IS×FA 遥かな空を俺はブキヤで目指す   作:DOM

43 / 70
大変お待たせいたしました。
今回は『ドイツ報復戦』をお送りいたします。

因みに、ISは出てこないのにIS作品とはいかがなものでしょうか?

では、どうぞ御ゆるりと。


IS×FA42ss:手筈通りだ

 鉄の騎兵が走る、跳ぶ、吠える。機銃が唸り、ミサイルが弾ける。

 鉄の腕が、秘密の扉をこじ開ける。炎の向こうに待ち受ける、ゆらめく影は何だ。

 今解き明かされる、VTシステムの謀略。今その正体を見せる、研究の謎。

 今回、『激震』。兵士達よ、牙城を撃て。

 

 

――ドイツ:某時刻・ドイツ軍・執務室――

 

 IS学園でのVTシステム発覚から幾許かの頃、ドイツ軍執務室にとある部隊の三名に収集が掛かった。

 三人は呼び出される事に覚えがないが、呼び出されてもおかしくない事柄なら知っている。

 それは、IS学園にてドイツ軍IS部隊から出向中の『シュヴァルツェ・ハーゼ(黒兎隊)』所属:ラウラ・ボーデヴィッヒ隊長がVTシステムと呼ばるものによって暴走した件だ。

 これにて役人や軍広報担当などが奔走する事になり、今もそれが続いている。

 

「これは、これは所長。一体何用で?」

 

「此処は刑務所ではない!司令官と呼べ!!」

 

「了解しました。で、何の様です?」

 

 部隊の中の伊達男が軽口を言うと、司令官の傍に控えていた副官が大きな声を上げて注意する。

 伊達男はヤレヤレと肩をすかして、とりあえずの了解と話の続きを促した。

 それを受けて司令官は副官に目配りし、来た三人に資料用のタブレットを渡す。

 

「先ずはコイツを見てくれ」

 

「この資料は、Valkiyrie Trase System?」

 

「いま騒ぎになっているVTシステムって呼ばれてるアレじゃないですか」

 

「確かコイツはISの条約ではご禁制になっているヤツですよね」

 

「そうだ、それがシュバルツェア・レーゲンに搭載されていたのが発覚したところから始まっている」

 

 資料を読み進めている三人の中で一人が合点がいったのか、獰猛な笑みを浮かべて言った。

 

「なるほど、コレを作った奴へお礼参り(粛清)ですな」

 

「おいおい、そりゃ冗談にも・・・」

 

「そうだ、その事を頼みたい」

 

「「「えっ!?」」」

 

 軽口気分の冗談で仲間にも窘められたが、司令官の反応に驚いた。何せ、本当にVTシステムを作った者たちへの粛清だったのだから。

 驚いて固まっている三人に対し、彼は資料の続きを見るように促す。その資料を読み進めるたびに三人の顔は険しくなっていった。

 

「要件は分かったようだな。そうだ、お前達には()()()をつけさしに行って貰いたい」

 

「そりゃ・・・分かりましたが、良いんですかい?

 この案件だと、秘密裏に消せって事だと思うんですがね」

 

「私は奴らが何を作ってようが勝手だと思う。

 だが、ドイツ軍・・・いや、我が祖国の品性まで疑われるのは我慢ならないのだ」

 

「で、表に出して他から(つつ)かれるよりも身内で消したほうがヨロシイ・・・って訳ですな」

 

「まぁ、我々はあくまでも彼らの便乗に過ぎんがな」

 

 資料には、これから行う襲撃作戦の概要がのっており、新たに採用する予定の新型FA(フレームアームズ)

実践テストと言う名目で始末をとる、といったものである。

 そこで彼らは国として不利益を生み出すものは秘密裏に消えてもらう、と察知したのだ。

 そして、ドイツとしては他に無視できない案件がある。新型FAを用意し、その教官を付け、今回の標的の全てを調べ上げ彼らに討たせようする存在があった。

 その存在から様々な利益をもたらされたドイツでは、今回の件を無視できない。だからこうして作戦を立てたのだ。

 

「全く、おっかないですなぁ」

 

「それには同意しよう。・・・全容は以上だ。ドイツ軍からは、貴公ら三名を中心として動け。

 他の人員の調整は任せる」

 

「「「了解しました、司令官」」」

 

 今回の呼び出しを全て伝え終わり、三人は執務室から出て行く。司令官はそれを見送ると自分の席に着いた。

 副官は使い終わったタブレットを戻し、次の仕事へ移ろうとする。が、不意に口が開く。

 

「それにしても、恐ろしい組織ですね。ナナジングループというのは」

 

「だが、味方である限りは頼もしい限りだ。・・・怒りに対する最上の答えは何だと思う?」

 

「それは格言ですか?確か・・・()()だった、と」

 

 副官の言葉に繋げるように話す司令官は更なる問いかけを付ける。

それに首を傾げる彼であったが、思い立ったのか答えた。

 司令官は答えを受け取ると、両手を組んだ腕を机の上に置き何とも言えない表情で言葉を続ける。

 

「そう、『怒りに対する最上の答えは沈黙』だ。彼らはナナジングループは

 今回の作戦の肝となる資料を・・・無言で突き付けてきた」

 

「(・・・ゴクリ)」

 

「その目は『全て分かっているな』と物語っていた。再び、同意しよう・・・恐ろしいと。

 そして、彼ら(ナナジングループ)を決して怒らせてはならない」

 

 今の時期は初夏へと向かう途中であったが、真冬のベルリンを思わせる寒気を彼らは覚える。

今回の件は、敵に成れば有無を言わさず消す・・・そう、ドイツに思わせるものであった。

 

 

 

 

――ドイツ:某時刻・某上空――

 

N・D(ネオ・ドルフィン)号のオペレーター:フランソワーズ・A・シマムラより、FA隊へ。

 作戦開始地点上空まで約三分、エントリー(突入)の準備してください」

 

「「「了解」」」

 

 あの執務室での一件から時間が過ぎ、IS学園で束が話し出す数時間前くらいに作戦は決行される。

 ドイツ軍FA部隊『シュヴァルツェ・ヴェーアヴォルフ(黒の人狼隊)』とナナジングループからの出向した

FA隊員らを合わせ、N・D号に乗りVTシステムを作った研究所を殲滅しに出ていた。

 研究所があるのはドイツの田舎の山奥、あからさまに()()研究所と言われそうな所にある。

 ND号に乗っているFAは、黒の人狼隊のFA-全て基本カラーが黒に塗ってある各隊員に合わせ

カスタムされた轟雷・近接仕様の漸雷(ぜんらい)・砲撃:援護仕様の榴雷(りゅうらい)・改である。

 全てが轟雷のバリエーションであり、この機体の外国向けの名前がウェアウルフ(人狼)となっている為、ここから部隊名が来ている。

 だが、他にもずんぐりむっくりとした如何にも防御特化の機体が載っていた。

その名は『四八式一型 輝鎚・甲(かぐつち・こう)』、海外名は『M48Type1 グスタフ』だ。

 他にもそのバリエーションだと思われる、ヘッドセンサー変え更に装甲を分厚くした蒼と紅の

輝鎚が居る。

 

 N・D号は山奥にある開けた土地が目的地のようだ。特殊なカメラとセンサーで見ると、そこを中心として反応が出ている。

 

「目的ポイント通過30秒前、ハン・マルテロ曹長 グンバン・ドゥン曹長、

 エントリー開始をお願いします」

 

「「了解」」

 

 オペレーターの合図からナナジングループ出向のFA隊員がまず空へ飛び出していった。

 

 

「・・・ちっ、稼働率及び同調率が30~40%台でしかも安定してない。

 所詮は一回落ちぶれた人形か」

 

 此処は薄暗い部屋で男がとあるデータを見ていた。画面に表示されるISのシルエットは

VTシステムで変化したレーゲンである。

 そう、ここは研究所の一室。しかも所長室であった。VTシステムには変化を起こした後に

パーソナルデータを送る機能もついており、この研究所に届いたのである。

 届いたデータを所長が解析していたのだが、思いのほかシステムの稼働率と同調率が低いことに悪態をつく。

 粗方データを纏め終わったので一息入れようとした時、

 

――ドォオン!――

「くぅ!?何だ!警備室っ、この揺れと音はなんだ!?」

 

――ドォオン!――

「くそっ、またか!?」

 

『報告いたします!上空より、中央昇降ゲートに向かって砲撃をなされております!』

 

「な、にぃい!?ぐっ」

 

――ドォオン!――

「警備室!もうここの場所は知れていると思え!偽装を解除っ、迎撃しろォオオ!!!」

 

『はっ!』

 

――ドォオン!――

 

 その頃上空では、二機の輝鎚-その正式名称は四八式二型 輝鎚・(おつ) 狙撃仕様が降下していた。

 輝鎚をさらに重装甲化と反応装甲(リアクティブアーマー)を追加し、狙撃仕様に変更したものである。この二機が遥か上空から山の合間にある開けた土地、偽装された研究所の地下ゲートを狙撃していた。

 二機は腰のブースターで器用に姿勢を制御しつつ、次々と偽装ゲートへ砲弾を見舞っていく。

偽装ゲートは核シェルターと同様の方式で作られているため、ちっとやそっとじゃ壊れない。

だが、輝鎚・乙の持つ重火器も伊達ではない。

 

 百拾式超長距離砲『叢雲(むらくも)』対要塞用の大型砲で、元は迎撃用に建造されていた高射砲をFA様に

改修した狙撃砲だ。

 FA用とはいうものの、そのサイズと重量ゆえに輝鎚(四八式)以外の機体がこれを扱うのは困難とされている。だが攻撃性能は申し分なく、電磁誘導方式による長距離・高貫通力を誇り、FA相手ならかすらせるだけで甚大な被害を与える。

 

 研究所に響き渡る轟音と振動はコレによる物だ。その音と振動が伊達ではないのはゲートの隔壁が証明している。何度も砲撃を受けたゲートは半壊になっており、空いた穴に入った砲弾は更に奥、それが空けば更に奥と破壊してゆく。

 だが、研究所側もヤられてばかりではない。付近に隠していた高出力レーザー砲を起動し、

輝鎚・乙を狙ってきた。このレーザー砲は対ISとしても十分な出力を持っている。

 普通のFAなら装甲を貫かれ装着者(パイロット)の身を危険に(さら)してしまうだろう。その幾重のも火線が輝鎚・乙に殺到する。飛べないこの機体では自由落下中に避けられるものではない。

 誰もが蜂の巣にされ墜とされるのを想像した・・・ナナジングループ以外の者は。レーザーを受けた輝鎚・乙は煙を吹き上げ落下してゆく。が、そのまま何もなかったかの様に二機は砲撃を続けた。

 煙の正体は水蒸気。レーザーを受け溶解した反応装甲から水煙が立ち上ったのである。

 

 少しここでこの世界のFAの扱いについて説明しよう。この世界のFAの基本設定は十千屋が

書き起したものだ。本来はただのプラモのための作り話(バックストーリー)の設定である。

 だが、それを本気(マジ)で現実に作ってしまったのがこの世界のFAらである。

 そして、この輝鎚・乙 狙撃仕様の開発元のFA:輝鎚・乙は普通のFAなどをあっさりと破壊できる光波(ビーム?)攻撃をしてくる高機動FAの攻撃を真っ向から受け止め反撃するために作られた機体だ。

 その持ち味を生かしつつ再設計されたのが輝鎚・乙 狙撃仕様なのである。

 

 輝鎚・乙は対光波攻撃機体、ビーム・レーザーなど光や熱を使う攻撃に対し、反応装甲内に充填された水が光弾の威力を減退させているのだ。

 

 敵も味方も平気で攻撃をする輝鎚・乙に唖然とした。特に敵は止むことのない砲撃に慌てふためいているだろう。

 ゲートの偽装は禿げ、ボロボロに成ってゆくのを確認すると、輝鎚・乙の二機は次の手を()()()

 

「サイト・ゼキ曹長、手筈通りだ」

 

「了解」

 

 砲撃をしている二機の間に赤黒い影がすれ違った。持っている得物は違うがこの影は輝鎚のモノである。

 その影は自由落下によりどんどん加速してゆき・・・ゲートにブチ当たった。

 

 

ガァン!ゴォォン!ドゴォオオォオオオ!!!

 

 幾重にも閉じていたゲートの隔壁が落下してきたモノによって見るも無惨に破砕されてゆく。

その衝撃と音は、ゲートの最下層にたどり着くまで続いた。

 最下層では、破壊されたゲートの破片と落ちてきた()()によって埃が立ち上り、まるで煙のように立ち込めている。その回りを自動制御の自走砲が取り囲み、異変があればすぐに撃てるようになっていた。

 数秒か十数秒か分からないが、煙の向こうから逆U字型のカメラアイの光が見えたと思うと、

煙を横薙ぎに裂いて巨大な何かが自走砲を薙ぎ払った。

 防衛用の自走砲はその一撃で薙ぎ払われた範囲の物は全て破壊される。無事だった自走砲が攻撃を開始するが、カァン!ガァン!等が聞こえ効いている様子は見られない。

そのまま、また何かに薙ぎ払われ全滅する。

 自走砲のカメラに写り、警備室で遠隔操作していた職員が見たものは、赤黒い鉄鬼であった。

 

「・・・・・・試作シールドは着地で全て無くなったか。予定よりも早く無くなったが、

 予感よりも耐えて最低限の役割は果たしたか」

 

 赤黒い鉄鬼の正体は『四八式二型 輝鎚・乙 白兵戦仕様』とその装着者『サイト・ゼキ曹長』である。この機体は輝鎚・乙 狙撃仕様とは真逆の赤黒いカラーで塗られ、その得物は・・・

 

 「侵入者発見!全員・・・撃てぇえええ!!」

 

「無駄・・・だ」

 

 自動自走砲、警備部隊の混成がゼキ曹長を待ち構えていたが自動小銃(アサルトライフル)では輝鎚の、特に装甲を

増したバリエーション機には通用しない。

 発射された弾丸は(はじ)かれるか、装甲の表皮にめり込む程度にしかならない。それは、敵の方も

先刻承知でロケットランチャーを引っ張り出してきた。コイツはこの研究所での個人兵装最強種である。

 

 「コイツでも・・・喰らえぇええ!!」

 

 この通路はそれなりに広く作られているが、元々鈍重な輝鎚は避ける事など出来るはずもないし、その鈍重な輝鎚を無理矢理動かすためのショックブースターを吹かした突撃最中では不可能だ。

 真っ直ぐ発射されたロケット弾は輝鎚に当たり爆炎を発生させる。普通の機体ならば多かれ

少なかれダメージが通るはずだが、輝鎚はそんな生易しい物ではない。

 少し煤が付いた程度で爆炎を突っ切り、その得物を振るう。輝鎚・乙のゼキ曹長の得物は(まさ)しく鉄塊。ブーストダッシュで得た加速力をわざと片足で押し留めてブレーキをかけバランスを崩す。

 そして、鉄塊の先端についた加速用ブースターを点火し自身がコマの様に回る回転運動へと変換し・・・敵部隊に突っ込んだ。

 鉄塊の先端が壁に擦れ様とも壁を(えぐ)りながら進み、機械も人もバラバラに千切りながら進む。

 

 鉄塊の名前は、『試製三式破城鎚』FAの身の丈に匹敵するサイズの巨大な鉈で、先述した通りに先端には加速用ブースターがついている。これも叢雲と同様で輝鎚の重量と補助腕(サブアーム)を使ってようやく振り回せる代物だ。

 そして、名前(破城鎚)の通りに本来は対人に使うものでない。

対要塞、対移動拠点などに近づいて直接ぶん殴る というどこかおかしな運用思想の兵器である。

 そんな訳で・・・無論、FAや人に向けて振るえばオーバーキルもいいとこで、 命中した箇所が

丸ごと消し飛ぶ威力だ。

 因みに破城鎚と銘打っているが見た目は大鉈に見える兵器である。

 

 鉄塊=破城鎚は機械の人の部品を撒き散らしながら相手を屠ってゆく。

敵の目の前の光景は地獄絵図であろう。

 いたる所に血、骨、臓物・・・つまり()()()()パーツが飛び散り、飛んできた機械の破片で死んだと思ったら粉砕機と化した輝鎚で次の瞬間にはバラバラよりも酷い状態になる。

 それを敵部隊の最後尾に居り、たった一人になってしまった敵隊長はこみ上げるモノ撒き散らしながらも構わず逃げ出した。

 だが、そこまでであった。ゼキ曹長は破城鎚の向きを変えると同時にショックブースターを

起動、直線的な動きへと変更し破城鎚の加速用ブースターに火を入れ、敵隊長に追いつき叩き潰す。

 

「・・・敵部隊鎮圧、目標(ターゲット)の再捜索に移る」

 

 敵部隊を全滅させたゼキ曹長は輝鎚のグラインドローラー、地面を削る反動で進む駆動装置で

輝鎚を走らせ最終目標を探しに戻る。そのローラーがナニかを潰しながら進むのには気にも掛けずに・・・

 

 

 時はゼキ曹長が偽装ゲートを粉砕したところまで戻る。

 ゲートを粉砕された影響か迎撃装置は機能停止し、上空で待っていた他の隊員達が降下を始めた。降下した隊員達はすぐに部隊編成を終え、各階層へを鎮圧する為に散ってゆく。

 先に降下し、ゲートを無効化したマルテロ曹長とドゥン曹長は降下先で叢雲を置き、

背にマウントされた30mmチェインガンと六基の小型ミサイルで構成された複合機関砲:

百二式機関砲『火引(ひびき)』を手にし自分たちが組む部隊へと合流する。

 

「お待ちしておりました、マルテロ曹長殿、ドゥン曹長殿。貴方方と組める事を光栄に思います。しかし、アレで良かったのですか?」

 

「・・・ゼキ曹長の事か?確かに()()で先行したのは気になるだろうが、事前に説明したはずだが?」

 

「失礼しました。事前に説明され映像も見せられ、僚機を巻き込みやすい上で単機の方が都合が良いと分かってはいましたが、私情でした。申し訳ございません」

 

「まぁ、分からなくもない。アイツは普段は不器用だが優しい奴だからな、そう心配になるのも

 無理はない。ならば、コチラの仕事を完璧に素早く終わらせる事がアイツの負担を少なくする事になる」

 

「ハッ!全身全霊をもって当たらせて頂きます!」

 

「気負いすぎるなよ。さて、コチラの分隊も行くぞ!!」

 

「「「「了解!」」」」

 

 マルテロ曹長は合流した先でドイツ軍の一人から質問される。その内容はゼキ曹長を単身で往かせて良かったのだろうか?であった。

 それには事前の説明はあったが、どうやら人情からその質問が出てしまった様である。

上記で書いた通りに彼の戦い方は近づいたモノを全て粉砕する戦闘スタイルだ。その為、単身の方が都合が良い。

 それを確認するとドイツ隊員は行き過ぎた提言だと謝り、引いていく。だが、マルテロ曹長は

ソレを咎めず作戦のスムーズな進行がゼキ曹長の手助けになると言って士気を高めた。

 実際にコノ後は予定よりもスムーズに制圧が進み、ドイツ軍FA部隊発足以降最速の作戦となる。

 

 

 一方でゼキ曹長はコノ後も単身で進み続け、最奥にあったアリーナの様な広間に出た。

最初は薄暗く分からなかったが、急に照明が点くとここには数多くのアーキテクトフレームが

立ち並び、手に持ったライフルを彼に向けている。

 アーキテクトが立ち並ぶその向こうの上には管制室があり、そこの逆光のお陰で人影が見えた。そして、そこにいる人物がスピーカーを使いこちらに話しかけてきた。

 

「ふん、此処まで来た事は称賛に当たるだろう。だが、私にもプライドという物もある。

 コトブキカンパニーとやらのオモチャ(アーキテクト)を利用した、射撃部門でのVTSをその身で味わうがいい」

 

 管制室の主―後で分かったことだがこの研究所の所長がそう言うと、アーキテクトが一斉砲火してくる。その狙いは正確で流石は射撃部門のヴァルキリー(世界一位)のデータだ。

 所長は無人機(アーキテクト)には瞬時の判断や思い切りが必要な接近戦は無理でも、射撃であるならば十分にVTSを活かせるだろうと想定し実際にアーキテクトは正確無比な射撃を行っている。

 敵は重装甲であるが、装甲の隙間や可動部などを射貫けば対応できると予想した。

が、鈍重なはずの敵機(輝鎚)の回避行動に追従できていない。

 

「何故だ!何故こうも上手くいかない!?」

 

「・・・狙いが正確過ぎる。これならばよく見れば有効打を避けられる」

 

 ゼキ曹長はショックブースターと破城鎚のブースターで上手く避け、敵が狙っている有効ポイントをズラし重装甲部位で受けながら砲火の中、悠然と敵機へ進んでゆく。

 その中で彼は、この作戦前のブリーフィング(会議)を思い出す。そこでは十千屋が感じたVTSの見解を述べていた。

 十千屋から見たVTSとは「モーションデータの使い方を間違えた欠陥システム」である。

確かに最上級者の動きや戦法を100%トレース(真似)出来き、ソレを誰でも使えればかなりの戦力に出来るであろう。

 だが、最上級者の動きとは本人たちが自分の為だけに極めた動きであって他人が真似できるモノではない。まず、体格が違う。筋肉の付き方が違う。思考が違う。動かし方が違う。

 十人十色と言うが文字通りで何もかもが千差万別だ。それなのにそのままの動きをデータに落とし、実際に現実で再現することなど不可能だ。

 ・・・技と言うモノがある。本人にしか出来ないモノではなく、格闘技の型やそれぞれの技の方だ。オリジナル(本人)をよく観察し、考察し、数多の人が修練を重ねれば出来るように成るまで体系化したのが《技》だと十千屋は考える。

 若い流派でも少なくとも百余年の時間をかけ技を作り出してきた。それなのに、そのまま似せれば最強になれるというのはどうしたものだろうか?

 彼が考えるモーションデータの使い方とは、数多のデータを最適化し普遍的で最適な動きを指導し補助する・・・誰もが使える技を扱えるようにするシステムだと論じた。

 実際に、近接最強のデータを使ったラウラには無視できない反動が残り、無人機で撃たれる射撃データは火線予測システムを見れば避けられる程度しかない。

 その事が分からない研究者が作るものなど・・・

 

「恐るに足らんな」

 

 「なぁああああ!?」

 

 突き進んだゼキ曹長は機体を跳躍させると、次の瞬間には敵機が両断されていた。

しかし、先程の戦いの通りに斬撃というには余りにも粗暴すぎる。多少なりとも装甲の付いている敵機は装甲もフレームもグシャグシャに潰されながら沈み込む。

 ゼキ曹長は破城鎚=大鉈を力任せに引き抜くと、他方の敵へ向き直る。敵側はこの攻撃を脅威と判定し、側面へ回り込む挙動を取った。だが、ゼキ曹長は大鉈を今度は横薙ぎに振るった。刀身の背から噴射光が伸びるや、瞬く間に青白い弧を描く機動で避けようとした敵機は隣り合わせは

愚か、その有効範囲内の敵の胴が分断される。

 大鉈を振り抜いた格好となるゼキ曹長の背後から無事であった別の敵機が襲いかかる。

が、彼も素早く反応していた。腰のショックブースターを噴かすと機体を反転させ、

そのままの勢いで大鉈を振るい又しても横一閃に敵機を引きちぎった。

 

「何故だァ!?何故だぁあ!!

 私が作ったシステムは未完成とは言え、あの程度には十分なはずだ!?」

 

 所長の目には攻撃を悠然と受け、見るからに鈍重な機体を軽々と扱いアーキテクトを叩き潰してゆく(ゼキ曹長)の姿があった。

 監視カメラで得た情報から構築した今回のVTSであれば十分に倒せるはずである。だが、現実はその真逆でこちらの圧倒的敗北であった。

 ものの三分も経たない間にアーキテクト側は全滅、彼はこちらの方を見る敵にビビリ

腰が抜けそうになりながらも管制室の背後にある緊急脱出装置へ逃げ込もうとするが、頭の真上を通った大鉈に装置が潰される。

 彼にとって幸か不幸か、腰が引けていた為に上体が低くなっていた。

その為、助かったのである。そして、恐怖の大本が管制室の窓・・・

いや、窓側の壁や装置をブチ破り鉄鬼がやっていた。

 

「・・・何だ、生きていたのか」

 

「ひぃいい!わ、私を誰だと思っている!?」

 

「関係ない。今作戦ではDead or Alive(生か死か)。別に生きてようが死んでようが構わない」

 

「ななぁなな・・・なぁ、私と、とと‥取引しないか?絶対に悪いようにはしない!」

 

「・・・面倒だな」

 

「なぁ、私の言うことを聞いてくれ!って、なんで両腕を?」

 

「面倒な事をされると面倒だ・・・」

 

「ちょ、ちょちょちょおっと!ま、待ってくれ!ギャぁあああ!!!

 

 

 本日未明:作戦は無事終了。

 研究施設のデータは全て抜き終わった後に爆破処分を実行し、何があったのか分からなくなった。

 投降してきた研究施設員達は軽度が軽いものは一生監視され、幹部クラスは全て秘密裏に処分される事となる。

 研究施設の所長は捕獲時、両腕を何かで握り潰された状態で確保された。

彼は研究施設の洗い浚いを自白させた上で処分される事とになった。

 

 ドイツ軍はM48Type1 グスタフ(四八式一型 輝鎚・甲)をFA部隊機に採用。今後は拠点防衛用や強襲用として活躍する事となった。

 

 上記にあるのがVTシステムにまつわる始末である。

 これにより、ドイツ軍は機密の漏洩、研究施設の抹消、新型機の購入と手痛いダメージを負う事となった。

 

 さて・・・これらの事から、今回の事件は一体誰がトクを得たのだろうか?

 

「コンコン♪恩を受けたら、恩返し~♪アダを受けたら・・・万倍返しなのでございますわよ~♪」

 

 さて、一体・・・誰なのだろうか・・・・・・

 




はい、今回は『ドイツ報復戦』・・・と、言うよりも『ドイツ()()戦』をお送りいたしました。
前回の後書き通りに、長くなりそうなので小分けにしたのが今回なのですが・・・
相変わらず、付け足してして、さらに付け足して、1万文字近くに成ってしまいました(ーー;)
計画性の無さは全くもって進歩してません・・・(;´д`)

さて、今回はど派手にFAが暴れましたが・・・この機体(輝鎚)、原作でもほぼ似たような事をしているんですよ・・・
やっぱり、FAのエースパイロットはスゲェ(ヤバい)奴らばかりですね。

そして、今回でようやく・・・正真正銘、『学年別トーナメント編』は終了です!
長かった・・・本当に長かった!
でも、次の『臨海学校編』または『銀の福音編』の舞台である海に行くまで何れ位かかるのだろうか・・・(遠い目


では、今回は此処まででございます。

そして、感想や誤字脱字・ここが文的におかしい等のご報告も謹んで承ります。
では、もし宜しければ次回お会いしましょう。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。