しかも、長い、終わらない…先が見えない…
え~…そんなこんなでよろしければどうぞ。
では、どうぞ御ゆるりと。
男は微睡む…それはまるで胎児の様であった。
既に
しかし、ボロボロに近いウェットスーツを着ていて…
いや…男はコードが繋がっている背以外の部位は、其の物が
コードは欠損部を補うかの様にその断面から幾つも伸ばされていた。
周りは電子部品の微かな光と音で満たされており、彼に繋がれたコードから漏れる光ははまるで血管に流れる血の様に壁と彼との間を行き来する。
その有り様は鉄の子宮の様であった。
この男の名前は十千屋、十千屋雄貴…彼がこうなったのは銀の福音と戦い、自爆紛いの攻撃を仕掛け海に墜ちた所まで遡る事になる。
「それじゃ君は俺が纏っているIS-正確に言えば《ISコアの人格》でいいんだな?」
「んだぁ、まずだー。わたずが名称:打鉄カスタム『
十千屋は何故かそばかす気味で愛嬌のある少女と対面していた。
周りの光景は石造りで何故か
互いに冷たい床に直接座っている。
彼は福音と戦い海に墜ち、
「あ、こりゃあ…今回は
と、何処か他人行儀に思った所で記憶が途絶えている。多分、そのまま気を失ったのであろう。
意識が戻りかけた時には何故かこの空間に居り、目の前で泣いている少女が気に掛かり
語りかけると…もっと泣かれた。
何とか慰め落ち着けた所で色々と尋ね、冒頭に繋がる。
少女が言うには自分は十千屋が身に纏っていたISのISコア人格である事、此処はISコアと
十千屋の精神を同調させた事に生まれた精神世界であるとの事だ。
彼は
なら前向きに考えてソレを起こしていると考えた方がいいだろう。
何せ、彼が意識を取り戻し生きていると知って元から泣いているのに更に泣いた少女の事だ。
これが走馬灯か何かと言ったらまた泣き出してしまうだろう。
とりあえず、少女が何者か、此処は何処かは分かり彼は頷いた。
「さて、どうするか…」と独り言を呟き考えると、少女の表情が曇る。
「ごべんなぁ、ごべんなぁ…今のわたずざぁ、だづげられねぇ…」
「どういう事だ?」
「まずだーの怪我は思った以上に深いんだぁ。
わたず-ISには操縦者の生体保護・調整機能があどぅよぉ。
げどな、まずだーの怪我は
せめて、わたずが
さて、ここで話は逸れるが全てのISは全て
それならば専用機と量産機の違いとは何であろうか?
答えは『ISコアに入力される設定が一個人に対して特化しているか』である。
ISは宇宙空間での活動を想定し、開発されたマルチフォーム・スーツだ。
その性能、信頼性、操作性、何よりも最も身の近くにいるパートナーとして、
篠ノ之 束-現:十千屋 束はISを設計・開発した。
飛び立てば自分とISしか居ない、成層圏をたった一人と一機で
操縦者を守り、操縦者と共に考え、操縦者と共に生きる、それを目指し目標としてISを作った。
そうでなければ
だが、たった一個人に向ける
量産性は誰であろうと誰が使おうと一定の性能を保証するものだ。
故に専用性を高めているISコアで量産性を求めているのは筋違いもいいところである。
しかし、現状は束しかISコアを作る事が出来ない。(十千屋サイドは例外中の例外)
量産に向いたISコアなど夢のまた夢。故に現状で何とかするしかなく、今の技術者は泣く泣く
今の一部機能に
制限した機能の例として
つまり、十千屋が負った怪我は量産機レベルの機能では追いつかず、体の隅々まで知っており
調節出来る専用機レベルでないと対処出来ないと
彼はその説明を聞いて難しい顔をし、手を握ったり開いたりしながら何かを確認している。
目覚めた当初は体が鉛の様に重かったがなんとか起き上がり座り込む事まで出来た。こうして指先にも力も戻ってきている。
右腕全体は0と1の文字列で形作られているが、阿頼耶識システムによって浸食された事を表しているのだろう。ここまで確認できると彼は少女の服を掴んだ。
「な、なにずるだ?まずだー??」
少女の服は拘束服であり、身動きがとり辛い程度に拘束されている。
腕の
ここには鏡が無いので彼が知る由もないが、彼の右目も0/1化している。つまり…
「ぬぅんっ!」
「ま、まずだー?もじかじで、
ここでその象徴を変える事が出来れば、それに合わせてデータも変更される筈だ。
少女の拘束服=量産機にする為のリミッターを無理矢理でも破壊すれば自分の生存率が上がると彼は直感している。
だが、拘束服は強固だ。ありったけの力で引っ張ってもビクともしない。
「…普通じゃ無理。なら、こうだ!」
「ま、まずだー!
少女の目の前に居る十千屋の輪郭がブレ始める。
それと同時に彼の
この異常事態を少女は正確に把握しているのか必死に彼を押し止めようとする。
が、彼は止まらない。
そして、彼の右半身全てが0と1で形作られた瞬間…少女の拘束服は引きちぎられ、彼女は自由となった。
「どうだ、これで思った通りに出来るだろ?」
「うん、うん…これでわたずは思った通りにでぎる。げどなぁ、まずだ~…」
「生き抜くのに手段は選んでられない、気にするな。さぁ、思いっきりやってくれ!!」
十千屋の半身が0/1化した事に少女は泣き出しそうになるが、彼の有り様に気を奮い立たせ顔を上げる。
すると、薄暗かった部屋が明るくなり機能停止していた演算処理装置が動き出す。
と、同時に十千屋は体に力が張る様な感覚を覚える。
「ごれでだいじょうぶだぁ。時間が掛がるがもじれねぇけど、死ぬごどはねぇ」
「…なぁ、即座に治す方法は無いのか」
全機能を使える様になった少女の回りを様々なデータが映されているディスプレイが浮かぶ。
そして、危険領域から脱した事を告げた少女に十千屋はそう質問した。
少女はそれを受けて考えるが、申し訳ない顔をする。
「ISコアネットワークに回復機能を施じだISのデータがあるんよ。
げどぉ、難じい。再現じようどじでもエネルギーも資材も何もがも足らねぇんだ」
「回復系のプログラムを
「何だぁ?わたず達に向かって
彼の願い事に応じられないと意気消沈している少女であったが、不意に二人に自分たち以外の声が聞こえてきた。
外部からの通信であり、それは人影としてこの場に写し出される。人数はおよそ六人くらいだ。
「誰だ」
「「「ボクらを
「「はぁ?」」
人影たちは理解できない内容を発し、十千屋と少女が「どうしてなのか?」と尋ねても同じ内容しか繰り返さなかった。
彼はどうしたものかと頭を傾け始めたが、少女が外界の様子に気づき察する。
「まずだー、こいづらトーナメントの時の無人機だぁ」
「…そう言う事かよっ、クソ」
少女は外界、現実世界で十千屋が沈んでいる場所の上、海上に居る無人機であると告げる。
トーナメントの時の無人機と言えば人影らはそれに使われている
以前に捕縛した無人機を調べた時に分かったが、生体ユニットにされた彼らの人格は崩壊している。そして、僅かに残った意識は
部品として組み込まれ、機械として強制的に操られる地獄から逃れたいとただそれだけを望むが、彼らを運用する者達はそんな事を知る由もない。
もう既にそのような者達からすればただの
「まずだー、新だらじい機影が見えだよ。
「…後で束には謝るか。なぁ、こうする事は出来ないか?」
十千屋は人影らの境遇に憤りを感じていると、事態が変わってきている事を少女から告げられる。
それに合わせ彼は考えるが、ある一案を思いつき少女に告げた。
「…理論的には可能だぁ。だども上手ぐいぐがどうがは分がらねぇども」
「出来るか出来ないか…それを考えて少しでもできる可能性があるならばやる。
こうしてる間にもきっと一夏や箒、他の皆も戦っている筈だ。
だから、不可能に近くとも俺は動き成し遂げる。俺は
俺は
十千屋の案に少女は何処か否定的だ。彼の提案は無茶が過ぎる。
が、彼を見ると百も承知、己が成すべきものの為に全力で行く姿勢が見て取れた。
「まずだー、上手ぐいぐがどうが分がらねぇ。でも、わたずを信じでぐれるげ?」
「ふっ、俺はお前が信じる俺を信じてるし、逆に俺が信じてるお前を信じる。
自分の
少女は自分を信じてくれる十千屋に胸の奥が熱くなる。
数多く居るIS装着者の中でも自分の娘だからと、絶対的な信頼を委ねるISコアは自分しかいないという事実も無意識のうちに熱さを加熱させる。
これから行う事は無茶苦茶かもしれない。
でも?だから、どうした?十千屋はこんなにも自分を信じてくれる。
ならば出来る出来ないではない、やるのだ!それしかない!!
と、少女は胸の奥の熱さで決意を焼き固めた。
「わたずはやる!わたずを信じでぐれる、まずだーの為にやる!!」
「ありがとな。てな、訳だ…俺を回収しに来た無人機たち、お前達を
けど、お前たちの全てを貰うぞ?」
少女が決意を固めた事を十千屋は確認すると、彼は人影に向かってこのような事を言った。
人影は壊れた機械のように繰り返していた言葉を止め、一瞬身を震わせる。
影であるから分からないが、十千屋と少女には歓喜が伝わってきた。
「あげるっ」「あげる!」「全部!」「だから…」
「「「ボクら・ワタシたちを助けて!!!」」」
「契約成立だな。準備は良いか?やるぞ!!」
「分がっだんだな!まずだー!!」
十千屋の号令を受け、少女は己が持てる全ての力を解放する。部屋は隅々までくっきりはっきり分かるほどに明るくなり、演算処理装置はまるで音楽の様に光と駆動音を鳴り響かせていた。
そして、少女にも変化が現れる。引き裂かれ
「あんどの通信機能から侵入じて…掌握。此方に引き寄ぜる」
「そしたら、隅から隅まで量子に変換し此方に補完しろ。
…出来たらアントの手足を繋げて触手状態にして、海上の彼らも引きずり込んで
「分かっだだ。姉妹だちは?」
「同じ様に引きずり込め。コア以外の部分は全て使わせてもらおう」
「どんどん、いぐんだな!」
哀れにも引きずり込まれた
外部周辺機に組み直され、またはこれが終わるまでの外壁として張り出される。
その中心となっている現実世界での十千屋と少女の本体でもあるISは負傷箇所、
破損箇所を量子へと分解・変換し、新しく得たエネルギーや部品をそこへ再構築してゆく。
無論、あの人影であった無人機から採れた
十千屋が思いつたモノは量子変換機能を使った物質の再々変換であった。
ただし、コレは人体改造に近しい行為である。
自らの体もただの部品の一つとして使用し、更にそれに
すぐさま怪我を治し、戦闘に復帰する為だけに自ら望んで改造する。
その様な行為を普通は行えるだろうか?
常人では不可能と言い張るほど嫌悪するだろう。だが、彼はやる。
自らを突き飛ばす程の生存本能、そしてその先で行われる戦いに挑む闘争本能。
何よりも狂気じみた
これが冒頭の光景までに至った経緯である。十千屋は自らが作った鉄の子宮、はたまた繭の中で生き抜くため戦い抜くため己を作り替えていたのだ。
身体が出来上がるまであとどれくらい掛かるかは分からない。
だが、包まれたまま海上へと浮遊した彼は感じた。
銀の福音を戦い抜いた一夏達にまた悪意が振り落とされたのを…
「一体なんなんだよ!?コレは!!」
「口よりも手を動かしなさい!」
「すまないっ!私の装備はもう使い物にならない、だから銀の福音の
「比較的軽症者は私の予備の武器を受け取って!シャルロット!!」
「了解!僕の予備も使って!!」
「箒!さっきのワンオフ使えないの!?」
「スマンっ!経験不足のせいか使いたくても発動しない!!」
今の一夏達を言い表すのならば阿鼻叫喚。やっとの思いで倒した銀の福音の代わりの様に現れた幾つもの人よりも二回り大きな球体、これが襲い掛かる。
攻撃方法は主に二つ内臓武器による攻撃と、連結する事によって蛇の様な体躯になり
それを活かした質量攻撃‐体当たりや締め付け等だ。
球体事態はさほど強くない。普通の兵器よりは強いだろうがISやFAならば脅威には感じない。
しかし、いくら倒そうが追加でされていく数の利ともう一つ…
「マドカちゃんっ、あの緑の
「私が知る由もないだろうが!」
「ビームっぽいものは効きやすいようだけど、
(ISが放射線警報を出してる?嫌な予感がする…)
そう、謎の
鞘華のベリルショット・ランチャー、つまり
貫通力が高い兵装は比較的に効果が出ている。
だが、何よりも彼らを追い詰めているのは…
「きゃぁあ!あぶなっ!?」
「鈴!?大丈夫かっ!? うおっとぉお!?!」
「大丈夫?月山錦?」
「ありがと、素子先輩。でも、月山錦って俺の事ですか?」
「一夏っ、気を抜くな!」
「ゴメン!箒っ」
「ちなみに月山錦は白っぽい色をしているサクランボの品種の一つ、つまりホワイトチェリー。
「素子っ、下ネタ披露は止めなさいって!
(しかし、状況が悪いわね。いえ、皆の
今日、一日中通して行われた連戦に弾もSEも体力も消耗していた。
普段なら避けたり防げる攻撃が容易に当たり始まる。その事実が彼らを追い詰めていく。
(師匠の言っていたISの一番の弱点…ってヤツかよ!)
追い詰められていく思考の中で一夏は、以前十千屋が言っていた
「一番のISの『弱点』とは何だ?」という話を思い出していた。
「ISの一番の弱点?」
「はぁ?何よそれ」
「…SEか?
溢していたからな」
「まぁ、それはISの
普段から十千屋から鍛えられている面子は彼からの問いかけに頭を悩ます。
それを見た彼は悩んでいる代表として一夏に何かを手渡した。
「師匠、これって携帯ゲームか?」
「そうだ。中身はあの大乱闘ゲームだ。
その中の『百人抜き』モードを自分が少し難しいと思う難易度で十回連続でクリアしてみろ」
「…それがヒントなのか」
「あぁ、さっき言ったのは何だが別にクリア出来なくてもいい。
だが、その時にどんな感じに成ったかを覚えとけ」
「分かった師匠」
それから数日、携帯ゲームを持ってない者はゲーム機を回してやり、
持っていた者は早速やり込み始める。その後…
「…はぁ、クリア出来た一夏?」
「いや、3~4回までは連続で抜けるんだけどさ…その後が続かねぇ。箒は?」
「……聞くな」
「ふっ、嫁よ私は出来たぞ」
「あはは、ラウラってばのめり込み過ぎだったよ。何せ、眼帯を外して両目でしてるし」
「っ、シャルロット!」
「チート使ってんじゃないわよ。で、シャルロットはどれくらい出来たのよ。
簪とセシリアは聞かなくていいみたいね。互いに逆の意味で」
「ぶいっ(*^^)v」
「うぅ…一度もクリア出来ませんでしたわ~」
「うん、本当に両極端だね。ちなみに僕は最高連続9回まで」
どうやらそれぞれが阿鼻叫喚の内容だったようだ。
それを目の前にして十千屋がどんな感じだったかと聞いてみる。
それらを総じると「気力、集中力が十回連続クリアまで持たない」であった。
その答えに彼は満足して頷き、今回の問いの答えを説明する。
ISの一番の弱点とは人であると言った。
人それぞれには癖だったり苦手な戦い方があったりするだろう。それは何とか矯正出来る。
しかし、体力や精神力、そして集中力というのはどうにか出来るものではない。
戦いが長引けば長引くほど、激しければ激しいほどに比例的に消耗してゆくものだ。
鍛えれば限界までの時間は長引くかもしれない。だが、終わりは必ず来る。人は機械ではないのだから。
「人の緊張感、言い換えれば集中力か。極限の状態はそれほど長続きするもんじゃない。
頭も体も使う戦闘なんぞスグにな」
人そのものがISの弱点。人ゆえのすぐにくる
自分がもしISを倒すならば逃げられないように布陣し、その上で消耗戦を仕掛ける。と、持論していた。
まさに今の状況が彼の言った通りである。
逃げ切れない状況、尽きない敵、消耗に消耗を重ねている自分たち、まさにジリ貧。
一夏は口の端を切りそうになるくらい食いしばって戦い続ける。
「くわぁ!」
「きゃぁあ!!」
「っ、誰かやられたのか!」
「もう撤退するしかないんじゃない!?」
「…そうだな。それは賛成だ。でもな、ヤツらが逃がしてくれると思うか、フィロ?」
「む~…」
敵は攻撃を仕掛けながら一夏達を一塊にするように追い詰めてゆく。
見渡す限り逃げ場は狭められ、もし一丸になって撤退しても誰かが脱落するのは想像するのに難くない。
一夏達、IS学園メンバーも轟を始めとするカンパニーメンバーも誰かを置き去りに、
犠牲にする事は出来もしない。
狭まる間隔、触れ合いそうになっている背中、誰かが覚悟を決め不敵に笑った時に『ソレ』はやってきた。
最初は何の音かと思った。チョッと遠いところから聞こえた爆発音、それが連続して聞こえ
次第に近づいてくる。
その方角に味方も目が何処にあるか分からない敵もそちらに振り向く。
何かかが敵である球体を壊しながらやってくる。その何者かは一夏達の最前列の敵を爆散させ、爆炎の中から現れた。
彼らの眼前で急上昇し、彼らの真上に陣取る。
その姿は紫色の騎士のようであり、その正体は誰かが呟く…
「NSG-Z0/E ドゥルガーⅠ…」
十千屋が語るFA世界の月面の守護騎士が彼らを守るように舞い降りた…。
もうちょっと、もうちょっと進めるはずだったんだ…
良ければ今回で戦いが終わるようにするつもりでした。
でも、気力の低下と先月末くらいからの先代ノートパソコンの不調…
ええ、動画を見てたら突然、ブツンッ、ブー…、ブラック⇒ブルーのセーフモードへと……
これを機にデスクトップパソコンに買い替えたりしました。
良いパソコンですよ。前よりも画面広いし、処理速度などは比べ物になりませんしね。
…言い訳はともかく、また1ケ月以上お待たせしてしまって申し訳ございません。
次回こそは十千屋無双をしてこの戦いを終えたいと思っております。
福音戦でこの長引き…ほぼオリジナルで占める夏休み編はいったいどうなってしまうのだろうか……:(;゙゚''ω゚''):
そして、感想や誤字脱字・ここが文的におかしい等のご報告も謹んで承ります。
では、もし宜しければ次回お会いしましょう。