後の駒王会談と呼ばれ、波乱が巻き起こる発端となった会談が始まるまでもう既に10分を切っていた。
こんなことを言うのもなんだが…………眠い。みんな夜行性な種族、天使はどうかは知らないが人間にとって昼夜逆転生活はサイクルを作らない限り難しい。
聖杯戦争が始まってるため警戒しつつ、オカルト部の部室で眠気覚ましにコーヒーを飲みつつ待機してるけど早く始まって欲しいと思う。
ちなみに、オカルト部の面々は塔城さんと段ボールを残して既に会場入りしてるとのこと。
この段ボールにはいったい何が入っているのかは知らない。たまにガタッと動き「知らない人怖いですぅぅぅぅぅ!」とか言って…………ほんと何なんだあれ?
あんなビビりがいるとは聞いてないが、待つとしよう。
〜●〜●〜●〜●〜
しばらくしてようやくお呼びがかかった。長いような短いような、そんな感じだ。
呼びに来たのは姫島先輩だ。そのまま会場に案内されて…………
「よお、英雄さん」
「君がコカビエルを倒した人間だね」
「目をつけていたのは正しかったですね」
上からアザゼル総督、魔王ルシファー、大天使ミカエルの順だ。全員から目をつけられていたからほんと困る。魔王様に至っては初対面だしな。
各陣営の上層部が集まっている中で注目を一身に得るのはなんだか緊張するな。こういう場に慣れていないってのもあるが、今俺が置かれている状況は…………
「芦屋君?やっぱりこの空間はダメか?」
「あ、いや、天使に堕天使、それに悪魔がこう同席してるなんて夢にも思ってなくてつい」
「ま、そりゃそうだろうよ。いがみ合ってる種族がなんかよくしてるなんて禁断の愛くらいじゃねぇか」
白々しい嘘になるはずだったがアザゼル総督のジョークによってその場をしのげた。大天使ミカエルがアザゼル総督に向ける視線が、というか大体の方々から白い目で見られている。なんかごめん、アザゼルさん。
その中で例の白龍皇だけは俺を見ていた。そういや戦いたいとか言っていたな、まだ戦いを残しているから戦闘狂と戦うのはごめんだ。
「さ、コカビエルを倒せる人間も来たことだし始めるとしますかね」
そして会談を自分から始めようなんてやっぱり肝が据わってるな。まだ白い目を向けられてるってのに。
ここからは前に襲撃してきたコカビエルの事件について関わった者、リアス・グレモリーと支取会長、その眷属たちによる報告が始まる。
そこで俺の行動も問われた。さすがに今ここで嘘をつくことは信頼を失う羽目になるからファミレスで話を盗み聞ぎしたところから白状した。
グレモリー先輩と支取会長はは眉間をつまみ後でお仕置きみたいな事を呟き、アザゼル総督は「もっとはよ言えよ」とツッコミをいただきました。
「そろそろ本題に入る、さっさと和平を組もうや」
報告もある程度済んだことでアザゼルが話を切り出した。あれ、俺がこの三大勢力と接触していたことについての言及はないのか?てっきりあると思ってたんだが…………
まあ今回の目的は今後についての和平、というのは聞いていた。テロリストが暗躍しているらしく、しかもかなり悪質らしい。
「その前に一つ…………」
「どうしたミカエル?お前にしちゃ随分と歯切れが悪いな」
「…………完全にこちらの不手際なのですが、その」
和平を結ぶって時にミカエルが挙手して何かを言いだそうとしていた。この会談の主な話である和平より大切なことって?
「おいおい、お前の不手際って一体何やらかして」
「破壊されたエクスカリバーが空輸便で運ばれている最中に何者かに強奪されました」
「「「「「はぁっ!?」」」」」
いやいやいやいや、おかしいだろ!?空輸便で運んだって時点でおかしいぞ!今のところ神の不在より重要事項じゃねえか!
そもそも運ばれてる最中に強奪ってまさか例のテロリストが関わってる?くそっ、千里眼で
偽物ということは分かってる、分かってるんだが…………今の状況を考えて『もしも』が起こる可能性が高い。
何せ、聖杯戦争の真っ只中…………
「まずエクスカリバーが空輸便で届けられているというところで管理が杜撰だと思うけど、悪魔として聖剣を何者かに強奪されたと聞かされたら困ったどころの話じゃない」
「全くだ、つーか何で空輸便なんだよ!」
魔王様とアザゼル総督に文句を言われてるが、ミカエルだってどうすればいいのか分からないだろう。
だが、事態は俺たちが思ってる以上、何倍もいくほど早かった。
「っ、この感じ!」
この異変に気づかない者はいなかった。俺もこの感覚は知っている、
……………………いや、しらばっくれるのはやめよう。会議室の外、グラウンドあたりに
「まさか、
「奴らどんな情報網してるんだよちくしょう!」
「もしかしたら旧校舎も制圧されてるかも!」
「うそ、あそこには小猫とギャスパーが!」
気配を感じ、千里眼をを使う必要すらない。俺はちょっとしたパニックになっている会議室から出た。
「おい!どこ行くつもりだ!」
アザゼル総督が声をかけてきたがここは無視させてもらう。これはもはや
まあ、無視したせいでアザゼルもついてきちゃったが巻き込まれる心配がある。ま、そこは堕天使総督という肩書きに恥じぬ実力を見せてくれるだろう。
そして俺とアザゼル総督は飛び出すように外に出て見たものは…………
「
「そんなっ、私は真なる魔王の血族なのn」
光の奔流に何者かが飲み込まれる景色だった。それに思いっきり
その聖剣を握ってる人物の姿は、獅子を模した白き鎧に身を包んでいて、気高い人間だと思えた。内面は知らんが。
もしかしたらただのそっくりさんかとも思ったが、何せイントネーションが…………その、やっぱり彼女というかなんというか。
「……………………やはり、これだと力不足ですか」
そんな呟きが聞こえた途端、
「なんだありゃ…………しかもエクスカリバーって」
「堕天使の総督、あなたには興味無い」
その獅子の鎧から凛とした女性の声が聞こえた。あらかた敵を殲滅したらしく、いつの間にか現れた馬に彼女は跨る。
「用があるのは貴方だ、アーチャー。さっきまで私は邪魔されていただけにすぎない」
「アーチャーって弓兵…………おい、お前の知り合いか?」
「知り合いじゃないが、関係者って言ったところだ」
一言で言うなら最悪だ。なんかアーチャーってことバレてるし、どこかで監視の目をつけてたんだな。チッ、警戒が浅すぎた。
「あんたも参加者なんだろ、獅子王、と呼べばいいか?」
「獅子王、その呼ばれ方はされたことはありませんね。今度名乗るなら獅子王と名乗らせていただきましょう」
「待て獅子王とやら、お前がさっき使ってたエクスカリバーは」
「貴方に発言権はない、と言いたいが質問には答えよう。アレは出来の悪いレプリカだが、それなりに修復できたら私が知る剣の十分の一は放てる」
あれで十分の一の威力、いや、7つに分かれたうちの幾つかを集めてるはずだから、今のはそれにも満たないといったところだ。それでもあの威力とは恐れ入る…………魔力の方は大丈夫なのか?
「さあアーチャー、弓を構えなさい。でなければ仲間ゴッコをしている連中ごと消し飛ばさない保証はない」
「ああ、わかってるさ」
獅子王は馬に乗せてあった槍を手に取り、俺は神器である弓を構え…………今思えばこれって本当に神器なのかと思ったが、どうなのだろう?
でも、今ここで考える事じゃない。
「征くぞ、アーチャー!」
「圧倒的に俺が不利だなちくしょう!」
地の利もクラス相性も最悪な相手と初戦を始める事には変わりなかった。
オーフィス行方不明で半ばヤケの襲撃のはずが突然の乱入者に出番を取られたカテレア!
三陣営をそっちのけで始まる聖杯戦争!
裏切るタイミングを見失ったヴァーリ!
圧倒的に不利な戦いを強いられた新志に勝ち目はあるのか!
次回、主人公vs獅子王、お楽しみに!
追記・クラス相性は本人の思い込みで本作には一切関係ありません