IS×FA 遥かな空を俺はブキヤで目指す   作:DOM

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約二週間ぶりに上げられました。
今回で銀の福音二戦目に入れると思ったのですが…そうじゃありません。
そして、オリジナル設定が酷い?回になるかもしれません。

では、どうぞ御ゆるりと。


IS×FA54ss:各員!出撃スタンバイ!!

傷ついた者は安らぎを求める。

だが、今求めるものは何だ?

求めても、求め得ぬもの。望んでも、望み得ぬもの。

それ故に、彼らは彼処へ走り出す。

 

 

 ここは旅館の一室、そして時刻は午後四時前になろうとしていた。この部屋の使用者は二名、

箒と横たわる一夏である。

 彼はもう既にあの撤退から三時間以上も目を覚まさずにおり、彼女は表情を無くしてずっと彼の傍に座っていた。

 

 今回の戦いで一夏の負った傷は致命傷ではないが軽くもない。

出来る事なら病院へ搬送したいが、緊急事態中なためそうもいかない。

 その為、束がISの裏ワザ-本来は装着者が重傷になった場合に起動する、ISの生体保護・

調整を使い装着者に救急措置を行う機能を使ったのである。

 これにより容態が急変する事はまず無くなり、装着者が峠を越しISのエネルギーが回復すれば

自然と目が覚めるはずだ。

 

 しかし、時間がたった今でも一夏が起きる事はなかった。それにより、状況の変化があるまで

各自現状待機を言い渡された箒はこうしてるのである。

 

「一夏…私はどうすればいいんだ?紅椿は何も答えてはくれない」

 

 彼女は眠り続けている一夏と、手の平に乗っている金と銀の鈴が一対になってついている赤い紐-紅椿の待機形態を見続け、答えが返ってこない問いかけを呟いていた。

 先程の戦闘でいつも髪を結い上げているリボンが焼け、そのまま垂れ下がった髪は

今の彼女の心境を表している様である。

 

「何をいつまでウジウジしてるの」

 

 ばしん!

 

「あだぁっ!?な、何をするんだ!轟!!」

 

「それはコッチのセリフよ」

 

 塞ぎ込んでいた箒を文字通り叩き起したのは轟であった。後頭部に衝撃を受けた彼女は即座に

そちら側に振り向き、抗議する。が、逆に憤慨していたのは轟であった。

 彼女は腕を組み、持ったハリセンを揺らしながら据えた目で箒を睨む。

 

「大方、自分たちだけ助かっての後悔だろうけど…それは父さんに失礼極まりないわ。

 あの人は例え自分が傷ついても助けた事に関しては絶対後悔しないわ。

 それなのに貴女ときたら」

 

「っ!ああ!後悔してる!!私が足でまといになって撤退に至った!

 私なんて放って置けば良かったんだ!!」

 

 ばしん!

 

「黙りなさい。貴女は父さんに助けられたのよ。なら胸を張りなさい。

 『あの人が助けてくれる価値が私に有る』のだと。

 そして、その為に為すべき事をしなさい。貴女に出来る事はそれ以外認めないわ。それとも何?やるべき事を出来ない軟弱な臆病者なの?」

 

「随分と言ってくれるじゃないかっ。でも、どうすればいい!

 為すべき事が銀の福音を倒す事であるならば、ヤツは一体どこにいる!!」

 

 轟の叱咤を受け、逆にいきり立った箒は今にも彼女に掴みかかりそうな勢いでまくし立てる。

今までとは打って変わって一瞬即発な雰囲気に互いにピリピリとするが、急に轟の表情が柔らかくなる。

 

「為すべき事はアイツ(銀の福音)へのリベンジ。それでいいのね?」

 

「ああっ、そうだ!戦えるならば、戦ってやるさ!!」

 

「だ…そうよ。みんな」

 

 箒が銀の福音へのリベンジを決意したのを確認すると、轟はその報告を廊下側に声をかける。

そこには何時ものメンバーが出揃っていた。

 

「うんうん、スコーパちゃんはそうでなくちゃ。ダイジョブ、ジョブ!ウチの親会社(ナナジングループ)の衛星と」

 

我が軍(ドイツ軍)の衛星がヤツを確認した。目標はここから沖合上空三十キロ、

 ステルスモードに入っていたが光学迷彩は搭載されておらず光学(普通の)画像で発見した。

 だが…軍事衛星(ドイツ軍)よりも民間衛星(ナナジングループ)の方が早かったのは納得がいかない」

 

 既に目標を見つけ出したと語るチェーロとラウラ。

 

「さすがドイツ特殊部隊。やるじゃない。けど、そっちに関してはもう気にしては駄目よ。

 あたしは諦めた」

 

「あぁ、Vater()を実質雇っているところだものな…ところでお前の方は準備出来ているのか」

 

「当然のパーペキよ。甲龍(シェンロン)の攻撃特化パッケージはインストール済み。他の皆は?」

 

「もちろん、既に完了させてありますわ」

 

「うん、僕もだよ。けど…念のため、何かあったらすぐに出られるように準備しとけっていう、

 十千屋さんの言付け通りになっちゃったね」

 

「流石、雄貴さん…抜け目無し」

 

 そして、他のメンバーも銀の福音退治の準備は出来ているようだ。どうやら、残す事は箒に発破を掛ける事だけだったらしい。

 その事が分かると箒は口をパクパクしながら紅潮してゆく。

手の平の上で転がされていた事に気づき恥ずかしくなってきたみたいだ。

 

「あと、貴女に良い事を教えてあげるわ。父さんは()()()()()

 

「!? 本当なのか!!」

 

「そだよ~、パパが墜とされたら一番発狂しそうな人がしてないじゃん。

 それに一応、根拠が有る事だよ」

 

 轟から伝えられた吉報に箒は即座に反応する。

そして、吉報-十千屋生存の根拠をチェーロが述べる。

確かに彼女が言う通り、十千屋に万が一の事が起きたらリアハが異常をきたすだろう。

 だが、実際には静かなもので逆に狼狽えた束を宥めながら彼の捜索にあたっている。

更にチェーロは続きを述べた。

 

「なんかね?電波か量子か分からないけど、特殊なパターンでパパとママは繋がってるんだって」

 

「深層心理まで読み解く事は出来ないらしいのだけれども、互いの体調や気分、

 どの方角に居るか位は察知出来るらしいわ」

 

「何でそんな事になっているかと言うと、全く同じナノマシンを使った手術をしたからとか?」

 

「正確に言えば、ナノマシン手術後-ナノマシンが固着する前に大量に互いの体液を交換したからとか、高ぶった精神の波長をナノマシン越しに互いに覚えたとか色々と仮説はあるけど…

 仮説の域を出ないわ」

 

 どうやら、理由は不明瞭だが十千屋とリアハは互いの存在を感じれるらしい。

つまり、彼女が彼を「死んだ」と言わない限り生存は確定しているみたいだ。

 こうしてまた、十千屋夫妻の非常識を知った皆は遠い目になるが…仮説の中身を連想した

一部の人は耳まで赤くなっていた。うん、本当に術後に色々あったんだ…あったんだよ。

 

「まぁ、らぶちゃんのパパと同じかその近似値かもしれないパパがアッサリ死ぬとは思えないけどね~」

 

「…雄貴さんは、遺伝確率250億分の1。不死なる生命体?」

 

「そうね。不死身の男とか陰で言われてるものね」

 

 あっけらかんと彼が死ぬはずないと冗談めいて言う彼女らに他のメンバーは冷や汗を流すが、

急にチェーロが「あっ」と何か思い出しかの様に話す。

 

「そうだ、出るなら早くした方が良いよ?パパの要請によってお姉ちゃん(十千屋の娘分)達が動き出していると思うし」

 

 「「「よし、急ごう。そうしよう!」」」

 

 チェーロの言葉に特に一夏側のメンバーは慌ただしく行動に移る。彼女が言った通りならばヤバ過ぎる人(十千屋の娘分)達がこの(戦場)に押しかけてくるという事だ。

 多分、味方であり強力な助っ人なのだろうが…それと同時にどうする事も出来ない何かを一緒に連れ込んでくるはずだと、今までの経験で知っている。

 特に最悪のケースは、意気揚々と出撃したら既に終わっていたという事態だ。

それだけは何としてでも避けたいと、慌てず騒がずスピーディーに銀の福音へのリベンジに向かう。

 

 さて、噂をすれば何とやら…轟が箒に発破を掛ける少し前、とある場所で動きがあった。

 

 それはソロモン諸島に近い、ゲムマ群島首長国のアケノ島周辺にある個人所有孤島の一つである。

 この島の外見は(ほとん)どが岩山とジャングルに包まれた小島と言うには少しばかり大きめな島だ。

この島には富豪の別荘にも見える家が建っており、とある家族が所有している。

 

「まったく、学校が半休だったから良かったものの。

 お父さんたら、相変わらず無茶苦茶やってるんだから!」

 

「あはは…何もフォロー出来ませんね。でも、旦那様が頑張っているのは確かなんですから」

 

「分かってるわよ!でも、何かあった時に趣味丸出しなのはコッチが疲れるの!!」

 

 少しばかりご立腹なのは薄い桃色のショートボブの少女、それについて歩くのは

十千屋のメイド部隊の一員である和子(わこ)である。

 

「では、麗白(ましろ)お嬢様…お願い致します」

 

「はいはーいっ、①と③を同時に押し続けて開放ボタンを五連打!」

 

 この少女の名は十千屋 麗白、そう現在のところ唯一一粒種である十千屋とリアハの間に出来た実の娘である。

 ここは、彼女らの家族+αで住んでいる十千屋の実家-ライチョウ島。

そして、麗白がエレベーターを変に操作すると立体映像ウィンドウが現れ、それを操作する。

 すると、本来存在しない地下へと向かってエレベーターは動き出す。

 

 エレベーターが止まるとそこはまるで基地の様になっており、二人はその廊下を進む。

途中で和子が持っていた軍服の礼装上着を麗白は受け取り羽織った。

 そして、とあるドアの前に立つ。

 

『ようこそ、中央司令室へ』

 

 機械音声の案内が流れるとドアは自動で開き、彼女らを招く。

招かれた彼女たちは麗白が上座の席へと座り、和子は他のメイド達が居る下座のオペレーター席に座る。

 

「サーシャさん、お姉ちゃん達の準備は?」

 

「三名とも準備は完了しております」

 

「後は、司令官代理の麗白お嬢が声を掛けるだけだぜ」

 

「そう…じゃあ、お願い」

 

「了解しました。各員に告げます。今回はV.O.B.を使った電撃作戦です。ここから目標へと接近、そして撃破してください」

 

「目標が移動した場合、こちらから自動的に進路データを随時変更するのでナビゲーション通りに飛べば問題ありません」

 

「なお、使用後のV.O.B.はインテリジェンスコアの収納領域(イベントリ)に格納されるのであしからず」

 

 麗白の指示によってオペレーターとなったメイド達は今作戦の概要を伝え、格納庫に居る彼女らへと伝えられる。

 格納庫には、新しいFA:G(フレームアームズ:ギア)を纏った少女達がいた。

 一人は肩下まで伸びた薄い金髪の少女で、FA:Gはトルースが使っていたバーゼラルドのパーツに似ている。そして、それを赤にカラー変更されているものを黒髪の少女が纏っていた。

 最後の一人は青いクリスタルの様なパーツが幾つも付いているバイクの様な物に跨っている。

 それぞれの機体の後ろにはV.O.B.が備え付けられており、何時でも出撃できる状態だ。

 

「ここから目標までV.O.B.巡航速度ならば約二時間半で到着します」

 

「お姉ちゃん達、お父さんをお願い」

 

 司令室の巨大ディスプレイに格納庫の様子が写っており、通信も繋がっている。

そのため、麗白の懇願も彼女らに届き皆は頷いて返答した。

 

「…うん、各員!出撃スタンバイ!!」

 

「三機ともシステムオールグリーン!」

 

「目標までのナビゲーション、OK!」

 

「第二ゲート、開放!」

 

 麗白の号令によって、事は動き出した。オペレーター達は最終チェックを終え、格納庫のゲートを開く。

 格納庫では彼女らの前方の二重ゲートが動き出し、準備に当たっていた充電くんやアント-

アーキテクトフレームの無人機は退避場所へと移動した。

 その頃、この島の外では大きなバルコニーが付いた建物の下-岩壁が下がり、その中に隠されていた格納庫が姿を現す。

そして、その前に広がっていたセスナ等の小型飛行機が離着陸出来る滑走路は、端が地面ごと跳ね上げられ大型輸送機が離着陸出来る幅へと変形する。

 格納庫から出てきた彼女らは一定位置に来ると、V.O.B.に火を入れる。

すると次は、後方部にアフターバーナー用の遮蔽板がせり上がり、前方の滑走路は上り坂へと変形した。

 

「FA:G バーゼラルド!行っきまーす!!」

 

「FA:G バーゼラルド・ルベル…出るっ!」

 

「FA:G フレズヴェルク・サイドワインダー形態。出るわよ!」

 

 彼女らはそれぞれの機体名を高々と名乗り、出撃していった。さらに、ここでも…

 

「父様、今行きます」

 

 IS学園に停留しているテーサウルスアルマ(ほぼ十千屋用の社用移動拠点船)の甲板が開き、その下から伸びたカタパルトによって素子も出撃した。ただし、右手のインパクトナックルの手が妙に()()()()()が。

 

 

 そして、こちらもリベンジ(自己出撃)をする為に箒達は砂浜に出てきた。

 各自ISを展開し、パッケージも装着済みだ。しかし、何か違和感が…

 

「ん~あれ?おかしいな…轟さんとチェーロさんが()()にISを展開してる様な?」

 

「はっ!言われてみればそうですわ!?」

 

「まさか、冗談だろう?だが、Vaterなら…有り得る」

 

 そう、轟とチェーロは一つのISコアを使いまわして各自のISを使用している。

故にどちらか片方が使用中ならもう片方は使用不可の筈だ。

 しかし、今はどちらもISを展開している。その事を指摘されたチェーロはドヤ顔になり胸を張った。

 

「んっふっふぅ~。そう、いつも使っているISコアは轟ちゃんが使っているのだ!」

 

「チェーロ、やっぱりコアの方は貴女の方が」

 

「え~、だってその子(コア)と同調率が高いの轟ちゃんじゃん。ボクはコッチでいいの~」

 

「アンタらとっとと説明しなさい!いや、本当はして欲しくないけどさ!

 でも、やっぱり、もしかして、なのね!?」

 

「あ、そうだった…そう!パパは束ママの力を借りずにISコアシステムを解読し

 作れるようになったのだー!!」

 

 話がズレかかっているのを鈴が修正し、詰め寄って説明を促す。そして、チェーロは核爆弾発言を言い放ったのだ。

 無論、聞いていた面子は大いなる衝撃を受ける。この発言は世界の軍事バランスを崩す事になる大変タチの悪い話だ。

 今の世の中はたった467個のISコア=ISによって軍事と平和のバランスが保たれている。

コレを突き崩す発言だからだ。

 

 それ故にチェーロは「内緒にしてね?」と声を掛け、説明の続きをする。

 正確に言えば、十千屋はISコアの機能を限定的に再現し、ISコアを再現する事に成功した。

との事である。

 結果的に一つに纏められずに三つに分割し、それを一機に搭載することでISを再現した。

 PICやシールドなど、行動するために必要な機能をつぎ込んだ-ストライク()コア。

 複雑な演算処理をする超AIシステムと拡張領域などを司る量子領域をつぎ込んだ-インテリジェンス(I)コア。

 そして、それらのエネルギーを賄うためにユビキタス(U)エネルギー(E)・システムを使った。

副事物として、エネルギー問題はこれによって解消された。

 後付け出来るハイパーセンサーや、通常なら必要ない進化機能、コアネットワークを排した

IS()()()これが今のチェーロの愛機-FA:G スティレットなのである。

 

「パパが言っていたんだよね~。

 『現段階で全部再現しようとするから無理が有るんだ。

  何故、出来る所から分割してやらない?』って」

 

「けど、私たちには先にT結晶の技術があったから分割再現できた部分があるけど」

 

「通常では必要のない部分を削り、戦闘に特化した機能だけを残した…って事でいい?」

 

「そうね。地球上なら数千キロを見渡せるハイパーセンサーや、どこに居てもやり取りできる

 独立したネットワークとか必要ないわよね?環境変化に合わせた独自進化も」

 

 十千屋サイドの面子が新システムについて話し込んでいるが、それを傍から聞いている

他メンバーは「やっちまった感」が猛然とする。

 ここに女尊男卑のIS信者がいれば狂乱して殺しに掛かってくるだろう。それくらいマズイ内容であった。

 しかし、ここで少し注釈しておこう。IコアとSコア、これらはどちらか片方を使用するのであればエネルギーさえどうにか出来れば誰でも使える。

 が、何故か二つのコアを同時に使おうとすると適正が無ければ使えなくなってしまう。

まぁ、男女平等に確率があるのでソレだけでもISにとっては後暗いのだが。

 

 とにかく、戦力が増えたのは心強いと今は全力で不穏の種から目を背け、

今度こそ出撃しようとした時に何かが近づいてくる気配がした。

 無断で飛び立とうとした彼女らは、目撃者であるならば少し悪いが寝ていてもらおうと行動するが…それは人ではない。

 

「じゅ、充電くん?」

 

「しかも、赤って事はアンタ()のじゃない。月甲(げっこう)禍津(まがつ)積んでるし」

 

 そう、箒が普段から使っていた打鉄に換装装備(パッケージ)を付ける為に使っていた充電くんであった。

 彼?が箒の近くに歩いていくと、目の前で手を差し伸べる。

 

「充電くん、すまないがそのパッケージはもう使わないんだ」

 

 箒が必要ないと断るが、彼は手を差し伸べたまま動かない。

何をしたいか彼女にはサッパリであったが、その格好からすると。

 

「手を、握手をすればいいのか?」

 

 充電くんは変わらない表情で頷き、箒は疑問に思いながらも手を握る。

すると紅椿と充電くんの間で情報のやり取りが始まった。

 

「な、何だ!?」

 

『更新データを確認。更新データに必要な装備を確認。…再フィッティングを開始します』

 

 箒は驚くが紅椿の手が充電くんの手から離れない、しかもその間も情報のやり取りが止まらず

彼が付けていた月甲禍津も量子となって紅椿に取り込まれていく。

 何が起こっているが分からない彼女であったが、何故かやり取りしてる情報の中身は分かった。コレは自分の記憶だ。いつも使っていた()()の記憶だと。

 一分に満たない間にやり取りは終了し、最後には量子の光がここに満ちた。

光の中心となった箒に誰もが目が眩み彼女が見えなくなってしまう。

 光が収まり誰もが箒の姿をみると紅椿の形が変わっており、これには彼女自身も驚いていた。

 手足には追加装甲が付き、背面にある花弁のような一対の大型バインダーには月甲禍津の

肩部シールドにあったクリスタル状の装置-TCSオシレーターⅡ型が煌めいている。

 

「な、何だ…コレは?『月装-大屋毘古(おおやびこ)』?第二形態移行(セカンド・シフト)していないのに変化した?

 しかもコレは…月甲禍津と私が使っていた打鉄のデータを使って?」

 

 箒の困惑をよそに紅椿はより強く、しかも彼女に近づくために変化した。受け取った情報と装備を取り込む形で。

 そして、今まで欠けていた何かが埋まるかの様に彼女と紅椿を隔てていた薄皮一枚の違和感も

消えていた。

 

 この時は彼女らは知らなかったが、紅椿には束が独自開発した『無段階移行(シームレス・シフト)』システムが組み込まれおり、元々蓄積経験値により性能強化やパーツ単位での自己開発が随時行なわれるようになっている。

今回は蓄積経験値を打鉄から貰い、そこから導き出される自己開発を月甲禍津をベースに行った…というものであった。

 

 だが、そんな事は関係ない。

コレは紅椿が打鉄が充電くんが自分の為にしてくれた事だと分かれば箒は十分である。

 

「あぁ、これで私はもっと戦える。ありがとう、充電くん。紅椿。そして…いや、この礼は全てが終わってから直接伝えよう」

 

「…で、もういいのかしら?」

 

「ああ!私も飛べる!!それにどうやら…思っていた以上に、

 見えないものや無意味に見えていたものに守られていたり、知らずに愛されていたらしい。

 今の私は…迷わない!」

 

「はぁ、どうやら本当に吹っ切れたようだね」

 

「そうですわね。今の彼女の眼差しは一夏さんにそっくりですわ」

 

「そんじゃ!勢い付いた所でっ、行っくぞー!!」

 

「張り切るのは良いけど、作戦は忘れないように」

 

「そう、だね。でも、この雰囲気…嫌いじゃない」

 

 吹っ切れた箒で皆に笑みが溢れる。自分たちはやれる、果たす事ができる。

そう確信し、彼女らは自らの意思で戦場に身を投じた。

 

 

(ここは…海、なのか?)

 

 一夏は何処か現実味のない、ぼぅっとした思考の中で辺りを見渡す。

素足の裏に感じる砂の感触と熱気。海の潮の香りと波の音。

ジリジリと照りつける太陽の熱を拭ってくれる心地よい涼風。

これらによって彼はここが夏の海だと思った。けど、ここがどこか今がいつなのかが分からない。

姿もそうだ、制服をきてズボンは裾まくりして、素足だからなのか手には靴を持っていた。

姿だけを見れば学校帰りに海に立ち寄った様に見えるだろう。

 

「フゥ――ラァ、ラン♪ララン♪ラララ――♪」

 

 不意にとても綺麗な歌声がし、一夏は気になって導かれるようにそれを辿る。

 そこには波打ち際で踊り、歌う、白いワンピース白い髪の少女が居た。

踊るたびになびく白の髪と服は陽の光で輝くように見えて、無垢な美しさがある。

 彼は声を掛ける気には成らなかった。むしろ、声を掛けるのが無粋であるような気がした。

その為、近くにあった白くはげ上がった流木に腰を下ろす。

 一夏は白い砂浜、白い少女、白い雲がはっきり見える夏の空をぼんやりと眺めていた。

 

 

「ごべんなぁ、ごべんなぁ…今のわたずざぁ、だづげられねぇ…」

 

(君…は?)

 

 十千屋は自分の頬を濡らす何かで気づき、薄目だが目を開けた。

 そこには、そばかす気味で本来なら愛嬌のある少女が顔をクシャクシャにしながら涙を流し、

謝り続けている。

 それを見て彼は、彼女の涙を悲しみを止めたいと思った。

 

 




はい、冒頭でも書いた通り約二週間ぶりです。
前回よりも早く上げられましたが…第二戦まで届かなかった!?
そして、オリジナル設定をブチまける回となり…申し訳ない。
こんなクソ設定でもご覧になられてくれている皆様方には感謝しかありません。

そして、どこかでもデウスエクスマキナ(ご都合主義)が出るでしょうが勘弁してもらいたいです。

さて、次回の予定は…銀の福音二戦目前半と、一夏と十千屋のコアへの邂逅を書き上げたいと思います。


そして、感想や誤字脱字・ここが文的におかしい等のご報告も謹んで承ります。
では、もし宜しければ次回お会いしましょう。
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