

「そんな訳で、実際には居るんだよ被害者たちは。それに間接的だがISを起因とする女尊男卑で

 被害に遭ってる人たちもかなり居るしな」

 

 場の空気が重くなる。ここにいるのはIS側の人間たちばかりだ。十千屋もIS側に半場立っているとはいえ実質的な被害者だ。それ故に何も言えない。

 余りにも追い詰められている空気になってきたので十千屋が口を開き告げる。

 

「何を思いつめてるが知らないが、俺はもう平気だぞ?命はある、条件付きだが五体満足で時間と

 金が掛かるが治す見込みもある、これ以上なにを求めろっていうんだ」

 

「しかし、貴様はそれでいいのか?ISを恨んでは…」

 

「起こってしまったものはどうしようもない。出来るのはこれからどうするべきということ。技術

 の暴走は歴史上あることで、それに巻き込まれたのは不運であっただけ。本当に恨んでいたなら

 ISを潰していますよ」

 

 十千屋のスタンスに皆は納得がいかないが理解はした。しかし、どう接していけば分からないでいる。そんな場の空気に彼は思わずため息をついた。

 

「はぁ…コレを話したのはお涙頂戴って訳じゃないぞ?もう過去の事で別段何かあるわけじゃ

 ない。接し方なんて何時も通りでいいんだよ」

 

「…分かったよ、師匠(十千屋さん)

 

「は?師匠?」

 

「えっ?あっ…ええと、十千屋さんにはさ色々と鍛えてもらってるし、俺と十千屋さんの関係って

 こんなんじゃないかなぁ?って。なぁ鈴?」

 

「なんで、あたしに振るのよ。まぁ、そう見えるんじゃないあんたらの関係ってさ」

 

 一夏の突然の師匠発言に今度は別の意味で周りが唖然となって、彼は周りの反応にとっさの言い訳をし鈴に同意を求めた。

 慌てふためく彼に釣られて周りの雰囲気も変わってゆく。

 

「まぁ、いいさ。バカ弟子、今日はしっかり休むんだぞ?織斑先生、これで失礼します。事情聴取

 はまた後日で」

 

「あ、あぁ…分かった。何かあったら直ぐに知らせるようにな」

 

「では、これで皆さん失礼します。リアハ、轟、チェーロ。行くぞ」

 

「「「はい(は~い(^-^)/)」」」

 

 彼の特異性、誰もが分かりかけて来たと思っていた。が、そう思っていただけであった。

 過去話を聞き、その身に刻まれた傷を知り、ただ分かりかけて来たと思い込んでいただけであったと知る。

 十千屋雄貴-彼は一体何者か・・・その答えを知る者はこの場に誰もいなかった。

 

 

 

―おまけ―

 

「そういや、リアハなんでIS学園の制服を着ているんだ?」

 

「ふふ、轡木さんから頂いたの。これを着ていれば学園内に潜り込みやすいって

 (クルッ…ストン)どう?」

 

「( ̄ー ̄)bグッ!…イイ、凄くイイ」

 

「コレは今夜は激しいわね」

 

「イイなーママは」

 

 

 一方、リアハが制服を着ていた事に後で気づいた学園側のメンバーは

 

「なに!?アレが十千屋の配偶者だと!?」

 

「え、しかも成人してるんですか!?全くそうとは思いませんでしたよ…」

 

「そういや、千冬ね…織斑先生達ってリアハさん見たの初めてだっけ?」

 

「「「(アナタが言うなよ山田先生)」」」

 

 教師二人はこの事実に驚くが、二人共今度は別のことに気づいて驚愕する。

 

「まて、名前だけなら聞いたことがあるぞ?たしか、臨時の養護教諭で主にカウンセラーをすると

 かなんとかで」

 

「あぁっ!?」

 

「どうした山田先生?」

 

「あの人って事件が起こった時にたった一人で隔壁をクラッキングしていたような…」

 

「「「な、なにぃ!?」」」

 

「凄い子が居るんだなぁって、思っていたんですけど…まさか、十千屋さんの奥さんだとは

 思いませんでしたよ」

 

 十千屋の本妻、リアハ=(アーヴァル)=十千屋。阿頼耶識システムとイメージインターフェースを用いた超演算力で実はクラッキングなどが得意である。

 そして、一同改めてこう思う。

 

「「「(やっぱりカンパニーの面子って、まともな人がいないんだなぁ~って改めて思うわ)」」」

 

 コトブキカンパニー、今のところ一般人率0%、逸般人率100%であった。




はい、今回は十千屋の秘密と過去話を公開しました。
過去話・・・コレはEX話でするべきだったでしょうか?

そして、FA原作説明書の挿入話に登場するキャラ達がちょいと出ました!
今後も、FAに関係するキャラはカンパニーに関係して出てくるのでまったりとお楽しみにしていてください。どうしても一部変わってしまうところもありますが、まぁそこはお気になさらず。

GW中に2~3本あげたかったのですが・・・無理そうです(汗
積み(罪)の消化が~orz

あと、設定資料の方を更新しました。轟ちゃんですよ~。
今後、というか試しとして設定資料の方を更新しましたら活動報告にあげるようにします。
今後ともお楽しみにしていてください。



では、今回は此処まででございます。

そして、感想や誤字脱字・ここが文的におかしい等のご報告も謹んで承ります。
では、もし宜しければ次回お会いしましょう。
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