ステラを放つその日まで   作:蓮太郎

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嗚呼、悪夢だ

 授業参観日、それは生徒にとってある意味悪夢を見る日でもある。

 

 普段の授業を真面目に受けてない生徒はあえて真面目に受けてるふりをし、真面目な生徒はいつも通り過ごすはずが親が来ていてあまり落ち着かない。

 

 この授業参観日を親に言わず隠してる生徒もこの学園にいた。魔法少女にどっぷりとハマった姉を持つ生徒会長とか。どこかの魔神柱がキレると思う。

 

 もちろん今日が授業参観日だという事を親に伝えてないのもいる訳で、伝えてない筈なのにいつの間にかちゃっかりいたりする親もいて…………

 

「自然に連絡したはずだから来ないはずだ…………」

 

「…………なんか芦屋の様子おかしくね?」

 

「お前知らないのか。芦屋のお母様は息子の事を溺愛しすぎてるって話」

 

「下手したら『ちょっと』歳の差が空いたカップルに見えるって噂もあってな…………」

 

「なにそれ気になる」

 

 知ってる人は知ってる噂、これを機に広まり始めようとしていたのは別にいい。評価が落ちるわけでもないからだ。

 

 そんなことより親が来るほうが問題だ。授業参観のことを伝えてないと安心しきるのは早とちりだ。直接目で見なければ来てるかどうか分からない。

 

 そんな悩みを抱えたまま芦屋新志、支取蒼那、リアス・グレモリーが恐らくトップクラスで被害を被る授業参観が始まろうとしていた…………

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

「……………………っはぁぁ」

 

 ドーモ、芦屋新志は疲弊しておりまする。口調が変になるくらい気張っていました…………

 

 視覚と気配に母さんらしき人物は無かった。つまり、母さんは来なかった!気張って来るか来るかと恐れてた俺が馬鹿だった…………

 

「はぁぁ…………帰ろ」

 

 授業参観は最後の授業のみ行われる。よって、このまますぐ帰るということを選択した。いや、だってアザゼル情報だとグレモリー先輩の兄、つまり魔王が来るとかなんとか。

 

 もう目をつけられてるだろうけど、堅苦しそうな人とはあまりなぁ。アザゼル総督は堕天使のトップでもああフランクすぎるのはどうかと思うけど、普通に話をするならあれくらいがいい。

 

 沢山の親がいるなか、俺は誰にも気に留められず教室を出た。

 

 そこまでは良かったんだが…………ふと寒気がした。まるでカンカンに怒った鬼がいるような、そんな感じの感覚がした。

 

 やっばいヤバイヤバイヤバイ、この感じは間違いなくいる!走って逃げきれ…………るのか?

 

「見つけましたよ新志、ちょっとこっちに来なさいな?」

 

 一人の女性の声、それは俺がよく知ってる声だった。

 

「あ、いや、そんなつもりじゃ」

 

「そんなつもりとは?意図的に授業参観のことを黙ってたことならお母さん泣いちゃうかなー?」

 

「すいませんでしたッ!」

 

 速攻で謝らないとぐずりだして大変なんですよ、それも人前で本当にビービーと泣きだすから困るんだよ!

 

 いつもこういう光景が見られると授業参観の時に話題に上がってたな…………

 

「ええ、黙ってた事はその謝罪で許しますとも。でも、呼ばなかった事は許しません」

 

「それ同じだよな?黙ってたのと呼ばなかったこと同じだよな!?」

 

「言い訳は無用です。説教ですよ説教?今度というばかりはこってり絞りますからね」

 

「…………勘弁してくれよ」

 

 腕を引っ張られて半泣きになってる母さんに説教されたのは言うまでもない。ちなみに日が暮れそうになるほど説教された。

 

 母は強し、まさにこの事だ。

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

「こうして一緒に帰るのも久しぶりね。転勤してからこういう機会がなかったんですもの、ゆっくり行きましょう」

 

「今となってなぜ転勤するまで俺が帰るタイミングに居たんだ…………?」

 

 母さんはとある大企業の重役の一人らしく、会社を辞めずに子育てをしてくれたという他の人たちから見たらかなりすごい母親だ。本人はこれが普通だと否定してるが、簡単に出来るレベルじゃない。

 

 だが、その働きを認められたのはいいが上の命令によってさらに重要な立場となり転勤する事になった。

 

 そして、俺の前世の記憶がかなりハッキリし、俺の力が判明したのもその時だ。いつまでも甘えず自立しなければと一人残ると母さんに言ったんだ。

 

 めっちゃ泣かれた。「そんなに母の事が嫌いだったのですか!」と丁寧な口調で癇癪をおこされて宥めるのに3時間、説得するのに2日かかった。

 

 流石に自立には早すぎると思っただろうが、俺も家事はそれなりに出来るし、何より何らかの事で巻き込みたくなかった。

 

 これは本当にもしもの可能性だが、こうして俺がアーラシュの力を持ってるなら聖杯戦争が勃発するかもしれない。その不安を拭いきれなかったんだ。

 

 本当に、本っ当に渋々といった形で母さんは一人暮らしを認めてくれた。その際に分厚い『我が家のルール』という冊子を渡されたが今は部屋の隅にあると思う。

 

「あの時は一人暮らしすると言ってついて来てくれなかったのか今でも昨日のように思い出せます。身が割かれるほど心が痛みましたが、自立する事は悪い事ではないですね、ええそうです」

 

「かなり根に持ってるよな…………」

 

「ええ、もちろんですとも。今でもちょっと裏切られた気分になりますから」

 

「その他人みたいな喋り方も相まって…………その喋り方だけどうにかならないのか?やっぱその話し方されたら他人行儀に思えてさ」

 

「…………ごめんなさいね、これはもう癖みたいなもの。でも新志が言うなら3日で変えてみせますとも」

 

「い、いや、母さんはそのままでいい」

 

 母さんなら本気でやれるし、そうなったら逆に違和感しかない。そのままでいいって言ったら母さんの機嫌も良くなってるし、何だこれは。

 

 まあ、こうして一緒に帰ってるだけで機嫌が良くなるからいいか…………ん?一緒に帰る?

 

「新志、私はちゃーんとホテル取ってますからね?あなたの考えてることはお見通しです」

 

「…………ほんと、流石だよ」

 

 やっぱり母さんだけには敵わない。文武両道を体現したような人だし、昔は俺に弓を教えてくれるほどだ。

 

 魔王が来てるため勝手に帰ったら帰り道に現れるかと思っていたが、何事もなくアパートまで着いた。そして母さんはホテルの方に戻っていった。

 

 話を聞いたら、授業参観に合わせて無理矢理こっちに来る仕事を入れて、その仕事を抜け出してきたらしい。ほんと何してんだ…………

 

「では新志、また明日」

 

「また明日って、来るのか?」

 

「もちろん、息子に会いたくない母親なんて塵以下の価値しかないですから」

 

 澄まし顔で毒を吐くのも母さんらしい。的を得てるものが多すぎて何も言う気にならない。明日は普通に俺の部屋に入ってきそうだなぁ。

 

 母さんがの後ろ姿が見えなくなるまで見送った。たまにチラチラとこっちを見て居なくなってないか確認してるから本当に見えなくなるまで見送らないといけない。

 

 そうしなかったら電話でメソメソと泣きながら怒られる。はぁ、本当に困った人だ。

 

 母さんを見送った後は弓を整備するか。どこかに弓道場があれは行きたいんだが近くにはないし、思い浮かぶのはアザゼル総督のとこしかない。

 

 部屋に入って弓を弄ってるといつの間にか1時間も経過していた。かなり集中していたようだ。

 

 その集中が切れたのは魔力らしき揺らぎを遠からず感じてしまったから。

 

「おい、まさかこれって!」

 

 慌てて外に出て揺らいだ方角に千里眼スキルを発動させた。だが、何も見えなかった(・・・・・・・・・)。古いテレビにノイズが走るように、視覚が完全に封じられて状況を見られない!

 

 この千里眼のランクは低くはないはずなのに見えない、これは完全に妨害してるしかない。妨害特化なら何とかなるが、想像を超える化け物だったら?

 

 つっ!?千里眼で見てるはずの視界に横一線が入った瞬間、千里眼が解除された!?くそっ、反動のせいか目が痛い!

 

 こんなんじゃ弓を放とうとしても外す。チッ、愚策になるだろうけど篭るしかない。恐らく悪魔陣営もこの揺らぎを感じ取ってるはずなんだが…………

 

 やっぱこの感じ、初めて感じ取ったんだが………間違いない。俺の想像が現実になっていたんだ。この街に最低一人、間違いなく居る。

 

 俺が東の大英雄の力を授かったのは、まさか、そんな、あくまでも代理ということ、なのか?全てこのための…………この戦争のための(・・・・・・・・)

 

 

 7騎に渡る英雄の力を授かりし者たちの戦争が、もう既に始まっている事にアーチャー枠の力を持つ青年はようやく気付いた。

 

 既に世界を巻き込む代理戦争は始まっているのだと、平和ボケしている青年を嘲笑うかのように。




〜現在確認できているサーヴァント枠別能力〜

セイバー・???
アーチャー・アーラシュ
ランサー・???
キャスター・???の悪魔
アサシン・???
ライダー・???
バーサーカー・???

キャスター枠はもう大体の人が分かってると思いますが、一部分だけ伏せさせていただきます(無意味)

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