オリジナル回と成ります。
では、どうぞ御ゆるりと
待ちわびる時も愛おしい。
それは幸せな明日を感じているからだ。
だから、来る時を待ちわびるのである。
今日も今日とて朝が来る。
ここIS学園では、朝食を学園の食堂でとる事が普通だが例外もいた。
「学食も悪くないんだが、やっぱりリアハが作ってくれた方が良いな」
「と言っても、凝ったものではないんですけどね」
「そこは朝だから仕方ないだろう?」
そう、十千屋とリアハである。
リアハはほぼ毎日、船の中にあるキッチンで朝食を作っていた。
夜に仕込んでタイマーで炊いたご飯に、サラダ、ソーセージ数本にベーコンエッグ、
これが彼らの朝食である。
「ついに明日で帰れるな」
「ええ、明日が一学期の終業式。色々とあり過ぎて長かった様な短かった様な…ですね」
愛妻が作ってくれた朝食を食べながら十千屋はふと思った。
彼女が言った通り、色々とあり過ぎた学園生活も明日を過ぎれば一時停止である。
終業式が終われば船ごと帰国する予定だ。
「あぁ、そういや」
「どうしたんですか?ユウさん」
「いや、
「ふふっ、そうですね」
「あ~~、早く家に帰りたい」
「ですね♪」
明日の終業式から連想していき、自分達が帰るべき家へと思いを馳せる二人。
今回は、そちらの方を覗いてみよう。
「行ってきます!」
「はい、行ってらっしゃいませ。麗白お嬢さま」
此処は十千屋とリアハの実家が在るライチョウ島。
孤島にある豪邸の様な家から今日も元気な声がする。
玄関から元気に飛び出したのは麗白、十千屋とリアハの実の娘だ。
それを見送るのは三つ編みの小柄なメイド-イリスが恭しく見送る。
麗白が数歩駆け出すと、彼女から量子の光が溢れ出す。
光から抜け出すと彼女の姿は、パールホワイトを基調とし金色の装甲をした
そして、さらに大きく踏み出すと背中からピンク色のエナジーウィングが発現し、
地面をけり出して空へと飛びあがっていった。
これが彼女の
「イリ~、お嬢さまは出掛けたかぁ?」
「はい、丁度」
イリスが外に居る事に気づいたのか玄関から声がする。
それは
彼女も外に出てゆき遠くに見える麗白を見てこれからに思いを馳せる。
「あ~、あと数日で賑やかになるんだよなぁ」
「はい、旦那様、奥様、お嬢さま方は夏休みになり帰省しますし、
お客様もいらっしゃいますからね。久し振りに忙しい毎日になりそうです」
「ま、退屈しなさそうなのは良い事だ」
世間が夏休みになり、子供が居る家は忙しくなる季節だ。
それは此処でも変わらないらしい。
「そういえば、イノお嬢さまはどの様な手段で通学を?」
「イノ嬢は改造ラピッドレイダーでバイク通学だ」
「……あのゴツく盛ったアレですか」
「そう、旦那が趣味で改造してたヤツ。ガー●ンドとかモス〇ーダとかを目指してたけど、
結局は二人羽織みたいになる強化外骨格に成るやつ」
この家に同居している他の学生の話題が出たが…兵器を使って通学とは如何に?
と、イリスは黙り込んでしまう。
問題を起こさなければ、十千屋関係の事柄に対して大目に見て貰ってるので気にしない事にする。
「海上も移動できますが、良いのでしょうか」
「イノ嬢も旦那が好きだからねぇ。好きな相手が作った物を乗り回したいんだろうさ」
「それはともかく、仕事に戻りましょう」
「だな。朝とはいえ日差しがキツくてかまわんし」
通学を見送った二人は戻ってゆく。今日の仕事はまだ終わっていないと。
さて、通学中の麗白だがもう本島に差し掛かっていた。
ある一定の高度をとっていると航空機や飛行ドローンの邪魔に成ってしまう。
それ故に、一般的なビルより高く、学校に通じる道の上を飛ぶ事を課せられている。
彼女が街中に入り、道なりに飛んでいると厳ついバイクを見かけた。
自分と同じMスーツを着た姿は直ぐに関係者だと分かる。
彼女達はどちらもゲムマ群島首長国の本島にある学校に通っている。
近くの島には学校施設は無く、良い教育を受けさせたいと十千屋達は思い其処へ通わせた。
当初はメイドたちが船と車を使ったりしていたが、Iコア・Sコアが作れるようになりISモドキを使っての登校に変わる。
諸事情の問題は先程もあったが、十千屋関係なのでご察しを。
暫く飛行していると学校が、いやかなり大きく『学園』と言った方がしっくりくるかも知れない。
『国立総合学園 リーフ』である。
字面の通り国営であり、幼稚園から大学院までの超マンモス学校であり様々な子供や人材が通う
教育施設だ。
麗白は自分の初等科がある校舎の屋上へと着地する。
着地と同時に量子に包まれ、学園の制服へと変わった。
襟や袖に軽めの刺繍がされている品の良い半袖ブラウス、首元には幅の広い赤のリボン、
裾にレースが飾られたチェック柄のフレアスカートである。
「おはよう!」
「おはよう」
「おはようございます」
「お~、我が学園の天使様のご登校だぞ~」
「なによ、天使って」
「いや、羽を羽ばたかせて学校に来るし」
麗白が自分の教室に入ると、口々にクラスメイトが挨拶を返す。
それに彼女も答えながら自分の机へと着いた。
「~~♪」
「麗白ちゃん、ご機嫌だね」
「うんっ、お父さんとお母さんがあと数日で帰ってくるからね」
「あ~、両親揃ってIS学園へ出張だったっけ」
「そう、あっちもあと数日で夏休みになるから久し振りに長く家に居られるって」
「麗白ちゃんって、結構お父さんとお母さんが好きだものねぇ」
「あはは、まぁ…自慢できる両親だもの。けど」
「…自慢出来る所のレベルじゃないと思うけどねぇ。で、『けど』?」
「お母さん達と仲が良いのは良いけど、イチャつきレベルを落として欲しい。
子供心ながら恥ずかしくて…」
「それは、う~~ん……」
少年少女の和気藹々とした声が今日も教室を飾る。
さて、もう一方もそろそろか…
麗白が上空から確認したバイクも学園の駐車場へと入ってきた。
乗っていた人物はバイクにロックを掛けるとそのまま降りて歩き出す。
すると、此方も量子の光に包まれ学園の制服姿となった。
麗白と同じ制服、ただ胸元のリボンが細いタイプであった為ここの高等科の生徒だと分かる。
彼女はプラムに近い髪色のツインテールを揺らしながら高等科の玄関へと歩いてゆく。
「おっはよ~っ、イノ!」
「おはようなり!」
「にゃはは、姉貴おは~」
「おはよう、アンタらは朝から元気ねぇ」
玄関で声を掛けたのはクラスメート、
ポニーテールの『アオ ゲンナイ』、
ツーサイドアップの『ブキコ コトブキ』、
肩下まである髪をうなじで適当に結び付けた『レティ オルテ』だ。
そして、声を掛けられたバイクに乗っていた少女、あからさまに十千屋の
ありありと示されていたこの少女は『イノ アーヴァル』
苗字で分かる通りリアハの妹であり十千屋の
ちなみにレティとの関係は従妹で本島に住んでいる。
「それにしてもアオ、アンタは日に日にご機嫌になってくわね」
「ふっふ~ん♪夏休みになれば
「あぁ、アンタは
「ちなみにアオは轟の事を『ごうちゃん』と呼ぶのは、
読みとか色々と考えてコレが一番可愛いとのことなり」
「にゃは~、出た~ブキコの第四の壁破り~」
「アンタらね~~…」
あぁ、何時ものノリだとイノがうんざりしているが彼女らは止まらない、特にアオが。
「だって、轟ちゃんと一緒に進級かと思ったらIS学園に行っちゃうんだもん。
だから、この夏は轟ちゃんと一緒に十千屋おじさんの御手付きにならないと!」
「おい、何故そうなる」
「そりゃあ、轟ちゃんとずっと一緒にいれる伏線だよ。私も十千屋おじさんの事は嫌いじゃないし手を出されても良いくらいだし、そして何よりも超玉の輿だからね!!」
「アンタの愛はおかしいわ…」
「そう言うイノも十千屋さんに向けてる愛情は歪んでるなり」
「そして、日々ご機嫌になってくのは姉貴も同じにゃ」
話題の矛先が自身に向けられると、ちょっとツリ目のイノの目が更に吊り上がる。
まぁ、変態?扱いされれば当然だが…それを指摘した二人の目は冷ややかであった。
「姉婿を
「日に日に微笑んでいたり鼻歌を歌ってたりする回数が増ているのにゃ」
「レティのは置いておくとして、ブキコのは心外よ!」
「何がなりか~」
「ただ私は!お
けっして、姉さんや他のお嫁さん、子供たちから奪いたいわけじゃないわ!!」
「世間一般ではソレは
「どう聞いても愛情が歪んでいるなり」
「うっさいわよ!お義兄さんの部下たち!!」
がー!っと怒りを露わにするイノに素知らぬふりで歩く二人。
蚊帳の外であるアオは轟とプラスαである十千屋との蜜月を妄想し顔が歪んでいた。
こんなのが彼女らの日常である。
あと、レティとブキコが十千屋の部下だという話は、レティが新型のMスーツのテストユーザーで、ブキコは玩具サイドのコトブキカンパニーのアルバイターである為だ。
何とも姦しいやらだが、自分達の教室に着く頃には多少治まりイノがスライドドアを開けて入ろうとしたが…。
その瞬間に陰鬱なオーラを感じで後ずさった。
この様子を見て全員がそろそろ音をたてないように入る真似をする。
そして、このオーラの出どころは…。
「オサレ オサレ オサレ オサレ オサレ オサレ オサレ オサレ オサレ オサレ オサレ オサレ オサレ オサレ オサレ オサレ オサレ オサレ オサレ オサレ オサレ オサレ オサレ……ブツブツブツ」
ブツブツと自席で俯きながら何かを発している大きなツインテールの少女だ。
比喩表現だが彼女から滲み出る陰鬱な暗いオーラは夏の日差しさえも遮ってしまうようである。
「…らぶちゃんが拗らせてる」
「久し振りの登校だってのに何やってんのよ…」
「まぁ、原因は察せるなりよ…」
「お~い、らぶや~ん!」
「あっ、あのバカ!」
オーラの諸因である彼女らの言う『らぶ』にドン引きであったが、唯一レティがそれをモノともせずに近づいてゆく。
一応、此方に反応する程度には思考があるのか近づいた彼女にらぶは視線を向ける。
「らぶやん、この前の番組カッコよかったよ~!
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「オサレが…オサレが足りないのよぉおおおお!!!」
「にゃぁぁああああ!?!」
行き成り立ち上がり、近づいてきたレティの肩を掴み大きく揺らしながら叫び出した。
「最近はオサレなPVが増えてきたと思ったら、
思い出したかの様に【むせる】が入ってくるのぉおおお!!」
「らぶやんっ、落ち着くにゃぁぁあ!!」
「いかん!らぶ様がご乱心だぞ!?」
「あぁっ、やはりこうなったか!」
乱心し凄まじい勢いでレティを揺らす彼女にクラスメイト、特に男子が騒ぎ立てた。
彼女『らぶ キュービィ』はヤマハプロダクションが企画したアイドル計画:初音プロジェクトに参加しているアイドルである。
【画一でありながら画一でない】と訳の分からない題目を基に『初音ミク』というアイドルを
多方面に展開した。
『初音ミク』という基本的な特徴を押さえる画一、そして個人個人で醸し出す『味』で勝負している。
所属アイドル全員が『初音ミク』な為、個別で分けるときは『~式』と分けた。
その中で彼女は『らぶ式ミク』という芸名で所属している。
閑話休題し、なぜ彼女が乱心しているか話を戻そう。
彼女の見た目は特徴としては『初音ミク』だが、使われる方面は例外を除き【オシャレで可愛い】方向で売り出している。
が、その例外が…炎の匂いが染み付くときに起きる、
彼女の覚悟を決め、戦いに臨む時の表情がそれを喚起させる。
以降、鉄と硝煙の匂いがするようなバトル系の企画に駆り出される事となった。
本人は【オシャレで可愛い】方向で行きたいのに、望まぬ【むせる】方向も熟さなくてはならないのである。
そして、そのストレスが今ここで爆発したのであった。
あぁ、【むせる】に向かうは…コトブキカンパニーに所属している彼女の父-異能生存体の
「オサレ!オサレ分が足りないのよぉおおお!!」
「ぶにゃあ…」
「らぶ様!お口直しに一曲どうぞ!!」
暴走しているらぶに
それを聞くと彼女はピタリと止まり、待ちの姿勢となった。流石、プロアイドル根性である。
ちなみにレティは揺すられ過ぎて落ちた。
~~~♦♫♦・*:..。♦♫♦*゚¨゚゚・*:..。♦
「おい、何で肩を落とした鉄の背中が続く様な曲を掛ける」
「しまった!
待ちの姿勢だったが、イントロが流れると目が据わり筆箱を拳銃の様に持ち男子生徒に突き付ける。
どうやら慌てていたのか曲のファイルを間違えたらしい。
後の彼はこう語る。まるで劇中の彼女の愛銃である
「いい加減!わぁたあしぃいいにぃぃいい!!
オサレな仕事だけを寄越しなさぁあ~~~いいい!!!」
「あ~~…らぶ、真面目な話ちゃんとしたステージの話はあるわよ」
「え?」
再び暴走したらぶに向かってイノがそう言うと彼女の動きが止まる。
そして、瞬時に相手に詰め寄った。
「ほんとにホントに本当に!?」
「観客はむせてるだろうけどね。
夏休み中にある、連盟国を集めてやる大型公開演習の慰問コンサートよ」
「確かにそれなら【むせる】衣装で【むせる】曲をやらなくていいかも…」
「衣装なら
FAの操縦が出来るらぶなら使いこなせるでしょ」
「こ、これは確かにオサレ衣装!しかも歌って踊って空も飛べるだと!?」
「詳しい事は実際にプロダクションに問い合わせてね。身内情報だからこれ以上は知らないわ」
「こ、これで脱むせるの一歩を…!!」
イノがもたらした情報により、らぶの暴走は完全に止まった。
だが、彼女は知らない…
(元がFA:Gだから武器持てば使えて【むせる】んだけどね)
(それにその時に使う大型舞台装置である『オーダークレイドル』も
大型兵器のコクピットに出来る品物にゃ~)
あぁ、やはり彼女は
「はい、はい…いいえ、ありがとうございます。……ふぅ」
「……議長さんよ、反応はどうだったんだ」
此処は中東に在るナナジングループが仕切る経済特区、そこの議長室である。
議長の席には金髪の女性が先程まで電話対応をしており、その反応を髪が逆立った浅黒い肌の男性が問う。
「ごめんなさい、完全に止められないかもしれません」
「いや、アンタは良くやってるよ。万が一の場合は俺らに任せろ。その為の俺たちだ」
「ありがとうございます。しかし、諦めずに手は尽くします」
「ああ、頑張れよ。クーデリア議長」
「頼りにしています。オルガ団長」
そう言葉を交わす彼らには確かな信頼をあった。
そして、男性-オルガが部屋から出るとその脇で待っていた人物が彼に語り掛ける。
「オルガ、クーデリアは何だって?」
「俺らがやらなきゃいけなくなるかも、だとよ」
「ふ~ん…それで?」
「決まってんだろ。仲間を家族を守るんだったら、たった一つだミカヅキ」
「うん、分かったオルガ」
「と、言ったものも…コトブキの若旦那に頼らざるを得ないだろうな」
「…すると、
「あぁ、あの腹ペコわんこが来るかもなぁ」
待っていた人物-男性としては小柄なミカヅキがオルガと話しながら廊下を歩く。
どうやら、ナナジングループの会議の時に懸念していた事が起こるかもしれない。
どうも、何とか前回から一か月以内に投稿できました。
今回はオリジナルというか、夏休みに向けての十千屋サイドの紹介?みたいな感じになっとります。
…まぁ、あのキャラとかあのキャラとかおかしい事になっとりますけどね。(;^ω^)
さて、次回からオリジナル編である『夏休み編』言い換えれば『十千屋のご実家編』に成ります。
ツッコミどころ満載な設定が山ほど出てくると思うので、ご許し下さい。:(;゙゚''ω゚''):
…オリジナル編だから筆の進み具合はどうなるかなぁ。(遠い目)
そして、感想や誤字脱字・ここが文的におかしい等のご報告も謹んで承ります。
では、もし宜しければ次回お会いしましょう。